風音 

2005年11月22日(火) 23時14分
芥川賞作歌目取真俊の原作は大好きで、何度も読み返した。
映画化されると聞き、しかも作者の脚本でというので楽しみにしていたが、地方での上映はまったく無く、DVD化されてやっと見ることができた。
大好きな沖縄が舞台。
戦火の中、海岸で日本の特攻隊の遺体を見つけた父と子は、島の風葬場にその体を運ぶ。
風習にのっとり体を清める父。立ち去り際、息子清吉の目に飛び込んだのは1本の万年筆だった。
後日彼はその万年筆を拾いに行く。特攻隊兵士の白い体は、すでにたくさんの蟹やヤドカリに覆われていた。
戦後数十年が経ち、風葬場の高い岩場にひとつの頭蓋骨が置かれていた。
海風が吹くとその頭蓋骨に開いた小さな穴から風が入り込み、不思議な音を立てる。
そのもの悲しげな音ゆえに、それは泣き御頭(なきうんかみ)と呼ばれていた。あるとき、村の子ども達のいたずらによりその風音が消えてしまう。
そんな中、その兵士の消息を訪ねて一人の老婦人が村にやってくる。問われても何も答えない年老いた清吉。
一方、夫の暴力から逃れ小学生の息子を連れて島に帰ってきた和枝をめぐる事件が起こり・・・。
キャストは子ども達も含めてほとんどが沖縄の人たち。
何と言っても寡黙な清吉役の上間宗男さんがいい。
うみんちゅの風格、でーじかっこいい!
原作よりも多くのエピソードを盛り込んで(少々唐突な部分も)、私のイメージしていたのとは少し違ったけれど、まあまあ良かったかな。
原作に勝るものなし、と改めて思うのであります。


≪監督≫東 陽一
≪原作・脚本≫目取真 俊
≪キャスト≫加藤治子/上間宗男/つみきみほ/光石研/吉田妙子

小さな中国のお針子 

2005年11月20日(日) 22時46分
1971年、文革の嵐吹き荒れる中国。
反革命分子である医者の息子のルオとマーは再教育のため山奥の僻地へと下方される。
再教育というのは町育ちの若者には想像も出来ない過酷な労働だった。
彼らは読み書きの出来ない村人のために、北朝鮮の映画を見てその内容を話して聞かせる。
村人にとってもそれは唯一の娯楽と言って良かった。
あるとき、年老いた仕立屋とそのお針子である孫娘が村にやってくる。
二人はたちまちそのお針子に夢中になってしまう。
彼らは同じく再教育で来ていた詩人の息子が隠し持っていた西洋の小説を盗み出し、お針子に読んで聞かせる。
彼女がもっとも心を惹かれたのはバルザックの小説だった。
やがてバルザックに影響を受けたお針子は自由に生きることにめざめ、村を出て行く。
文革の時代も、私たち日本人には容易に理解できない社会概念だ。
現代中国の強大なエネルギーを生み出したのは、あの息苦しく抑鬱的な時代があってこそなのだろうか。


≪監督・原作・脚本≫ダイ・シージエ
≪キャスト≫ジョウ・シュン/チュン・コン/リィウ・イエ

大統領の理髪師 

2005年11月19日(土) 22時07分
1960年代韓国。典型的な庶民である床屋のソン・ハンモが運命のイタズラで大統領の理髪師になってしまう。
随所にちりばめられたユーモア。
それに包まれた大いなる政治風刺。
知ることの無かった韓国の近代史の一端をかいまみることができた。
韓国のベトナム戦争への従軍もしかりである。
下痢をしたために北のスパイと接触したと疑われ連行され拷問される町の人々。幼い息子ナガンもその一人。
ナガンが笑いながら電気拷問を受けるシーンは子どもゆえの演出だろうが、リアルな拷問よりも狂気的で恐い。
それにしてもソン・ガンホの演技がすばらしい。
韓国映画の恐るべし、である。

