Scene 13. 

2004年08月29日(日) 14時41分
「この道…来たのと同じ?」
初めて歩く道はもう昼と夜ではすっかり表情を変えていて、右も左もわからない。
まるで、砂漠のように。
目指す駅の灯りはまだ見えないけれど、踏切の警告音は聞こえる。
それが近づいているのか遠ざかっているのかも、定かではないけれど。
「実は、遠回りしてる」
「え?」
「帰したくなかったんだ」
少しでも、一緒にいたかったから。
髪を掻きあげて、俯く。足を止めたのはこちらが先だった。

――ねぇ。帰りたくない、って云ってもいいの?

Scene 12. 

2004年08月29日(日) 13時49分
「なぁ、一人で乗るのはちょっと…」
「いーの。似合うから」
背中をとん、と押すと係員の男性は変わらない笑顔で彼を通した。
チケットは元々一枚しか買っていない。
キィ、と錆びれた音で背の低い扉が閉められる。
流れるアナウンスに渋々と、白い馬に彼が座った。
スカイブルーの鬣は、くすんでしまっているけれど。
――やっぱり、似合う。
それは、白馬がではなくて、あの光の下にいることが。
オルゴールみたいな可愛らしい、子供の好きそうなメロディーが奏でられるその下。
ゆっくりと回りだしたメリーゴーランドは、日も暮れた今ではあまり乗客はいない。
彼が、目の前を通りすぎる度に手を振ってくれる。
遮る柵に凭れていた手をその時だけ外して手を振り返すと、見届けて笑ってくれた。

「…恥ずかしかったよ」
降りてきた彼は、戻ってくるなりそう云って手を取った。
そんな風にさり気なく手を繋ぐ方が、すごく恥ずかしい気がするのに。
シャッター音。
「何、撮ってんの?」
「なんでもない」

どうしたらこの時間を残しておけるかを必死で考えていたんだよ。

***

お馴染み某CMより。(笑)

Scene 11. 

2004年08月26日(木) 14時48分
「ゆーやんはねぇ、頭の中で考えすぎるから勝てないんだよ」
特に、余計なことをね。
真ん中でカードを配るキメはもうずっと勝ちっぱなしだから、機嫌がいい。
新幹線に乗った途端眠ったかと思えば、みんなが寝始めた頃に目を覚ましててきぱきとカードを配り始めた。
賭けるのはチップでもなければ、ジュースなんかでもなくて。
「だって、」
云いかけて、キメの向こう側で苦笑いする兼悟くんと目が合う。
隣りは。勝ったらいいよ、なんてそんなイジワルな。
「はーい、じゃぁせーの」
無言でさっさと入れ換えて、手持ちはスリーカード。
始終笑顔のキメはわからないし、兼悟くんはカードを持った時点で真剣な顔をするから余計に読めない。
「ストレートフラッシュ」
ちゃっ、と揃えてキメが出したのはハート。
自慢気に見せびらかされて、5枚のトランプを車内に備え付けのテーブルの上に投げた。
「ごめん、ロイヤルストレートフラッシュ」
その時、兼悟くんの一言にトランプで殿様みたく扇いでいたキメが固まる。
テーブルの上に並べられた、スペード。
「賭けって俺が勝っても有効?」

――完敗。

Scene 10. 

2004年08月25日(水) 13時15分
「雄弥、何飲む?」
彼の部屋に入って、視界が開けた瞬間はいつも眩暈を覚える。
友達の家とは違う、物が少ないわけでもないのにきちんと片付けられて整然としている。
それから、ほのかに香る彼の香水はまるで、影のようにそこに住んでいた。
「兼悟くんと同じのでいい」
その辺に座って、と云われて、座ったベッドのスプリングがぽすんと跳ねる。
今更に気付いた。かけた重さに皺を寄せる薄いブルーのシーツを掌で撫でて、なかったことにしたいけれど足が動かない。
セットされたコーヒーサーバーから、やがて香りが流れてきた。
「無理しなくていいけど」
少し濃い目に入れられて、氷。二人のグラスの色は、明らかに違う。
コーヒーが飲めないと話していたのを聞いていたのだろうか。
ブラックの彼のと、カフェオレのグラス。
一口含めば、それは随分と甘かった。
「あのさ、雄弥」
「うん?」
「心配しなくても雄弥の嫌がることはしないから」

あぁ、神様。
これが最後の恋になるならば――。

Scene 9. 

