
「男の出発(たびだち)」
ディック・リチャーズ監督
1972年
何でも放送した作品は録画しておくものですねー

映画評論家の町山智浩さんが雑誌連載でとりあげていたこの作品、
ちょっと気になっていたのですが、ビデオ屋にはないし、
はてどうしたもんかと思ったら(去年の11月にDVD出ましたけど)、
放送していたものを片っ端から録画しまくっていた私のWOWOWライブラリー(笑)
の中に偶然発見!何の苦労もなしに見ることができました。
そんなこんなでみたこの「男の出発(たびだち)」、
地味だし、すごく面白いわけでもないんだけど、
どこか心に深く残るもののある、不思議な魅力を持った作品でした

(よく調べると、この作品カルト映画になってますね)
というわけで、今日はこれをご紹介。
南北戦争後の西部テキサス。カウボーイに憧れる少年ベンは、
カルペッパーに頼み込み炊事手伝いとしてキャトル・ドライブに参加する。
コックは「カウボーイなんてなるもんじゃないぞ」と忠告するが、
ベンは嬉しくて仕方がなかった。
出発早々、カルペッパーたちは牛泥棒に襲われ、3人の仲間を失う。
指令を受けたベンは、カスティーゴ村のラスに助けを求め、
同年代のルーク、ブリック、ミズーラがドライブに参加する。
ベンが見張りをしていたある夜、ベンは馬泥棒に馬を盗まれてしまう。
あきれたカルペッパーはベンを駅馬車で送り返すことにするが、
寸前で馬泥棒たちを見つけ、銃撃戦で報復する。
ベンも1人を倒したことで、無事カウボーイの仲間入りを許されるが……。
まず面白いのは、ちょっとかつてないんじゃないかってくらい、
主人公のベンが何一つできない奴だってこと。
馬を見とけって言われても暴れさせちゃうし、
見張りを頼まれても襲われる始末。
さらにはラストの撃ち合いの時も、ただの一発も銃を撃てずに、
呆然となすすべもなく立っているだけ。
映画の主人公としては、ちょっとありえないくらい取り柄がない。
だから、胸躍る西部劇を期待するとがっかりする。
ただ、見方を変えると彼、凄くリアルな存在なんですよ。
普通の自分たちが、もし同じ立場だったらきっとベンと似てる。
西部開拓時代に生きていたとしても、
悪漢をやっつけて、銃持って人を撃って、
なんてことができるかと言われたら、きっと無理。
銃撃戦なんかあったら逃げ出すに決まってます

今まで西部劇映画ってのは、そこで銃を撃てる、
弱者を守ることができる人を描いてばっかりだったわけだし、
お客さんもそういうものを求めていたわけです。
でも、そうじゃない、僕らみたいな普通の男の子が、
この時代もしカウボーイに憧れたらどんなだったんだろう、
そこに注目してみたのがこの作品。
そんなリアルな視点に基づいて作られた西部劇だから、
見慣れたはずのお約束の設定もみんな面白く見えてくるんです。
そもそもカウボーイって何をする人たちか。
馬に乗って、農場の牛を管理して、売りにいったりする人たちですよね。
映画ではいつも拳銃持って決闘してたりしますけど、
あんなのはめったにあることではなかった。
この映画のカルペッパーさんたちも、そんなプロの牛追いとして描かれてます。
そういう風な西部劇って、あんまりないんです。
そんなプロの彼らは、この稼業の辛さを身をもってベンに示していきます。
牛が盗まれたら一巻の終わりだし、いつも野宿だし、
食事も味になんかこだわらないし、いつ悪い奴に襲われるかわからない。
明日生きてる保障もない。お前が憧れてるカウボーイって、こんなだぞ、と。
旅を続けているうちに、夢と現実のギャップに悩んでいくベン。
この悩み、すっごく彼に共感できるんです。
誰でもみんな、思いませんか?新しい仕事、新しいコミュニティに加わった時。
ここに自分がいて本当にいいんだろうか?仕事続けられるだろうか?
自分の思っていた世界と違う。
ここにいる人たちのように自分はなれるんだろうか?
そんなことで悩んだことのある人なら、
きっとこの映画の中に、心に響くところがあると思います。
物語の最後、彼はキリスト教徒の集団に出会います。
彼らの考え方に惹かれはじめるベン。
さて、最終的に彼はどういう決断を下すのか。
それはぜひ見て確かめてみてください。
こう書いてみると、かなり暗い映画と思うかも知れませんが、
実際はそんなことなく、特に映像なんか物凄く美しいので、
それだけでも一見の価値ありと言える佳作ですよ。
↓予告編
http://www.youtube.com/watch?v=TSMFCJDVWms&feature=player_embedded
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