監督:イム・チャンサン
キャスト:ソン・ガンホ/ムン・ソリ/イ・ジェウン/ソン・ビョンホ他


さよならニッポン! GOODBYE JAPAN 

2005年08月09日(火) 9時52分

沖縄を舞台にした映画と聞けば異常反応する私。
作品の内容良し悪しにかかわらず飛びつくので、見終わった後「やれやれなんでこんなの作ったかねえ」と、ため息をついてしまうことも、まれにある。
先だってはテレビドラマ『瑠璃の島』に夢中になっていた。八重山の鳩間島を舞台にしたジャーナリスト森口豁原作の『子乞い』をドラマ化したものだ。
そのドラマに出演していた緒方拳がこの映画の主人公。緒方拳って沖縄好き?
以前にも『OKINAWAN BOYS オキナワの少年』で「まぶや〜、まぶや〜」って叫んでいたけれど、あれはめちゃくちゃ濃い映画だったなあ。
さて、『さよならニッポン』ストーリーはこう。
日本最南端の離島、赤尾根古島が、台風で甚大被害を受ける。しかし、窮状を訴える島の人々に対し、県や国の対応はあまりにもおそまつだった。
サツマ、ヤマト、アメリカーと従属の歴史を歩んできた赤尾根古島。
村長の大瀬利(緒方拳)は島民に向かって日本からの独立を宣言する。
賛成派反対派入り乱れ、騒動は国を巻き込み、国際問題へと発展していく。
自衛隊が派遣されるに及んで、大統領となった大瀬利はアメリカと手を組む大ばくちをうつ。とまあ、おもしろおかしい一見荒唐無稽な内容。
しかし、いつの時代も理不尽な従属を強いられてきた琉球弧の人々の真の思いは、案外こんなところにあるのかもしれない。
海を渡る長ーい橋の風景。会話の言葉の最後に「・・・・さいが」とつくのでロケ地は宮古かなと思っていたら、最後に大統領が「たんでぃーがたんでぃ」とお礼を言ったので、あ、やっぱり。
自主独立の気風のある(と、勝手に思っているのだが)宮古島なら何となく納得。
しかも池間島ならもっと納得。
秀作とは言わないまでも、オキナワおたくにはたまらない1本かも、です。


*1995年
*監督  堤幸彦
*出演  緒形拳 、藤真利子 、左とん平 、中尾彬 、根津甚八 、松村 達雄

ブラザー・フッド 

2005年04月05日(火) 20時49分
貧しいながらも賢明に生きるジンテとジンソクの兄弟。おりしも朝鮮戦争が勃発。ふたりは強制徴用され前線に送られる。
兄のジンテは愛する弟を除隊させたい一心で過酷で危険な任務を志願する。
手柄を立て勲章をもらうことで得られる恩賞で弟を自由にさせることができると知ったからだ。
そんな兄に反発する心優しい弟ジンソク。

同じ民族同士が政治思想の違いによって殺し合うという悲惨な朝鮮半島の歴史を、私たち日本人はどれほど理解しているのだろうか。
皮肉なことに、戦後の荒廃した日本は、朝鮮戦争特需で沸いた。
朝鮮韓国の人々を踏み台にして日本は飛躍的に復興していくのである。

戦場の描き方はかなりリアル。
肉弾飛び散るシーンの連続で、私的には少々参る。
ジンテの婚約者が先日自死した女優イ・ウンジュ。この映画でも非業の死を遂げる役どころだったのが痛ましい。
号泣もののラストシーンが用意されているが、全編濃い映像だったため、とても疲れてしまった。
とはいえ、私自身、朝鮮戦争について通り一遍の知識しか持ち合わせていなかったことをつくづく思わせられた。
ちなみに弟ジンソク役のウォンビンはキムタクに見えて仕方なかった。似てません?

