【フィリリー】俺にとっては君は 

2013年04月16日(火) 21時31分
先に補足しておくと、(ええと…遠まわしに言うには…)

押し倒してます。(ストレートオオオオ)

事故的な感じで、まったくそういった意味はないです。
全くえろくないです。
えろくする気はないです。
でも、一応注意しておきます。。。

******************



不格好な背中が、大嫌いだった。


「フィリー!早く来なさいよ!」
まだ寝てるの、と呆れた声で呼びかけられるが、
出ていく気にはなれなかった。

もうとっくに目は覚めているし、
天気も良いらしく、波は穏やかに揺れている。
けれど、今日は観光船として港を回る日だった。
そう、アレを見なければならない。

「へーへい。
・・・リリー、またその帽子かぶってくのか?」
「お客様とお話するんだから、当たり前でしょ」
彼女の頭の上には豪華なーー不釣り合いなほどに豪華な刺繍入りの帽子。
俺はどうしても、コレが好きになれなかった。

「リリーがかぶるんなら、もっとかわいい感じのほうがいんじゃね?そんなゴテゴテのじゃなくて」
「なんでそんなこと言うのよ」
「・・・それかぶられると、オレがチビに見えんだよ」
「なにそれ。気にしてるの?」
気にしてる、と言われれば確かにそうだ。なけなしの身長差は、でかい帽子一つで失われてしまう。

けれど、それだけじゃない。
何なのか分からないけど、もやもやと心の中が軋むのだ。
対してリリーは、俺のもやもやなど全く知らずにクスクス笑っていた。


「本日はご乗船いただき、ありがとうございます」
船長の挨拶が始まる。
この船は比較的カジュアルな観光船だが、
クルーズの前はきちんと挨拶をするのが決まりだった。

すらすらと美しい言葉が並べられ、乗客はこれからの船旅に心を弾ませてゆく。
兄が別仕事で出かけてからというものの、彼女は熱心に働き続け、挨拶もすんなりとこなせるようになった。
気高い背中は、俺はこの人についていく、と自然に感じさせた。やはり、兄妹だ。

けれど。

あ 震えてる。
大きな帽子と派手なマントのあいだにちらつく不安に、俺は気づいてしまった。

彼女は全然大丈夫じゃなかった。隠しているだけで、本当は今だって不安で仕方なかったのだ。
「なんでだよ・・・」
どうして、彼女はここに立たなければならない?

船長として、いなければならないから。
分かってる。けれど、俺からすれば、彼女はただの女の子で。兄と同じことをしなければならないなんて、決められてなくて・・・。
スピーチが終わるまで、俺は、脳を疑問でいっぱいにして動けなくなっていた。


止まってる俺を見に来たリリーが目に映った瞬間、何かが切れた。

「・・・だからこんな帽子、大嫌いなんだよ」
「ちょっ、フィリー!!?」
帽子も、マントも、大嫌いだ。船長のリリーも、大嫌いだ。
小さい頃隣で手をつないでた、なんにも考えず笑ってるだけのリリーはどこへいった?これが、これが無かったら・・・

「フィリー!!!」

頭が真っ白になった。
目の前には、困惑とも怒りともつかない顔をしたリリー。俺は、彼女に多い被さるような状態で、マントを握っている。まるでーー
「そ、それ以上触ったら、殴るわよ!」

わり・・・、と言いながらも、俺の頭は依然としてパニックに陥っていた。
完全に、無意識だった。
彼女は、不安でたまらなくたって、それでもやり抜こうとしてたのに。俺は、自分のわがままで、彼女を自分の理想像に当てはめて、壊そうとした。

「タチ、わりーな・・・」
あの日誓った言葉が、ぐらぐら、揺れる。
どうにかしなければならなかった。内部から突き刺す感情が、飛び火する前に。



(ただの、一番大切な女の子)

