Yellow Ribbon Final 

2009年02月18日(水) 23時07分
「おう!!!!」
「あっああ。」
相変わらずのテンションの高さにちょっと引く。
気づいたのだが、俺達は4年の齢を重ねているためちょっとあいつより老けているのだ。
月日の流れを感じる瞬間だ。
「去年よりいい顔になってるジャン。」
「それは老けたってことか?」
「いや、俺が最後に見たお前の精悍な感じになってる。」
「そっか?」
やっぱ思い出の回顧のせいかもしれない。
「来年は勝負に勝ってそうだな。」
「ああ。」
自然と笑顔がこぼれた。
いつからだろこんなに笑えなくなってたのは?
俺はちょっと今までの歩みを後悔した。
こうやって1年に一回は伴に会える。ほかの人よりも幸せなはずなのに・・・。
感謝する心を忘れてしまっている。
「じゃあまたな。元気で!!!」
伴が消える。
「お前もな。」
ってあいつは死んでんのか。気づいて苦笑い。

「さて、帰りますか。」
きれいな海を背にモコが愛くるしい表情で俺に話しかける。
たまらなく彼女を抱きしめた。

「おう。行くぞ。」

どこまでも抜けるように青い空とエメラルドの海が俺たちを
見守っているようだった。


俺の腕のリボンが風を受け美しく翻った。
伴からのエールのような気がして俺は勇ましい勇気を心に、家路についた。


あれから半年。
伴。ありがとよ。
お前のことを思い出して俺はもう必死で店を立て直し、ビルも取り戻した。
美崎とは完全に縁を切った。
モコとの間に子供もでき、幸せだ。
ただお前がいないのがまだ残念でならない。
一緒に笑えたら…。

新しい黄色いリボン3本と手紙をボトルに入れて、海に投げ入れたんだ。
俺たちが夢見たようにこれを拾って夢を見てくれる人がいたら嬉しいなと思ってさ。

「あなたは今、幸せですか?」
「僕は幸せでした。」
        BANより

Yellow Ribbon 33 

2009年02月15日(日) 20時49分
あの後伴のものを片付けていた時にサーフケースから俺たちに向けた手紙が出てきた。
いわば遺書ともいえるものだった。

これを読んでるってことは俺はもう生きてないな(笑)
泣くなよ。
これは俺の正直な気持ちだ。
言い訳と思われても仕方ないが、俺はお前らがいい解釈をしてくれることを信じて、
この手紙を書く。しっかり読んでくれればうれしい。

俺は全然強い人間じゃないし、豪快な人間でもない。でも期待には応えたい。
勝つと言っていたのは自分への戒めと、お前達への前に進むためのメッセージだった。
お前達2人と幼いときに出会って、ずっと社会に出るまで一緒だった。
この心地よさはたまらなく俺を癒してくれたし、安心させてくれた。
でもどこかで、このバランスが崩れてしまうのでは無いかという不安がいつも俺の周りに渦巻いていた。
その不安の波が大きかったとき、そう大学を出てお前達と離れていた時、
大きく俺だけベクトルが明後日を向いていたのだろう。
どこからか俺の人生の歯車は狂っていった。いや、徐々にはずれていったのかもしれない。
辛くて、情けなくて、不安で、明日が見えなかった。
そんな時にあの手紙と店を見つけたんだ。
はっきり言えばお前達を蛇のみちに引きずり込んでしまって、申し訳なく思っている。
根拠のない自信と、はったりに恐らくお前達のことだ、気づいていただろう。
でもお前達は、それを超越して俺に人生を預けてくれた。これは俺の勝手な思いこみかもしれない。
本当に感謝している。実際お前達も社会の冷たさにうんざりしているのが見えた。でもそのまま
安パイの人生もありっちゃありだったのにな。
もう逃げたくはなかった。お前らに頼った時点で、逃げてたのかもしれないがな。