≪監督≫ カン・ジュウギュ
≪キャスト≫チャン・ドンゴン / ウォンビン / イ・ウンジュ

深呼吸の必要 

2005年04月01日(金) 23時28分
沖縄のサトウキビ収穫のアルバイトにやってきた7人の若者たちの物語。
それぞれ様々な事情を抱えて島にやってきた彼ら。
自分の中に閉じこもりお互いに心をひらこうとしない彼らだったが、過酷な島の仕事を通して、しだいに自分をみつめなおしていく。
ストーリーの展開はまことに地味。
炎天の中、もくもくと仕事をするシーンが続く。
とはいえ、ロケは宮古島、沖永良部島とくれば、南の島フリークの私には、それだけでもうたまらん映画です。
全編宮古でロケをするはずが、2003年の超大型台風によってサトウキビ畑は壊滅状態。
やむなく沖永良部島でロケをしたとのこと。
畑のサトウキビを全部買い上げて刈り取るというこの映画。
実際のサトウキビの収穫より早いロケで、実は稲でいえば青田刈りの状態。
映画のために早く刈り取ったサトウキビは翌年の植え付けに使ってもらったという話しで、無駄にならずによかったね。
息子に、「このバイトやってみたら?」と言ったら即座に「いやだ」と言われた。
実際、これを手作業でやるのは大変な仕事だ。
機械化もされているのだろうけど。
ところで、出演してる大森南朋って、麿赤児の息子だったんだってね。
知りませんでした。

《監督》 篠原哲雄
《脚本》 長谷川康夫
《音楽》 小林武史
《出演》 香里奈 谷原章介 成宮寛貴 金子さやか 
     久遠さやか 長澤まさみ 大森南朋 北村三郎 吉田妙子 他

69 sixty nine 

2005年03月06日(日) 12時58分
突然ですが、「パッチギ」が見たい!
ふだん映画館に行くことなど滅多にない私。
珍しく足を運んでまでも見たいと思っているのに、
地元の映画館ではいまだかかっていません。
やっぱりレンタル化されるまで、待つことになりそうです。
同時代を背景にしたこの「69」もずっと見たかった映画です。
ま、借りてきてさっさと見りゃよかっただけのことですが。
タイミング悪く、いつもレンタル中で。
この映画の時代背景はまさに私の青春時代と重なるんです。
だから原作もでてすぐに読みました。

70年安保の前年のこの年、学生運動は激化し、東大入試は中止。
社会全体は混沌としながらも大きなエネルギーが渦巻いていました。
そしてその中に高校生の私もいました。
大なり小なり世の中の出来事に無関心でいられない時代だったように思います。
映画や小説の中に出てくるその時代に、青春時代を過ごした親を
わが家の子ども達はうらやましいなどと言うときがあります。
けれど私たちがどんなにノスタルジィにひたっても、あの時代が決して
今よりすばらしかったとは思いません。
ただ自分たちが若かっただけのこと。
多様な選択肢のある現代のほうがいいに決まっているのです。
ただ、あの時代、社会の閉塞感が今と比べてはるかに強かったこと、
そしてそれを突き破ろうとするエネルギーが格段に大きかったことは
まちがいないような気がします。

で、この「69」おもしろかったです。妻夫木くんはいい役者さんですね。
主人公は、時代の思想などおかまいなく、「おもしろいことをしたい」
「彼女の気を引きたい」そんなことだけで突っ走っていきます。
そんな彼の行動は一見破天荒に見えますが、閉塞した世界に息づく
若者のナイーブさがほの見えて、うれしくなります。
脚本の宮藤官九郎が人気なのも分かりました。


