こんな長いの貼れちゃった12

September 27 [Fri], 2013, 19:56
坂「…ふわ〜(あくび)今何時頃かな?」

上「え?22時かな」

坂「ちょっとラジオつけてもかまわない?」

上「…どうぞ」


 ラジオからZAROの『It's a boy』が流れてくる


上「…」

坂「これ1htアルバムの最後のバラード曲だわ。この曲がラジオで流れてるのって珍しいな」

上「へえ、ZAROのこういうスローバラードって初めて聞くな」

坂「アルバムの曲の最後はスローバラードで終るっていうのが長土さんのこだわりなのよね(苦笑)」

上「そうなの?俺らが今作ってるアルバムも、長土さんから1曲だけスローバラードにしてくれって言われてるんだけど」

坂「じゃあその曲が1htアルバムの最後の曲になる可能性は高いと思うわ(苦笑)」

上「…しかしWENDSがこんな状態で本当にアルバムなんか発売できんのかな」

坂「そんな弱気な事言ってちゃダメよ!アルバムは必ず発売させる事!そして詩も朝までに必ず仕上げてもらいますからね!(睨)」

上「は…はい(怖)」



上「うーん…でもモチーフっていっても結構難しいんだよな」(眉をしかめて考える)

坂「そうよね、うーんとりあえずは自分の素直な気持ちを書いてみるとか」

上「あのそんな事したらとんでもなく下品な詩になりますけど、よろしいんでしょうか(苦笑)」

坂「え?やだ上住くんてそういう人?(苦笑)」

上「…さ、さ〜?どうなんでしょうね(汗)」

坂「でも実はわたしも恋愛の詩って苦手」

上「そうなんですか」

坂「織田沢さんは経験が伴ってないからだとか言うけど大きなお世話よね」

上「…ほんっと大きなお世話っスね」


坂「…そういえば、あの時一緒に居た女の子とは続いてるの?」

上「へ?…あ〜、まああいつとはもう会ってないんですよ」

坂「そうなんだ…」

上「あの〜…いつだったかの朝にスタジオであいつと居たところを目撃された事ありましたよね、あの後「あいつより強く抱きしめろ」って言われた時は坂瀬さんいったいどうしちゃったのかと思いましたけど(苦笑)」