3人で作ったバー。はっきり言って開店資金なんてキャサリン買った時点で無かった。
でも3人で何かやりたかったんだ。俺は3人で何か出来るならなんでもしてやる覚悟があった。
だから下げたくもない頭下げて金をかき集めたし、いろんな汚いものにも手を染めた。
なにも考えず我武者羅だった。

美崎は良くも悪くも自分がいちばん。損と分かれば手を引きそいつを奈落に叩き込む。
俺が賭けの対象になっていた時に、多くの人間がいなくなっている。
そんな奴を引き合わせてしまったことが、一番の後悔だ。

わりぃ。
ごめんなさい。
申し訳ない。

最後に、閏斗・モコ。ありがとう。そして、頼む。
幸せになってくれ。
それが俺の一番の願いだ。
曽川 伴


俺はこれを読んでたまらなく涙を流してしまった。
これはまだ彼女には見せないでおこう。
5年後まで…。
俺はその手紙をキャサリンのダッシュボードに隠した。

・・・。
「ってば!!!!」
「わるいわるい。」
ずいぶん長い間思い出に浸っていたようだ。
「今年はなんて言われるかな?」
モコはうれしそうに俺の顔を覗き込んだ。
「そうだな。想像つかないな。」
「だよね。そうでないとつまらないよね。」
「ああ。」
今年こそはいい報告しようと思うが思いのほか現実は厳しい。
「来年はいい報告をしたいね。5年目だし。」
俺もそう思っている。
「そうか。5年目だよな。」
俺はあの時の誓いを思い出してちょっと大声でモコに話しかけた。
「おい。そこのダッシュボードに入ってる封筒読んでみ。」
モコは怪訝そうな表情で俺を見つめ、伴からの遺書に目を落とした。
「・・・。」
「はっきりいって隠してた。5年前だったら絶対立ち直れないと思ったからさ。」
「・・・。」
モコの顔から一筋の涙が伝った。
「ずるい。いまさら。」
「ごめん。」
「・・・。」
気まずい数秒間。
「なーぁんてね。実はおととし掃除中に見つけちゃって読んじゃったんだ。私女優になれるかな?」
俺は心臓が止まりそうだった。
なんて気丈な女なんだ。
俺はちょっとむかっと来たが、申し訳なさでいっぱいになり、力をこめて
「今年こそはなんだか夢を果たせそうな気がしてる。」
「その意気。最近気張りすぎな気がしてるからよかった。」
また見透かされてる。
「あー、サンキュ」
「着くね。」
きれいな海が見えてきた。いつも職場として来ている海。全然その綺麗さが気にならなくなっていた自分が悲しい。
「そうだな。」
それにしてもこんなに鮮明に伴が死んだことを思い出したことはなかった。
さあ伴が出てくる。この瞬間はいつになっても慣れない。

Yellow Ribbon 32 

2008年08月10日(日) 9時03分
翌日美崎のところに俺は話をつけに行った。
「あら珍しい。わざわざ私のところに来るなんて。」
「そうだな。俺だって実際は行きたくは無い。でも言わなきゃならないことがある。」
「なに?」
美崎は以前とは異なり温和な人に見えた。
「ちょっとの間勝負は待ってくれないか?」
「私の案を受けるわけね?」
「そういうことになる。やっぱりあいつの意思を尊重するよ。」
「分かりました。」
「俺がしっかりと自分の足で立てるまで、あんたと対等に戦えるまで待ってくれ。」
「あのビルは?」
「織田さんに任せる。」
「あの出来損ないに?正気?」
「ああ。あの人は人を見る目がある。信じてる。」
初対面の印象からこんなにも変わるなんて俺自身も驚いている。
それが人から出る人柄というものか。人間は初見で何事も決めてはいけないって思ったのだ。
「へー。まあそうなるとは思ったけど、いざそうなると引くわね。あんたの変わりように。」
「引かなくていい。」
「んであんたはどうするのさ?」
次第に美崎の目に光が入ってきた。
「俺はもう一度あの1号店から出直す。」
「そう。それは面白い。徹底的にいじめてあげるわ。」
「望むところだ。ただこれだけは言っておく。犯罪だけはやめてくれ。あの海・店ががすきなんだ。」
「当然でしょ?面白みが無くなる。」
100%信用は出来ないが、意外に美崎が話を分かってくれていることに驚きつつ奴のもとを去った。

