久々に 

2008年01月14日(月) 21時21分
久しぶりにこちらのブログをパソコンから見にきたらアクセス数がまだあって吃驚しました。反面、嬉しい。反面、検索に引っかかってしまったか…と、自分の無力さに絶望。

あしあともありがとうございます。
過去の遺物なので新しい機能が使いこなせません。あしあとつけられた場合って、どうすれば良いのでしょう。

てか、ひい!
こんなとこの文を読んじゃダメですって!
サイトに上げる前だから割と無修正…(なんだか無修正って卑猥ね)(いっぺん死ねって話ですかスミマセン)

宜しかったらサイトの方でちゃんとレイアウトとかしてある物を読んでください。
もーホントすみません。

本館】(おお振り:西浦・笛!:武蔵森)
別館】(おお振り:桐青のみ)

って言っても近々統合しちゃうので、今だけ二つです。
めんどくせーから統合するまで待つわ、って方は二三ヶ月待っていただければ、また新しいサイトのアドレスを載せに来るかと…。

m 

2008年02月05日(火) 1時10分
朝自室のカーテンを開けたら、一面銀世界だった。
(うわー雪だ雪だ雪だ)
目をキラキラを輝かせながら幼子のように興奮している少年の髪の毛は金色。
この国としてはまだ珍しがられる色を髪に持つ彼は、一晩机の上に放置したせいでひんやりとつめたいケータイを手に取った。
迷わずリダイヤル画面を開いてその名前の上で確定ボタンを押す。かけたのは、彼が今バッテリーという関係にある先輩だった。通信音がして、繋がったのか受話器の向こうから雑音が聞こえてくる。

『…………、』
「あ、準さん?」

プツン。

強制的に通話が終了させられる。
利央は真顔で数秒ほど待ちうけに戻った自分のケータイを見つめ、そしてまた何事もなかったかのように同じ人に電話をかけた。
さっきより幾らか長い通信音のした後、『…何、』濁音連発のいかにも不機嫌そうな声が返ってくる。利央はスエット姿で窓際にへばりついたまま、興奮冷めやらぬ様子で口を開いた。

「準さん外見て雪!」
『……まじでか!』

ガサガサと布の擦れる音が届き、次いで『うおー!』と雄叫びが聞こえてきた。うんうん、それでこそ正しい学生の反応だ。
しかしそこまで納得しかけた利央は、「ん?」と首を傾げる。
(あれ、絶対『それがどうした』って冷ややかに返されると思ったのに――、)
機嫌とノリがいいのは良いことだが如何せん、彼の旦那は低血圧が酷いこと有名だった。特に朝などに電話をかけてみろ、先ほどのように一瞬で切られ、彼が覚醒してから愚痴愚痴とあの電話で起こされたもうちょっと寝ていられたのに云々かんぬん言われるのがオチだ。
が、そんな疑問も次の相手の発言で全てに合点がいく。

『学校休みだー!』
「……準さん学校嫌いだったっけ?」
『ばっかお前、平日の二度寝ほど嬉しいもんはねえだろうが』

――ああ、本当にこの人らしい…。

低血圧なのに一気に血圧を上げたせいで疲れたのか、電話の向こうからは暢気な欠伸の音が聞こえ出す。
ふと目線をやった窓の外はまだしんしんと雪が降っていて、道路にも大分積もっていることだし、このまま上手くいけば学校は冗談じゃなく休みになるだろう。交通機関が止まるのは目に見えすぎている。

『んじゃ俺寝っから…』
「準さん」
『あぁ?』
「今日暇でしょ?うち遊びおいでよ」

最近は部活がオフでもやれ疲れたやれ今日は日が悪いなど、意味の分からない理由で準太にのらりくらり二人きりになるのを避けられていたので、利央は今日こそ逃がさないと確固たる意志で誘い文句を口にした。
案の定、言葉に詰まったような雰囲気が向こうから流れだす。

『…俺めっちゃ眠いんだけど』
「昼から、とか」
『今から寝たら昼まで起きないかもしれない、し』
「夕方とかでもいいよ」

野球関連以外のことでこの人にここまで食い下がるのは初めてかもしれない、降り注ぐ雪を視界に納めながらぼんやりとそんなことを思った。
暫しの沈黙のあと、『…三時くらいなら』小さな音が耳に入ってくる。このところ後輩の誘いを意図的に断っていたなら、その罪悪感も多少なりあったのかもしれない。

