伝染性紅斑 

July 30 [Mon], 2007, 19:10
伝染性紅斑

伝染性紅斑(第5病)とは感染性のウイルス感染症の1つで、しみのような、あるいは隆起した赤い発疹ができて、やや具合が悪くなります。

伝染性紅斑はヒトパルボウイルスB19が原因で起こりますが、春に最もよく発症し、しばしば限られた地域の子供と青年期の若者の間に流行します。この感染症は主に、感染している人が呼吸の際に吐き出した飛沫を吸うことで広がります。妊娠中に母親から胎児に感染することもあり、その場合まれですが、胎児に死産や重症の貧血、水分貯留と腫れ(浮腫)を引き起こします(水症)。

症状は感染してから約4〜14日後に現れはじめます。症状はさまざまで、まったく症状がない子供もいます。しかし、伝染性紅斑の子供は通常、微熱があり、少し気分がすぐれず、しばしばたたかれた後のようにほおが赤くなるなどの症状が現れます。1〜2日以内に発疹が現れ、特に腕、脚、胴体に多くみられますが、手のひらや足の裏には通常できません。発疹はかゆみを伴い、隆起してしみのように赤い部分やレース模様の部分があります。発疹は日光にあたると悪化することがあるので、特に衣類で覆われていない腕の部分にできます。

伝染性紅斑

この病気は一般に5〜10日間続きます。その後数週間は、日光、運動、暑さ、発熱、感情的ストレスなどに反応して、発疹が一時的に再発することがあります。青年期の若者では、関節に軽度の痛みと腫れが残ったり、数週間から数カ月の間、これらの症状が出たり消えたりすることがあります。

伝染性紅斑は、特に鎌状赤血球症や後天性免疫不全症候群(エイズ)などの免疫不全疾患にかかっている子供では、違った形で現れることがあります。ウイルスが骨髄を侵して、重い貧血を引き起こす場合があります。

診断は、特徴的な発疹の外見に基づいて行います。血液検査はウイルスを特定するのに役立ちますが、ほとんど行いません。治療では発熱と痛みを和らげることを目指します。

水ぼうそう 

July 30 [Mon], 2007, 19:06
水ぼうそう

水ぼうそう(水痘)とは水痘帯状疱疹(すいとうたいじょうほうしん)ウイルスによる感染力が強い感染症の1つで、小さくて隆起した水疱やかさぶたなどから成る特徴的なかゆみのある発疹が生じます。

水ぼうそうは非常に感染力の強い病気です。1995年にワクチンが登場するまでは、子供の約90%が15歳までにこの病気にかかりました。現在では、ワクチンの使用により年間の水ぼうそう患者数は約70%も減少しました。この病気は、水痘帯状疱疹ウイルスを含んだ飛沫の空気感染により広がります。水ぼうそうの患者は症状が現れた直後が最も感染力が強いのですが、最後の水疱がかさぶたになるまで感染力はあります。

水ぼうそうの患者の多くは皮膚と口の中に潰瘍ができるだけですが、ウイルスはときに肺、脳、心臓、関節に感染することがあります。このような重症の感染症は、新生児、成人、免疫機能が低下した人によくみられます。

水ぼうそうにかかったことのある人は免疫ができ、再度かかることはありません。しかし水痘帯状疱疹ウイルスは、水ぼうそうで最初に感染した後は体内に潜伏し、ときどき再活性化して帯状疱疹を起こします。

症状と診断

症状は感染してから10〜21日後に現れます。症状は軽い頭痛、中等度の発熱、食欲低下、全身のだるさ(けん怠感)などです。幼い子供にはこれらの症状はあまり現れないことが多いのですが、成人ではしばしば症状が重くなります。

最初の症状が現れてから約24〜36時間後に、小さくて平らで赤い発疹が現れます。この発疹は通常、胴体と顔にまず現れて、その後腕と脚に現れます。発疹がごくわずかしかできない子供もいますが、そのほかの子供ではほとんど体中にでき、頭皮や口の中にもできます。6〜8時間にわたって各発疹は隆起しはじめ、赤い皮膚を背景にかゆみのある円形で液体のつまった水疱を形成し、最終的にはかさぶたになります。発疹は数日間でき続けてはかさぶたになっていきます。発疹に細菌が感染すると(細菌による皮膚感染症: はじめにを参照)、丹毒、膿皮症、蜂巣炎、水疱性膿痂疹(すいほうせいのうかしん)を起こします。新しい発疹は通常5日目までにはできなくなり、ほとんどが6日目までにかさぶたになって、大半は20日たたないうちに消えます。