「行ってきた。今の現状とこれからのこと話してきた。」
モコはすべて分かったように暖かな目で俺を見た。
「うん。がんばろうね。」
「どんなことがあっても2人いや3人でがんばっていこうね。」
「ああ。最高の戦いが始まったな。」
伴の気持ちを受け継ぐ戦い。美崎との戦い。俺自身の殻を破る戦い。
まだまだ先は長い。
俺は今一度伴のリボンを握り締めた。
そのリボンはどこと無く暖かくそしてパワーがみなぎってゆくようだった。
店に戻って裏手の海を見た。
夕焼け時分でがちょうど太陽が海に沈むところだった。桟橋からみえるオレンジの海は最高に美しく
生きていると実感させられる。
「一緒にみたかった。」
「見てるよ。」
どっかでそんな声がした。
伴に頼る自分とはおさらばだ。
まずはこの店を前のようなみんなが笑える場所にする。
自分も楽しい場所。
理想は高く現実は厳しいが俺が見つけた生きがい。
「最高のプレゼントありがとう。」
俺の口から自然とその言葉があふれた。

Yellow Ribbon 31 

2008年04月28日(月) 10時48分
伴と最後に時間をともにした場所にやってきた。
「おい。ゆっくり休めよ。」
「私たちはがんばるから。」
俺たち二人は腰を下ろした。
モコが指を差して叫んだ。
「伴ちゃんのリボンだ!!!」
俺はもつれる足でそれを拾いに行った。間違えない。伴のだ。
俺はそれを胸に抱いて泣きじゃくった。するとおれの前で懐かしい聞きなれた声が聞こえた。
「え・・・!!」
「おい、そんなに泣くんじゃないよ。俺は大丈夫。」
伴の声だ。
俺は顔を上げた。半透明に透けた伴がそこにはいた。
「伴!!!!」
「しっかりしろよ。絶対に大丈夫だ。俺はここでお前たちを見守ってるから。」
「でも。」
「おい!いつからそんなにめそめそした奴になったんだ?前を向け!そしてあいつをギャフンと言わせちまえ!」
「ああ。わかった。」
もう泣かない。
「あと、あの話は受けろ。織田さんに任せろ。あの人なら間違えない。」
「俺も今そう思った。」
「そうそう、忘れるところだった。モコ大切にしろ。あと毎年俺の死んだ日にはここにそのリボンを持って、
ここに来てくれ。そしたら今みたいに俺と話できるみたいだから。」
「わかった。お前は老けないで俺たちだけ老けて行くんだな。いやな話だ。」
「ははは。笑える。そうそう、その意気だ。」
「茶化すなよ。でもお前の意思は引き継ぐ。」
「ああ。頼んだ。じゃあな。」
「バーイ。」
伴の姿はなくなった。
「何だったの?」
モコは唖然として何もしゃべれなかったのだ。
でも奴の意思は伝わった。命日には会いに来よう。
俺の心のぶれはなくなっていた。

Yellow Ribbon 30 

2008年04月13日(日) 14時05分

悲しみにくれる中、美崎が俺に寄ってきた。
「勝負は今回は痛み分けね。今回はお互いに痛手を負ったわけだし。」
「お前ほんとに汚いやつだな。伴が居なくなって死んだかもしれないんだぞ。パンサーだって。」
「そうね。だから、あなたのすべては奪わない。ビルの権利を他の人間に預けなさい。」
「よくわからない。なんで?」
「今のあなたじゃ私にとられる前に潰す。1号店を今以上に繁盛させなさい。」
「え?」
「そうしたら黙っていても私はあなたの前に現れます。その時ビルを賭けてもう一度勝負しましょう。」
「ちょっと今はそんな気分じゃない。近日中に回答する。」
「わかった。今は弔いなさい。」
美崎は音もなく居なくなった。