「じゃあ三時ね!」


--------


家に何もなかったから、どうせなら準太を迎えに行くついでに菓子類も買って来ようと、三時に利央の家側にあるコンビニで待ち合わせをした。
大きめな透明のビニール傘を持ってコンビニの道までを歩く。降雪量は、朝に比べれば大分減ってきていた。
(静かー…)
この天候のせいでみんな家から出たがらないらしく、いつも賑やかな道は人ひとり見当たらない。ギュ、ギュと、雪を踏みしめながらそんな道を歩いた。

数分も歩けばすぐに目に入ってくる小さなコンビニエンスストア。
外にある傘立てにここまで差してきた傘を無造作に突っ込んで、暖かい店内へと足を踏み入れる。完全防備してきていたのに、体はやっぱり冷えていて暖房が顔にかかるのが酷く幸せに感じた。待ち人は、まだ来ていない。
(まさかまだ家で寝てるとかはないだろうな――、)
笑えないほどあり得そうな考えが頭を過ぎり、急いでダウンのポケットからケータイ電話を取り出してみる。けれど待ち受け画面は、今メール受信画面に切り替わったところだった。

『つく』

(つく?――ああ、『着く』、ね)

せめて漢字変換くらいはして欲しいところだったが、そんな簡素な文体に忍び笑う暇もなくコンビニの自動ドアが開く。待ち人、きたり。

「…寒くないの?」
「さみいよ!」

普段学校にもしてきているマフラーに赤い鼻を押し付けているその人は、上下黒のスエットにダウンジャケット、そして足元には健康サンダル。…この寒いのにマジで?と、利央は一瞬自分の目を疑ってしまった。

「せめて靴くらい履いてきてよー」
「っせえ。すぐそこまで親に車乗っけてきてもらったから別に暖かかったんだよ」
「でも今から俺ん家まで歩くじゃん」
「…お前まじでありえねえ」
「あり得ないのは準さんの方だよ…」


二百五十ミリの紙パック二つと、お菓子数種類を手に持って歩いてきた道を引き返す。
隣の人は余程の寒さに声も出したくないのか、「寒い」と一度言ったきり一言も喋らなくなった。だからと言って利央も他人に分けられる防寒具は持ち合わせていなかったので、うーんと思案した結果、己の右手を差し出してみる。

「…何、」
「繋ぐ?」
「いやだ」
「でも俺体温高いよ?」

相手がグッと詰まり、数秒迷った末におずおずと手を握られた。寒さには、敵わなかったらしい。
そんな相手の心の葛藤が手に取るように分かるから、利央は吹き出すのを我慢するので必死だった。触れている手は異様に冷たい。

「…笑ってんじゃねえよアホ利央」
「アホってなんだよー。そんな格好してる準さんはただのバカじゃん」
「………、」
「痛い!」

右足でゲシッと一蹴り。…あー!ズボンに泥ついちゃったじゃん!
そんな苦情を言えば案の定「自業自得だボケ」と、また一言多い台詞が返ってくる。えと、こういうのなんて言うんだっけ、『減らず口が絶えない』?

「だーかーら!泥つくから蹴るの止めてってば!」
「うっせえよさみいんだよ!」
「理由になってないよ!」

ギャーギャーと騒ぎながら住宅街を行く自分たちは、さぞかし近所迷惑だったに違いない。

家に着いて玄関でびしょ濡れになった靴を脱ぎ、二階の自分の部屋へと移動する。
コンビニに行く前にストーブを点けて来たおかげで室内は大分暖まっていた。

「…天国!」
「もー、そんな寒そうな格好してくるから。それ起きてそのまま来たでしょ」
「当たり前」

電気ストーブの前を陣取って真っ赤な足を暖めている先輩を横目に、とりあえず利央は上着を脱ぐ。その間、準太はチラリともこちらに視線を向けない。
だからベッドに腰掛けた少年は、床にそのまま座っている背中にずっと問いかけたかった質問を投げかけた。

