プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:ujyzoyzepeaisc
読者になる
2010年07月
« 前の月    |    次の月 »
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
Yapme!一覧
読者になる
電子書籍をフリマで対面販売する「電書部」が目指すものとは(後編) / 2010年07月13日(火)
 KindleやiPadといった電子書籍端末をターゲットにした新時代の出版の実践例が「電子書籍部」である。大ヒットのパズルゲーム「ぷよぷよ」の作者であり立命館大学映像学部教授の米光一成(よねみつ・かずなり)氏が発起人を務めるこの“電書部”は、2010年5月の同人誌即売会「文学フリマ」で、15冊の電子書籍を投入。対面販売というユニークなスタイルで、わずか1日にして1453冊を売り上げるという快挙を成し遂げた。同部ではこの文学フリマでの成功を経て、来る7月17日には電子書籍限定の即売イベント「電書フリマ」を開催する。

【拡大画像や他の画像】

 電書部の活動について、「部長」である米光氏に話を聞いた。後編の今回は、1400冊以上を売り上げた文学フリマ、コミュニケーションツールとしての電子書籍に触れる。

●1度買った人が、数時間後にまた来てくれた

誠 Biz.ID 実際に文学フリマで電書を買われた方の反応はいかがでしたか。

米光氏 うれしかったのは、2冊ぐらい買った人が数時間後にまた来てくれて、「残りも買いにきた」って買ってくれたんです。おお、1日の販売なのにリピーターが!と。サポートもほとんど必要なかった。なんかミスがあってたくさん来たらたいへんだって思ってたんですけど、そうでもなかった。2通ぐらいダウンロードできないってあったけど、メールでやりとりしてすぐに解決しました。

誠 Biz.ID ダウンロードした電書は、購入時に登録したメールアドレスがページの左下に入るようになってると思うのですが、あの仕組みに行き着いた経緯などをお伺いできればと思うのですが。

米光氏 著者へのリスペクトはある、というのが基本的な考え方なんです。だから、「著者へのリスペクトがある読者」が不自由になるようなことはしたくない。なので、コピー禁止をガチガチにやるんじゃなくて、メールアドレスをいれるというスタイルになりました。あなたの電書ですよ、という感じで。

誠 Biz.ID メールアドレスを組み込んでパブリッシュするというプログラム的なところがよくできてるなと思ったのですが、あのあたりも内製ということになるんでしょうか。

米光氏 はい。技術班が作ってくれました。

誠 Biz.ID そのあたりのノウハウの蓄積は前回の文学フリマでかなり確立して、今回の電書フリマではそれを踏襲して質をあげていくといった捉え方になるのでしょうか。それとも前回なかったような新しい試みをさらに追加されたりもするのでしょうか。

米光氏 前回の経験を踏まえて、いろいろ新しい部分も加えていっています。例えば前回の文学フリマのときは横書きのみだったんですね。縦書きしようとすると画像で持つしかなかった。長嶋有さんの「あいまいな吟行+」は、文字だけど画像で表示してた。それを今回はPDFは縦書きもOKにしました。なので「あいまいな吟行+」が、PDF版は文字として表示されます。あと、マンガとか写真集みたいなものも前回はやりにくくて特別対応的にやってたんですね。それも今回スムーズにできるようにしようとしています。そういった表示部分の地味なところも、しっかりとやっていってます。

誠 Biz.ID 販売のスキームがほぼ確立できたぶん、表示まわりを強化してる感じですね。

米光氏 販売も、種類が増えるので試行錯誤してます。前回は15種だったから、あれこれ選んでもらうか全種まとめ買いって感じにしてたんだけど、今回30種とかそれ以上(編集部注:7月9日現在、約70種)になると、それがしんどくなってくる。なのでどうしようかというのが、販売スタイルの最大のテーマです。

誠 Biz.ID 前回文学フリマに来られたお客さんは、ブースにこられた段階で購入物はほぼ決めているという感じだったんでしょうか。

米光氏 見本誌を見て決める人と、あとは、事前にWebとかの情報で決めてる人がいたような気がします。安いしかさばらないので、全まとめ買いの人が多かったんですよ。

誠 Biz.ID それが30種となると、どうなるかですよね。

米光氏 全まとめ買いだと、さすがにそんなには読まない! って感じの数や豊富さになってきてると思うので、それ以外の買いやすい選択肢を作ろうとしています。電書に興味がある人向けのセットとか、俳句短歌セットとか、マンガセットとか。

