secret room

August 02 [Sun], 2015, 2:48


想いが馳せる
深夜の密室、9005号室にて



「お疲れ様でしたー」




あるホテルのある一室

コンサートも無事終わり
反省会を済ませた面々は、てんでばらばら
各部屋へと散っていく



「おい、ちょっ、まーちゃん!
ハルのカードキー持ってくなって!!」


「早くこないと閉めちゃうよーー!」




少し離れた場所では、今夜同室のまーどぅコンビがいつものように痴話喧嘩をしながらドタバタと部屋を出て行く





2公演をこなしたと言うのに元気が有り余っているようだ





若さって凄いなあ

同年代なのについ、そんなことを
考えてしまう鞘師がそこにいた




案の定部屋を出るのが一番最後になってしまった。
早足でドアを潜り、先ほどくじ引きで決めた部屋へ向かう







「今日誰と一緒だっけ…」


余りくじを引いたため、
鞘師は今日の相手が分からないでいた



「ま、誰でも同じか…」



誰に言うでもない独り言はオレンジの間接照明が照らす廊下にぼんやりと響きシャボン玉の如く消える





ただし、その”思い”は以前なら、だ












突き当たりにある部屋の前に辿り着くと
静かにチャイムを押した

手にはカードキーがあるが、一応の礼儀だ



少しするとそう遠くない場所からパタパタと足音が近づきドアが開く





「ぁ、鞘師さん」




鞘師の視界よりも幾分か下で
茶色の髪と高い声が揺れる



”思い”を崩した当本人を目の前にしドキリと胸が高鳴ったのが分かった








「遅いですよ?石田待ちくたびれました」


色素の薄い透き通った目を悪戯げに歪めた彼女はドアを大きく開いて鞘師を招いてくれた



「えと、ご、ごめんね?」



「冗談ですって。ジョーダン!」




ケラケラと楽しそうに笑う後ろ姿をチラリと見やる。
心が温かくなるのを感じると同時にこれからどうしようという気持ちがよぎった





「鞘師さん?」


「えっ?」


「えっ、って。部屋入んないんですか?」



彼女の瞳が不安そうに揺れた

一瞬の困惑が足元に表れていたようだ





彼女の感情を払拭するように、小走りでコミカルに後を追うと なんだそれ、とまた笑われた
























昨年12期メンバーを迎えてからと言うものの彼女と同室になる機会というのはめっきり減っていた


これだけメンバーがいると、各々好きな相手と部屋を組むのはどうしても難しい
そもそも自分が思う相手と気持ちが一致するのは容易ではない



そんなことからくじ引きが代々採用されているのだが、偉大なる先輩のいたあの頃より同部屋になる確率はとうに減っていた



同部屋にならない限り鞘師と石田の交流頻度はそう多くなく、出来れば彼女とまた話がしたいと思っていた矢先のことだった











「あ、あゆみちゃんと同部屋になるの久しぶりな気がする」



「んー、、と、、そうですっけ?」



「あ、ち、違ったかも

…えと、いつだったっけ?忘れちゃった」


少しだけ通っていたような気がした糸がプツンと切れたみたいで


鞘師は苦笑いを浮かべながらスーツケースを漁り出した



「拗ねないでくださいよ」


「拗ねてないよう」


「じゃあどうしてそんな寂しそうな顔するんです?」


「いや、本当に、うちは、何も…」



視界に石田の靴が映りそろりと見上げると、
石田が此方を見下ろしていた



「な、に」



「ウソですよ。ウソ」



くしゃりと髪を梳かれる



与えられた温もりが心地いい


石田は、しゃがみこむ鞘師の横に腰を下ろした







「4ヶ月振りくらいですよね。
ここ最近は、はるなんや生田さんと同部屋が多かったですし…」




打って変わって優しい笑みを浮かべる石田は珍しく年相応に映る




「さっきはトボけたくせに…」



「ちょっといじめたくなったんです」



「…さいてぇじゃ」



「あは、方言出てる」

















何でもない会話が嬉しかった











少し前まではどこか気まずかった二人きりの空間も時間と共に和らいで行った


普通より幾つかゆっくりと縮まっていく距離を焦って詰めようとすれば、獲物は腕をスルリと抜けていく



角をいうにも石田は皆の人気者で、輪に入るのが苦手な鞘師には高嶺の花にも思えたのだ