「――なんで、俺、最近避けられてたんすか?」

気のせいと言われれば、そうだったかもしれない。
部活では普通と何ら変わりなかったし、昼間校舎内で合っても別に普通に話はしたし。
でも、確実に自分は避けられていた。
二人きりになることが全くといってなかったのだ。前まではそんなことなかったのに。
自分では何かしているわけじゃなかったから、じゃあ後は相手が意図して何かをしていたとしか考えられない。

問いかけた準太の背中は、悔しいほど何の反応も示さなかった。

「ねえ、準さ――」
「…が、」
「え?」
「…――色々あったんだよ」

こちらを振り返ってそう答えた先輩の瞳は、まっすぐにこちらを見ている。
(色々って、何ですか)
聞いてしまいたいけど今一歩勇気が出なくて利央が静止していれば、「あーもう!」綺麗な黒髪がグシャグシャと本人の手によって掻き乱された。

「じゅ、準さん?」
「とりあえずお前のせいだ!俺は何も悪くねえ!」
「はあ?」

見に覚えもないのに、いきなり非難の声を上げられても。
困惑した面持ちを隠せない利央に、チョイ、と、まるでキャッチングのために座るときのように人差し指が動く。
来い、ということだろうか。

釈然としないまますごすごストーブの前まで行く。視線を合わせようと腰を下ろせば、中途半端な体勢のときにガッと相手の片腕が首に回ってきた。

「ちょ、この体勢キツ…」
「――避けてたわけじゃないから」

相手が膝をつく両脇に手をついて何とか体を支えながら、そんな言葉を聞く。「避けてたんじゃねえから、」繰り返すようにもう一度紡がれた。

「理由は?」
「…あとで言う」
「俺、アンタに嫌われてたわけじゃない?」
「……ばっかじゃねえの」

一瞬の間を置いて、それでも恥ずかしそうに否定される言葉を噛み締めた。
ギュ、とこちらからも相手の背に腕を回す。

「準さん、好き」
「…日本人は滅多にそういうこと言わねえんだよ」
「俺クオーターだから、いい」
「……そういう言葉はお前が一番嫌がるくせに」

小学校中学校と、散々ハーフだの外人だの言われて激怒したのを覚えていたのだろう。そういうことを何気なく覚えていてくれていたのが嬉しくて、でも返す言葉がなかったからとりあえず「いいの」と、それだけ言った。「意味分かんねえ、」耳元に小さく呟かれる。抱きしめる体はこの部屋に来た当初より随分暖まってきていた。



しんしん、しんしん、雪が降る。
雪が全ての音を取り除いて、世界は静けさに包まれる。

お互いの心臓の鼓動だけが、やけに大きく耳に響いていた。




*
うちの県で初雪が降った日に書いていたやつ。一週間ちょい前?
「もう雪降んねえだろー」とか思ってたら、見事に昨日降りました。
でも大分みぞれ交じりで今日の夕方には積もってたやつも全部溶けちゃいました。残念。

まあ、ちょっと遅めの準太誕生日祝いってことで。
うちの準太は世間の準太とちょっとズレてる気がしてしょうがない今日この頃。

l 

2008年02月07日(木) 1時36分

ゆっくりと覚醒していけば、遮光カーテンから漏れる光が目に入ってくる。
(朝、だ)
松永は徐々に徐々に目を開いていく。自分の家とは違う匂いに、そうだ昨日は止まったんだと認識しながら目を開けば、案の定この部屋の持ち主が緩く微笑んでこちらを見ていた。

「おはよう」
「…はよ」
「んー」

嬉しそうに無邪気に目を細めた本山に抱きしめられる。
抱きしめられた瞬間に相手の匂いが強く漂ってきて、松永はパッと昨日の出来事を脳裏に浮かべてしまった。…すごく、居た堪れない。
しかもその行為に没頭していたことを裏付けるように自分は何も身に着けていなくて。でもなぜか掛け布団とは別に毛布が体に巻きつけられていた。本山はちゃんと服を着ている。言うまでもなく、彼の仕業だろう。
そして部屋は電気ストーブのおかげで決して寒さは感じない。早く起きて、暖めていてくれたのだろうか。
そんな相手の優しさに少しだけ感動していれば、抱きしめてきている本山が自分の頭によいしょと顎を乗せ、「俺さ」と言葉を落とした。