水痘

口の中にできた発疹は、すぐに破れてヒリヒリ痛むただれ(潰瘍)になり、しばしばものを飲みこむ際に痛みます。痛みのあるただれはまぶた、上気道、直腸、腟(ちつ)にもできます。声帯と上気道の発疹がときに重い呼吸困難を引き起こすことがあります。首の横にあるリンパ節が腫大し、さわると痛むこともあります。この病気の最悪な時期は4〜7日間続きます。

400人に約1人の割合で肺感染症が起こりますが、これは特に青年期の若者と成人に起こり、せきと呼吸困難を生じます。脳の感染症(脳炎)はあまりみられませんが、これが起こると歩行のふらつき、頭痛、めまい、錯乱、けいれんが生じます。心臓の感染症はときどき心雑音を引き起こします。関節の炎症は関節の痛みを起こします。

ライ症候群はめったに起こりませんが、非常に重症の合併症で、ほとんどが18歳未満の子供にのみ発症します。水ぼうそうの発疹が出はじめてから3〜8日後に起こることがあります。

水ぼうそうの発疹やそのほかの症状は非常に特徴的なので、医師は通常診断に確信をもっています。血液中の抗体価の測定やウイルスを特定するための検査はめったに必要ありません。

予防

米国では、子供は12カ月齢から水痘・帯状疱疹に対する定期予防接種を受けます(乳児と小児の予防接種スケジュールを参照)。水痘・帯状疱疹に対する免疫がない人は、だれでも予防接種を受けられます。免疫機能が低下している人や妊婦など合併症にかかるリスクが高い人、水ぼうそうにかかっている人と接触した人は、水痘帯状疱疹ウイルスに対する抗体(水痘帯状疱疹免疫グロブリン)を投与されることがあります。感染した人を隔離すると、水ぼうそうにかかったことのない人への感染の拡大を防ぐのに有効です。

経過の見通しと治療

健康な子供はほぼ例外なく、問題なしに水ぼうそうから回復します。この病気で死亡する子供は10万人に約2人だけです。しかしこのような低い割合でも、定期予防接種を受ける前に水ぼうそうの合併症で死ぬ子供が米国では年間に100人いるということを意味します。この感染症は成人でより重症であり、10万人のうち約30人が死亡します。免疫機能が低下している人の15%までが水ぼうそうで死亡します。

軽症の水ぼうそう患者の場合、必要なのは症状に対する治療だけです。皮膚に湿布をあてることは、皮膚のかゆみが強くなるのを和らげ、引っかいて感染を広げ瘢痕を残すことがないよう予防するのに役立ちます。細菌感染症のリスクがあるため、皮膚はせっけんと水で頻繁に洗う、手は清潔に保つ、爪は引っかき傷をつくらないようにできるだけ短く切る、衣類は清潔で乾いた状態に保つ、などを心がけます。抗ヒスタミン薬などのかゆみを軽減する薬剤を内服することもあります。細菌感染症が起きたときには、抗生物質による治療が必要です。

アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルなどの抗ウイルス薬を、早産児と免疫機能障害のある子供など合併症の高リスク群はもちろん、青年期の若者と成人にも投与することがあります。これらの薬剤で効果を得るには、発症から24時間以内に投与しなくてはなりません。これらの抗ウイルス薬は妊婦には用いません。

中枢神経系の感染症 

July 30 [Mon], 2007, 18:59
中枢神経系の感染症

中枢神経系の感染症はきわめて重症の感染症です。髄膜炎は脳と脊髄(せきずい)を覆っている膜を侵します。脳炎は脳そのものを侵します。

中枢神経系(脳と脊髄)に感染症を起こすウイルスには、ヘルペスウイルス、アルボウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、エンテロウイルスなどがあります。これらの感染症の一部は主に髄膜(脳を覆っている組織)を侵し、髄膜炎を起こします。そのほかは主に脳を侵し、脳炎を起こします。髄膜と脳の両方を侵すウイルスも多く、その場合は髄膜脳炎を起こします。子供では髄膜炎の方が脳炎よりずっと多くみられます。