そして、いつか。同室になったら、鞘師には一度試してみたいことがあって











「あのさ、あゆみちゃん」



「ハイ、何です?」



「あ、あのね…ん、とね」







不思議そうな石田の視線に中々勇気が出ない




でも、今日やってみるんだ 、

変態だってまた言われるかもしんないけど




「あ、のさ…

ぎゅ、ってしてみてもいい…?」











少しの間









ぽかんと口を開けたあゆみちゃんの顔が目の端に写る




引かれたかと思い唇を噛み締めた時、

ツッという彼女特有の笑い声がそれを破った








「ひーっ、ひっ、ひっ


…っはぁ……

要するに石田を抱きしめてみたいってことですか?」





「う、
そんなハッキリ言わんでも良いじゃろ…」



「でも、そうなんですよね?」




「う、うん…」







なんでか理由を聞かないのが不思議だった





「どうぞ、したい様にしてください?」




「し、失礼します……」



ご丁寧に広げられた腕を通り抜け華奢な身体を遠慮がちに抱き締める




自分より一回りほど小さな身体は思っていた以上にフィットした
 

コンサート中にふざけあって抱きしめた事はあったが、改めて抱き締めるのは初めてだった







触れ合った部分が異常に熱を持ち、鼻腔をくすぐる彼女の香りに目が虚ろになる



遠慮がちに抱き締めていた腕が彼女を求めるようについ、きつく絡んだ












あぁ、やっぱり










ここ最近、自分の気持ちに悩んでいた

石田のことがなんでか気になり目で追ってしまうこと

パーツフェチの延長なのかと最初こそは思ったがそれにしては些か違和感があること


思い当たる想いがあったが、経験の乏しい自分1人の頭では到底肯定出来なかった




そして、触れ合えば分かるかも、なんて
突飛な答えが出てしまったのだ












「…あゆみちゃん」



「ハイ、?」



「…あ、熱くない?この部屋」



「確かに、鞘師さんの身体は凄く熱いですよ」



「…あゆみちゃんも、ちょっとだけ、熱い気が…する」



「そりゃ、こんなこと突然されたら照れちゃいますよ」





 
そう言ってやんわりと体を離す






顔が、あつい




離れてふと我に帰ってしまった








「…と、突然ごめん」


「…大丈夫です」




自分から言い出したくせに今この状況は顔から火が出るほど恥ずかしく居た堪れない






「お、お風呂先、いいよ?、
…あの、ホラ疲れてるだろうし」




「…じゃあ、先失礼しますね?」






久しぶりに聴くシャワーの音も、ドライヤーの音も今の鞘師にはただの起爆剤でしかなかった





まともに顔が見れない気がして、珍しく冴えてしまった目を無理やり閉じてベッドに潜った





















「ー鞘師さん?」








「…寝てるんですか?」








狸寝入りも甚だしい




近寄る石田の気配に心臓が飛び出そうだったが必死で息を殺した




だめだ…


やっぱ触れ合えば、、
なんてするんじゃなかった…と、
後悔が脳裏に浮かぶが今更時は戻せない






暫くは石田がガチャガチャと荷物を整理する音や、テレビの雑音が響いていたが

やがて無音になり本当に眠気が襲ってくる




















月が傾きを増した深夜











ベッドのスプリングがキシリと音を立て、少し沈んだ気がした













「鞘師さん、」




「私、鞘師さんと一緒の部屋になりたかったんです。」




「だから、今日…
最後まで部屋のペアが見つからないメンバーを探して…
きっと、鞘師さんと同部屋なんだと思って…」




「代わってもらったんですよ…」











「鞘師さん」





「石田は可笑しいんですかね」











投げ出した手に薄く温もりを感じる









夢か誠か





お互いがお互いの気持ちを知る日は
そう遠くない











初夏の深夜2時の事だった

























後書_


これは明け方のテンションで
2hくらいで書いた一作目

恥ずかしくて読み返せない

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