「ん?」
「俺、お前がヤってる最中に寝ちゃうようなやつでも大好きだよ」

…ありがとよ。

投げやりに言えば忍び笑う気配がしてきたので、やんわりと相手を押し返してその鳩尾に軽いパンチを繰り出した。
いってーなあ、全然そうは思っていない口調で楽しげに本山がそう呟く。
(少しだけいいヤツとか思った俺が馬鹿だった)
完璧に相手から離れ、松永は毛布を体に巻きつけたまま本山を跨いでベッド下に適当に畳まれていた服に手を伸ばす。モソモソと着替えようとすれば、背後から視線を感じた。…やりづらい。

「…見てんなよ」
「雅也雅也」
「あ?」
「セクシーショーット」

両手の親指と人差し指で四角…カメラのフレームみたいなものをつくって、それをこちらに向けてきた男に、持っていた衣類を間髪いれずに投げる。
ズボンにつきっぱなしだったベルトがいい音を立てて相手の体にぶつかった。

「い…ってー!」
「自業自得」
「うっわまじいてえ。痣できるってこれ」

咄嗟に庇った腕を見ながらブツブツ言う男に、ちょっとやりすぎたかな、なんて同情心が芽生えてくるのは、きっと相手の痛がる仕草が本当に痛そうだったからだ。
自分でやった手前、でも少し心配になって松永は本山に近寄った。と言うか今から着る予定だったものを投げてしまったので、それを回収しに。
案の定というか、そんなこちらの一瞬の隙を相手が見逃すわけもなく、「うりゃ!」という掛け声とともにまた体を捕獲される。

「…うっぜー」
「あはは」

寝ている本山の上に自分が倒れる感じで抱きしめられているので、松永は必死に布団に手をつくことで体を支えた。迂闊に体重をかけたくはないじゃないか。
この男と付き合いはじめてからというもの、こんなどうでもいい気遣いをたくさん覚えたと、松永はぼんやり考える。本来なら全て自分は覚える必要がなかったことだ。
(まあ、今更そんなこと言ったところでどうにもならないけど)
そこら辺は潔く割り切っている辺りがこの少年の男らしいところというか、なんというか。

「重くね?」控えめに尋ねれば「そんなことねえよ」圧迫された声が下から聞こえ出す。
早く離してくんねえかな――どうすれば離してくれるかと松永が頭を捻っていれば
、本山がクスクスと笑い出した。

「なーんかさ、こういうことしてると告白したくなってこねえ?」
「はあ?」
「松永くん好きです付き合ってください」
「勘弁してください」

意味があるのかも分からない戯言に付き合ってやると、「せめて『ごめんなさい』って言ってよー」心底可笑しそうな声が聞こえてくる。
しかも本山が笑う度に体が揺れて、その振動が直にこちらにも伝わってくる。不思議な感覚だ、と思った。
(なんだかなあ…)
むず痒い、そう思いながら今からもっとむず痒いことをしようとしている自分がいる。

ムクリと体を起こしその腕から逃れ、まるで本山を押し倒しているかの体勢で松永は言葉を紡いだ。

「告白、『ごめんなさい』でいいんだ?」

いつも本山がやってみせるように、二、と笑ってみせる。
ポカンとこちらを見るパーカー姿の男が面白い。なるほど、いつもコイツは自分のことをこんな風に見ていたのか。――そんな納得をしかけたときだった。

「失恋は、嫌かな」

クルッと体勢が入れ替わっている。…なんという、早業。
呆れた面持ちで松永が上の男を眺めていれば、本家も本家。本山が、二、と笑った。

「――好きです、付き合ってください」
「…もう付き合ってんだろうが。ばーか」

そんなやり取りに二人して吹き出して、後はもうなし崩し。
服を返せと松永がやっと言えたのは、それから数時間後のことになったとか。



朝が好きなんです。

前の恥ずかしい本松と、これが、私のずっと書きたかったやつ。書ききれて満足。

c 

2008年02月07日(木) 1時37分
夕日の差し込む放課後の教室。
普段は見慣れない上級生のクラスで、笠井は誰のとも知れない椅子に腰掛けていた。ストーブが切れて何時間も経っている室内はそれなりに寒く、吐き出す息は僅かに白い。