坂「あははわたしも自分があんな事言っちゃうなんてビックリしてる(苦笑)」

坂「…でも、あの時なぜだかそう思ってしまったのよね(恥)」


上「坂瀬さんって、本当解らない人だね」

坂「…解らないって?」

上「解らないよ、あなたと付き合う男は大変だと思うね」

坂「? …ねえあの、誰の事言ってるの?」

上「…」

坂「…まあ、とにかくあの時言った事だけは守ってくださいよね。ちゃんと同じステージに立てるようになるって上住くん約束してくれたよね(視)」

上「…」

坂「…でしょ?(顔を覗き込む)」

上「…もし、同じステージに立てたとして」

坂「え?」

上「坂瀬さんを強く抱きしめられたとして、そしたらその先には何かあるのかな?」

坂「え…何かって?」

上「もし強く抱きしめたら俺らその後どうかなるの?」

坂「…もっと強く抱きしめたら?(視)」

上「…ら(視)」

坂「…ら…らー…?(悩)」


上「そんな真剣に悩まないでよ(苦笑)」

坂「だっていきなり変な事聞くからじゃないっ(焦)」

上「なんか、面白いよね坂瀬さんって、気は強いんだろうけど優柔不断ていうか」

坂「ゆ、優柔不断ですって?(怒)」

上「いや、優しいからだと思うよ(言葉を変えれば)」

上「…あの人さ」

坂「え?」

上「あなたがいつもそんな態度だと池本さんも何かと勘違いしちゃうんじゃないの?」

坂「…どうしてそこで池本くんが出てくるの?」

上「や別に」

坂「言いなさいよ上住くんいったい何が言いたいの?」

上「あ、朝六本木で坂瀬さんが池本さんの車に乗ってるところをたまたま見たんだよ」

坂「…(焦)」

上「パパラッチ対策か何か知らないけど、カーフィルム後ろの窓に貼り忘れてるって言っといてあげてよ」

坂「…人の車を後ろから覗いてたんだ?悪趣味ね」

上「…たまたま通った所にあんたらが居たんだよ」

坂「たまたま通ったですって?…あなたこそ早朝からあんな場所で何してたのよ?」

上「え?(汗) いや別に」

坂「…池本くんとはあの朝以来会ってないわ」

上「へえ…そうなんだ」

坂「会ってもしょうがないもの」

上「…しょうがないって?」

坂「これ以上会ってもしょうがないのよ」

上「…なにそれ」

坂「別にあなたに同情してほしくて言うんじゃないけど、今のわたしの立場で誰かと付き合うなんて自由はまったくないの」

上「同情?…悪いけど俺は池本さんのほうに同情するよ」

坂「え?」

上「男に期待させといて、最後はわたしに自由はないとか言って逃げるなんてちょっとズルくないですか?」

坂「…」

上「坂瀬さんは悪気があってやってるわけじゃないと思うけど、天然だから余計にたちが悪いよ」

坂「たちが悪いですって?!(怒)」

上「…なんだよ(睨)」

坂「もとはといえばあなたが悪いのよ?(怒)」

上「な、なんで俺?」

坂「あなたがちゃんとしてないから悪いの!」

上「…ちゃんとって」

坂「あなたがちゃんと…わたしを安心させてくれないのが悪いんだからね?!」

上「あ、安心って…俺あんたの彼氏ですか?」

坂「…彼氏、とかいうのではないけど(困)」



上「…(苛) あーあなんかもう今日書ける気がしねぇし帰ろうかなっ(嘆)」

坂「ダメ!!今日は必ず詩を持って帰るんだから」

上「たかが詩1個できないぐらいでぶちゃけあんたには何の関係もないだろ」

坂「関係あるわよ」

上「…どう関係あるの?」

坂「…それは、今はちょっと言えない」

上「言えないんなら書かないよ」


坂「今は…詳しくは言えないけど、おおまかに言うと、わたしが自由になるためによ」

上「自由?さっき言ってたこと?誰かと付き合う自由がないって」

坂「…それも、関係あるわね」

坂「このまま長土さんの下にいる限り、わたしが自由になる日なんて来ないもの」

上「…坂瀬さんが自由になることとWENDSが売れるのと一体どういう関係があるの?」

坂「あなた達が作った曲が売れるっていうことは少なからず上住くんにもこの事務所での権限が生まれるって事なのよ」

坂「今この事務所は長土社長が生み出した運営形態に沿ってプロデューサーの意向ひとつですべての事が決定する仕組みになってるの」

坂「つまり、今のところアーティストはプロデュースされるだけで何の権限も持ってないって事なのよ」

坂「…でもあの人はそれを変えたがってる」

上「…あの人って?」

坂「社長のやっているプロデュース業っていうのは、わたしたちアーティスト側が自分たちの好きな曲を作るっていう当たり前の権限を奪ってる。それを変えるには、p'zのように自分達で作詞作曲した曲をヒットさせてその権限を取り戻すしかないの」

上「あの…俺にもそれをやれ、と?」

坂「悔しいんだけど、わたしがこの事務所に入った経緯には長土社長からの大きな借りがあるの。だからわたしにはあの人の意向に逆らってまでそんな権限を持つ事なんてできない」

上「…坂瀬さんが社長にどんな大きな借りがあるのか知らないけど…もしかして、あなたがそうなるようにあっちから仕向けられてこの事務所に入ったんじゃないの?」

坂「…かも知れないね(うつむく)」

上「要は、もしWENDSが売れて、俺にもこの会社で何かしらの権限が生まれたら、あなたを公私共による長土プロデュースから引き離せるかも知れないって事?」

坂「…公私共って(苦笑)」

上「うーん…まあ、俺にどこまでできるのかわかりませんけどとりあえず、今夜は頑張って書いてみますよ」(ペンを握る)

坂「…ありがと」




1992年5月24日AM12:00


 ♪♪♪上住の携帯電話が鳴る



上「うー…12時か、いつの間にか寝ちゃったな…てうわっ(驚)」

坂 (上住の肩に寄りかかって寝ている)

上「…(焦)」


 ♪♪♪携帯電話の音


上「はいはい、今出るよ」

夏「ハッピーバースデー!!上住くん!!」

上「…お、お前か」

夏「20歳おめでとーー!!」

上「こ、声がデケェよ声が(焦)」

夏「ナニナニ?声がデカイとなにかまずい事でもあるわけ??」

上「いいから声のボリューム落とせ(受話器を手で塞ぐ)」

夏「あーっ?!…なんかわかっちゃった〜」

上「…わかんなくっていいよ」

夏「ちょっと〜女と一緒だからって随分つめたいじゃない!」

上「うるせえな今何時だと思ってんだよ」

夏「きみが大人になった瞬間の声を聞きたかったのよ」

上「バカじゃないんですか?そんなもん変わらねぇだろ」

上「…しかしオレ今日が自分の誕生日ってすっかり忘れてたよ」

夏「ねーねーハッピーバースデー歌ってあげようか?」

上「イラネーイラネー電話ありがと、じゃあな」

夏「いいからいいから聞きなさいって!ハモッて歌ってあげるから」

上「は?」

夏「梨沙子、こっちおいで」

女の子「みやぁ、こんな時間に誰と電話してるの?」

夏「じゃあバースデーソングいくよ?」

夏、女の子「Happy Birthday to You〜♪Happy Birthday to You〜♪」

上「…」(黙って聞いている)


坂 (ぷっと笑い出す)

上「あ…」

坂 (笑いをこらえながら人差し指を口にあてる仕草をする)

夏、女の子「Happy Birthday dear 昇 Happy Birthday to You〜♪♪イエーイ!(拍手する) 」

女の子「ちょっとみや、昇って誰なの?」

夏「誰だっていいでしょ?どう?みやたちなかなか歌上手でしょ?じゃね!お邪魔しました〜おやすみぃ〜♪」


 ブチッと電話が切れる


上「…(呆)」

坂「アハハハかわいかった〜(笑)」

上「…そうですかね?(眉毛を片方しかめる)」

坂「今日上住くんの誕生日だったんだ?」

上「なんか、そうみたいですね」

坂「なんか嬉しいな、誕生日になった瞬間に一緒にいられたって」

坂「知らなかったからプレゼントしてあげられるものは何もないんだけどお誕生日おめでとー!(笑顔)」

上「あ、ありがと…あの、詩できたよ」

坂「えっ?もうできたの?すごいね(喜)」

上「もしかして、早くあの人のところに持っていきたいんじゃないかなと思って」

坂「あ…わたしが織田沢さんに頼まれて来たってことわかっちゃったの?」

上「はは、あの人がわざとこの日を選んであなたを来させたって事もなんとなくわかっちゃったかな(苦笑)」

坂「え?そういう事だったの?(苦笑) でも…持って行くのは朝になってからでいい」

上「そう?」

坂「もうしばらくのあいだ、上住くんと2人で居たいから」(上住の肩にもたれかかったまま目をつむる)



 ♪♪♪上住の携帯電話が鳴る


上「…オイまたかよ(苛)」

上「お前ナいい加減にしろよ!」(電話に出る)

母「…お母さんだけど?」

上「…は?どうしたんだよこんな時間に(驚)」

母「…(泣)」

上「…何泣いてんだよ、新しい家族と何かあった?」

母「昇、落ち着いて聞いてね…隆が、あなたのお兄ちゃんが昨日、自殺した…」

上「じ、自殺?(大驚)」



 5月24日 AM3:00 東京某病院



監察医「それではこちらが遺留品になりますので」(箱を手渡す)