伴の葬式はしめやかに執り行われた。
未だに信じられないが乗り越えなければならないことだと必死に言い聞かせた。
モコと二人でYellow Ribbonに帰るとさらに涙がとまらなくなった。
「俺が殺したようなもんだ。」
「そんなことないよ。ね。あなたは悪くないよ。」
「でも。。。」
「しっかりしてよ。これからも私たちの戦いは続くのよ。」
「ああ。」
こういうときの彼女は強い。
「これでも飲んで。」
彼女は俺にミルクティーを淹れてくれた。
そのほのかな甘さと苦味が俺を満たした。
「俺がんばるよ。伴の分も。」
「うん。」
「伴ちゃんが眠ってるところに花束をもってこ。」
「ああ。」
重々しい足取りの中伴が眠る場所へ歩みを進めた。

Yellow Ribbon 29 

2008年03月23日(日) 11時45分
俺たちの運命を予感してか風が異様に強かった。
でも二人はそんなことを気にする様子も微塵も見せずに鼻息荒く海に入っていった。
モコが祈るように様子を見、俺は目を見開いて伴の行く末を見守った。
絶対に目を背けてはならないのだが、どこか怖くて眩暈がしそうだった。
美崎はというと余裕綽々の様子で目を細めてコーヒーを啜っていた。
なんでこんなにも余裕があるのか?やはり人事なんだな。信じられない。
負ければすべてを失うのに。
俺はこんなやつには負けられないと感じた。負けられないとは言っても俺は見守るしかないのだが。

・・・・。

「ばーん!!!!!!」
俺の声が出ていたか否かわからない。でもこのときしっかりと気持ちの中では叫んでいた。
今までに見たことのない大きさの波を見たと思った刹那、伴とパンサーの姿はなくなっていた。
そして、2人のボードだけが浜辺に流れ着いた。
俺は事態の深刻さを揺れる心持のなか悟った。
「早く救出だよ!!!」
モコは泣き崩れている。
さすがに美崎も動揺したようで、おたおたしている。
もうこうなったら勝負どころではない。
早く伴を助けてやらねば。
その一心が勝った。俺は服を脱ぎ、海に行こうとした。
でも俺の手をモコが懸命に引っ張っていた。
「助けなきゃ!!!」
「だめ。絶対に。あなたも死んじゃう。」
「ばか!!!死んでるわけなかろうが。伴だぞ!!!」
そうは言ったものの俺も心の中ではあきらめかけている部分があった。
だが良心いや、事態を認めたくないという気持ち。これに後押しされて助けに行こうとしていた。
「でも。やめて。」
その悲痛ともいえる叫びに俺はその場にへたり込んだ。
「わかった。」
手の打ちよう無いことにようやく気づいた。

辺りがざわつき始め、サイレンが聞こえてきた。
美崎の手下がレスキューを呼んだようだ。
レスキューは2人を探し始めたが、この強風でどうにも立ち行かない状況のようだった。
俺たちはに伴の生存をあきらめた。

Yellow Ribbon28 

2008年01月22日(火) 20時16分
後日、バーに来たあの大男がYellow Ribbonにやってきた。
「お前の財産がぶっとぶ日が決まった。」
「ずいぶん待ったぞ。いつだ!!!」
「まあそんなにカチカチするなよ。」
その言葉に更にイライラした。
「もったいつけるんじゃない!!」
「いいか。明後日の日曜日だ。逃げるんじゃねーぞ。」
「お前等こそ逃げるなよ。約束守れよ!!!」
「ふん。うるさいわ。せいぜい吠えてろ!ルールは制限時間の中でどれだけ大きな波に乗れるかだ。」
「分かった。でも、お前が何で来た?美崎自身が来るのが筋だろ?」
「そんな筋とか決まりとかどうでも良いんだよ。結局お前の負けなんだからよ。」
「ほざけ。とっとと失せろ。」
「場所はこの店の裏の海だ。まさにホームだよな。負けたら恥ずかしいな。」
「俺たちは負けない。」
奴はイスを思いっきり蹴り上げて去っていった。
イスはバラバラに壊れた。それが俺たちの未来を予感させ、不吉な予感がした。

