嫉妬

September 23 [Wed], 2015, 16:44
翌日になると、ようやくエゲレア王城も落ち着きを取り戻した。
 午前中は、城内のエゲレア国貴族全員が集められ、クズマ伯爵によると現状の説明と今後の方針を聞かされたそうだ。
 そして昼前。
 今度は仁達魔法工作士マギクラフトマンまで含めた招待客を含む全員が集められた。
 まず最初に、今回の騒動は『統一党ユニファイラー』の仕掛けたものであったこと、セルロア王国特使のドミニクがその直接の犯人だったこと、エルラドライトを使い、大規模な攻撃を仕掛けたこと、その対策が既に存在し、今後各国にその技術を伝える用意があること、などの発表が行われる。
 そして最後にゴーレム園遊会パーティーの締めくくり。OB蛋白痩身素(3代)

「予想外の事件のため遅れてしまったが、王子アーネストのために集まってくれた諸君に礼を言うと共に、持ち寄ってくれたゴーレムに対する評価を発表したい」
 国王陛下の言葉に、その場にいる全員が深く頭を下げる。
 そして、内務卿ウィリアムがそれの後を引き継ぎ、結果が発表された。
「一位、アーネスト殿下お気に入りゴーレム、『ロッテ』。二位、惜しくも壊れてしまったが、その見事な造形で目を楽しませてくれたクリスタルゴーレム、『セレス』」
 皆納得の順位である。
 そして三位は黒騎士シュバルツリッター。四位以下は無かった。今回は致し方あるまい。
「『ロッテ』を献上してくれたブルーランド領主補佐にして西部地区長官、クズマ伯爵には領地の加増、そして製作者の魔法工作士マギクラフトマン、ジンには褒美を与える」
 仁も貰えるようだ。これは礼子の件とは別である。
「『セレス』製作者である魔法工作士マギクラフトマン、ステアリーナ殿にも感謝を表したい」
 ステアリーナもなにがしか貰えるようである。
「そして黒騎士シュバルツリッター製作者でありショウロ皇国外交官、ラインハルト殿にも同様、感謝申し上げると共に礼物を進呈させていただく」

 エゲレア王国側からの賛辞が述べられ、報奨が発表されていく。
 だがエルザは今日も朝から浮かない顔をしていた。それに気付いたラインハルトは、
「エルザ、気分でも悪いのか?」
 と小声で尋ねる。が、エルザは無言で首を振った。
「そうか、ならいいが……」

 仁が貰った褒美は、エゲレア王国の『名誉魔法工作士オノラリ・マギクラフトマン』の称号と、ごくごく小さいエルラドライトの嵌った徽章であった。
 国が全て管理しているエルラドライトを贈られるという事は、エゲレア王国では国賓に準ずる待遇と言える。要はそれだけ信用・信頼のある人物という事。
「ジン、これから大変だぞ……」
 各国、こぞって仁を欲しがるに違いない。ラインハルトのその呟きを耳にしたエルザはその時だけ俯いていた顔を上げた。

      

「あー、疲れた」
 迎賓館の自室でベッドに横たわり、仁はぼやいていた。堅苦しい場は苦手である。
 その時ノックの音が。どうぞ、と仁が言い、礼子がドアを開けた。仁は身体を起こし、ベッドに腰掛けて迎える。はっきり言って行儀悪い。
「失礼します」
 そう言って入って来たのは王宮隠密侍女隊ロイヤルシークレットメイドのライラだった。仁の監視を兼ねて付けられているはずだが、例のゴーレム騒動以来、時々いなくなっている。
 で、今度はわざわざノックをして入室してきたのだ。
「あ、あの、短い間でしたが、ご面倒おかけしました!」
 そのライラは開口一番、そう言った。
「え? 短い間?」
「は、はい! 今日ただ今をもちまして、ジン様の行動監視任務を解かれました!」
『名誉魔法工作士オノラリ・マギクラフトマン』の称号を受けるような人物に監視を付けるというのは礼を失している、ということだ。
 仁もそれは察する事が出来た。それで、
「ああ、そうか。今までご苦労さま」
 と労いの言葉を掛ける。
「はい、いろいろ到らないところがあったと思いますが、お許し下さい」
 まあ監視がちゃんと出来ていたかはわからないが、侍女としては75点くらいはとれているだろう。仁がそう言うと、
「あ、ありがとうございます!」
 感激したように顔を赤らめ、そう言った。そしてもう一度深くお辞儀をして、
「それではお名残惜しいですがこれで失礼致します」
 そう言って去っていった。ドアを閉め忘れて。
「……70点に減点」
 開きっぱなしのドアを礼子が閉めるのを見、苦笑しながら仁はそう呟いたのだった。

