ホンのひととき

September 17 [Sun], 2017, 6:21



愛書家の楽園

  “ようこそ書物の宇宙へ”



アルベルト・マングウェルの
『図書館 愛書家の楽園』と
の出合いをきっかけに、この
ブログを始めました。本のこ
とについてはもちろん、映画・
美術・音楽など様々な情報を
発信していければと思っています。


〈今回の1冊〉



『ホンのひととき 終わらない読書』、
中江有里著、PHP文芸文庫

T ホンのひととき
U 読書日記
V 書評の本棚



 中江有里さんは、以前「週間
ブックレビュー」という番組に
出演していた頃みたことがある。
とても知的な女性だなぁと感じ
ていたのだが、本書を読んで
これほど本好きな人だったとは、
とあらためて驚いた。

 本書を読んでいて、まず最初に
目に飛び込んできた1冊は、『もう
二度と食べたくないあまいもの』。
若い頃には日本人作家の作品を
たくさん読んでいたが、中年期
の今はほとんど読まなくなって
いた。そんな中、何かの書評で
この本の存在を知って、珍しく
興味を持ったので読んでみた1冊。
人を愛することの切なさ、愛情の
儚さがじわりと伝わってくる小説
だった。



『もう二度と食べたくない
あまいもの』、井上荒野著、
祥伝社文庫 

 この後、友里さんのエッセイを
読み進めていくうちに、《自分と
読書の傾向が似ているかも・・・》
と感じさせるようなくだりが登場。
ますますこのエッセイを気に入って
しまった。

 どちらかというと不安神経症
気味の私は、「U読書日記不安
に対するささやかな攻防」にも
強く興味を持った。早速読んで
みると、J.M.クッツェーの『遅い
男』について書かれた文章があった。
この作品はとても大好きな本だった
ので、ますますうれしくなってしまった。
 中江有里さんは、『遅い男』について、
「湯船からなかなか出られなかった。
どこへ話が転がるのか気になって本を
閉じられなかった」と書いている。と
ても素直に物語の感動を伝えるのが
上手だなぁとすっかり感心してしまった。



『遅い男』、J.M.クッツェー著、
早川書房



SlowMan,byJ.M.Coetzee

 今年の11月には、彼女の新刊
『わたしの本棚』が発売予定と
なっているらしい。今からとても
楽しみだ。彼女のエッセイを読んで
新たに知った本の扉を開けてみる。
そしてそこには、未知の世界が
果てしなく広がっているのだった。
思えば私は幼い頃からずっとこの
繰り返し。


〈驚き、発見、思わず目が覚める本たち〉

 このところ、仕事がハードな
ため、読書にどっぷり浸かって
いる時間が少なくなってしまった。
疲れがたまっていると、自然に通勤
電車の中でも疲れない本ばかり手に
とることが多くなっていた。そんな時、
中江有里さんのエッセイや、「週刊新潮
大人気コラムが文庫化」という言葉で
以下の2冊と出合った。

 『サンデルよ、「正義」を教えよう』
の中に登場する、古畑種基氏のエピソード
についてはとても驚いた。私は彼の『法医
学ノート』が好きだが、現実には何が起こっ
ていたのか、あまりにも無知だったと気づいた。
思わず雲っていた目が見開かれるような感覚を
おぼえる本たちだった。

 日頃、週刊誌を読む機会が少ない私に
とっては実りの多い本であり、疲れ気味
だったり多忙な日々の中で、こんな貴重な
エピソードを垣間見る機会がもてたことは
良かった。

 エッセイやコラムなど、人の意見や世の中
で起こっていることがリアルに描かれている
本を読むことで、現在の自分の立ち位置が
見えてくることもある。



『サンデルよ、「正義」を教えよう』、
高山正之著、新潮文庫

第一章 ウソつき新聞は今日も健在
第二章 真実は歴史を知ることで見えてくる
第三章 恥を知らない人々
第四章 美談はまず疑ってかかれ
第五章 悪人ほど「正義」を気取る



『官見妄語 とんでもない奴』、藤原正彦著、新潮文庫

第一章 伝統は合理性を超越する
第二章 ヨーロッパの轍を踏まぬよう
第三章 世界の無法化が進んでいる
第四章 ジェントルマンの作法
第五章 猛威をふるう新自由主義


〈アートのはなし〉





国立新美術館開催、「ジャコメッティ展」


 
 9月4日で終ってしまったジャコメッティ展。
もう一回鑑賞したかったなぁと思うほど刺激的
な展覧会だった。中でも、展示室の終わりの方
にあった女性像の集合体展示には圧倒されて
しばらく立ち止まったまま見つめてしまった。


Table surréaliste - 1933

 以前別の展覧会で、偶然ジャコメッティ
の作品を見る機会があったが、その強烈な
個性に思わずはっとなった。瞬時にその
作品の主人公が見つめている世界が、私
に乗り移ってきたかのような、不思議な
感覚が全身を駆け巡った。そしてジャコ
メッティの魂が姿を現すような気がして、
一つ一つの作品に強く吸い寄せられていく。
ずいぶん長い時間展示会場の中で、作品
たちの周りを歩き回っていた私であった。

 



《ディエゴの肖像》



《シモン・ベラールの頭部》



《キュビズム的コンポジション―男》



《見つめる頭部》



《キューブ》



《鼻》



《女性立像》



《3人の男のグループT
(3人の歩く男たち》



《森、広場、7人の人物とひとつ
の頭部》



《小像(男)小像(女)》



《小さな怪物T》



《林間の空地、広場、9人の人物》



《ディエゴの胸像》



《マルグリット・マーグの肖像》



《犬》



《猫》



パリ、イポリット=マンドロンの
アトリエで制作するジャコメッティ




アトリエの前に置かれた
《大きな女性立像W》



《歩く男T》



《真向かいの家》






おわりに


 9月になって、少し秋の気配が近づいて
きた。実りの秋、街をぼんやり歩いている
だけでも、何かにはっとして思わず振り
返ってしまう。秋は、本当に実りの多い
季節だ。今年の秋は、私にどんな実りを
もたらしてくれるだろうか。そんなこと
を考えると心の中がざわめく。

 書物の宇宙は飽きることがない。『ホン
のひととき』の中で、読書と孤独な時間
と、何かについてじっと考える、そんな
貴重な時間が存在することを、中江有里さん
の体験を通して感じることができた。これも
私にもたらされた“実りの秋”のひとつだろうか。

 そしてジャコメッティの作品と向き合った
体験による興奮は、当分覚めそうにない。
この深い感動のひとときも、私の人生に
大きな実りをもたらしてくれたように思う。
                有栖川結子



アルベルト・ジャコメッティ
《笛吹く男》
今度は、ジャコメッティのこの
作品をじっくり眺めてみたいなぁ。



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私はカラヴァッジオの絵に魂を感じます。絵画鑑賞と読書を
こよなく愛する私です。
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