少年チアノーゼ12 

2007年09月25日(火) 20時38分



放課後、いつの間にか俺は生徒会室に来ていた。

どうして生徒会室を訪れたのかは、わからないが。

もしかしたら、期待していたのかもしれない。

どぎまぎしながらも、そっと扉に手をかけた。






「なんか用ですか?」






はっと振り向けば、

そこには、大倉が立っていた。

大倉を目の前にすると、昨日の出来事が頭の中をかけめぐる。

そんなびくびくした俺の心境に、困ったように首を傾げる、長身の男。



「なんか用あるんやったら、俺でよかったら聞きますけど…会長は今不在やねん」







どうぞ、


そういって、ドアは開かれた。


俺は大倉のあとについて、生徒会室へと足を踏み入れたのだった。

少年チアノーゼ11 

2007年08月01日(水) 20時23分


いつものことだった。

俺は、体育館の倉庫の、運動マットの上に組しかれていた。

今日は、体育館。

大倉の長い、手指がするりと服の中に入ってくる。

胸の突起を指がなぞるとびくんと体がはねた。





「あんまり、痕つけないで」





首筋に埋める顔。

ぴりりとした軽い痛みが首筋に流れる。



「最近、夜抜け出してるんやって?」

「……そんなこと、誰に…」

「ボクはね、あなたのことやったら何でもわかってまうんですよ」

「ふははっ、なんだそれ」



首筋に顔を埋める大倉の髪の毛にそっと指を絡める。

あいかわらず、さらさらしてる。



「大倉はさ、十分かっこいいんだから、俺なんか抱くより女の子よってくんじゃねぇの?」

「ええやん、そんなこと…」



黙って…



そういって、大倉の唇は俺の口をふさいだ。

少年チアノーゼ10 

2007年07月01日(日) 20時12分


「眠そうだね」




そりゃ、もう。

昨日は全然眠れませんでしたから。

………で。




「…何の用ですか?」

「なにそのうざそうな台詞!」



翌日、学校に着くなり、俺の教室に訪問があった。

生徒会長の山下だ。

生徒会、ときくと、どきっと心臓が小さく悲鳴をあげる。

そして、この影のありそうな生徒会長は俺に何の用があるというのだ。



「だって俺らって、なんか面識ありましたっけ?」

「生徒会の面接のとき一回あったじゃん!」







それは、そうだけれども。








「いやね。俺の勘違いだったかもって思ってさ」

「勘違い?」

「そ。生徒会にいれた上田のことなんだけど」

「はぁ…」

「あんとき、俺がお前にいった台詞、覚えてる?」










”どうして生徒会がこうやって人選びをするんだと思う?べつに選挙でいいと思わないか?”

”まぁ確かに……”

”ちゃんと、理由があんだよ”

”理由…ですか……”

”中丸くんは、幽霊とか信じる?”

”はぁ…まぁ怖いっすよね”

”そういう、人間とは相容れない存在っていると思う?河童とかさ”

”まぁ、いるんじゃないっすかね”

”うん、そういうことなんだよ”









