ストレスフルな作品ですが是非・・・

June 10 [Sun], 2018, 3:50
そういえばヤプログになってから、
映画ネタをまったく書いてなかったので、
たまには真面目に書こうかなと。

当ブログをご存じの方はご存じなんですが、
ここで「映画ネタを書く」いうと、
ドキュメンタリー映画モノがメインです。
あとは誰も観なさそうなマイナーな映画のいずれか(笑)

ということで今回もお得意のポレポレ東中野にて、
ちょいと時間が出来たのでコッソリ観に行った次第。

今回観た作品はコレ

ラジオ・コバニというシリアのドキュメンタリー作品。

2014年9月15日トルコ国境近くのシリア北部、
クルド人街「コバニ」という地方都市は、
突如、かのISに占領されてしまう。

直後より若者の男性を中心に、
多くのクルド人がISの残忍な公開処刑により虐殺された。

それまで平和な土地だったコバニは、
一夜にして凄惨な戦場と化してしまう。

その後、翌年2015年1月にクルド人民防衛隊による迎撃と、
連合国軍の爆撃支援により、
ISから街を奪還する3か月あまりの間で、
美しかったコバニの街はガレキの山に・・・

ガレキの山と化した「コバニ」で20歳の女子大学生、
ディパロン・キコは友人とラジオ局を立ち上げ、
「おはようコバニ」という番組を始める。
それもISから奪還したとはいえ、
まだ散発的に戦闘が行われていた時期に。

「コバニのみなさん、おはようコバニのディパロン・キコです」
のオープニングで番組が始まる。
このオープニングコールこそが、
コバニのリスナーたちにとって、
今朝も無事生きて朝を迎えられたことの、
生存確認の瞬間でもある。

番組では音楽を流すほか、
難民キャンプで暮らす人達に取材し生の声を届けたり、
詩人や地元で有名なミュージシャンをゲストに招くなど、
必死で復興に向かうコバニの民衆へ向け、
力強いメッセージを送り続けるディパロン。

今コバニで何が起きているかをリアルタイムで放送し続ける、
ディパロンに関心を持ったイラク出身でオランダ在住の映画監督、
ラベー・ドスキーが2016年までのコパニの街を、
ディパロン・キコのラジオ番組を軸にして、
密着取材形式で撮影して出来た作品となっている。

ただこの作品は決して、
復興に向けて頑張る人々をハッピーに描く作品とは、
とてもじゃないが言い難い。

むしろ観ていて何度も胃が締め付けられる、
極めてストレスフルな作品だ。

が、それこそが「戦場」の現実であり、
例えば遺体収容のシーンが普通に長々とあったりする。
今風な「日本的」ネット表現でいうところの、
いわゆるグロ映像がこれでもか!これでもか!と映し出される。

ガレキの下からボロボロに腐敗化している遺体や、
爆発でマネキンのようにバラバラになった人間の亡骸を、
ユンボでガレキの下からかき出し、
一人、また一人と淡々、粛々と収容してゆく。
強烈な死臭が周辺を覆いつくしている様が、
画面を通してもハッキリ「匂ってくる」ようなカンジ・・・

その近くに10歳くらいだろうか男の子が、
収容作業の様子をじっ〜とみているシーン。

やがて収容作業が終了すると、
さ〜っと走り去っていく・・・
賛否両論ある、このシーンだが、
これが戦場の日常であり現実なのだ!
これがフィクションやフェイクニュースであったなら、
どれだけ気持ちが救われることかと…。

しかし日本メディアのコンプライアンスだとか言って、
あえて、こういう事実を「報道」「放送」しないような、
ヘタレぶりに腹立たしさを同時に覚える。

女性兵士も自動小銃を手にし、
銃撃戦にも当たり前のように参戦。
コバニの市街地でISとのガチの銃撃戦が、
映し出され、
ロケット弾も飛び交い、
街の破壊は更に進む。
カメラマンが無事助かっていることは、
わかっているものの、
緊迫した銃撃戦のシーンの連続に、
心拍数が上がり続ける。
命中した!やっつけたぞ!と喜ぶ兵士たち・・・
が、しかしそれ即ちISの兵士たちの死を意味する。
そこが本当に重い。

