やるドラ!第二回。

July 09 [Sat], 2011, 7:10
山の中の誰もいない夕暮れ時の展望台、そこで1人動かないバイクの脇で途方に暮れていた男。重たいバイクを押して山を下ろうと決心したその時、不意にかけられた声。ふと振り返った男は思わず絶句した。そこに居たのは、山奥に相応しくないママチャリに乗った、20歳前後の女性だった。服装も近所に買い物にでも行くかのようなラフなもので、短パンにTシャツといった出で立ちだったが、それが逆に健康的で、好印象を与えていた。が、男が絶句したのはその場違いな出で立ちではなく、顔の方だった。女性が小首を傾げると、男は思わず小さく呟いた。ユキえもう一度、彼女は首を傾げた。あいや、ゴメンはぁ山奥にヒグラシの鳴き声と風にざわめく木の葉の音が響き渡る。二人とも、話すきっかけを逸し、向かい合ったままお互いを見合った。あの妙な静寂を突き破ったのは彼女の方だった。はいもう日がくれますそろそろ山をお降りになった方がいいかと思いますがえあはぁあの、私、この近くの集落でやってる、地域パトロールでちょっと見回ってましてこの辺って、その、自殺の名所でしょだから、あの俺、自殺しそうに見えたえいえあのちょっと困った表情で狼狽える彼女を見て、男は少し笑みを浮かべた。別に相手を困らせて喜んでいるのではない。久々に人と会話ができたことに少し心が和んだ。大丈夫だよ俺ははぁ、すいません謝ることはないよでも、そんな俺、ヤバかったえいえなんか、凄く思い詰めていて、別の世界の人みたいな雰囲気があって別の世界あ、すいません、変なこと言って男は妙に納得したように表情を緩めた。確かに、別の世界に行ってたかもね人と喋ったのも久しぶりだすると、彼女は自転車を押して、男の近くに寄ってきた。悩み事ですかまぁ彼女は自転車を置くと、バイクを見た。男の人ってバイク好きですよねえ何か嫌なことあったらエンジンふかして周りの音かきけして、知らない場所へ逃げていく逃げるかそうかもなあ、ごめんなさいそういうもりじゃ今の私の彼の話でこんなところでする話じゃなかったですよねいや俺も同じようなものだよあのさっき私の事ユキって呼んでましたけどもしかしてあ、いや、あれは似てたからアイドルのユキにユキってもしかしてこの間自殺したあぁゴメン、気分悪いよないえ好きだったんですかいや、友達がなまぁ、俺もその友達にられて、そこそこ好きにはなったけどすると女がくすりと笑った。それで、憧れのアイドルさんのそっくりさんに出会った感想はあのねぇでも良かった自殺するかもっていうのが私の早とちりでそうだね男はふと寂しげに笑って呟いた。もし、ここで話しかけてもらえなかったら、いずれ自殺してたかもしれないねえさっきまで、本当に俺は別の世界にいたからさ誰とも関わらない、誰とも喋らない、そんな生活をしばらくしてたからねゴメン、こんな事、いきなり喋られても迷惑だよねすると、彼女はバイクに寄りかかり、じっと男を見た。話してえあなたの悩み事何で不安定な気持ちで、この乗り物には乗って欲しくないのいぶかしげに見る男。彼女は少し思い詰めたように俯いて、呟いた。私の彼も、そういう気持ちでこれに乗って危ないからもう少しバイクに乗るの控えてっていも言ってたのに、あの人はそんな私の心配なんかよそにバイクにのめり込んで私、止めてあげられなかったのいかなるんじゃないかって思ってたのに本当、人の気持ちって、すれ違いばっかりだよねあぁ本当にそう思うよえ男はそう言うと、バイクのキーを抜き、キーホルダーを見めて呟いた。キーホルダーには一本の別のバイクのキーがけられていた。俺とアイツは高校時代からヤンチャしてて、よく、学校サボってはバイク乗り回してたんだあの頃はアイツの事、最高のパートナーみたいに思えてたんだよけど、いの頃からかアイツはユキにのめり込み始めて別に俺はそれをどうこう言うもりはなかった俺もアイツに誘われて、こういうのもいいなって思ったりもしたしでも、アイツの想いは想像以上に大きくて、彼女が自殺したあと、アイツも後を追って男は、一旦息を吐いて空を見上げた。空には宵の明星が輝き出していた。空を見上げ、頭の中を整理する間、彼女はじっと男を待った。俺ってなんだったんだろうって思ったよそうそれを考えると、無性に虚しくてね思わずここまで逃げてきた人と人なんて、どう頑張っても、わかりあえるものじゃないかも知れないねわかりあっているフリしかしてないのかも遺された方は辛いよね逆に、先に逝った方が辛いよっていう声も聞こえてきそうだ男と女は一瞬顔を見合わせて笑った。ありがとう男が呟く。こちらこそ、ありがとう彼女が微笑む。もう、1人で帰らせても大丈夫かななんだかなぁ、その上から目線私が話しかけてあげたから今笑えてるんでしょったくじゃあ私、帰るねぁすると、彼女は乗ってきたママチャリに手をかけて、ゆっくりと歩き出した。その後ろ姿を見て、男はとても名残惜しさを感じた。そしてあのはい彼女はやけに明るい声で振り返った。いやガソリンスタンドこの辺にあるかな帰りたいけどガソリン空になっちゃってえあ、はいうちの近くにじゃあ、案内してくれますかもちろんその時の彼女の顔はまんべんの笑みだった。そして、彼女は少し恥ずかしげに、呟いた。あのうちに泊まっていきませんかえもうこの時間じゃスタンド閉まってますし宿もこの辺ないしえここでラストクエスチョン。さて、あなたならこの誘い、受けますか断りますか回答を複数頂いた場合は多数決にしますこれでラストが決まります良かったらもう少しお付き合いください
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