ウイルスは2つの方法で中枢神経系に影響を与えます。急性疾患では、ウイルスは直接感染して細胞を破壊します。この感染症から回復した後に、感染症に反応する体の免疫が神経周囲の細胞に二次的な損傷を引き起こすことがあります。この二次的損傷(感染後脳脊髄炎)により、子供には急性疾患から回復した数週間後に症状が現れます。

子供はさまざまな経路からウイルスに感染します。新生児は産道で感染した分泌液と接触して、ヘルペスウイルス感染症を発症する可能性があります。そのほかのウイルス感染症は、感染者から排出されたウイルスを含む飛沫で汚染された空気を呼吸により吸いこんで感染します。アルボウイルス感染症は、感染した昆虫に刺されることで感染します。

年長の小児と青年期の若者におけるウイルス性の髄膜炎と脳炎の症状と治療は、成人の場合と似ています(脳と脊髄の感染症: ウイルス感染を参照)。新生児と乳児は免疫系が発達途上なので、異なった感染症が起こる場合があります。また乳児は、自分の症状を直接伝えることができないので、症状を理解するのが難しくなります。通常、乳児が中枢神経系の感染症にかかった場合は、以下に挙げるような症状の一部が現れます。

症状

新生児と乳児では、ウイルスによる中枢神経系の感染症は普通発熱から始まります。新生児ではほかの症状が出ないことがあり、初期段階ではそれほど具合が悪そうにもみえません。生後1カ月以上かそれくらいの乳児は典型的には神経過敏で落ち着かず、授乳を拒みます。嘔吐もよくみられます。髄膜への刺激は体を動かすと悪化するので、髄膜炎の乳児は抱き上げて揺すると、おとなしくならずにかえって泣くようになります。奇妙な高い声で泣くようになる乳児もいます。脳炎を起こした乳児は、しばしばけいれんや異様な動きをみせます。単純ヘルペスウイルスによる感染症はしばしば脳の一部分にだけ集中して起こり、症状としてけいれんや脱力が体の一部分にだけ現れることがあります。重症の脳炎を起こした乳児は不活発になり昏睡(こんすい)に陥り、やがて死亡します。

感染後脳脊髄炎は損傷を受けた脳の部位によって、さまざまな神経学的問題を生じます。子供には腕や脚の筋力低下、視力や聴力の喪失、精神遅滞、あるいは再発性のけいれんなどがみられます。これらの症状は、検査に反応できる年齢に子供が達するまで明らかにならないことがあります。たいていの場合、症状はいずれ消えますが、ときにはずっと残ることもあります。

診断

発熱、神経過敏、正常ではない行動がみられる月齢の高い乳児と同様に、熱のあるすべての新生児について、医師は髄膜炎や脳炎の可能性を念頭に置きます。これらの乳児には、脊髄穿刺(腰椎穿刺)(脊椎穿刺の実施方法を参照)を行って脳脊髄液(CSF)を採取し、検査に出します。ウイルス感染症では、脳脊髄液中のリンパ球(白血球の1種)数は増加していますが、細菌は見つかりません。脳脊髄液サンプル中のウイルスに対する抗体を検出する免疫検査を行う場合もありますが、これらのテストは結果が出るのに数日かかります。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法という技術も、ヘルペスウイルスやエンテロウイルスなどの病原体を特定するのに使われます。

脳波の検査(脳電図)(脳、脊髄、神経の病気の診断: 脳波検査を参照)は、ヘルペスウイルスによる脳炎を診断するのに役立ちます。非常にまれですが、ヘルペスウイルスが原因であるかどうかを特定するために、脳組織の生検が必要となることもあります。

経過の見通しと治療

経過の見通し(予後)は、感染症のタイプによりかなり異なります。ウイルスによる髄膜炎と脳炎の多くは軽症で、子供は短期間で完全に回復します。そのほかのタイプは重症です。単純ヘルペスウイルスによる感染症は特に重篤です。治療をしても、単純ヘルペスウイルスによる脳の感染症にかかった新生児の15%は死亡します。ヘルペス感染症が、脳と同様に体のほかの部位にも発症した場合は、死亡率が50%と高くなります。生き残った子供のほぼ3分の2に、何らかの永久的な神経障害が残ります。

大半の乳児で必要なのは、温かくして水分を十分に与えるなどの補助的なケアだけです。抗ウイルス薬は中枢神経系の感染症の多くにほとんど効果がありません。しかし、単純ヘルペスウイルスによる感染症は、アシクロビルの静脈投与で治療できます。