あの、意味のわからない会話。

たしかに覚えている。




「あれがどうかしたんですか?」

「……生徒会に上田をいれたけど、ハズレだったってことだよ」

「?」

「そんだけ。ちゃお!」





笑顔で手を軽くかざすと、そのまま教室を後にする、山下。

本当に、意味がわからない。






その言い方だと、まるで…









まるで、上田が、化け物だと思っていたが、違ったようだ、というように聞こえるが…。








そんな中、チャイムがなった。

少年チアノーゼ09 

2007年06月05日(火) 17時49分



目がさえて眠れない。

理由はただひとつ。

上田と大倉の、行為を見てしまったからだ。

もうひとつ。

上田が毎晩毎晩、深夜にどこか出かけるからだ。

上田という人間を、いまだに理解できていなくて、あんな光景見せられて、そんな夜に大人しく寝れるはずがなかった。

男同士の行為なんか見たって、勃つものも勃たない、と思いきや、あれで興奮した自分に気づいて自己嫌悪とともに、上田に対する罪悪感がつのる。

この有り余るもどかしい気持ちを胸に、寝れるはずがないのだ。

深く、ため息をはいた。


「…どこ出かけてんだよ…あいつ…」


大倉と、抱き合う上田。

中途半端にはだけた胸元。

やや開かれたズボンのチャックに、密着する性器。

全裸であれば、ここまで興奮しなかったのではないだろうか。

あぁ、だめだ。

考えるな…

行為を見た後に、有り余る性欲を学校の男子トイレで処理したことが何より、上田への罪悪感の土台となっていた。

一緒に生活している同性のクラスメートになに欲情しているんだ。

アホか、俺は。

もやもやと、胸の中に広がる思いは、しばらくは消せそうもない。

今日は、上田と顔をあわせづらくて、すぐに布団にもぐったのだ。

明日は、どうやって顔をあわせようか。


毎晩どこ出かけてるの?


そう尋ねてみようか。

やっぱり無理だ。

俺には聞けない…。


もやもやと悩む丑三つ時。

ふと思ったのだ。

どうして俺はこんなに上田のことを気にしなきゃいけないんだ?

何を気になっているんだ?


問いかけでもってこたえない俺の胸に、もう一度疑問をつぶやいたのだった。

少年チアノーゼ08 

2007年04月01日(日) 18時20分
「あー…っ、重かった…」


理科準備室までプリントを届けた俺は大きく背伸びをする。

本来ならば、すでに家に帰ってソファでくつろいでいるとこいろだ。

閻魔大王様(安田先生のことだ)につかまってしまったがために…。

理科準備室から出て、玄関口までの廊下を進もうと足を出した、そのときだった。








「      」






「え…?」



誰かの声が聞こえた。

話し声ではないようだ。

後ろを振り向けば、目の前には、生徒会室。

上田も、放課後、生徒会室にめんどくさそうに足を向けていたが…

何かの会議…にしては、おかしい。

介護ならば複数の会話が飛びかっているのが当たり前なのではないか。

それよりも、今聞こえたのは…どちらかというと、悲鳴のようなものに近かった気がするが…。

どうして生徒会室から悲鳴が聞こえるんだ?