誠 Biz.ID 今回はマンガもわりとある感じなんでしょうか。

米光氏 マンガ、あります。ぼくがピンとこないぐらいマニアックなマンガも出てきそうです。まあ、ひとまず今回の電書フリマは、ぼくは場を作ろう、と。

誠 Biz.ID 電書でさえあれば、そのあたりの内容の幅はかなり広めにとっておられるわけですね。

米光氏 やー、そこは難しいんですよね。なんでもかんでもOKにしちゃうと、規模が大きくなって、たいへん。だから、まあ、部活かなーと。ぼくたちのやってる感じを見てもらって、いいなーって思ったら参加してよ、っていうふうにしたい。

誠 Biz.ID 部長どころか、顧問や会長になってしまいそうですね(笑)

米光氏 ちがう感じでやりたい人は、また別の部を作ってもらえればいいなーと思うんです。というかやってほしい。お互い協力しあえることがあれば協力しましょう、って感じで。

誠 Biz.ID あまり規模が広がりすぎても運営が難しくなりそうですね。

米光氏 システムが完成してるわけじゃないので、人数が増えるとあれこれ混乱しちゃいますよね。知ってることや経験の違いがあるので、単純に情報の伝達がうまくいかなかったり。やってきた側は、もう当然のことだと勘違いしちゃうんですよね。電書を対面販売するシステムも、買った経験のある人や、実際に観てると、簡単に分かりますよね。だけど、あれを、見てない人、体験してない人に、実感してもらうのって、けっこうむずかしい。

誠 Biz.ID じつは今回のインタビューを誌面に掲載する際も、そのへんの見せ方をどうしようかと思ってまして。おそらく即売会に来たことがない人は、ああいう机がズラーッと並んでて、その前で何が欲しいかを告げる、という雰囲気自体が分からないですし。

米光氏 次回の電書フリマはちょっとスタイルがかわるので、またイメージしにくいかも(笑) 前回は文学フリマのいちブースを借りてやったのでああいった感じだったのですが、今回はカフェを借りてやるので、みんながそれぞれのブースに個別にいて販売しているというモノにならないんですよ。カフェだというだけじゃなくて、個別ブースで販売しているという即売会の雰囲気自体が、まったくチェンジすると思います。そこを楽しみにしてくれるといいなー、と。

誠 Biz.ID こんども、窓口が1カ所で、そこで30冊の中からまとめて買うといった形でよいんでしょうか。

米光氏 カフェで、電書でも買って、わいわい話したり。近所に電書場を用意したり、「僕たちだけがおもしろい」っていうネットラジオの公開収録が「なかよし開催」として行われたり、なんだか楽しいことが同時多発に起こってるよってイメージなんです。

誠 Biz.ID なるほど。それは例えば先程おっしゃったジャンル別に分かれたりといった、そうした形になるんでしょうか。

米光氏 なりません。あ、ちょっとはなるかな。コラボカフェやカフェ周辺に電書場所があるんですね。そこに電書者がいる。電書を販売する人です。PCかiPhoneかを持ってます。欲しい本をその人に言って代金を払えば、送信する仕組みです。どの人のところに行っても、基本は全種の中から選んで買える仕組みです。買うスタイルは混乱しないように、わりと統一した感じにしようと思います。でも、いろんな人がいろんなことをやってる感じも、出るんじゃないかなーと。

●電書では、著者も読者も1人の人のなかに混在している

米光氏 いま、デバイスが、対面販売を想定してないと思うんですよ。まあ、しないのが普通だろうけど(笑)

誠 Biz.ID しないですよね(笑)

米光氏 でも、対面販売を想定したデバイスがでると、すごく社会が変化すると思う。ポケモンを交換するぐらい気軽に、電書を作って、渡して、人のを読んで、ってできるとおもしろい。

誠 Biz.ID 著者と読者が完全に線引きして分かれているのではなく、両者が入れ替わり立ち替わり、といったイメージですね。

米光氏 そうです。自分の書いた電書を会った人に手渡せる。著者も読者も1人の人のなかに混在している。仕事で会ってる人だけど、おたがいに釣りが趣味って人は、仕事のうちあわせしてるときに勝手に電書が交換していて、あとからもどって互いの釣りの電書を読むとか。

