黄金虫

October 09 [Wed], 2013, 12:54
さて、ジュピターがその羊皮紙を拾い上げ、甲虫をそのなかに包んで、僕に渡してくれた。それから間もなく僕たちは家へ帰りかけたが、その途中でG――中尉(ちゅうい)に会った。虫を見せたところ、《 通販特集 》 要塞(ようさい)へ借りて行きたいと頼むのだ。僕が承知すると、彼はすぐにその虫を、それの包んであった羊皮紙のなかへ入れないで、そのまま自分のチョッキのポケットのなかへ突っこんでしまった。その羊皮紙は彼が虫を調べているあいだ僕が手に持っていたのさ。たぶん、彼は僕の気が変るのを恐れて、すぐさま獲物をしまってしまうほうがいいと考えたんだろうよ。――なにしろ君も知っているとおり、あの男は博物学に関することならなんでもまるで夢中だからね。それと同時に、僕はなんの気なしに、羊皮紙を自分のポケットのなかへ入れたにちがいない。
 僕が甲虫の絵を描こうと思って、テーブルのところへ行ったとき、いつも置いてあるところに紙が一枚もなかったことを、君は覚えているね。引出しのなかを見たが、そこにもなかった。古手紙でもないかと思ってポケットを捜すと、そのとき、手があの羊皮紙に触れたのだ。あれが僕の手に入った正確な経路をこんなに詳しく話すのは、その事情がとくに強い印象を僕に与えたからなんだよ。
 きっと君は僕が空想を駆りたてているのだと思うだろう、――が、僕はもうとっくに連絡を立ててしまっていたのだ。大きな鎖の二つの輪を結びつけてしまったのだ。海岸にボートが横たわっていて、そのボートから遠くないところに頭蓋骨の描いてある羊皮紙――紙ではなくて――があったんだぜ。君はもちろん、『どこに連絡があるのだ?』と問うだろう。僕は、頭蓋骨、つまり髑髏は誰でも知っているとおり海賊の徽章(きしょう)だと答える。髑髏の旗は、海賊が仕事をするときにはいつでも、かかげるものなのだ。
 僕は、その切れっぱしが羊皮紙であって、紙ではないと言ったね。louis vuitton 財布 新作羊皮紙は持ちのいいもので――ほとんど不滅だ。ただ普通絵を描いたり字を書いたりするには、とても紙ほど適していないから、大して重要ではない事がらはめったに羊皮紙には書かない。こう考えると、髑髏になにか意味が――なにか適切さが――あることに思いついた。僕はまたその羊皮紙の形にも十分注意した。一つの隅だけがなにかのはずみでちぎれてしまっていたけれど、もとの形が長方形であることはわかった。実際、それはちょうど控書として――なにか長く記憶し大切に保存すべきことを書きしるすものとして――選ばれそうなものなんだ」
「しかしだね」と私が言葉をはさんだ。「君は、甲虫の絵を描いたときにはその頭蓋骨は羊皮紙の上になかったと言う。とすると、どうしてボートと頭蓋骨のあいだに連絡をつけるんだい? ――その頭蓋骨のほうは、君自身の認めるところによれば、(どうして、また誰によって、描かれたか、ということはわからんが)君が甲虫を描いたのちに描かれたにちがいないんだからねえ」
「ああ、そこに全体の神秘がかかっているんだよ。もっとも、この点では、その秘密を解決するのは僕には比較的むずかしくはなかったがね。僕のやり方は確実で、ただ一つの結論しか出てこないのだ。たとえば、僕はこんなふうに推理していったんだ。僕が甲虫を描いたときには頭蓋骨は少しも羊皮紙にあらわれていなかった。絵を描きあげると僕はそれを君に渡し、君が返すまでじっと君を見ていた。だから君があの頭蓋骨を描いたんじゃないし、またほかにそれを描くような者は誰も居合わさなかった。してみると、それは人間業で描かれたんじゃない。それにもかかわらず描いてあったんだ。
 ここまで考えてくると、僕はそのときの前後に起ったあらゆる出来事を、十分はっきり思い出そうと努め、また実際思い出したのだ。気候のひえびえする日で(ほんとに珍しいことだった!)炉には火がさかんに燃えていた。僕は歩いてきたので体がほてっていたから、テーブルのそばに腰かけていた。だが君は椅子(いす)を炉のすぐ近くへひきよせていた。僕が君の手に羊皮紙を渡し、君がそれを調べようとしたちょうどそのとき、あのニューファウンドランド種のウルフの奴(やつ)が入ってきて、君の肩に跳びついた。君は左手で犬を撫(な)で、また遠ざけながら、羊皮紙を持った右の手を無頓着(むとんじゃく)に膝のあいだの、火のすぐ近くのところへ垂れた。一時はそれに火がついたかと思ったので、君に注意しようとしたが、僕が言いださないうちに君はそれをひっこめて、調べにかかったのだ。こういうすべての事がらを考えたとき、僕は、熱こそ羊皮紙にその頭蓋骨をあらわさせたものだということを少しも疑わなかったんだよ。君もよく知っているとおり、紙なり皮紙(ヴェラム)なりに文字を書き、火にかけたときにだけその文字が見えるようにできる化学的薬剤があるし、またずっと昔からあった。不純酸化コバルトを王水(アクア?リージア)に浸し、その四倍の重量の水に薄めたものが、ときどき用いられる。すると緑色が出る。コバルトの(ひ)(11)を粗製硝酸に溶かしたものだと、赤色が出る。これらの色は、文字を書いた物質が冷却すると、そののち速い遅いの差はあっても、消えてしまう。が、火にあてると、ふたたびあらわれてくるのだ。