【フィリリー】確かに色を残した白百合 

2012年12月05日(水) 18時44分
雲の灰色が溶けるのを眺めながら、わふ、と一つ欠伸をした。水蒸気が渦を巻く。


「……」

薄れていく顔と手の感覚に飲まれながら、ぼんやり、雲の形と色とが変わっていくのを見るのも、なかなか面白い。


「…ちょっと!」

鑑賞会は、中止になった。



「…リリー。オハヨ―。」
「おはよう…って、そうじゃなくて!朝礼、あんたのせいで遅れてるのよ!」
「んー…そんなにあわただしくして、何が面白いんだよ。
今、オレはこーやって朝日を眺めて感傷にふけ…」
「いーから、来なさい!」

ふいに、細く小さな熱源が俺の指を奪った。
感覚を失っていた指には強すぎる刺激らしく、脈がじくじくと揺れる。
早急に伝わってくる熱に冷や汗を覚える。
ああ、やらかくて、境界が溶けてしまいそうだ。



「……フィリー?大丈夫?」
「な…何が?」
ごきゅ。笑顔のまま、喉が動揺する。

「あんたの手、やけに冷たいじゃない。」
「…体質だよ。知らねーの?末端冷え性ってやつ」

別に体が冷えているわけじゃないんだよ。そう告げるが、まだ、納得していないようだった。


ごつん。

「…あ、まあ、それなりに熱い、か…」
ふうん、という言葉を含んだ息が顔のすぐそばを通った。


「……なに笑ってんのよ…」
「笑ってないよ」
「笑ってるじゃないの!」
眉間のシワが可笑しかったのだと言うと、何よそれ、とお決まりの返事が返ってくる。

しつこくまとわりついてくるこの熱は、嘘を吐けないようだった。
笑うしかなかったけど、なんとも、笑えない。


「…あ―、でもやっぱ寒いわ、人間カイロありがとうございま―す」
「…その口調腹立つわね…」


今すぐ離れたいのに、まだ、溶けていたかった。

【シェンファ】溺れる、 

2012年12月02日(日) 17時27分
おそらく今頃が夜の終わりだと、目を覚ます。
手持ちランプの光が照らすのは、見慣れた、圧迫感のある本の山だ。


研究棟の地下に建てられたこの図書館は実に厄介な存在だ。
膨大な機密情報が立ち並んでおり、僕みたいな管理者がいるが、大抵、そういった情報が使われることは無い。

『機密情報』とラベルされた諸々は、使う事にリスクがあるか、危険性のある内容を扱っているかのどちらかなのだ。

それが悪意ある者に渡ったらどんな影響が出るかは、予測の域を超えるだろう。
そんなもの燃やしてしまえばいいのに、力というのは(危険を伴うとしても)手元に置いておきたいものらしい。

そういうわけで、地下に埋められた図書館は退屈で、でも放置するにはあまりにも、危険なものだった。


今日も、客が来る気配は無い。来てもせいぜい2、3人だろう。
退屈しのぎに手近な本を開く。
幼い兄弟が海に行った話。ふうん、つまらない。

つまらないけれど、他に面白いものがあるわけでもない。
そのまま、文字に溺れていく。


どぶん、と鈍い音が響いて、吸い込まれていく。
僕の細胞一つ一つに水が染み込んで融解して、
躯を精神を、半宇宙的な感覚が支配する。

皮膚の周りには薄さ0.1ミリの膜が張られて、僕を一人にした。

僕は力を抜いて、ゆっくりと深くまで沈んでいって、ひたすら暗いだけの底を見続けていた。


…のに、
どういうわけか、底は薄黄色に光っていた。なんだよ、せっかく一人静かにいたのに…


背中に伝わるランプの熱が生ぬるくて、気持ちよかった。

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タイニーの別アカ。
おもに自宅っ子のssとか文字中心のものを置いていこうと思います。
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たまにらくがきと一緒に置きます
擬人化注意です!!

※ssは無断で削除、改変があります。
改変した際はその記事の追記に一言加えてます。
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