「はい、完了」

無造作に置かれていた、たぶん三上のクラスの女子の鏡で笠井の耳元が映し出される。さっきまではなかった、青いピアスが赤い夕日に反射して光っていた。

「――でもアンタも変な人ですよね。自分の誕生日なのに俺にピアス付けたいとか」
「いいじゃん。俺も貰ったし」

そう言って三上が少しだけ横髪をかき上げる。笠井と同じ右耳に、同じ青いピアス。
今日は、三上の十八回目の誕生日だった。


笠井は消毒液を片付ける三上から鏡をもらって、自分の耳につくそれを角度を変えて何度も見てみる。
校則違反のピアスは、自分の恋人からのリクエストでもあった。
(…ホント、変なの)
去年の暮れ、クリスマスプレゼントをあげたときについでとばかりに「誕生日は何が欲しいですか」と尋ねたら、リクエストされたのがこれだった。――同じ場所に二人して穴を開けて、二つセットのピアスを半分に分けよう、と。

三上の誕生日には普通のピアスがつけられるようにするため、だから二人は年の初めに耳に穴を開けた。寮が始まる日、中西と根岸の部屋で、中西にピアッサーを押してもらって。
なるべく同じ場所に、と言ったら中西は意味ありげに「ふうん?」と笑っていた。根岸は、しきりに「痛くない?大丈夫?」となぜか自分が痛みを感じているかのようにわたわたと慌てていた。
そんな二人の見守る中、三上と笠井は違反を犯す罪悪感と、規律に反抗する悪戯心で胸が躍って仕方なくて、終始目を見合わせては笑っていた気がする。――幸せを感じていた、世間ではそう言う表現をするのだろう。

そして念入りに消毒を繰り返して迎えた今日。
手間の甲斐あってか二人とも化膿はしていなくて、耳の穴も安定していたので放課後の悪戯にしゃれ込んだ。何もわざわざ学校内でやらなくてもよかったのだけど、なぜかこういうことこそ校舎内でやりたかった。
見回りの教師に見つかるかもしれない恐怖心と、それでも止まらない好奇心。その狭間で、笠井が年始にピアッサーと一緒に買ってきていた青いピアスを二人してつけた。
ただ、三上は自分でつけたけれど、笠井は中々つけれなくて結局彼につけてもらってしまったのだけど。

「なんか中西が言ってたけど、これ付けるの難しいやつらしいぞ」

五メートルくらい先のゴミ箱に、使い終わったティッシュを投げながら三上が何気なくそう言った。しかもティッシュは見事にゴミ箱から外れている。
舌打ちをしながら、それでもちゃんとゴミ箱のほうへと歩いていく背中を眺めながら、笠井は耳のそれを何気なくなぞった。

「なんか面倒なの買っちゃってすみません」
「いんや、俺は別に自分で付けれるし。問題はお前じゃね?」
「あ、外さなきゃいいじゃん」
「バカ。普段は危ないし、バレっとうっせえから透ピン」
「じゃあこれはいつ付けるんですか」
「俺と遊び行くとき」

カコン、と音がして消毒液を充分に吸っていたティッシュが今度こそゴミ箱に落ちた。
寒いのか、三上は両手を制服のポケットに突っ込んでいる。なのに決して猫背ではないその立ち姿が妙にサマになっていた。

「じゃあ先輩が一々つけに来てよ」
「アホか。俺が卒業するまでに付け方覚えんの」
「…留年する気ないですか」
「ないです」

あっさりと切られればそれはそれで面白くない。
ムッと笠井が口を尖らせていれば、窓の外をぼんやりと見る恋人の姿が目に入った。

――俺も、ちょっと無神経だったかな。

三上を筆頭に今三年生たちは、センター試験を終えて大学の二次試験待ちの真っ只中。嬉しいことに三上はセンターの自己採点でもそこまで点数は悪くなかったらしく、こないだの夜はホッと息を吐いていた。
あとはただ二月の後半に向けて勉強あるのみ――…そんな人に『留年』なんて言葉は流石に笑えなかっただろうか。存外努力家なこの人なら大丈夫だと信じていたし、私立の滑り止めもなんとかなりそうだと言っていたけれど、やはりちょっと無神経な発言だったかもしれない。

