006:ポラロイドカメラ/1 

2006年04月07日(金) 22時49分
「ねねvvイルカ先生」
小汚い格好で窓から土足で入り込んだ上忍は、
そのままバウンドするように俺にじゃれ付いてきやがった。
「…靴を脱げ!!!!!!!!!!!!!」
ゴツン
拳骨を頭にくれてやり、大音響で耳元で怒鳴ってやった。

目を白黒させて一寸フラフラ頭がしてるから、少しは効いたのかねねぇ…。
これでも上忍…目の前の千鳥足を見て、溜息が思わず口から零れた。

当の上忍様はと言うと…

グラ〜リグラリ
危ない足取りで
「うふふ〜お星様が一杯です〜」
いかにも楽しそうだ。
全くどうしてこんな奴を…等と考えながら見ていたが……もしかしたら頭の芯がずれちまったか?
少し焦る気持ちににじり寄り、焦点がまだ合ってない様な目を心配になって覗き込んでしまった。

ウッチュ―――vvv

ガツン
綺麗にもう一発入った…。

一瞬カカシさんの体がぶれた気がしたのは俺の眩暈だったのかもしれない。
心底そう思う。

しかしながら
『あぁぁ』
又殴っちまった事に少しだけ自己嫌悪。

先ほどの時と違い、今度のはまともにヒットしたらしく……
頭を庇う事無く重力の方向へ後頭部から落ちていった。

ゴトン
『ゴトン?』

重たい音に少しだけ心配になったが、まぁ上忍だし大丈夫だろう。

『でももしかして……目がそのまま覚めなかったら』

またタヌキかもと警戒しつつ、それでも少しだけ心配になって倒れたままの人型を覗き込むと、見慣れない大きな黒い四角い角がちらりと見えた。
どうやら大きな音はこれだったらしい。

『心配して損した』
全くもって本当に損した気分になったのは、寝息を立てているのが聞こえたからかもしれない。

釣をするひと/3 

2006年03月10日(金) 23時18分
「何なさってるんですか〜?」
のんびりと声が降ってきた。
『貴方こそ何を(笑)』
含み笑いが漏れた。
こんな時間にこんな場所、見つけようったって簡単に見つけられるはずはない。
「釣りを…ね」
ゆっくり視線を動かして、覗き込む様にソロリと近づいてくる気配に答えを返した。
「釣り?」
声の主は視線を水平に戻してキョロっと回りを見渡し、不思議そうに小首を傾げた。
「釣ですか〜…」
キョロリ
どうも納得がいかないらしい。
キョロリ
そりゃそうだろう。
釣りの道具なんて回りを幾ら見渡してみてもありゃしないんだから。

「…釣れましたか?」
暫く動かしていた視線を、再度俺に戻したその問いかけに笑顔で答えを返した。
「釣れましたよ」
俺の答えに不思議そうに…?…あぁ笑ってるんだ。
一人ですねてたとかそう言う風にこいつは思ってるのかもしれない。
逆光で表情は目視できないが、声が表情を伝えてきた。
「大漁ですか?」
冗談だと受け取ったのか否なのか…。
頭の上の方に膝をついて、背中を丸めて俺の顔を覗き込みながら聞いてきた。
「えぇ」

今夜は大量ですよ。
引っかかったのは銀の髪の上忍。
今日の獲物がゆっくり被さる様に近づいて来ると、満月が隠れて代わりに柔らかな銀色が光を透かして目の前に広がった。
『尻の下の草とどっちが柔らかいだろう…』
まぁそんなのは触ってみりゃわかること。

俺は腕の中一杯に、今日の収穫を逆さまに抱え込み引き寄せた。

釣をするひと/2 

2006年03月09日(木) 0時20分
浮を浮かべて、どの位か時が経っただろう…
ふっと縁が歪み、微かに糸を引くように竿先が揺れて、軽く、秋の稲穂程にたわんだ竿先が僅かな余韻を手に伝えたか伝えないか…一瞬の後に、また素知らぬふりを決めていた。
『……餌をとられたかな(苦笑)』
ヒュンと上げた糸先には、鈎針が月の光を反射して、キラリと銀色に光った。
餌が無くなると現れる鈎針。
狙った獲物が食らいつくように美味しそうに仕掛けを隠して。
鋭い切っ先を現したら最後、食らい付いて喉の奥、深く刺さって逃さない。