女性「…お世話様でした(泣)」(受け取る)

上「…」(顔に白い布をかけられたベッドの上の男性を見つめている)

女性「母さん、今夜は帰らなきゃいけないのよ…あなた、一晩お兄ちゃんの事お願いできる?」

上「…あぁ」



 AM4:00 東京某葬儀場



上「…こんな場所でお前と朝まで2人きりか…こんな誕生日は滅多にねえだろうな」

葬儀屋「鈴本さん、来客の方がお見えになってます」

上「え?来客?」

葬儀屋「お通ししてもよろしいですか?」

上「…ええ」


織「よ」

上「織田沢さん(驚)」

織「…坂瀬から聞いてさ、お前の母ちゃんにこの場所聞いたんだ」

織「今日直接火葬場に行くんだって?」

上「…ええ」

織「…線香、あげさせてくれるかな?」

上「…どうぞ」

織 (線香に火をつけて手を合わせる)

上「ありがとうございます…でも、どうしてわざわざ?」

織「…俺も若い時に、兄を亡くしているんでね」

上「…」

織「でもまあお前が案外冷静なんで安心したよ」

上「…俺の様子を見に来てくださったんですか?」

織「イヤ、そういう事じゃないんだ」

上「…?」

織「ん。今言っていいのか迷ったんだが、お前落ち着いているようだから話すか」

織「…実は1週間ほど前に、隆くんがウチの事務所に来たんだよ」

上「…え?」

織「や、よくある事なんだよ。デビューしたとたんに、兄弟やら親戚やらを名乗って金の無心をしにくる輩が。ウチの事務所にもたまに来るもんでな」

上「…」

織「彼はお前の保護者だと名乗ってやって来てな、まあ、なんていうか…見るからに怪しかったし、要求してきた額もちょっと今までの相場を超えてたからさ」

織「少々手荒な事して追い返してしまったんだよ」

上「…」

織「…すまなかった。まさかこんな事になるとは(頭を下げる)」

上「…謝らないでください。織田沢さんは当然の事をしただけなんじゃないんですか?」

上「こいつ馬鹿なんですよ、このまま放っておいても他所の人に迷惑かけてたんじゃないかな」

織「…」

上「ただ…こうなっても帰る家もないし、ここから火葬場に運ばれて焼かれるだけ。父親はとっくに蒸発してるし、母親には新しい家庭がある、実質身内は弟の俺1人だけなんですよ、それだけがなんか不憫かな」

織「…お前だけでもこうやってここに居てくれて、兄さんも少しは救われてるさ」

織「上住、ここでこんな話をするのも何だが、彼の残した借金の事なら心配しなくていい」

上「え?」

織「お前の母さんとはもう話したんだが、本来なら借金の相続人はお前の母さんて事になると思うんだよ、しかし金額が結構あったんでな」

上「…」

織「彼女には相続を拒否してもらった、お前もその方がいいだろ?」

上「じゃあ、相続人は…オレ?」

織「…まあ、お前と、ウチの会社だ」

上「…」

織「…我々に任せておけ。お前は心配しなくていい」(上住の肩に手を乗せる)

織「じゃあ用は済んだんで俺は帰るぞ」

上「…ちょっと待って」

織「ん?」

上「そんな重要なこと何勝手に決めてんだよ?(睨)」

織「…んん?(視)」

上「こんな状態、まるで俺がビーリングに金借りてるようなもんじゃねぇかよ(怒)」

織「…ワケのわからん金融屋に借金してるよりはよっぽどいいと思うが(呆)」

上「…あなた、俺を買ったつもりですか?」

織「…言い方悪いなあ(苦笑)」

上「織田沢さん、この際ひとつ言っておきますけど、金で人が何でも思い通りになるなんて思わないほうがいいですよ」

織「…ほう(苦笑)」

上「最初会った時からあんたのそういう所はどうも気に入らねぇんだよ(怒)」

織「…そーいやあの50万はどうしたんだ?返すって言ってたよな(苦笑)」

上「…返すよ。みやびに払ったあの金もな」

織「…ほう?(苦笑)まあそんな生意気な口聞くのは結果を出してからにして欲しいもんだが」

上「…織田沢さん、あんたのやってる事は長土さんのやってる事と同じ事じゃない?」

織「…そうかい(苦笑)」

上「坂瀬泉水の弱みにつけ込んで金で買った彼女を自分の思い通りにしてるあいつと一緒」

織「…お前がいったい何を知ってるんだよ?(苦笑)」

上「あんたが会社をどう変えたいのかは知らない。でも俺もあの人もアンタ達の思い通りにはならないよ」

織「素晴らしい心意気だね。しかし想像でものを言うのはその辺でやめといた方がいいぞ(呆)」

織「じゃあな鈴本、隆くんにはお前しかいないんだからしっかり見送ってやれよ」(出口に向かう)

上「…」

織「あ、そうだ最後に。まだ手直しは必要だが、昨日お前が作った詩のモチーフ良かったぞ非常に(苦笑)」



AM10:30 東京 某トレーニングジム



トレーナー「あと3回!!」

池「いぃーーっち!にぃーーぃい!さあーんんっ!!」

池 「ぐわぁっ」(グタッとシットアップベンチに倒れ込む)

トレーナー「池本さん!お疲れ様でした」

池「本当に疲れました(苦笑)」

トレーナー「大丈夫ですか?(笑)しかし、もう相当腹筋が割れてきましたね」

池「1日1000回もやってればねぇ(苦笑)」

トレーナー「池本さんは確か歌手の卵でしたよね?そこまで体鍛えるんなら今からアスリートに変更した方がいいんじゃないですか?(笑)」

池「まあ、アスリート並の体力を持つ歌い手ってのが目標なんだよね(笑)」

トレーナー「あぁ、そういえばあちらの女性も歌手だそうですよ?」(腹筋を鍛えている女性を見る)