俺達は対決の内容を伝えるために伴に会いに行った。
部屋の前でモコは立ち止まった。
「どうした?」
「うんん。今笑顔で会える自信がない。」
「そうか。
伴は今までの勢いは無く静かに部屋の中にいた。
「おう。」
「ああ。」
「決まったぞ。俺等のリスタートの日が。」
「うん。」
「何しょげてるんだよ?」
「えっ?」
「前みたいに豪快なお前でいてくれよ。」
「俺はお前達に何をしてやれたのかな?」
「何訳分からない事言ってるんだよ。」
「あの日から色んな事考えてるんだが、全然答えが出てこないんだよ。」
「何いってんだ?そうだろ。お前が声を掛けてくれたから、今こうしていられるんじゃないか。」
「それが本当によかったのか?ってことだよ。」
「いいに決まってるだろ。ちょっとやんちゃして脱線しただけだ。だから明後日元に帳尻あわせればいいんだよ。」
「そうか。」
「そうだよ。そりゃはじめから俺たち3人で力を合わせて過ごしていればよかったって思うこともあるけど、
 俺はいや俺たちは何一つ後悔なんてしてないよ。」
伴は泣き出した。伴の泣き顔なんて見たことがなかったので、非常に驚いた。
「ごめんな。本当にごめん。どうかしてたな。」
「いや、俺たちもお前にどこかで甘えてたんだよ。」
「俺は絶対明日、勝つ。見てくれ。」
「当たり前だ!!しかと見届けてやる。」
モコも伴に会うべきだと思い、扉を開けた。
「モコ!!!」
モコは涙を浮かべて立っていた。
「ごめんな。」
「ばか!!!!絶対に負けちゃ嫌よ。」
「ああ。もう泣くのは終わりにしような。」
伴の中の芯が復活するようだった。その中に穏やかさが宿っている様だった。

Yellow Ribbon27 

2008年01月09日(水) 21時19分
頭が痛い。ずいぶん啖呵を切ったあと飲んだようだ。
「うーん。」
モコが目の前にいた。
「かなり飲んだみたいね。」
「みたいだな。」
「どうなったの?」
苦い顔で答えた。
「お預け状態。」
「そっか。んで伴ちゃんは?」
「ん?多分家にいるはず。」
「ごめんな。」
「なんで謝るのよ?」
「お前の大事にしてる店まで賭けに乗せちまった。」
「なぁーにそんなこと?」
拍子抜けしたように俺を見つめている。
「かなり見直したのよ。」
「え?」
「いつも保守的な閏斗が攻撃的な部分を見せて伴ちゃんを助けようとしたから。」
「でも、俺のやったことは社会的には伴を助けていることかもしれないけど、伴自身は助けられていると思っているのかな?」
「大丈夫。思いはきっと届くわ。」
「ああ。そう願いたいよ。」
「連絡が来るまでゆっくり待ちましょうね。」
「そうだな。」
俺はだるさに任せてゆっくりすることにした。
その後、モコから話を聞いたのか織田さんが青白い顔をして飛び込んできた。
「相川さん本気なんですか?」
「あ、織田さん。ご無沙汰ですね。ご心配有り難う御座います。本気です。」
「やはり。でも相川さんが決めたことならば仕方ありませんね。」
「あのぅ。敬語止めてくれませんか?むずむずするんで。」
「あ、はい。すみません。」
「でも嬉しいです。心から心配してくださっていると方がいるだけで、心を強く持てますから。」
織田さんは恥ずかしそうにハニカんだ。
「えへへ。有り難う御座います。」
「でも、もし負けたらオーナーは僕じゃなくなります。でも織田さんはあそこで店を続けてください。」
「それは…。」
言葉に詰まっていた。
「負けることなんて考えてはいけません。」
「そうですね。」
昨日の凄みの反動で若干腑抜けになっているようだ。
弱気になっていた自分が少し恥ずかしくて苦笑い。
モコが急に顔を暗くしてこういった。
「何でこんな風になっちゃったんだろ?」
俺はハッとした。
根本を見つけなきゃ何の解決にもならないのに…。
俺は小さいが力強くモコに答えた。
「大丈夫。」
根拠なんて無かった。でもそう思いたかったんだ。
勝つ。とにかくそれだけだった。
俺はやはりスタイルを変えることが出来ないのだ。
モコは静かに頷いた。
「連絡が来るまでゆっくりしよう。」
俺たちは嵐の前の静けさを過ごした。