町の床屋。
いわゆる床屋談義のよくあるシーンだが、

客はクルドのスナイパーだった男だという。
「戦場話」で店主の問いに淡々と答えるが、
いちばん辛かったことは?
と聞かれると、
戦闘での銃撃後、
相手兵士の遺体を確認すると、
歳いくばもない子供だったことを知り、
愕然とし深い自己嫌悪に陥ったと告白するシーンは、
さすがにため息が出た。

ただ、殺らなければオレが殺られていた。
と自分に言い聞かせるように呟く。
一見すると、この床屋のオヤジは無神経で、
酷いネタ振りをする「輩」に思えるも、
実はこうして「吐き出させて」、
気持ちを少しでも楽にさせようとする、
超高度なおもてなしの心が見えて、
そこがまた悲しくやりきれない気持ちにさせる。

客が皆、心を病んでいることを、
よく知っていて、
何を皆が求めているか?を、
心得ているいうことだ。
その証拠にハナシを引き出すも、
一切、驚いてみたり面白おかしくしようとしたり、
ましてや自分の意見など一切言わない・・・
ただひたすら話を引き出して耳を傾けるだけ。
実際の戦争なんて、こんなもんだ。

どっちが善で、どっちが悪かと言われれば、
勝った方が善であり、負けた方が悪となる。
というのが近年のキリスト教国を中心とした、
いわゆる先進国家での歴史解釈の根本だが、

「戦場」の悲惨さを知り尽くしたディロパン・キコは、
「戦争に勝者などいません、どちらも敗者です」と言う。
そして「戦争に勝者はいないのです。武器の代わりに、
楽器を作り、子供達に音楽をつくらせるべきです」と。
本当の地獄を見てきたた人だからこその重い言葉である。

そう思うに最近の、
憲法9条でノーベル賞をGETしよう!キャンペーンだとか、
金正恩とトランプにノーベル平和賞を!とか・・・
ちょいとノーベル平和賞ってのにしちゃ安っぽくやないか?
と思えてしまう。

映画ではディパロンの結婚式のシーンに被せ、
「おはようコバニ」の新パーソナリティーとなった別の仲間の、
オープニングコールでエンディングを迎える。

ちなみに現在、ディパロンは結婚して大学も無事卒業し、
DJを引退して念願だった小学校教師となり、
コバニの小学校で教鞭をとっているという。
コバニは平穏を取り戻しつつあるようだ。

蛇足ながら手短に、この作品も紹介しておきたい。

舞台はコバニより下のエリアにあるシリアのラッカという都市。
ここは完全にOUTな土地でISに制圧された都市だ。
このラッカで暮らす市民ジャーナリスト集団RBSSと、
ISとの壮絶な戦いを記録したドキュメンタリー作品。
RBSSはスマホを武器に世界へ発信することで、
ラッカの惨状を伝え支援を求めるという戦術で戦う。
が、それは自分と家族、友人たちの身の危険を意味する・・・
この作品はラジオコバニ以上に更に重い。
間違いなく歴史的傑作だが、とにかくストレスがハンパない。
さすがに、軽々しくこんなところで感想など書けないと思い自重した。
この2つの作品をセットで観ると、
ようやくシリアの戦争が見えてくる。

そう日本のマスメディアの情報だけでは到底、
理解出来ないであろうこと・・・
例えば、日本とトルコは超友好関係だが、
トルコとクルドの仲はすこぶる悪いどころか、
トルコはIS支持の方向で進んでいる現実。
そのトルコに日本は毎年毎年、
右肩上がりの経済支援を行っている・・・

池上彰の番組を観ただけで解かったつもりが、
実は一番怖い。

こういう良質なシリアのドキュメンタリー映画について、
まったく報道したがらない、
日本のマスメディアのホンネが垣間見えたりもする。

キレイ事で反戦を語れるのは日本や一部の先進国家だけ!
そのことぐらい、チョイと頭の片隅にインプットしておいた方がイイ。
ではまた次回。
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