己の言葉に軽く自己嫌悪を感じつつ、チラ、と三上の立ち姿を見てみる。
均整のとれた体、付きすぎていない筋肉、猫背すぎない背、整った顔。面白いくらいに非の打ち所が見当たらなくて、ちょっと悔しい。
そしてその人の耳元には、耳にかけられた髪のおかげではっきりと見えている青いピアス。窓際でジッと野球部かどこかの練習風景を眺めているせいで、陽が当たっているその貴金属は笠井には眩しいくらいに光ってみえていた。

(なんか、悔しいな)

これだけ見ているのにこちらを向こうともしない三上とか、何か考えごとしているのに自分には話してくれない三上とか、…前しか向いていない三上とか。

年上は、ずるい。笠井は心の中だけで一人ごちる。
年上は前しか見ていない。自分はこの人を目標にしてずっとその背中を見つめているのに、この人はたまに振り返っては冗談を言うだけで、自分がこの人に向ける視線の三分の一もこっちを見てはくれない。
それが、とても悔しかった。

「先輩」

呼びかけることで漸く相手がこちらを向く。

「――第一志望落ちたら笑ってやりますから」

言いたいことはたくさんあったけど、どれも口に出すとなると恥ずかしいものばかりだったから、とりあえずはこれだけ。
年長者は窓に向けていた体をゆっくりとした動作で笠井の方へ向け、そしていつもの人を小バカにしたような笑みを顔に浮かべた。

「ばーか。俺が落ちるわけねえだろ」

三上以外の人間が言うと、虚言ともハッタリとも空元気ともとれる台詞は、やはりこの男が言うからこそ信じることができる。
この人はきっと大丈夫だ――、確信に似た何かを胸に感じながら、笠井は小さく笑った。


今日一歳だけ歳をとった人は、またゆっくりと外へ視線を向ける。
同じところに開けたピアスは、やはり三上の方がやけに光って見えた。



*
三上二十四歳おめでとう!
遅れました。ずっと書きたかったネタでした。温存しすぎて鮮度ガタ落ちで何が書きたいのかもう分からなくなりました。
とりあえず私は三上を祝っています。

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2008年02月07日(木) 1時42分
「ぶっちゃけさあ」

ビー!
脇の道路後方でクラクションを鳴らす音がした。
一緒に歩いていた本山と山ノ井もその騒音に吃驚して会話中断を余儀なくされ後ろを振り向く。部活帰りだろう、ジャージ姿でヘルメットを被った男子中学生たちが道路を横切って普通車を怒らせていた。
キャハハ、その中学生たちの楽しそうな声がこちらにも届いてくる。

「で、何?なんか言いかけなかった?」
「ん?ああ――」

時刻はもう八時ちょっと過ぎ。学校帰りに駅ビルで冬服を見て、夕飯を食べてきたらもうこんな時間になってしまった。
辺りはもう真っ暗。お互いに駅からは歩いても帰宅できない距離ではなかったので、バス代電車代の節約のために家まで歩いていた。
(聞いても、大丈夫かな)
数日前心の中に芽生えたその疑問は、問いかけたらこの友人はどんな反応を返してくるのだろう。
そんな風に戸惑ってしまうような内容のものだったのだけど、首を傾げて山ノ井が見てくるので本山も勢いのまま口を開いた。

「タケと、どこまでしちゃったの?」

二人の脇を何台もの車が通り過ぎていく。チラ、と盗み見た隣では、友人がハァと白い息を吐き出しながら暗い空を少しだけ見上げていた。
県内でも割と都会な方なここでは、その空に星を見出すことは出来ない。

「最後まで」
「って、言うと…」
「ヤっちゃった」

自分で聞いておいてなんだが、どう返していいか言葉が見つからなくて「そっか」と間抜けな返答をしてしまう。
――友人は、山ノ井は、一つ下の同性の後輩と付き合っているんだと、この間自分に暴露されたばかりだった。