Yellow Ribbon26 

2007年12月19日(水) 20時08分
とうとうそのギャンブルタイムが始まった。その瞬間、異様な雰囲気になった。
今まではしゃいでいた人々の顔が勝負師になっていった。
俺はその状況に放心状態だった。
競馬などとは違って、生身の人間が命を賭け、ギリギリの部分で勝負をしているので、非常に生々しい感じになっていた。
俺はちょっと黙って見ていた。サーフィンの風景からちょっと視線をずらして事務所の方を見てみると、
伴が13億受け取っていた黒い軍団が伴と話をしているようだった。
その中に美崎もあのバーに来た大男もいた。美崎も黒ずくめの服を着ていた。
俺の中で、点と線がつながった。
あの集団のリーダーが美崎で、上手い具合に俺はだまされていたんだ。
許せなかった。激しく腹が立った。そこまでして繋がりを作りたかったのか?と思ったからだ。
実際に俺が知っていたならやはりあの時点で追い出しておけばよかったのに。後悔がうずまいた。
あんなに素敵な食器を作れるのに残念な限りだ。
俺は気分が悪くなってその場を離れた。そして、モコに電話した。
「なに?」
「…。」
「なんかあった?」
「なあ、俺今まで何やってたんだろ?」
「え!」
今考えると相当動揺していたんだと思う。
「今この前に見ている光景が悲しすぎて。」
「やっぱ残念な結果だったんだね。」
「ああ。」
「なあ?今までのもの1号店以外無くなってもいいか?」
「えー?どういう意味?」
「もうそんな物どうでも良くなっちゃったんだ。今まで3人で積み上げてきたことがもろく儚いものだったんだって思い知らされてさ。」
「そうかな?でもそうなのかもね。私たちには一つの店で十分だったのかもね。」
「ああ。俺たちはどこかで道を間違えたみたいだね。」
「でも、ここで俺は伸るか反るか一博打打とうかと思う。それはさっきも言ったとおり、全て無くなるかもしれないぞ。」
「いいよ。全て閏斗に任せる。」
「有り難う。」
なによりその言葉が心に染みた。
俺は最後の勇気を振り絞って伴のいる事務所に殴り込みに行った。

