つづき2

2006年04月03日(月) 18時02分
小林曹長が、自転車を一台おいてゆけと云ったので、帰りは一台の自転車にかわりばんこに乗った。
 途中で日が暮れた。
 途中で、ジャガイモのむしたのをもらった。
 云いわすれたが藤井は、能登半島の七尾と云う町のお寺の息子であった。太い声で、この道はいつかきた道……とうたい出した。それがきっかけで、歌がつづいた。からたちの花がさいたよになり、ごらんよ坊やになり、叱られてになり、シューベルトのセレナーデのハミングになった。この坊主、しゃれた坊主だと、藤井を一寸、すきになった。
 夕食は、パンであった。
 あしたは、おれがかわりに行くからなと、有請と云う上等兵が云った。その高飛車なようすが不愉快になり、行くからなとそちらで決めても、こちらはまだなんとも返事はしとらんと云うと、ぜひとも行きたい用事があるからたのむわと、今度は頼んで出た。そんなわけで、藤井かぼくかのどちらかが残ることになり、そんならおれが残ると、ぼくがおこったように云うと、藤井は、いやおれが残る、べつに行きたいこともないからと云う。じゃんけんで決めようと云っても、おれが残ると云う。
 それでは、おれはお前に恩をきやんならんからいやじゃ、じゃんけんにしょうと云っても、おれが残ると云い、べつにお前に恩にきせようとするのではない。恩にきせようとするのではないことはわかるが、おれの方では、すくなくとも二、三日は恩にきた気持ちをもたんならん、おれは恩にきるのはきらいだから、じゃんけん、じゃんけん。
 これは、きりがない。
 それなら、あした、おれは又行く。そして、お前には、ちょっとも、恩にきた気持ちはもたん。あたりまえのような顔をして、行くが、それでもええか。
 うん、ええ、ええ。
 よし、そんなら行く。あたりまえな顔で行くぞ。

つづき1

2006年04月03日(月) 18時00分
 もぐもぐ野菜パンをかんでいたら、北条であった。
 きょうも一日、この運送屋さんの、自転車のクッションの付いたいすにかけて、タバコを吸ってくらすわけである。
 なにか、雑誌かなにかあったら貸していただけないでしょうか、と云ってみた。
 二十四、五の、ちょっときれいな娘さんが、本を三冊もってきてくれた。新潮社の新作青春叢書と云うやつで、石坂の『美しい暦』と阿部の『朝霧』と芹沢の『命ある日』であった。どれから読んだものかと迷って、三冊並べて、子供がするように、ど ち ら に しよう かいなぁ と当ってみたら、『美しい暦』になった。きらくに読めた。
 貞子と云う娘が主人公であろうが、その描写がぼやけているようだ。
 ちょっと出てくる春江と云う「虚無的な」娘が、よくかけている。『若い人』の恵子と同じ型で、石坂はこんな娘を上手に書く。
 ウドン屋へめしを食べに行った。『美しい暦』の次に、『命ある日』を読みだした。面白くない。芹沢と云う人のものは、ほとんど読んだことがない。この人のものは、あんまり好かない。芹沢は都会人で、石坂は田舎者だ。都会人と田舎者と云う区別は、どこからくるのであろうか。うまく云えない。芹沢は、都会人と云うより貴族的だ。ぼくは白樺の連中もすかない。

詩 田園詩

2006年04月03日(月) 17時52分
4月3日
 飯がすむと、すぐに藤井と自転車で出かけた。きのう、藤井が買ったと云う店へよって、野菜パンを二つずつ買った。雨あがりで道が悪かろうと云うので、大穂まわりの、いい道にした。この道で行くと、北条までたっぷり三里はある。
 流れていた霧のようなものが、ずんずん晴れていった。筑波山が、雲をかきわけて出てきた。

    田園詩
  雨がはれて 朝であった
  泥道が 湯気を立ててかわいていった
  自転車 走れや
   ハイ トロロウリイ ロウリイロウ
  ハイ トロロウリイ ロウリイリイ
  君たち ガラス玉のような子供たち
  学校へお出かけかい
  おじぎをしてとおる
  兵隊さんありがとう など
  云うものもいる
  はい 今日は
  いちいち しっけいをしてこたえた
   ハイ トロロウリイ ロウリイロウ
   ハイ トロロウリイ ロウリイリイ
  畑のへりにならんだ梧桐は まだ葉がなくて 奇妙な踊りをしている
  自転車で それをかぞえると
  みんなそろって ピチカットをうたいだす
   ハイ トロロウリイ ロウリイロウ
   ハイ トロロウリイ ロウリイリイ
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