川崎病とは 

July 30 [Mon], 2007, 18:52
川崎病とは

川崎病とは、全身の血管壁に炎症が起こる病気です。この原因は不明ですが、ウイルスあるいはそのほかの感染性生物の関与を疑わせる証拠があります。心臓の血管の炎症は、最も深刻な問題を引き起こします。

川崎病にかかる子供の大半は2カ月齢から5歳ですが、青年期の若者がかかることもあります。概して男児は女児のおよそ2倍多くかかります。この病気はアジア系の子供により多くみられます。米国では毎年、数千例の川崎病が発症すると推測されます。

この病気は、通常約39℃以上の発熱で始まり、熱は1〜3週間にわたって上がったり下がったりします。1日以内に、赤くむらになった発疹が、通常は胴体とおむつの部分の周囲に現れます。数日以内に、口や腟の内側などの粘膜に発疹が現れます。子供ののどは赤くなり、唇も赤くなって、乾き、ひび割れます。舌はイチゴのように赤くなります。眼も赤くなりますが、分泌物はありません。また、手のひらと足の裏も赤か紫がかった赤になり、手や足はしばしば腫れます。病気が始まってから10〜20日後に、手指と足指の皮膚がむけはじめます。首のリンパ節もしばしば腫れ、軽い圧痛がみられます。

通常、病気が始まってから2〜4週間後に、約50%の子供では心拍が速まったり不規則になるなど心臓にも症状が現れます。心臓の問題を伴う子供の半数では、最も重篤な心臓の症状である冠動脈瘤(冠動脈の壁にできる隆起)が現れます。これらの動脈瘤は破裂したり、血栓を引き起こし、心臓発作や突然死の原因となります。そのほかの症状としては、脳を覆う組織(髄膜炎)、関節、胆嚢の炎症があります。これらの症状は永久的な障害を引き起こすことなく、いずれは治癒します。医師は冠動脈瘤をみつけるため、心臓の超音波検査を行います。

病気の最初の8週間以内に冠動脈が侵されなかった場合、子供は完全に回復します。冠動脈に問題がある場合、生存率は病気の重症度により異なりますが、治療を施しても川崎病で死亡する子供は全体の0.05〜0.1%です。このうち、大半は最初の数カ月間に亡くなりますが、数十年たってから亡くなる例もあります。動脈瘤の約半数は、1〜2年以内に治ります。残りの半数は永久的に残ります。動脈瘤が治った子供でも、成人期に心臓障害を引き起こすリスクが高くなる場合があります。

症状が出て10日以内に治療を行った場合、冠動脈障害のリスクは明らかに減り、発熱、発疹、不快感もすみやかに解消します。1〜4日間は、大量の免疫グロブリンを静脈内投与し、大量のアスピリンを経口投与します。熱が下がったら、より低用量のアスピリンを通常は数週間から数カ月間続けます。子供がインフルエンザか水ぼうそうにかかった場合は、ライ症候群のリスクを減らすため、一時的にアスピリンの代わりにジピリダモールを用います。

大きな冠動脈瘤がある子供は、抗凝固薬による治療を行うことがあります。一部の子供では、冠動脈血管形成術、ステント留置、冠動脈バイパス術などが必要になる場合もあります。

ウイルス感染症 

July 30 [Mon], 2007, 18:40
ウイルス感染症

はじめに

子供はさまざまなウイルス感染症によくかかります。子供のウイルス感染症の大半は重症ではなく、たいていは治療をしなくても治ります。多くのウイルス感染症は症状が特有なので、医師は症状に基づいてそれらを診断することができます。たいていの場合、原因となるウイルスを特定する検査は必要ありません。

ウイルス感染症の大半は、発熱、体の痛み、不快感を伴います。このような症状の子供や青年期の若者にはアスピリンは投与しません。なぜならアスピリンは、ウイルス感染症の可能性のある人にライ症候群を引き起こすリスクを高めるからです。代わりに、アセトアミノフェンかイブプロフェンを投与します。ウイルス感染症は、軽症のもの(たとえばかぜ)から命にかかわるもの(たとえば脳炎)までさまざまです。子供が重い感染症にかかっている可能性があり、すぐに治療が必要かどうかは一般に親も見分けることができます。このことは、幼児期以降は特にあてはまります。