池「ほぇ、彼女見慣れない顔だねぇ」

トレーナー「ええ、先週入会されたばかりです」


女性「ぅー!」(苦しそうに腹筋をする)

池「あと10回!!」

女性「えぇっ?」

池「はい、いぃーっち!」

女性「ぅぅ〜っ」(苦しそうに上半身を起こす)

池「頑張れーっ!にぃーーっい!」


池「はい、ラスいちー!」

女性「んん〜っ!!」(力を振り絞って上半身を起こす)

池「いえーい!」

女性「はああ〜っ」(グッタリとシットアップベンチに横たわる)

池「お疲れ!いや〜すごいね根性あるネ!はい、タオルはこれでいいのかな?(笑顔)」

女性「ありがと!腹筋1度に200回を越えたのは人生初(苦笑)」(受け取ったタオルで汗を拭く)

池「わ〜お、おめでと〜!じゃあ腹筋200回記念に僕がドリンクでも奢ってあげましょう(笑顔)」

女性「え?」

池「疲れた体が喜ぶお薦めドリンクがあるんだけど飲んでみる?(視)」

女性「え?何ですか?(視)」

池「ちょっと待っててね〜(笑顔) すいません、スペシャル2つお願い」(バーカウンターのスタッフに注文する)

池「どぞっ(笑顔)」(ドリンクを片方差し出す)

女性「い、いただきまぁす…」

女性「あっ…甘っ〜いっ!」

池「チョコバナナミルク&プロティン〜(笑)」

女性「あ、あたし甘いの苦手なの」

池「あ、そうなんだ?大丈夫?ごめんね?(女性の顔を覗きこむ)」

女性「…あ、でも、ナンか美味しい」

池「そう?よかった〜(笑顔)」(あれ?この子の顔どっかで見た事あるな…)

女性「今、あたしの体がこれを欲してるって気がする」(ゴクゴクと飲む)

池「でしょ?筋トレの後は糖質とタンパク質が一番だからね〜(笑顔)」(飲み干す)



女性「え?北海道の岩内町出身?」

池「うん。あなたも北海道?札幌出身かぁ、都会っ子だ〜(笑)」

女性「しかも同じ歳で誕生日も近くて同じ血液型だなんて(苦笑)」

池「すごい偶然だねぇ(苦笑)」

女性「しかも…歌手の卵?」

池「そういえば、さっきトレーナーに聞いたけどきみも歌手なんだって?」

女性「…そう、3日後にビーリングからデビューする予定」

池「…ビ、ビーリングから?(顔がひきつる)」

女性「…?ま、まさかあなたも、ビーリング?(驚)」

池「…実はそうなんだよね〜っいや〜世間ってのは狭いねぇ〜まあ俺はデビューはまだ先の話なんだけど(苦笑)」

女性「じゃあ、あたしの方が先輩ってわけですか?(笑)」

池「イヤ、このジム内に関しては俺の方が先輩だよっ なんせ1年も前から通ってるからね〜(笑顔)」

女性「じゃあ先輩、これからもちょくちょくここに来るんでご指導お願いしますね!」

池「おぅ!任せとき〜っ立派なアスリートにしてあげるよっ(笑)」

女性「いや、あたしそういうの目指してないんで!普通のトレーニングで(苦笑)」

池「オォッケ〜(苦笑) あ、申し送れたけど僕、池本秀一っていいます。ヨロシクねっ(笑顔)」(手を差し出す)

女性「あたし大黒魅季っていいます。どうぞよろしく!(笑顔)」(握手する)



AM11:00 東京 某火葬場



男性「鈴本さま、ご出棺の手筈が整いましたので」

上「…どうも」

母「隆の好きだったものはこれぐらいかしらね…」(棺の中にたくさんの物と花を添えている)

母「…あ、コレを入れるのを忘れるところだったわ」(バッグからCDを取り出して棺の中に入れる)

上「俺のCD?何でこんなもん入れんだよ(呆)」

母「…入れてあげて、お願い」

上「こんなもん入れてもあいつは喜ばねぇよ(怒)」

母「…喜ぶわよ」

母「…お兄ちゃんの遺留品の中に入っていたんだから(涙)」

上「…(驚)」


AM11:15 火葬場の煙突から静かに煙が立ち昇る


上「兄貴…せめてもっと売れたCD持ってから天国に逝けよな」(煙突から出ていく煙を見つめている)



PM1:00 東京港区 ビーリングビル



長「…ほーっ 中々やるじゃねぇかよあの小僧」(上住が作った詩の書いてある用紙を読んでいる)

織「魚済さんのご要望のCMイメージに添える詩になっているといいんですが」

長「あいつ、今はCMディレクターなんぞやっとるがコピーライター時代が長かったからな、どうしても多少見る目は厳しくなってしまうかも知れんが、この詩ならイケる気がするな俺は」

織「急いでせかしたわりには意外とキチンとした詩を書いてきたんで俺もちょっと驚いてるんですよ」

長「…ふむ、『もっと強く抱きしめたら もう他に探すものはない』か。アイツ、なんか吹っ切れたのか?(苦笑)」

織「まあ、良い見方をして、ようやくウチの事務所でやっていく覚悟が決まったんだと捕らえておきましょうか(苦笑)」

長「ま〜、最初は暗い目をした田舎臭いチンピラみたいなただのガキだと思っていたが、どうやら俺の直感に狂いはなかったようだね」(用紙をバッグの中に保管する)

