亡国のイージスの噂

November 04 [Sun], 2012, 19:06
父は別人になったかと思われた。何かに憑かれたように、我を忘れていた。そうした父の空気に同化するまでには、私たちきょうだい は骨が折れた。
 まわりの人たちは皆父をうまいと言って讃めた。語り終った父は、いつものなり になって、皆の所にやって来て挨拶した。いかにも幸福そうであった。
 私たちはだんだんそうした空気になれた。浄瑠璃の芸題も姉たちは殆んど皆覚え、あの段ものの、切れ切れな場面を語るのに、あれはどうした筋で、ああ見えても似せ首なのだとか、本当は腹を切って来ているのだとか、あのお姫さまは捨て児だったのだとか、何でも知っていて私に話してくれるのだった。
 私の文学の素地、その根本基調はたしかに浄瑠璃から来たものだ。私の感情教育、美的教育はその義理人情のムードと共に浄瑠璃によって養われたものだ。
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