      

「エルザ、本当にいったいどうしたんだ?」
 迎賓館に引き上げた後、ラインハルトは気になってエルザの部屋を訪れていた。
「……ライ兄」
 何となく潤んだ目をしたエルザは、俯せにベッドに横たわり、顔だけ上げてラインハルトを見、重い口を開いた。そして語る。昨夜盗み聞いた仁とステアリーナの会話を。排毒養顔
「……ふうん」
「……それから何だかもやもやして変。どうして?」
 その時、黙って聞いていたミーネが口を開きかける。
「お嬢様はジン様の事を……」
 だがラインハルトはそれを遮り、
「黙っていろ、ミーネ。……エルザ、ジン達が何をやっていたのか見当は付いているのか?」
 と尋ねる。エルザは首を振ってそれを否定。
「……わからない。なんだか仲良さそうだなあと思った。あ、それからジン君には珍しくステアリーナさんに教わっているような雰囲気があった」
 それを聞いたラインハルトは結論を口にする。
「エルザ、それは『嫉妬』という感情だよ」
「しっと?」
 顔を上げたエルザが復唱するように呟く。
「ああ。お前は昔から、お前の兄君達、そして僕と遊んでいただろう? その時お前は、他の子供が兄君や僕と仲良くしていると拗ねて不機嫌になったものだ」
「…………」
 黙って聞いているエルザ。
「同じだよ。お前はジンが他の女性と仲良さそうに話していたから妬いているんだ」
「そんな、こと」
「無いと言えるか?」
 そう言ってラインハルトは横になったエルザの頭をそっと撫でる。
「そんなところ、幾つになっても変わらないな。気になったなら直接聞いてみればいいのに、そうやって内に籠もる。まったく、お転婆の癖に妙に臆病なんだから」
 そう言いながらもラインハルトの声音は柔らかく、頭を撫でるその手は優しい。
「今日で17だろう? なのにまだまだ子供だな」
 そう言ったラインハルトの手を押しのけて、
「……もう子供じゃない」
 そう言って起き上がるエルザであった。
「よし、その調子だ。いいか、相手の事を思いやれる。それが大人ってものだ」
「あいての、こと……」
「そうだ。お前、『アルバス』が襲ってきた時、真っ先にジンをかばったじゃないか。あの時の気持ちを思い出せ」
「…………」
「ジンにはこの後僕が確かめてきてやる」
 そう言ってラインハルトはエルザの部屋を出ていったのである。

      

 ラインハルトが仁の部屋を訪れると、
「ラインハルト、いいところに。今、訪ねていこうと思っていたんだ」
 仁がそう言った。そして、
「今日、エルザの誕生日だったよな?」
 と確認する。ラインハルトが頷くと、
「以前、ボルジアを見て回った時、エルザが短剣を欲しがっていたんだが、誕生日に短剣を贈るってどうなんだ?」
 と聞いた。やはりステアリーナの話だけでは不安だったようだ。そしてそれを裏付けるように、
「うーん、他人が贈る事はあまりないかな。大概は親族、家族が贈るなあ。だが、贈ってはいけないわけではない」
「そう、か」
 仁にしてみれば微妙な答であった。仁はしばらく頭をひねっていたが、
「それならラインハルト、頼みがある」
 そう言って一振りの短剣を差し出し、
「ラインハルトならエルザの親族、これを渡してもおかしくないだろう?」
 それを受け取ったラインハルト、その鞘、柄に施された見事な造形に驚き、更にそれを抜き放ってみて、ミスリルの輝きに驚嘆する。
「ジン、もしかしてこれ、君が作ったのかい?」
 仁が肯くと、
「ううむ、君はよほど創作の神に愛されているんだな。素晴らしい、見事な意匠だ。ちょっと真似できない」
 と褒めちぎるラインハルトだが、仁は頭を掻き、
「いや、実はデザインはステアリーナにやってもらったんだ」
 と告白した。それを聞いたラインハルトは、仁の部屋を訪れた目的を思い出し、
「そう言えばジン、昨日の夜、ステアリーナ殿と何かやっていたようだな?」
 とさりげなく問うてみる。そう聞かれた仁は困ったような照れたような顔をして、
「まいったな、廊下まで聞こえていたか? ああ、俺ってデザインが致命的に苦手なもので、素材を探していた時にステアリーナに出会ったんで相談に乗って貰ったんだ」
 と答えた。そしてエルザには内緒にな、と付け加える。
 それを聞いたラインハルトはそんなところだろう、と内心頷いた。よく考えてみれば、礼子という小姑(?)が付いているのだ。そうそう仁に色仕掛けが成功するとは思えない。
 心の中で安堵の溜め息をついたラインハルトは晴れやかな顔で、
「よし、短剣については引き受けた」
 そう言って仁の肩を叩いたのである。大印象減肥茶