「引く?」

『俺、タケと付き合ってんだ』
引く?という言葉は、そう言われたときにも聞かれた。本山はだから敢えてそのときと同じ言葉で返す。

「別に。他人事だし」

そう、どんなに話を聞いてもこれは他人事でしかない。
それがどんなに親しい友人の話でも。自分の意見など全く届かないところにある問題なのだから。

じゃあ、なんであんな質問したんだろう。

黙った本山に、山ノ井も何も言おうとはしない。何かを言える立場ではないと弁えてでもいるのだろう。
そういうところ、彼は本当にしっかりしていた。だから自分は自分の考えに没頭することができる。

『どこまでしちゃったの?』

強いて言うなら好奇心が先立ったというところだろうか。
話には聞いていても、同性愛者が身近にいたことは今までなかったし、「ああ、まじでそういう人っているんだ」実際にはただそう感じただけだった。
けれどそれは『何をする』のか分からない、現実味の帯びていない考えにあったときの思考のことで、「ヤっちゃった」そう聞いてもそう思えるとは限らない。
(ヤるって、やっぱあれだよな。挿れる?……えーどっちがどっちのどこに…)
それを目の前の友人と部の後輩に変換して想像していたらちょっと気持ちが悪くなりそうだった。やめよう、下世話な心配は。

隣では普段となんら変わりなく友人が歩いている。こんな話を振られて、少しは緊張しているのだろうか。無表情な友人の顔からはそれを伺うことはできなかった。

「けーすけ」

名前を呼ぶと、恐る恐るという言葉がピッタリ当てはまるような動作で彼がこちらを向く。
――ああ、なんだ。
緊張させていたんじゃないか、本山は苦笑に似た笑みを浮かべて、でもそれも一瞬に消していつも通り、二、と笑った。

「で、ヤった感じどうでしたか奥さん」

そこんとこ詳しく教えてくださいよ。
冗談交じりに言えば山ノ井の肩から明らかに力が抜けていく。相当な勇気がいった回答だったんだろう、先ほどの台詞は。
本山はそれを悪いと思いつつ、思っているからこそいつも通りの態度で接しようと思った。

「よかった、裕史に嫌われたら俺やってけない」
「何それ。愛の告白?」
「ちげーよバカ」

そして漸く山ノ井の顔に笑みが戻る。先ほどと同じように何もない空を見上げた友人は「あー!」と、何かを吹っ切るようにその空へ叫んだ。

「あーあ。タケにあーげちゃった」
「うわあ、リアル」
「……って、女の子だったら言えるんだろうねって話」

けたけた笑う友人は、その笑いとは裏腹に寂しそうに眉を下げていた。
泣き笑いみたいだ――、そんなことを思う。

本山は静かにまた問いかけた。

「圭輔、幸せ?」

山ノ井は言葉の意味を一瞬考え、次の瞬間には悪戯をする子どものような顔で笑っていた。

「幸せだっつーのコンチクショー!」


――その笑みは、本当に心の底から幸せそうだったから。
それならそれでいいんじゃないか。本山は声に出さずにそう思った。
特異な関係で不安も一頻りだろうけど、そう笑って言えるならそれはそれでいいんじゃないか、隣を歩く友人にそんなことを思った。




大人びた考えを持っているわけでもなく、友人のために何かをしてあげる力があるわけでもなく。
そんな男子高校生をひたすら目指して。

i 

2008年02月08日(金) 19時12分
違和感を感じる。

「…何やってんの?」
「ちょっ…動かないでジッとしててくださいよ!」

お前は俺が身じろぎするのさえ許してくれないというのか。

ハアと先輩が溜息をつくのにも関わらず、後輩は真剣な顔でせっせと手を動かしていた。
――今日も今日とて自由登校、月曜日は野球部の部活動が基本的にフリー…自主練習の日だったので、終わった頃合を見計らって山ノ井は青木家を訪れていた。
(おばさんに顔と名前完璧に覚えられてるしなー)
同性の二人は、滅多なことでは人前でこんなに近付くことはできない。だから必然と付き合いはじめてからは青木の家で過ごすことが増えていて、後輩本人は別にそれをどうも思っていなそうだったが、親御さんに迷惑をかけているのではないかと山ノ井はそれが心配で仕方なかった。
…心配で仕方なくても、ここ以外でゆっくりと会えるような場所が見つからないのでどうしようもないのが更に遣る瀬無いのだけど。

