つづき

2006年04月14日(金) 13時41分
 ものごとを、ありのまま書くことは、むつかしいどころか、できないことだ。書いて、なお、そのものごとを読んだ人にそのまま伝えることになると、ぜったい出来ない。
 戦争がある。その文学がある。それはロマンで、戦争ではない。感動し、あこがれさえする。ありのまま写すと云うニュース映画でも、美しい。ところが戦争はうつくしくない。地獄である。地獄も絵にかくとうつくしい。かいている本人も、うつくしいと思っている。人生も、そのとおり。
 ことがらをそのまま書くには、できるだけ、そのことを行いながら書くとよい。日記よりも、もっとこきざみに、つねに書きながら、そのことがらを行う。「書いている」と云う文句が一番それである。
 この日記はどうかと云うと、ふるいにかけて書いたものである。書きたくないものはさけている。と云って、うそはほとんど書いていない。
 うそがないと云うことは、本当なこととは云えない。

詩「ぼくが汗をかいて、ぼくが銃を持って。・・・」・・・戦争は美しくない地獄である。

2006年04月14日(金) 13時38分
4月14日
 飯がすむと、子供のところへ遊びに行った。みんな集まってこいや。ぼくは、わけもなく、ただにこにこして、ものも云わず、ただにこにこしていた。やすをくん、たかしくん、ちえ子くん、とし子くん、えへへと笑って、たわいもない。
 この動員室の仕事も、きょうでどうやら片が付いたかたちで、ごくろうであったと云うわけで、林中尉が十一屋へ連れてってくれて、風呂に入らしてくれた。書きわすれたが、林中尉は動員室の親分である。非常にハンサムに見えることもあるし、猴類に似て見えることもある顔である。この人を知らない前から、なんとなく好きであった。
 十一屋の女中部屋で、古い「新女苑」を見つけた。ああ、昔。「ヴォーグ」に出てくるきれいなおんなの人よ。ぼくのたましいは、きみたちがすんでいた昔に、しきりとかえりたくなる。
 十一屋から帰ると、裁縫室で、酒とすき焼きであった。ぼくはほかのことを考えていて、ことば少なであった。


 戦争のはなし、戦争のはなし。まっち箱の大きさのもので、軍艦を吹っとばす発明がなされたはなし。いいか。いいか。
 みたみわれ。いいか。いけるしるしあり。あめつちの。さかえるときにあえらくおもえば。いいか。

  ぼくが汗をかいて、ぼくが銃を持って。
  ぼくが、グライダァで、敵の中へ降りて、
  ぼくが戦う。
  草に花に、むすめさんに、
  白い雲に、みれんもなく。
  ちからのかぎり、こんかぎり。
  それはそれでよいのだが。
  それはそれで、ぼくものぞむのだが。
  わけもなく、かなしくなる。
  白いきれいな粉ぐすりがあって、
  それをばら撒くと、人が、みんなたのしくならないものか。
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