《原作》 村上 龍
《脚本》 宮藤官九郎
《監督》 李 相日
《出演》 妻夫木聡 安藤政信 金井勇太 太田莉菜 柴田恭平

ブリキの太鼓 

2004年12月21日(火) 1時16分
これもだいぶ前に見た映画です。
とにかく一筋縄ではいかない、一種独特のグロテスクな世界。
実は私はギュンター・グラスの原作を先に読みました。
で、映画を見て驚いたこと。
主役のオスカルを演じるダービッド・ベネントがぴったり役にはまって、まさにオスカルそのものの存在感でした。
それはもうこわいぐらい。
ということで、以下のストーリーの説明は某サイトの解説より引用しました。m(_ _)m


ポーランドのダンチッヒ(現在のグダニスク)を舞台に、1927年から1945年の激動の時代を描いた異色作。
3歳で自らの成長を止めた少年オスカル。彼はブリキの太鼓を叩き、奇声を発しガラスを割るという不思議な力を身につけていた。
従兄との不倫を続ける母、臆病者の父、画面は時代が産んだ奇異なキャラクターとグロテスクな描写に溢れ、その毒気たるや凄まじいばかり。
その中にやがてナチスに呑み込まれていくポーランドの姿が浮かび上がってくる。


《原作》ギュンター・グラス
《監督》フォルカー・シュレンドルフ
《出演》ダービッド・ベネント他

さよなら子供たち 

2004年12月13日(月) 23時16分
ナチス時代を描いた映画は数知れない。
人間が潜在的に持つ支配と征服の欲望、その究極の形としての戦争が生み出す狂気。
映画を媒介として、私たちはそれを見せつけられる。
さまざまな登場人物の視点を通して、また彼らの言葉を介して、生きることの崇高さと、同時に生きていくうえの愚かさも知るのである。
昨夜はテレビで《戦場のピアニスト》が放映されていた。
ユダヤ人が無差別に殺されていくシーンは見ていて正直つらいものがあった。

《さよなら子供たち》はルイ・マル監督の、自伝的色彩が濃厚なナチス占領時代の物語。
1944年、ナチス占領時代のフランス。パリからカトリック寄宿学校に疎開している12歳の少年ジュリアン・カンタンの学校に、ある日ジャン・ボネという少年が転入してくる。
成績優秀なジャンはジュリアンのライバルとなったが、二人の間には次第に友情が芽生える。
しかし、ふとしたことからジャンが偽名を使ったユダヤ人であることを知るようになる。
息苦しい恐怖が支配する暗鬱の時代。
そして、その時代を生きねばならなかった少年たちの揺れ動く思い。
直截な映像表現をとらなくとも、それらのすべてが見えてくるような気がする。

《監督》 ルイ・マル
《出演》 ガスパー・マネス, ラファエル・フェジョー,

サンピエールの未亡人 

2004年12月09日(木) 19時54分
ルコントの描く男女の愛はまったくもって複雑です。

1849年、カナダにあるフランス領サン・ピエール島。
この島に駐留する軍隊長ジャンとその美し く純真な妻マダム・ラ。二人は深い愛で結ばれ、互いに尊敬し慈しみ合っていた。そこに島に流れ着いて酒に酔った勢いで殺人を犯し、死刑を宣告された荒くれ者の漁師ニールが現れる。
彼は本国から島に処刑用のギロチンが運ばれるまでの間、マダム・ラの身の回りを手伝うことになる。マダム・ラは粗野で無教養だが純朴で優しいニールの心を理解する。
島の人々とも親交を深め一人の人間として成長し、死刑宣告を受けた時点からは明らかに変わってきているニール。果たして本当にこの世からその存在を消してしまってもいいのだろうか・・・。
マダム・ラはなぜそこまでの愛情(精神的な)をニールに注ぐことができるのか。
なぜジャンは自分の名誉を捨ててまでも、寛容な愛で妻を見守ることが出来るのか。
平凡な私には想像もつかない世界なのでした。
NHKBSで放送されたときの題名は『サンピエールの命』だったような・・・。
思い違いかな。

《監督》 パトリス・ルコント
《出演》 ジュリエット・ビノシュ 他
P R
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