織「…ですね、ただ、彼の場合は表面的にはあまり子供扱いしないほうが返ってこちらの言う事を聞くような気がするんですよ」

長「なるほど、上住は取り扱いによってはドル箱にも刃物にもなる男かも知れんからな(苦笑)」

長「まあ、稲辺のヤツも最初は世間知らずの坊ちゃんだったが、松友のやつにまんまとマインドコントロールさせられちまって今やp'zは完全に俺の手から離れたからなぁ…」

織「確かにそちらの心配はまだWENDSには無用ですかね」

長「ふむ。まあ、柴坂上住はいいとして…後々問題になってきそうなのが、大沼か」

織「…」




5月30日 PM2:30 東京某レコーディングスタジオ


大「♪♪〜(鼻唄)」(シンセサイザーをチューニングしている)


コンコン(ドアをノックする音)


柴「大沼くん、お疲れ」(顔を覗かせる)

大「おおっ柴さーん、お疲れ〜っす!今ちょうど音源が完成したところなんですよ」

柴「ん?」

大「次の新曲候補、ちょっと聞いてくださいよ」(シンセサイザーのつまみを回して音量を上げる)


♪♪♪〜(時の扉の音源が流れる)


柴「おお?イイネェ!特にAメロ出だし(笑)」

大「んー…いいんですけど俺としてはもうちょっとスタイリッシュでラグジュアリーな感じが出したいんですよね」

柴「ラグジュアリーね(ナンダそりゃ?)…まあ大沼くん1人でアレンジしていくってのも結構大変だよね」

大「これ半年ぐらい前からボツボツと作ってんですけど中々納得のいくサウンドになってくれなくて」

柴「…まだ大沼くんのイメージ通りじゃない?」

大「うん…そうッスねぇ」

大「そういえば柴坂さん、今日音入れでしたっけ?」

柴「いや、今日はちょっとこれ借りにきたんだよ」(背中を向けてギターを見せる)

大「お、アコギ?」

柴「うん。急に社長がデビューシングルの曲をアコースティック調にしてくれって言ってきたもんだからサ」

大「ほぇ…あ、せっかくだからここで少し弾いていきます?俺の予約した時間まだ1時間半ぐらい残ってるんで」

柴「そりゃ嬉しいけど大沼くんはもうやらないの?」

大「ええ、今日はここまでにしときます。じゃ俺ちょっと一服してきますね(笑顔)」

柴「うん。お疲れさん、ありがとね(笑顔)」


柴  ギターを手に弾き始める


柴「うーん…アコースティックのアレンジはボーカルがないとなかなか難しいもんだな」



PM2:35 坂瀬泉水の携帯の留守番電話


上「…お疲れ様です、上住です。あの、先日別れたっきり何も連絡してなかったんで、もしかして坂瀬さん心配してるんじゃないかなと思って電話しました。兄貴の密葬は無事に終ったんで、ご心配なく…あの、今度時間ある時にでもまた会えないかなと思って。今度は織田沢さんを通してじゃなく個人的に…また連絡します」


上 電話を切る


♪♪♪〜(上住の携帯電話が鳴る)


上「もしもし?」(電話に出る)

柴「もしもし柴坂だけど」

上「…なんだ、柴さんか」

柴「柴さんで悪かったな」

上「どうしたの?」

柴「お前今どこに居る?」

上「家だけど…」

柴「悪いんだけどちょっと今出て来れるかな?」

上「…出れない事もないけど」

柴「じゃあ頼む。お前の家からスタジオまでタクシー飛ばしたら何分で来れたっけ?」



PM3:10 東京某レコーディングスタジオ



上「…お疲れっす」

柴「おぉ、来た来た…って酒臭さっ お前飲んでんのか?」

上「…来てやったんだから文句言うな」

柴「…電話で気が付かなかった俺がバカだったか」

上「…何してんの?アコギなんか持っちゃって」

柴「何してんの?って仕事に決まってんだろ、お前こそこんな時間に酒かっくらって何してんだよ(呆)」

上「…ウルセんだよ」

柴「…まあせっかく来てくれたんだから頼む」

上「…何すればいいの?」

柴「『寂しさは秋の色』をアコースティックアレンジしてんだよ、お前の歌いやすいテンポで一回歌ってみてくれない?」

上「…」

柴「…どうした?」

上「…俺この曲嫌いなんだよ」

柴「…は?(呆)」

上「大嫌い(ポケットに両手を入れたままふて腐れて椅子にドカッと座る)」

柴「仕事なんだから好きとか嫌いとかそういうことは関係ねえだろ(怒)」

上「…は(冷笑)」

柴「何が可笑しいんだよ(睨)」

上「別にー…(遠くを見る)」

柴「時間ないんだから早くしろって(怒)」

上「…嫌だっつってんだろ(睨)」

柴「…わかったもういい、大変な時に呼び出して悪かったな(怒)」

上「…」

柴「このテンポで歌えるか聴いててくれ」(ギターを抱える)


柴 ♪♪♪〜(『寂しさは秋の色』アコースティックアレンジを弾いている)


上「…」

柴「…とまあこんな感じでアレンジしてみたんだけど」

柴「…? ってお前なんか泣いてない?」

上「はぁ?」(手で顔を拭う)


柴「…ひとつつまんない事聞いていい?」

上「…つまんない事なら答えませんよ」

柴「この曲さ、去年の12月初め頃にリリースしたよな」

上「…そうでしたかね」

柴「何で12月なのに“秋の色”になったの?」

上「…俺が発売日を決めてるわけじゃないんですよ(苦笑)」

柴「そこは“冬色”とかに変更できなかったんだ?」

上「まさかこの歌がデビュー曲になると思って書いてないし、それに“秋”っていうのだけは個人的に変えたくなかったんですよ」

柴「なんで?」

上「…知りたいですか?」

柴「…ウン、知りたいね」(ギターのチューニングを合わせている)

上「親父が家を出てったのが秋だったからだよ」

柴「そうなんだ?」(チューニングする手が一瞬止まる)