2004年08月25日(水) 11時03分
恐くて言えないよ こんなに愛してること

「キメは好きな人とかいるの…?」
「ゆーやん」
「えぇ?」
「冗談。今はいないよ、そんな余裕ない。で、雄弥はいるんだ?どんな人?」
「内緒」
「こら、言いなさい。内緒はダメ!」
「…云わないよ、向こうに迷惑かかるし」

君の眸はまっすぐだから。その先に誰がいるかなんて、簡単にわかる。
でもねぇ。その人は、きっとそんなに弱い人ではないから。
その愛に。傷ついたりはしないよ。


***

キメル姉さんのNEWシングル「Be shiny」の表題曲より。
私、姉さんがすごい好きだ…!!ゆーやとは違う所で。
ずっと一人で立っていたなら、守ってあげたい。
ほら、ゆーやには大口さんいるからさぁ…。(苦笑)

Scene 8. 

2004年08月23日(月) 18時45分
腰の上にかけていた毛布が、するりと落ちる。
Tシャツにスウェットの下で寒くはなかったけれど、いつ眠ってしまってもいいようにかけていたのだった。
読みかけの本のページが閉じないように指を入れて、右手で毛布を手繰り寄せようとするととん、と何かに触れる。
そこには枕を抱えて、こちらをじっと見つめる雄弥が立っていた。
「おわ、どうした…?」
「ノックしたんだけど」
「あーごめん、気付かなかった」
耳からイヤフォンを取って、ベッドサイドのチェストの上にポータブルプレーヤーと本を置くと、空いたスペースにホテルの、真っ白ですべすべとした枕が投げられる。
「寝らんなくて」
「いいよ、ここで寝ても。みんなまだ起きててうるさいんだろ」
「…うん」
眠いから寝ると云ってしまえば、無理に誘ってくるメンバーではないけれど、雄弥はすごく断るのが下手だ。
それなのに、一番疲れているのが顔に出ている。
ちょっと体をどけてベッドの半分を譲ると、するりとそこに滑りこむ。
二人で眠るにはシングルでは小さすぎて、向き合った顔はすぐ傍にあった。
「眼の下にクマ、できてる」
「嘘、ホント?」
身を縮めたまま親指で目の下にそっと触れると、反射的に雄弥は目を閉じる。
長い睫毛が無理な力に抑えつけられて、震えていた。
「本当。だから、ちゃんと今日は寝ろよ」
一番、疲れているのは一番頑張っている証拠。
そんなの、知ってる。
それに。眠れない夜は、同じようにあったから。
「うん…おやすみ」
「おやすみ」
瞼にキスをして、電気を消すためにベッドから出ようとすると閉じた眸をまた雄弥が開ける。
「どこ、行くの」
「どこって電気消そうかと」
「あぁ…そうだね」
「大丈夫。どこも行かないから」
そんな風に服の裾を引かれてどこかに行けるわけがないと苦笑しながら、部屋の照明を落とした。

月の明かりだけは、そのままに。

Scene 7. 

2004年08月21日(土) 15時22分
「海、舞台が終わったら行こうよ」
窓から見えるそれは、オーシャンビューというには物足りないけれど。
いつも見られるわけではないから、それは特別だったようで部屋のテレビよりも雄弥はそっちを見ていた。
「そうだな…でも今はもうクラゲの時期かも」
「あーそうか…くらげ…」
どこか淋しそうにする後ろ姿は、真正面よりずっと素直で兼悟は思わず浮き出た肩甲骨に口唇を乗せた。
「しんみりするなよ」
「してないよ」
終わったら。それで、ずっと一緒にいられるわけじゃない。
いつまでも、同じ場所にいられないのだから。
「終わったら、行こう。二人で」

次の約束が、勇気になるよ。

Scene 6.5. 