誠 Biz.ID 趣味嗜好の近い方のコミュニケーションといったところでしょうか。

米光氏 電書部員に、自主製作の映画監督がいます。彼が自分の好きな監督のインタビュー集「自主映画テクニカ」を電書で作ってる。5人ぐらいの監督のインタビューが載る予定です。これ、PCが一台あれば、上映会の会場で、売れちゃうんですよ。紙の本だと在庫をどう抱えるかとか、郵送とかなんとかたいへんだけど、その手間がまったくなしでPC一台あって人がいれば渡せる。そうすると他の4人の監督のことを知ってもらえる。電書が自主映画のコミュニティのハブとしてひとつのツールになると思うんですね。ネットで販売っていうよりも、その上映会で販売しているほうがいい。そこに行った人がそこで買って読める。

誠 Biz.ID ハブという考え方は面白いですね。

米光氏 読者と作者がよりダイレクトに結びつく。コミュニケートできる場をつくるきっかけとしての電書の役割。書籍って、編集者やデザイナーや、著者や校正者の手を経て、取次や流通や、営業や書店や、いろんな人の手を経て世に出て行く。それは逆にいいことで、それだけの人が届けようとしているモノだっていうパワーがある。だから書籍ってちゃんと重い。価値がある。でも逆に、それをすっとばして手渡せる本があってもいいなーと。それは軽いかもしれないけど、軽いことがプラスになることもある。途中経過のような本として電書があってもいい。わっと作って、その電書をスタートとしてあれこれ対話して、何か作って、それでまた電書作って。その成果として最終的に紙の本を出すというのでもいい。電書って、何かのスタートのきっかけにできる、プロセスとして出せる。簡単だし、経費かからないし、すぐ出せるから。経費かかるし、手間もかかるし、すぐ出すには適さない紙の本はもっとしっかり作って、あるひとつの結論を提示するものになっていくんじゃないかなーと思います。

誠 Biz.ID KindleのあとにiPadもでて、プラットフォームが身近になってきたというのも大きそうですね。

米光氏 そうですね。そこが、もっと、どんどん身近になってほしい。

誠 Biz.ID そのへんのウェブと電書の違いは、冒頭に伺った、どの読者層を想定するかといったところにつながってくると。

米光氏 うん。「自主映画テクニカ」みたいなものは電書で、上映会場で売ってるほうがいい感じがするでしょ。求める人のところに求めるものがあるという。その感じは、作り手側にも影響を与える。ウェブだとばかばかしい炎上になる可能性もあるから言えないことだって、しっかりと言える。あれこれ危険性を考えてそれを避けた文章って、つまんない。そうじゃない文章が書ける選択肢のひとつとして機能すればいいなーと。

誠 Biz.ID なるほど。対面販売という選択肢が消去法で残ったわけではないということですね。

米光氏 ええ、実に積極的な対面販売なんですよ。というか、勝手な未来像として、名刺を交換するぐらいの感じで電書を交換してる社会ってありだな、とかって思ってます。会った人のこと詳しく知りたい。けど、例えばいきなりは「ゾンビマニアです」って言えない場合が多いけど、電書にその思いをまとめて、渡すことはできる。

誠 Biz.ID ゾンビマニアですか(笑)

米光氏 初対面でゾンビ話をえんえんとするのは、まあ、ねぇ、できない。でも、電書ならもらったほうは、興味がなければ(この人は)ゾンビ好きなのかー、で読まなきゃいいけど、興味あれば読んで、また自分が電書作って次に会った時に渡すとか。名刺って名前と肩書きだけしかないけど、人ってそんなに単純じゃないから、そういう部分もちょっと手渡せたり、コミュニケートできるようになると楽しいかなーって。

●本を書くという発想はなくても、電書ならできるかもしれない

米光氏 電書のワークショップをしたとき、自分だったらどんなの作りますかって考えてもらったんですね。そうしたら「旬の工事現場」とか、「大道芸における差別と笑い」とか、その人にしか書けないだろう、ってアイデアがたくさんでてきた。しかもあとから聞くと、「本を自分が書くという発想はなかったけど、電書ならできそうだって気がして発想が出てきた」って人がたくさんいた。そういう感じでみんな出しちゃえばいいなーって思う。

誠 Biz.ID 本という単位で考えるから難しいのであって、ボリュームに制約がなく、また読者ターゲットを明確に絞れば、いくらでも書きようがある、という感じでしょうか。