伴は驚いた風で俺を見た。
俺の勢いがその場を包み込んだ。
「おい。」
「あら、相川さん。どうされたのですか?
美崎はあわてるでもなくいつもの調子で俺を煙に巻こうとしていた。
「もういいよ。そこまでして伴をおもちゃにしたいのか?」
「どういう意味です?」
「もういいじゃねぇか。俺前にあんた見たことあんだよ。13億伴に渡している現場でな。」
美崎が大笑いして俺を鋭いまなざしでにらんだ。
「そうよ。こいつでがっぽり儲けさせて貰ったわよ。でも、あんたも夢見たんじゃなくて?」
「ああ。確かにな。一時そう言う部分があったさ。でもな。その夢は3人じゃなきゃ見られないんだよ。」
黒ずくめの大男と美崎が大笑いした。
「くっさ。そんなんじゃ飯は食えない。」
俺は何も恥ずかしいことなんか無かった。
それが全てだったのだから。
「なにがお望みなの?」
「分かっているくせに。金輪際俺たちから身を引け。ただとは言わない。」
「ほう。」
「最後のレースで俺の全てを賭ける。勝ったらお前の全財産よこせ。そして伴を返して貰うぞ。」
「ええ。もし負けたら?」
「財産やる。もう何も言わない。」
伴がようやく口を開いた。
「おい。いいのかよ?」
「何弱気になってるんだよ。お前らしくない。」
「今までの努力がパァになるかもしれないんだぞ?」
「ああ。そんなのはどうでも良い。3人ならば何でも出来る。」
「そうか。わかった。」
「じゃあ誰に賭けるわけ?」
「聞くのか?」
「伴に決まってるじゃないか!!!!」
「面白い。この青臭さ消し去ってやりたい。」
ムカムカ来ていたがスッと落ち着いて今まで俺も感じたことのないオーラが出ていた。
俺が歩くと人が勝手に道を開けていった。
一世一代の大勝負とはまさにこのことか。
気分が思いの外良かった。
俺は最後に伴の肩を叩いて拳をあわせた。
もうそこに言葉はいらなかった。
「お待ちなさい。」
美崎が俺を止めた。
「あん?」
「今日は止めましょう。」
拍子抜けしたが、イラっとして声を荒げて聞き返した。
「なんで?」
美崎は落ち着いて
「人生の懸かったこの大一番にこんな大衆と同じ演目で賭けるなんて馬鹿らしいじゃないの?」
「それはどういう意味だ?」
「もっと相応しい物を用意してあげるって言ってるわけ。」
「何だ怖じ気づいたのか?」
「あら、猶予をあげたのに。」
ドコまでもクールなのが腹が立つ。
「ふん。勝手にしろ。」
「追って日時は連絡するわ。今日は曽川は返しましょう。」
「じゃあな。」

瑠璃色の海を背に俺は家に帰った。

Yellow Ribbon 25 

2007年12月04日(火) 20時52分
空港に着くなり伴が俺に気が付いて寄ってきた。
「おい!!」
「おう。今日は一般参加者としてきてるから、あんまり絡むなよ。」
「相変わらずですな。」
苦笑い。
「じゃあ夜な。」
「ああ。楽しむわ。」
続々とツアー参加者が集まってきた。見る限り普通の人ばかりだ。すごい金持ちとか怪しい人間はいなかった。
ちょっと安心した。でもあいつを元の世界に戻すために俺は来ているんだ。絡まないとはいいつつも、
逐次様子は見ておこう。
とうとうツアーが始まった。
内容は伴が言っていた通りの美崎の食器を作った居る工房を見学して食器の購入。
そしてマリンスポーツのアクティビティー。俺はサーフィンをした。伴はあの頃よりも数段上手くなっていた。
「上手くなったな。遊んでばっかじゃないか?」
「はは。そうだな。お前に任せっぱだもんな。」
「笑い事じゃないし。これで今日は終わりか?」
「いーや。これから俺のサーフィンショーとギャンブルタイム。」
こいつ堂々と言いやがった。
「へー。何かけるんだよ?」
「制限時間内で誰が一番本数乗れるかってこった。」
「誰が出るんだよ?」
「基本的には地元のサーファーや飛び入りさん。」
「そんなんで儲かるんかよ?」
「ああ。スターが着々と出てきてるからな。俺も含め。」
「やっぱでるんかい?」
「ごめんな。こればっかりは止められないわ。」
「そっか。」
俺は暗い気持ちになってしまった。あいつが資金と言って手に入れた金はこうやって生み出したのだろう。
怪しいと思っていたけど、こうやって分かってしまうと今までの自分の行動が嫌になって悲しい気分になってしまった。
伴は俺の気持ちをドコまで察したか分からないが、優しい声でこういった。
「大丈夫だよ。」
「・・・。」
「まあ、見ていってくれよ。」
「ああ。」
そう言って伴と別れた。
サーフィンショーはイルカのショーの如く非常に盛り上がっていた。
色んな人間が波間で煌めいていて、見応えのあるショーになっていた。
俺もその美しさに惹かれたんだが、どこかでギャンブルが引っかかっていた。
2009年02月
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