ジェイムズ・P・ホーガン 『星を継ぐもの』 レビュー(ネタバレ無し) 

April 01 [Mon], 2013, 15:55
【星雲賞受賞作】
月面調査員が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。綿密な調査の結果、この死体は何と死後五万年を経過していることがわかった。果たして現生人類とのつながりはいかなるものなのか。やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見された……。ハードSFの新星が一世を風靡した出世作。


・レビュー

SFとして、あるいはミステリとして十分に面白い。
ただし、解説にもあるように小説としての欠陥があるという意見は非常に的を射ている。というのも私は小説には二通りあると思っていて、それはすなわち「情報開示や種明かし」に重きを置くものと、「ストーリーやキャラクター」に重きを置くもの。私は個人的にはこの両者がふんだんに用いられるのがSFとミステリであるように思う。
ミステリの謎解きは意外性からくる面白さがあるしSFの知的解説は読者の知的好奇心を満たす面白さがある。完全に区別されるわけではなく面白さは視点によって違うということ。
その点から考えるとこの小説はストーリーやキャラクターを際だたせるよりは、終始科学的な説明の面白さだとか、僅かな情報から仮説を導いてそこから更に謎が増えてまた仮説が出て、最後に伏線を回収して一つの答えを出す、というような情報開示的な側面が強かった。
解りやすく言えば、古典ミステリのような論理的な要素が多かった。最近の「心の描写」にこだわったミステリのようなストーリー性よりも、古典ミステリのトリックと理詰めの論理が多い、みたいな感じ。
しかし、だからといってつまらないわけではなく、ストーリーやキャラクターが軽い分、古典SFや古典ミステリのような知識と情報の伏線回収、謎が謎を呼ぶミステリ的展開、この二つは非常に面白かった。後半は一気に読んでしまうくらい仮説が次から次に出てくる。流れるようなストーリーがなくとも、「ひとつの事件の報告書」を読んでいるような綺麗な論理の流れが在るため面白い。
終わり方も中々に印象深かった。
P R
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