踏み込んでいけない世界。

覗いてはいけない世界。

しっているはずの生徒会室。

入ったことは一回しかない生徒会室。

いつも入りづらくて世界が違う生徒会室。



ただ、今は、入ってはいけない、これ以上これに首をつっこんではいけない、誰かがそう諭しているかのように、俺の胸に響いた。



しかし……




「…好奇心には勝てないのだ」



そっと、足音をたてないようにして、生徒会室の入り口に忍び寄る。

そっと、ドアに聞き耳をたてた。






『…ちがう…。そう、そこ…。』




誰かの声だ。

上田、ではない。




『ま、って……くるしいから…あんまり…』




これは上田だ。




『口答えはなしやで上田くん。そういう約束やったやないですか』



そっと、ドアを開けて、隙間から視界を広げた。

信じられない光景。




上田が、男性の性器をくわえていた。

いや、くわえさせられていた、のかもしれないが。





相手は、確か、生徒会の、大倉だったと思う。




その光景に、目をそらせないでいた。




どういうことだか、わけがわからなかった。

少年チアノーゼ07 

2007年03月31日(土) 12時10分

上田の異変から少したって、ある放課後のことだった。

すでに上田は、生徒会の一員として、活動に参加していた。

だから、今日も生徒会室にめんどくさそうに足を運んでいるのを見た。

最近、具合が悪そうだな、とは思っていたが、こっちが心配でもしようものなら、干渉するな!と冷たくあしらわれるのがオチである。

さっさと帰ろう。



「あ、中丸くん」


その矢先、おもいっきり襟首をつかまれ引き止められたため、その反動で、おもいきり俺はバランスを崩してしまった。

なんとかして体勢を整えつつ、俺は聞き覚えのある声の主を振り向いた。


「な…、んですか?安田先生…」


「ごめんなぁ。このプリントの束、重くて、ボク運ぶの無理やねん!」


「はぁ…」


「理科準備室な!」


にこっと笑って、その口からは八重歯が見えた。

どすんっと重たいプリントの束を渡される。

俺よりも大分小さい、安田先生は生徒からの人気者。

でも俺は安田先生の…本性を知っている…。





「俺が…これ、全部…ですか?」



「ああ?なんか文句あるんか?」



「………ないです」



「そか!ほな、よろしく頼むわ〜」



えへっと小さく笑う安田先生、その前に一瞬、顔色がドス黒くなったのを、俺は見逃さなかった。

そんなわけで、俺は理科準備室へ行くことになったのだ。



理科準備室は、生徒会室の、一つ手前だ。



プリントの山を抱えて、俺は生徒会室へと続く廊下を躊躇いがちに一歩踏み出したのだった。



まさか、そこで、あんなものを見てしまう、なんてしらずに、だ…。

少年チアノーゼ06 

2007年02月17日(土) 13時13分


「ただいま〜」


アパートに帰ると中へと足を踏み入れ、一番最初に上田の姿を探した。

音楽を聴きながら心地よさげに眠る彼を見つけ、改めてまじまじとその顔を見つめる。


「うぉぉ…まつげなげぇ…」


「………あんまり人の顔じろじろ見ないでくれる?」


「うぉぉぉぉぉ!」

「うるさい」


いきなり目をつぶったままの彼がそんな言葉をもらしたのにびくっと体をこわばらせる。


「おまっ、起きてたのかよ!」

「寝てました。お前のせいで目が覚めました」


はいはい、そりゃすみませんでした。

不機嫌そうに眉をひそめる上田がむくりと起き上がりけだるそうに立ち上がった。


「んで、何か用?」

「あのさ、お前さ、生徒会に選ばれ…」

「その話しないで。胸糞わりぃんだよ」


本気で怒っています、的な雰囲気をかもしだす上田に、俺は「すみません」としか言いようがなかった。

そのときの上田の表情が、本気で怒っている表情の中に、かすかに不安そうな色が入り混じっていたように感じられたのは、気のせいだろうか。

少年チアノーゼ05 

2007年01月29日(月) 20時23分

「あー…まじだりぃなオイ…」

「どうせ選ばれるのA組なんだしさ〜、俺ら関係なくね?」




体育館の椅子に座る中、赤西と聖がぶつぶつと文句をこぼす。

確かに、俺らが選ばれることはありえないわけだから、この選挙発表に出席する意味もないわけだが、俺はずっと面接のときの山下の言葉が頭から離れなかった。

どういうことだろう。

幽霊という話になった脈絡がわからないし、それに何の意味があったのかも、わからなかった。

そして誰が選ばれるのか…。

生徒会の書記に選ばれるのは誰か。

ざわつく体育館が一瞬でシンと静まり返った。

ステージに登場した山下に皆いっせいに注目する。



「どーも。会長の山下智久です」



小さく会釈をする山下。

整った顔立ちに、おそらく女子からの人気も高いと思われるが、ここは残念ながら男子校だ。




「今年の書記が決まったんで、発表します」



山下は静かに口を開いた。






「A組、上田竜也」





体育館ではその言葉だけが響いた。

誰もざわつかなかった。


そのとき、上田が、どんな表情をしていたか、俺は全く知らなかった。

少年チアノーゼ04 

2007年01月15日(月) 23時02分

最近きづいたことがある。

上田が夜、いなくなるんだ。

気付かれないようにこそこそと出かけてはいるものの、

やっぱりカーテン一枚でしか仕切ってないから、普通にばれるわけで
(といっても、今日始めて気がついたんだけどね)