ライ症候群とは

ライ症候群は非常にまれですが、脳の炎症と腫れ、および肝臓の変性を引き起こし、命にかかわる病気です。

ライ症候群の原因は不明ですが、インフルエンザや水痘(水ぼうそう)などある種のウイルスによる感染症の後に発症するのが典型的で、特にアスピリンを服用している子供にみられます。アスピリンはこのようにライ症候群のリスクを高めるので、少数の特定の疾患の治療を除いては、子供には勧められません。今日では、主としてライ症侯群の引き金となる可能性があるという理由から、アスピリンの使用は減少していて、この病気を引き起こす子供は年間12人を下回っています。ライ症候群は、主に4〜12歳の子供に、晩秋から冬にかけて起こります。

ライ症候群は上気道感染症、インフルエンザ、水ぼうそうなどのウイルス性感染症の症状とともに始まります。4〜5日後に、子供は突然ひどい吐き気と嘔吐を起こします。その日のうちに、子供は混迷状態になって、続いて方向感覚の喪失、興奮状態などが生じ、ときにけいれん、昏睡、死に至ります。肝臓の変性は、血液凝固の問題と出血を起こすことがあります。病気の程度には非常に幅があります。

経過の見通し(予後)は脳の腫れの程度によります。子供が死亡する可能性は全体で約20%ですが、病気が軽症だった子供の2%未満から、深い昏睡に陥った子供の80%以上まで幅があります。

この病気の急性期を乗り越えた子供は、普通は完全に回復します。より症状が重かった子供には、後に精神遅滞、けいれん発作、異常な筋肉運動、特定の神経損傷など、脳障害のいくつかの徴候が現れます。子供がライ症候群に2回かかることはまれです。

ライ症候群には特別な治療法はありません。子供は集中治療室におかれます。出血予防のために、ビタミンKや新鮮凍結血漿を投与します。マンニトール、コルチコステロイド薬、バルビツレートなどの薬剤を、脳内の圧を下げるために使うことがあります。

子供によくみられるエンテロウイルス感染症

エンテロウイルスには、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、そのほかのウイルスなど数多くの種類があります。米国では、これらのウイルスが原因の病気が毎年1000万〜3000万人にみられ、主として夏と秋に発生します。これらの感染症は感染性が高く、典型的には地域社会で大勢の人に感染し、ときには流行の規模にまで達します。エンテロウイルスによる感染症は子供に最もよくみられ、特に衛生状態の悪い環境に住む子供にみられます。

この感染症は、ウイルスに汚染したものを飲みこんだときに始まります。ウイルスは消化管の中で増殖します。体の免疫機能はこの段階で多くの感染症を阻止します。この結果、症状はわずかしか出ないか、まったく現れません。ときどき、ウイルスは生き残り、血流に入って広がり、発熱、頭痛、のどの痛み、嘔吐などを引き起こします。このような症状はしばしば「夏かぜ」と表現されますが、これらはインフルエンザではありません。一部のエンテロウイルス株は、皮膚にかゆみを伴わない発疹や、口の中にびらんを生じます。このタイプの病気が、エンテロウイルス感染症としては圧倒的によくみられます。まれですが、エンテロウイルスがこの段階からさらに進んで、特定の臓器を侵すことがあります。このウイルスは多くの異なる臓器を攻撃する可能性があり、病気の症状と重症度は感染した臓器により異なります。エンテロウイルスにより引き起こされる病気は数種類あります:

手足口病

は皮膚と粘膜を侵し、痛みを伴うびらんが口の中と手、足に生じます。
ヘルパンギーナ
も皮膚と粘膜を侵し、痛みを伴うびらんが舌とのどの後ろ側に生じます。
無菌性髄膜炎
は中枢神経系を侵し、ひどい頭痛、首のこわばり、光感受性を引き起こします。
脳炎
は錯乱、脱力、けいれん、昏睡を引き起こします。
麻痺性疾患
ではさまざまな筋肉が筋力低下に陥ります。
心筋炎
は心臓を侵し、激しい活動の際に呼吸が弱まって短くなります。
流行性胸膜痛
は筋肉を侵し、痛みを伴う断続的な筋れん縮が下部胸壁(成人の場合)や上腹部(子供の場合)に起こります。
急性出血性角膜炎
は眼を侵し、眼は痛みを伴い、充血し、涙っぽくなります。結膜下で出血し、まぶたが腫れます。

エンテロウイルス感染症は普通は完全に治りますが、心臓や中枢神経系の感染症はときに致死的になります。治療法はありません。治療は症状を和らげることを主眼に行います。