柴「…あそうだ、俺もう1曲アコースティックで弾いてみたい曲があったんだよね」

上「…なに?」


柴 ♪♪♪〜(織田沢の『いつまでも変わらぬ愛を』を弾き始める)


上「…」


上「…悪いけど帰るぜ」(立ち上がってスタジオのドアに向かう)

柴「おい上住」

上 (ドアをバタンと閉めて出て行く)



上 廊下に出る

上「…くだらねー選曲ばっかしてんじゃねぇよ」

上「ゲホッゲホッ(咳)」

上「…あ。マズイ…ゲホッゲホッ!!ゲホッゲホッ!!ゲホッゲホッ!!(咳)」


大「…あれ?おいおい上住くんじゃないの、どうしたんだよ大丈夫か?」

上「…ゼェゼェ(息切れ)」(手のひらを上げて大丈夫な仕草を見せる)

大「…お前」

上「ゲッホ!!ゲッホ!!(咳)」

大「上住お前その咳…もしかして喘息か?」(上住の背中をさする)

上「ゲホッ!ゲホッ!ゲホッ!(咳)…えぇまあ」

大「えぇまあじゃねえよっ(呆)」

上「ゲッホ!!ゲッホ!!ゲッホ!!ゲッホ!!(咳)」

大「こんなトコで発作起こしてんじゃねぇよ」

上「ゼェゼェゼェ(息切れ) しばらく、起こらなかったんですけど、なんか、今日は」

大「…酒臭ぇし、飲みすぎたんじゃないの?」



大「ちょっとこっち来い」(上住をある1室に連れて行く)


上「ゼェゼェゼェ(息切れ)」(ソファの上に座っている)


大「ほら」(コップに入った水を手渡す)

上 (手渡された水を飲む)

大「少し落ち着いた?」

上 (頷く)

大「でもまだ苦しいだろ?」

上 (虚ろな目で頷く)

大「…これ吸ってみな、ゆっくりだぞ?」(タバコのようなものを吸わせる)

上「…(ゆっくり吸う)」

大「…よーしよしそれでいい、どうだ?」

上「…(驚)」

大「楽になっただろ?(笑)」

上「…何で??これ、葉っぱタバコだよな?」

大「そうだよ、この葉っぱにはさ、弛緩作用ってのがあって気管を広げて呼吸を楽にするんだよ」

上「…」

大「こりゃ医療大麻ってやつだ。喘息の発作には一番即効性があるんだZE?」

上「…医療大麻」



大「コレお前にやるよ」(手持ちの葉っぱタバコを上住の手に握らせる)

上「…(大沼の顔を見る)」

大「但し使いすぎは禁物、ソフトドラッグってのは俺たちみたいな仕事にとっちゃ上手く使えりゃ最高なのさ」

上「…次は、俺に売りつける気?」

大「…なあに言ってんだよ(苦笑 ) 俺らは仕事仲間だろ?ライブ中お前に発作なんか起こされちゃたまったもんじゃないからな」

上「…」

大「じゃあな。くれぐれも上手く使えよな?上住、俺ぁ一応忠告はしたぞ?(苦笑)」(部屋を出て行く)

上「…ケホン(咳)」



PM5:30 東京港区 ビーリングビルの社長室


コンコンコン(ドアをノックする音)


長「どうぞ」(書類に目を通している)

上「失礼します」

長「おお上住 待ってたぞ」

上「…何ですか話って?」

長「ん、まあ座ってくれ」

上 (ソファに座る)

長「おお、そういやお前先日二十歳になったんだったな」(ソファに座る)

上「…はい」

長「…上住くん、ワイン好きか?」

上「…飲んだことないっすけど」

長「ハハハそうかそうか。じゃあこれは俺からの誕生祝いだな」(ワインセラーからワインを出す)

上「いや…あの(困)」

長「なんだ?俺の用意した酒が飲めないのか?」(グラスを2つテーブルに置く)

上「そうじゃなくって、今は何か…酒は飲みたくないっていうか」

長「何をブツブツ言っている?お前はもっと話し方に覇気を持たんといかんぞ」

上「…」

長「1972年か、この年はコート・ド・ニュイのマルゴーが中々いいんだよな」(ワインボトルのラベルを見る)

長 (コルクを開けてグラスにワインを注ぐ)

長「それじゃ上住くん、誕生日おめでと〜さん!」(グラスを合わせる)

上「…ありがとうございます(会釈して一口飲む)」

上「あぁ…美味いッスね」

長「そうだろ?…まあ話ってのは、単刀直入に言うと良い話しだから安心していいぞ(苦笑)」(ワインを飲む)

上「…そうなんですか」

長「実はね、この夏にオンエアされる予定の大手生命保険会社のCM音楽担当に君達WENDSが抜擢されたのだよ」

上「えっ?」

長「まあそのCMを作るのは俺の古くからの知り合いなんだがな。並いるこのウチのミュージシャン連中の中でなぜ君らが撰ばれたかというと、何故だと思う?…まあ俺が後推ししたのもあるんだが(苦笑)」

上「…」

長「最終的な決め手は君らが今製作しているアルバムの曲のデモテープ、それと上住、お前が先日書いた詩だ」

上「…詩って、もしかして織田沢さんにあずけたあの詩ですか?」

長「そう、あの詩」(ワインを全部飲む)

上「あの、あれ、まだ途中なんですけど…」

長「はははは、それが逆に効を奏したのだよ(笑)」

上「…は?」

長「第3弾のWENDSのシングルはそのCM曲になるかもって事は想像がつくな?」

上「…はあ」

長「彼にはもう伝えてあるんだが次のシングルは大沼くんには作曲の方から少し外れてもらおうという事になってな。曲作りの方はウチの専属作曲家に任せることになったんだ」(自分のグラスにワインを注ぐ)