誤解
 夕食後、仁は再度瓦礫置き場へ。
 管理人に素材を単体まで分離したことを伝えたらびっくり仰天し、大慌てで上司に伝えたらしく、そこには魔法相ケリヒドーレと、もう1人身分の高そうな貴族が既に来ていた。
「おお、そなたがジン殿か。担当の者から聞いたが、これを分離してくれたのだな?」
 と名前を知らない方の貴族が仁に声をかけてきた。見れば、歳は40代くらい、やや薄くなった髪をオールバックにしている痩せて背の高い人物である。彼は仁に向かって、
「私はこの国の内務相を務めておるウィリアムというものだ」
 と名乗った。
「え、ええ。そのことでケリヒドーレ大臣にお断りしておかなければならないことが」
「なんだね?」
 そこで仁はポケットからエルラドライトを出し、
「これ、ドミニクから取り上げたエルラドライトです。実はこれの助けを借りてこの分離を行ったわけで」
 すると2人ともちょっと顔を顰めたがすぐに元に戻り、
「なるほど、エルラドライトで工学魔法を増幅してこの離れ業を行ったのか」
 上手い具合に仁の思った通りに誤解してくれたようだ。
「で、これをお返ししないと」
 そう言ってそのエルラドライトをケリヒドーレに手渡した。
「うむ、確かに受け取った。少々遅れたことなど、この分離された素材の山を見たら何てこと無いさ、なあ、内務卿?」
「その通りだな。素材を無駄にすることなく、再利用出来る。この場にいないが財務卿も喜ぶだろう。ジン殿は何か素材が欲しかったそうだな?」
 内務相ウィリアムは仁の目的を尋ねる。仁は正直にミスリルとその他少々の素材が欲しい、と告げた。
「ふむ、そう言うことなら、この場で必要なだけ確保してよいぞ。その後、私の方でこの素材を運び出すから」
 内務相がそう言ってくれたので仁は喜び勇んで素材を確保する。

 ミスリル。短剣とブローチを作れる分確保。
 軽銀、銅、亜鉛、錫少々。
 魔結晶マギクリスタルの破片いろいろ。

 魔結晶マギクリスタルは砕けてしまうと価値が無くなる。たとえ工学魔法で融合フュージョンし直しても魔力が取り出せなくなるからだ。
 磁石を想像して貰いたい。磁石にはN極とS極があって、お互いに引き寄せたり反発している。
 魔結晶マギクリスタルも磁力線ならぬ魔力線を発しているが、それ自体にはほとんど力は発生しない。なので砕けた魔結晶マギクリスタルを集めると、魔力線の方向がランダムとなり、お互いに干渉しあって打ち消し合い、結果として取り出せる魔力が弱くなってしまうわけである(磁石はこんな事は無い)。

「ふむ、それだけでいいのかね? 他に必要な物があったら言ってくれたまえ。アーネスト王子殿下からも便宜を図ってやって欲しい、と言われているからね」
「え。殿下から?」
 ロッテの件で気に入られたようだ。
「ありがとうございます。でもこれだけいただければ十分です」
「そうかね。それでは残った資材は運び出させて貰うとしよう」
「ええ、ありがとうございました」
 礼を言って仁はその場を離れる。素材が重いが、魔法相・内務相2人から見えない所まで来ると礼子が消身ステルスを解いて姿を現し、仁に代わって運んでくれた。