2004年08月19日(木) 14時33分
小さな灯りは星よりも安っぽく光る。
大きな池みたいな海は、夜に沈んで今は空と一つになっていた。
だんだんと遠くなる景色は、まるでおもちゃの街のように見えた。
真正面が、向けない。
膝が触れ合って、どうしていいかわからずに体を捻るようにして背後の景色を眺める。
その時。マリンブルーが、消えた。
「てっぺんだ」
ということは、後半分で二人きりのこの空間は終わる。
それは少し惜しいけれど、反面ほっとした。
一周する間に酸素を使いきるんじゃないかと思うほどに、胸が詰まりそうになる。
そろりと横目で彼の方を見ると、同じように顔を背けて夜景を見ていたはずなのにいつのまにか双眸はこちらを見つめていた。
「雄弥」
がたり、とゴンドラが揺れる。
誰にも見えない。だからって――。
「あっ、ぶない・・・」
「落ちないよ、これぐらいで」
批難のつもりで睨むと、拗ねた顔をする。
一瞬触れ合った口唇が、ふわりとその熱を残す。
「・・・落ちてもいいけどね」
天国に近い場所から。
あなたと二人で、堕ちるなら。

Scene 6. 

2004年08月19日(木) 14時17分
ゆっくりと色を変える、それの規則性に気付くほど長い間見ていたわけじゃない。
今にも崩れ落ちそうな、ぼんやりとしたマリンブルーが眩しい。
「乗りたい?」
たまたまその前を通っただけで。足を止めてしまったのは、不覚だった。
「いいよ、別に」
半歩後ろを歩いていたのをスピードを上げて、追い抜こうとする。
でも、羽織ったシャツを引っ張るのに、動こうとはしなかった。
「間違えた。乗らない?」
ブルーが。夕焼けの、ヴァーミリオンに染まる。
放射状に広がっては消えるその動きは、太陽のように。
「・・・兼悟くん、顔赤いよ」
「雄弥もな」
男二人で、観覧車なんて他人の目にどう映るのか。
只でさえこの人は人の目をひくから気にしているのに、本人はそんなの知らないと平然としている。
そんなの、馬鹿みたいだ。一方通行みたい。
「――行こう」
ポケットから拳を引きずり出されて、掌の中へ。
たまらなくそれが嬉しいなんて、それこそ馬鹿みたいに頬が緩んだ。

千秋楽 

2004年08月18日(水) 9時51分
遅くなったけど、ミュ千秋楽お疲れ様でした。
千秋楽は見に行けませんでしたが、ミズサワは計6回観に行きました。(少ない…)
夢と感動をありがとう…!!
本当にカーテンコールをBOXにして売ってくださいと頼みたいです。
だってあの子馬鹿だよ…全然わかってない。
お前の居場所はそこだよって誰が云わなくても、「越前リョ―マ」はゆーやの役だよ…。
柳のリョ―マはそりゃいつまでも皆の中で特別かもしれないけど、ゆーやはリョ―マじゃないなんて云うわけないじゃない。
今回の公演見て、誰もそんなこと絶対云えないから。
あーもう部長抱きしめてあげて。頭を撫でてやって。
そしてそんな部長も手塚でした。隅々まで部長なんだもん。
本当に夢を見せてもらいました。(時々幻覚も見ました)
本番中につわりがきちゃったキメル姉さんはやっぱり姉さんでした。
カッコイイ…そしてすげぇ。馬鹿なアイツらを抱きしめてやってください。
ありがとう、テニミュ!!

…表に書かなかったのは、何となく気分です。
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:wdmc
読者になる
Yapme!一覧
読者になる