上「…」

長「それで、お前個人にしたい話というのはココからなんだが」(上住にグラスを空けるように目で促す)

上「…」(ワインを飲む)

長「先日途中まで書いたという例のあの詩、あれをCM製作ディレクターの方で色付けさせてやって欲しいのだよ」

上「…色?」

長「うむ、ちょっとした色だ。ほぼお前の思うとおりに書いてもらってかまわん、しかし最終的にはCMディレクターの魚済という男に、なんというか多少の修正をさせてやって欲しいのさ。何せCMありきのシングル曲になるわけだからな、彼のイメージするCMに沿った内容にしたいというわけだ」

上「…あのもしかして、その色付けとかいう条件がつく前提で俺らが選ばれたんですか?」

長「…いやいや、お前が詩に色付けなどしたくないといえば君達に断る権利はあるのだよ(苦笑)」(上住のグラスにワインを注ぐ)

上「…」

長「…まあ、その条件が飲めないというのなら、そのCMにウチが関わる話自体が無くなる可能性はあるがな(視)」

上「…別に俺は、共同で詩を書こうがお抱え作曲家に曲作ってもらおうが構やしませんよ」

長「…ふ〜むそうか(ニヤリ) きみがそう言ってくれるのならこのCM契約はウチで決まりだ!こいつが決まれば我社はしばらく安泰だぞ(笑顔)」

上「…俺を煽てても何もでませんけど」(グラスのワインを全部飲む)

長「はっはっは!何も出さなくていいがこの書類に少しサイン頼めるか?」(紙とペンを差し出す)

上「え?」



PM6:00  東京港区 某店 織田沢の携帯電話


織「…そうか、そいつぁ困ったね」

柴「上住の事はできるだけ注意して見てるつもりではいるんですけど、家族の事となると俺もどう踏み込んでいいのかわからなくて…」

織「だよね、しかし本当か?ヤツが出て行った部屋から葉っぱの匂いがしたってのは」

柴「間違いないです、俺1度あの匂いが充満した部屋に入った事あったから」

織「B‐2の楽器庫か、ナルホドな、あそこなら滅多に人が出入りしないもんな」

柴「現場見たわけじゃないから下手に問い詰めるって訳にいかないじゃないですか」

織「そうだな、そんな事したらあいつ益々お前から隠れてコソコソやる可能性もあるからな」

柴「なんか、すみません俺、何もできなくて」

織「いやいや、俺にこうして知らせてくれるだけで充分だよ♪」

柴「…大沼の事も、このまま何も知らないフリしていた方がいいですか?」

織「だなあ、アイツは下手にきみ達より業界長い分、もし逆切れしたらどう出るかワカランし」

織「とにかく俺が心配なのは上住、でもまあ、きみがアイツの傍に居てくれてる以上そんなにおかしな事にはならないとは思う」

柴「…俺はWENDSが成功する鍵を握ってるのは上住だと思ってるんで、あいつを変な方向に向かわせたくないって想いは織田沢さんと同じなんですよ」

織「ははは(笑) そうかい、そいつは嬉しいね〜、まぁあのバカにどこまでそれが届くかわからんが(苦笑)」

織「うむ。まあ応急処置的ではあるが、奴をクスリに向かわせない手はある!」

柴「…え?」

織「ま〜ここは俺に任せとけ!連絡くれてありがうな!これからも頼りにしてるZEっ じゃまたね柴坂くん」


織 (電話を切る)


織「…てことで精神安定剤注入〜っ!(笑)」(隣にいる坂瀬泉水の肩をポンと叩く)

坂「…(呆)」


PM6:30 東京港区 ビーリングビル社長室


上「…ゲホッゲホッ(咳)」(目を覚ます)

上「…あークソまただ…ゼェゼェ(苦)」

上「こんな所で酔っ払って寝ちまったのか俺は…」(誰もいない社長室を見渡す)

上「ゲホッゲホッ(咳)…」(ポケットから葉っぱタバコを手に取って見つめる)


上 (社長室を出て廊下を歩く)


男性「あの!」(後ろから上住の肩をポンと叩く)

上「うぁぁっ(驚)」

男性「うぉぉっ そんなに驚かなくても(苦笑)」

男性「すみません、俺D‐BOLANのライブツアーのサポートベーシストのオーディション受けに来たんですけど第2会議室ってこの先でいいんですか?」

上「あ?あ〜 この廊下突き当たりまでいったとこにあるデカイ部屋」

男性「そうですか、どうもありがとう!」(会釈をして廊下を歩き出す)

上「…あ、あの!」

男性「ん?」(振り返る)

上「…あんたライター持ってる?なんか俺の、ガスが切れちゃって」

男性「あぁ、ありますよ(笑顔)」(タバコの先に火を着けてあげる)

上「…ありがと。あの、それもしかしてDRベース?」(男性が背負っているベースを見る)

男性「あ、そうッス、nirvanaのクリス・ノヴァセリックと同じシグナスネイチャー」

上「へー…シグナスネイチャーか、いいなぁ」

男性「もしかしてnirvana好き?」

上「うん、まあ」

男性「そうなんスか?俺も好きで2月の来日公演に俺行きましたよ〜」

上「あ〜俺も行ったよ(苦笑)」

男性「じゃあ俺らそこで会ってたかも知れないね〜、あのライブで手に入れた『Nevermind』の限定版は今や俺の家宝ッスよ」

上「俺もこないだまで家宝にしてた、でも人にあげちゃってさ(苦笑)」

男性「あれ人にあげちゃうって相当な事ッスよ(苦笑)」

上「かもね、しかも女にあげちゃったんだよね、今思えば馬鹿なことしちまったな(苦笑)」

男性「はぁ〜ん、好きな女ならしゃーない(苦笑)」

上「…じゃ、俺もう行くから。オーディション頑張って」

男性「どうも♪」

上 (フラフラとした足取りで廊下を歩く)