米光氏 ええ。自分が好きな人が書いたものってやっぱり興味あるし、おもしろい。書く側もそういうちゃんと顔の見える人に渡すんだって意識すれば、書きやすい。「旬の工事現場」は、きっと工事現場好きの間だけで流通していくんですよ。あそこ来週工事らしいぜ、とかって。新しい書き方、新しい読書態度が、生まれてくる。それは、ちょっとすごいことだなーって思います。

誠 Biz.ID (笑)。社会学ですねえ。

米光氏 そうそう。でも社会学にしなくても流通できるんですよ。社会学にするか、写真集的にしっかりするか、サブカル的なおもしろいものにするか、パッケージにするためには、そういったことを考えざるをえなかった。でも、そうしなくても、ぜんぜんだいじょうぶ。コストや、時間がほぼ0になるって、人の意識に大きく影響を与えちゃうんですよね。気楽になる。失敗してもOKって気持ちで何度でもトライできる。いろいろなチャレンジができる。それはおもしろい。

誠 Biz.ID なるほど、発信していってボリュームがたまったところで、サブカルにするか社会学にするか考えればいい。考えないという選択肢もある。

米光氏 うん。たまってみるとサブカルでも社会学でもない、もっと何やらすごいものになってるって可能性もある。へんな枠に押し込めずにやったから、あたらしい枠ができちゃったみたいな。

誠 Biz.ID そういう意味では、紙の本と電書とでは、ハードウェアうんぬんよりも、性格というか、位置づけのところでまるで異なっているわけですね。

米光氏 そう思います。違うものとしてイメージしたほうがいい。

誠 Biz.ID 世間的には紙の本をいかにデジタルデータで読むかというところにフォーカスがいってますけど、まったく別のチャレンジという意味で。

米光氏 はい。そこだけじゃない、それ以外の部分にすごい可能性がある。

●印税100% 採算はあまり考えていない

誠 Biz.ID 価格設定についてはどのようにお考えですか? あまり採算とか、そういったお話でもないのかなと思うのですが。

米光氏 そうですね、販売システムでの採算は考えてません。値段も電書の制作者に自由に設定してもらってます。基本作った人が自由にできて、買う人がその価値を認めたらお金を払って、そのお金は作った人に手渡すというのが気持ちいいなーと。印税100%(笑)

誠 Biz.ID まさに同人的なところですね。

米光氏 同人とは思ってなくて、コンテンツを外へ伝えるシンプルな方法だと思っています。値段設定は自由だったんですが、前回はまとめ買いというシステムをつけたので、まとめて買う人には、1冊100円にしたい(計算楽だから)って、みなさんにお願いしていたので、そこで値段設定が、100円、200円ぐらいになってきたところはあると思います。

誠 Biz.ID ということは、今回も価格のラインはおおよそ同じくらいといったところでしょうか。

米光氏 そうですね。

誠 Biz.ID 最後に、今後こんなことをしてみたい! という構想などもしあれば教えていただけるとありがたいです。

米光氏 やりたいって言ってるのは、「電書フリマ47都道府県同時開催」。PCとかあれば、誰でもできちゃうので、もう、いろんなところで、電書フリマやってるよーみたいなのが。

誠 Biz.ID それはすごいですね。著者47人は同時に存在できそうにないですが(笑)

米光氏 はい(笑)。著者は無理に47カ所にいなくていいんですよ。いなくてもいい対面販売ってのもあると思っていて。例えばインコ好きが「季刊インコ」って作って、それ売るときはあちこちでインコオフとかやってると。そこで手に入れられるんですよーって。「季刊インコ」って作ったから、インコ好きのオフ会があちこちで発生してしまった、みたいな。

誠 Biz.ID わははは。

米光氏 インコ好きの間でどんどん流通していくんですよ。オレも「季刊インコ」欲しいから、こんど会おうよ、ってオフ会が連鎖していく。みたいなことが、あれこれ考えられておもしろいモノだなーと思うので、いろいろ実験してみてるって感じです。で、まあ、その実験発表会が、7月17日の電書フリマだと思っています。(終)【山口真弘】

【7月13日14時7分配信 誠 Biz.ID
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100713-00000053-zdn_b-inet
 
   
Posted at 22:24/ この記事のURL
P R
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ
 
 
Powered by yaplog!