高校生が夜遊びしちゃだめだろ〜とか言ってやろうかと思ったけど、

実際俺も人のことが言えないのであえて黙認。

それに最初の決まりごとで、

お互いに必要以上に干渉しないこと、っていう約束を上田に取り付けられていたからだ。

このときは、上田がどうして夜でかけるのか、なんて全く気にもしてなくて、興味もなかったんだけど。

事件の始まりは、あの日に起こった。

そう、選挙の発表の日にだ。

例の生徒会選挙の、発表の日にだ。

その日から、不思議なことは置き始めた。

少年チアノーゼ03 

2007年01月14日(日) 11時50分


現在の生徒会役員は、上級生の、先輩達が生徒会長と副会長をつとめ、二年生が会計二名、そして新しく入った一年生が書記に選ばれることになっている。

生徒会は絶対的な力を持っている。

だから入れればきっと、冷暖房完備の生徒会室に入り浸ることができるし、生徒会に入っていれば、先生方からも人目おかれる存在ってわけだ。

生徒会長と副会長は去年の会計をやっていた先輩が引き継ぎ、会計は去年の一年生が引き継ぎ、とう形になっている。

ま、つまり今生徒会に入っておけば、高校生活が保障されたようなものってわけ。

ただし、生徒会役員は会長と副会長の一存で選ばれるのだ。

だから、現在学校ではA組の奴らが先輩にこびってばかりで、正直、いづらいっていうか、うざいっていうか、なんていうか、だ。

上田に、生徒会入らねぇの?って聞いたら、興味がないって言ってたけれど、A組なんだから狙っちゃえよ!と思うんだけれど。

現在の生徒会役員は、会長が山下智久、副会長が亀梨和也、会計が大倉忠義と錦戸亮だ。

顔は知っているが実際に話したことはない。

同学年のA組とも話さないってのに先輩のA組と話すわけがない。

今回の書記はその人たちの御心しだいというわけだ。

明日が発表で、今日は先輩達が一人ひとりを見る作業をするらしい。

基本A組がなるって決まってるんだけれども、やっぱりここは全部のクラスを一応、形だけでも見るのだ。

で、俺は順番待ち。

今の情況である。

呼ばれたら生徒会室に入って、軽く自己紹介をしなければならないらしい。

あとは生徒会への意気込み(いや、実際入る気なんてないんだけど、しなきゃいけないらしい)

面倒な学校に入ってしまったものだ。

そして、とうとう俺の番が来たのだった。

上田だったら「うぜぇんですけど」の一言で片付けてしまいそうだな、と、つい、ふふと笑いがもれた。



「失礼しま〜す」



生徒会室のドアは、普通の教室のドアと違ってドアノブをまわしてあける洒落た奴だ(ちなみに普通の教室の扉はがらがら〜ってするやつだ)



「はい、どーぞー。ええと、E組の、中丸くんね」



会長の山下が名簿を見ながらうんうんと頷いている。

その隣には副会長の大倉が物静かに座っている、その二人と向かい合って、パイプ椅子に腰をおろす俺。



「俺が会長の山下です。よかったら自己紹介をしてくれる〜?」

「はぁ、ども。中丸雄一です。趣味は天体観測という平凡な男子高校生ですが」

「ははっ、平凡っつーか地味?」

「……」




なんだかしょっぱなから花で笑われましたけど、なにか?




「それじゃ、生徒会への意気込みってある?」

「いやぁ…俺にはそういうのむいてないと思うんで、特には…」

「うんうん、確かにむいてなさそうだ」

「失礼な!」



なにやらだんらんの場となっていく生徒会室。

そんなんでいいのか生徒会。


「中丸くん、ここだけの話教えてあげようか」

「ええ?」

「どうして生徒会がこうやって人選びをするんだと思う?べつに選挙でいいと思わないか?」

「まぁ確かに……」

「ちゃんと、理由があんだよ」

「理由…ですか……」

「中丸くんは、幽霊とか信じる?」

「はぁ…まぁ怖いっすよね」

「そういう、人間とは相容れない存在っていると思う?河童とかさ」

「まぁ、いるんじゃないっすかね」

「うん、そういうことなんだよ」



なんつか、よくこの人の話している意味がわからなかった。

生徒会の面接のはずが、何で幽霊の話になるんだよ。

しかも話の意図が読めないし、最後の言葉が気になるところだった。

山下と、そっち系の話で盛り上がった後、俺は生徒会室を後にした。

どうしよう…今日、夜一人で寝れるかな…。

そんなことを考えながらも、俺は頭の片隅で、生徒会が厳選する理由と、もしかしたら、上田が選ばれるんじゃないだろうか、なんてことを考えていた。

幽霊=上田竜也

あっても、あかしくないんじゃないだろうか、と。

消えるように白い肌と、人との接触を嫌う性格と、たまにふらっといなくなって、ふらっと帰ってくる。

俺はいまだに上田のことは、全然知らないのだ。