男性「…」

上 ガンッ!!(思い切りドアにぶつかる)

男性「…だ、大丈夫?」

上 (苦笑いしながら片手を挙げる仕草をして歩いて行く)


PM6:50  関東圏内 某海岸


池 (車を駐車場に停めて海岸に出て行く)

池「おぉ〜綺麗だあ日没までに間に合って良かった〜」

小さな女の子がしゃがんで砂浜に文字を書いている

池「あれ〜?上手だねぇ 何書いてるの? 」

女の子「今日学校で先生に習った漢字」

池「…これ、きみの名前なのかな?」

女の子「ウン♪」

池「…」

女の子の母親「泉ちゃーん、そろそろ帰るわよ〜」

女の子「お兄ちゃんバイバイ」(立ち上がって母親の所に向かう)

池「ばいばあい(笑顔で手を振る)」

池「…」

池 (女の子の書いた文字の下に『水』という字を書き足す)


  流れてきた波がその文字を消す


池「…あー(苦笑)」


女性の声「きゃああっ」

池「ん?」(女性の声のする方を見る)

池「…(驚)」

 履いているGパンを太ももの辺りまで濡らしてしまった女性

坂「…もーっ やだ(困)」(髪を耳にかけながら濡れてしまったGパンを見ている)

池「さ、坂瀬さん?…(苦笑)」

坂「…い、池本くん(驚)」

坂「…じゃ〜ねっ」(突然反対方向に走って逃げ去る)

池「えっ?え?えぇ〜っ?(驚)」

池「ヒッデェ〜そりゃないよ〜っ!」(走って坂瀬を追いかける)

坂「お、追いかけて来ないで!(焦)」(必死で海岸を走る)

池「待って!ちょっと待ってくれっ お願い」(坂瀬の両肩を掴む)

坂「…っ」

池「坂瀬さん!」

坂「…な、なあに?(困)」

池「なあに?って…」

坂「…」

池「会いたかった」

池「俺、どうしてもあなたに会いたかったんだけど、これでも必死で堪えたんだ」

坂「…」

池「…迷惑なのはわかってるんだ、でもあの朝あなたが俺に見せてくれたあの顔がどうしても忘れられなくて」

坂「…ごめんなさい」

池「…そんなふうに謝ったってもう誤魔化せないよ」

坂「…」

池「ごめん。でも俺はもうこれ以上あなたに無視され続けるのは辛い」

坂「…わたし、あなたの気持ちには答えられないわ」

池「…解ってるよ。俺ももう無理やりあなたをどうにかしようなんて思ってない」

坂「…(視)」

池「あ、やっと振り返って顔見せてくれたね!よかった〜(笑顔)」

坂「…池本くん」

池「あ、去年のクリスマスに2人でこの海岸に来たこと覚えてますか?」

坂「…覚えてるよ」

池「あの時も坂瀬さんと一緒に夕焼けを見ましたね(笑顔)」

坂「そうだったね、すっごく寒かったのを覚えてる(苦笑)」

池「俺は、あの時夕焼けに照らされた泉水さんの顔がすごく綺麗で、寒さなんか忘れてたな(笑)」

坂「…からかうな〜(照)」

池「ははは〜っ ところで今日の泉水さんは…ちょ〜っと寝不足なのかなあ?(坂瀬の顔を覗き込む)」

坂「…顔近づけ過ぎよっ(苦笑)」(池本の顔を両手で押しのける)

池「ははは!ちっ 惜しかった!(笑)」

坂「もーっ(呆)」

池「もう1回だけキスしたい!!」

坂「…えっ?」

池「…とは言いませんっ 忘れます!!簡単じゃないけど(苦笑)」

池「そうだ!!海に向かって叫ぼうかな!んでサッパリ忘れます!」

坂「ええっ?」

池「うおお〜っっ!!」

坂「い、池本くん…(焦)」

池「坂瀬泉水さーん!!」

坂「…(恥)」

池「好きだ〜!!大好きだ〜!!死にそうだ〜!!」

坂「…(困)」

池「死にそうなぐらい俺はきみと※△☆※◎してえぇ〜っ!!」

坂「ちょ、ちょっと…(引)」

池「はあ〜っ!!(満足)」

坂「…(呆)」

池「じゃ、帰りますね」

坂「あなた…酔ってない、よね?(視)」

池「シラフですよ!(笑顔)」

池「じゃ〜さよならっ」(走り去る)

坂「池本くんっ」


池 (駐車場に停めてある自分の車に乗り込む)

池「…いったい、俺は何をやってるんだろうか(恥)」(握ったハンドルに頭を着ける)



坂 (膝を抱えて海岸で1人しゃがみこんでいる)

坂「あ…いけない、彼に連絡しないと」(携帯電話を取り出す)


上「もしもし」

坂「あ、もしもし上住くん?坂瀬です。留守番電話にメッセージありがとう」

上「ああ…いえ」

坂「大変な時に電話するのも悪いと思ってわたしから連絡できなかったの。でもなんだか逆に気を使わせちゃったね」

上「や、別にそんな」

坂「上住くん…」

上「…はい」

坂「夕日が、すごく綺麗よ?今」

上「え?」

坂「最高に綺麗だわ」

上「…そうなんだ?」

坂「…あはは(苦笑) わたし、あなたを励まそうと思って電話したのに」

上「え…」

坂「どうしよう、バカみたい…今頃胸がいっぱいになってきてそれどころじゃなくなってしまった(涙)」

上「…あの、何かあったんですか?」

坂「わからない…」

上「わからないって(苦笑)」

坂「わからないの、わからないけどわたし、もしかしたら感動したのかも知れない」

上「ゆ、夕日に?」

坂「…夕日に、向かって叫んだ彼に」

上「…彼?」

坂「…」



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