「さーて、と」
 自室に素材を積み上げ、いよいよ作り始めようとしたその時、ドアがノックされた。
「はい、どちらさまでしょう?」
 仁に代わって礼子が出ると、
「こんばんは、ジン君いますか?」
 ステアリーナであった。
「あ、ステアリーナさん」
 仁も立ち上がって出迎える。
「今、いいかしら?」
「ええ、どうぞ」
「それじゃあ、少しお邪魔するわね」
 ステアリーナは仁の許しを得て部屋に入った。痩身貴族
 それを見ていた人物には誰も……いや、礼子を除いて誰も気付かなかった。そして礼子も特に報告すべきことではないと判断していた。
 いちいち日常のちょっとした事まで仁に報告するのは仁の邪魔をする事にも繋がる。よって友人であるエルザが廊下の向こうにいた事は報告すべき事柄ではなかったのだ。
 エルザにしても、仁に用事があるなら部屋へやって来るだろうし。そう礼子は判断していた。

      

「あれは……ステアリーナ、さん?」
 エルザは仁に聞きたい事があったので仁の部屋を訪れようとして廊下に出たところ、ちょうどステアリーナが仁の部屋に入るところを見てしまったのである。
「ジン、君、ステアリーナさん、と?」
 先を越されたエルザは一旦は部屋に戻ったものの、なんとなくもやもやするものを胸に感じて再度廊下に出るエルザ。
 そして足音を立てないようにして仁の部屋まで行くと、
(こんなの、しちゃ、いけないこと、なんだ、けど)
 内心の葛藤の末、ドアに耳を付けてみるのだった。

「……そうそう、初めてとは思えないわ」
「おだてないで下さいよ」
「おだててなんかいないわ。ジン君、ホントに上手。負けるわあ」

「……!」
 思わず身を引いてしまったエルザ。
(なに、いまの会話)
 そしてもう一度、おっかなびっくり、ドアに耳を近づけた。

「すごいわね、こんなに硬くなるのねえ、あたしも初めてよ、こんなの」
「普通は違うんですか?」
「ジン君、やっぱり見込んだ通りね。これならどんな女の子でもきっとよろこぶわよ」
「はは、だといいんですけどね」
「わたくしが保証するわ」

 なぜかもう聞いていられなかった。
 エルザはその場から逃げるように立ち去ると、部屋に戻り、ベッドの上に身体を投げ出す。
「お嬢様? どうなさいました?」
 侍女のミーネが心配そうに声をかけるがエルザは返事をせず、突っ伏したままだった。繊之素

      

「普通、ミスリル銀はこんなに硬くはならないわよ?」
 驚いたように言うステアリーナに仁は、
「あ、これ、ほんの少しだけ銅を混ぜてありますから」
 と答えた。
「え? ほんと?」
「ええ。銀は銅を少し混ぜると硬くなるんです」
 925銀と呼ばれるそれは、500度くらいに熱し、250度でしばらく保つと硬化し、そのまま常温に放置すると更に硬くなる。また、純銀よりも黒ずみにくい。
 仁は新人研修で一通りの金属の性質を学んだので知っているが、この世界ではまだ知られていなかったらしい。というか、合金を作るにしても、配合比を厳密に管理するということをしていないようだ。

「それを更に『硬化ハードニング』、そして『表面処理サフ・トリートメント』するのね。なんというか、凄まじいわね」
 仕上がった短剣は輝くような銀色をした、長さ40センチほど。細身で、軽い。しかも仁渾身の仕上げをしてあるので、そこらの鋼の剣よりも強いという代物だ。
「でもこの形、大きさ、軽さ。女の子でも扱いやすそう。喜ぶわよ」
「だといいんですけど。あとは鞘と柄です」
 そう言って仁は軽銀を手に取り、『変形フォーミング』させていく。
 ちょうど剣にフィットする大きさ、形とし、仕上げとして鞘に魔結晶マギクリスタルの欠片を散りばめた。
 柄には微細な彫刻をし滑り止めを兼ね、握りの先にはこれもまた魔結晶マギクリスタルをはめ込む。
「これで完成です」
 見事な短剣が出来上がった。鞘は軽銀、色はやわらかな金色にし、小さな魔結晶マギクリスタルが散りばめられている。そして抜けば清冽な白銀の剣が姿を現す。
「100万トール出しても惜しくないわね」
 とはステアリーナの評であった。唯美OB蛋白痩身素第4代
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