そんなわけで今日もこの家の風呂も入らせてもらい、夕飯の勧めは家で食べてきたからとやんわりと断って、青木の部屋。
別に二人でいるからと言って、はいベッドにいきましょう、はいずっとくっ付いていましょう、そんなことは微塵もなかったのだけど、というかあっても今更気持ちが悪くて出来ないけれど、今日のは今日ので結構レアな状況なんじゃないかと山ノ井は静止状態を保ちながら考えた。

青木は、洗面台に放置されていたらしい自身の姉の黒いヘアピンを手に持って、方や山ノ井の前髪を押さえて、何かに奮闘中だった。

「たーけーちゃーん」
「…よし」

奮闘中だった何かが終わったらしい。前髪がスースーするところ、まあ考えるまでもないがピンで髪の毛を止めたようだった。
山ノ井は「で?」と変な体制を強要されたせいで固まった肩をグルグルと回しながら問いかける。

「で?って?」
「で、何がしたいのって話」
「特に意味はありません」

あっさりとそう告げられ、じゃあお前さっきの真剣な顔はなんだったんだ、出そうで出てこない声を山ノ井が咽元に留めていると、「強いて言えば…」神妙な面持ちで後輩が口を開きだした。

「可愛いですよ山さん」

――お前それ、顔と発言噛みあってねえよ…!

この際限ない脱力感は伝わってくれるだろうか。誰に話しかけているかも分からず山ノ井は盛大に頭を抱えながらそう思った。
自分は、これに弱い。
チラ、と手の隙間から青木を垣間見れば、待てと言われた犬のようにそこにそのまま座っている。
普段はどこに居たって誰と居たって人をからかう側にいる山ノ井だけども、この後輩の突拍子のない発言にはからかわれる側に徹することになってしまうし、いくら一緒にいても耐性がつかないようだった。

「山さん」
「…なに」
「顔隠さないでくださいよ、折角やったのに」

しかもこの後輩は山ノ井がそれに弱いことを自覚してそれをやってくるから性格の悪いこと。
二年間ちょっとからかいすぎたか…、今になってそれのしっぺ返しを受けている年長者は何とも言えずに「じゃあ力ずくで外してみれば?」投げやりもいいとこに溜息交じりにそう言った。
少し前までの青木なら、山ノ井にこんなことを言われればすぐさま自分の奇行を謝罪してくるはずだった。しかし今は、少し前ではなくてあくまで『今』だ。

「はい」

一瞬、何の聞き間違いかと思った。
意外なほどすんなりと発せられた肯定の頷きに驚いている暇もなく、顔を覆っていた右手に触れてくる手。
力が強すぎるわけでもなく、かと言って弱すぎるでもないその手は、静かに山ノ井の手を外していく。

「なんかこういうのも新鮮でいいっすね」
「馬鹿言ってんじゃ――」

ねえ。
続くはずだった言葉は在り来たりなほど容易く相手の口の中に消えていった。
両手首を捕まえられて、お互いに床にペタンと座っている状態で、後輩がけしかけてきた唇を享受すれば唾液の味がする。――レモン味のキスなんて嘘だ、自分がいつも飲んでいるそれを、相手のまで含まされていれば脳が痺れる感覚がした。

ハッと息をついて離れる。満足そうに笑っている年下彼氏の顔が目の前にあった。

「やっぱ山さん前髪止めんの似合ってますよ」
「……っせ」

――ベロチューって、なんか、エロい気分になってくる。
そんなことを考えていた山ノ井は、邪気もなくそう言った後輩に、酷く居た堪れなさを感じただった。


なんかうちの青山、当初より大分雰囲気違うよ…!

薄々気付いてはいたけれど…、さ。
今と前ではどっちの方が需要あるのか。ハハハ。
私の書くスタイルって基本左に弱い右、なので、それが青山にも出てきてて自分でも吃驚。…別ジャンルが全部そうなので、青山はそうならないように気をつけてはいるんですが。
P R
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