『あぁそう言えばこれって…』

考え事をする間も無いほどの時間で、再度沈めた浮きが軽く蠢いて少しだけ横にぶれ、ぷかぷかした。
じっと眺めていると、又同じように静けさを取り戻してしまった。

『あぁ…又外れだな…』
苦笑いが頬を掠める。

三度目の正直。再度仕掛けを付けて沼の中に沈めて…
揺れた水面に間髪入れずに竿を上げると…今度は長靴…。
『当りと言うかはずれと言うか…』
実際目の前でこう面白くも無い間抜けなことが起こると、お決まりなギャグの中に飲みこまれたみたいに変な感じだ。
「は〜…」
思わず溜息が漏れた。
心の底から吐き出て来るように、深く深く気の抜けた溜息が。

全くもって日が悪かったらしい。
妄想の中でもぼうずなんて。
ボリボリ髪の毛を掻き毟り、倒れこむように背中を地面に預け、天上の満月をジロリと睨み付け、店じまいと諦めて竿を心の奥にしまい込んだ。
何事も諦めが肝心。
さぁとばかりに腰を上げかけたその時に、すぐ近くに人の気配が揺れた。

…当たりが…。

005:釣りをするひと/1 

2006年03月03日(金) 7時50分
カーテン越しの光があまりに眩しくて、何度も寝返りを打ち、それでもやはり寝付かれず、どうせ寝つけないのならばともそもそ布団から這い出して、気分転換も兼ねて散歩に出掛けた。
まるで月が手招きしているみたいな晩だった。

『今夜は満月か…』
今更ながらにまぁるい月に気がついた。

テクテクと気の向くままに歩みを勧めると、いーかげん『…たるい』等という言葉が頭を掠め、更にいい加減腰を下ろしたい位歩いた所で足が止まった。
止まったと言うか…止められたと言うべきか…行き止まり。
ぶち当たった場所は沼だった。

『こんな場所に沼などあったのか…?』
沼独特の匂いにひょいと覗き込んでみると、そこにはきらきらと光を反射する綺麗な形が映し出されていた。
『あぁこれは…』
思わず笑みが零れた。
月は、綺麗な自分の姿を誰かに見せたかったのだろうなと。
『俺を引っ掛けやがりましたね』
見上げた空に心の中で毒づいた。

折角素敵な眺めの場所に誘い出して貰ったのだから…そう思い素直に腰を下ろした。
『釣り具…持ってくりゃよかったな』
腰を落ち着けた場所の具合を改めて見て思った。
沼の周りは柔らかい草がクッションのように、尻の下に心地良い塩梅だ。

ひゅんと竿を一振り。
金色のまあるく綺麗な水面にとぷんと投げると、まるで満月を模ったみたいなまあるい波紋が輪郭を波立たせて広がってゆく。
波がさざ波になり、沈黙したら仕掛は完了。
あとはじっと待つのみ。

音をたてず。
空気を震わせず。
水面と同じ様に。

風が水面を撫でる音を時折耳にする程度で、月も沼も俺も沈黙をした。

ぼ〜っと空に目をやると、淡い墨のような雲が月に戯れ色々な形を見せてくれるので、飽きもせずにただただ眺めていた。

マルボロ(紙巻煙草のブランド名) /3 

2006年02月24日(金) 23時27分
カカシ先生はというと、平気な顔して俺の手から奪ったタバコを口にして、
「苦っ…」
しかめっ面で口から離した。
「貴方の好きな味ではないでしょうから」
灰皿はそっちですと指差した。
『体に良くないと分かっている物をあえて口にするような人では無いし』
ぺぺっとしてる子供っぽい仕草に俺の口元にも笑みが浮かぶ。

笑われてるのに気がついたのか
「う〜ん…口直しは無いんですか〜?」
のほほんとした顔で、ニッコリ笑ってじっと俺の目を見てくる。

「そんなもの無いですよ」
ゴチッとおでこをぶっつけて、ジロリと睨みつけてやる。

「ば〜か」
瞳の位置が近づく。

「ば〜か」
唇が触れる一ミリ手前。
カカシ先生の口からも、同じタバコの匂いがした。

机の下、足で床を蹴り上げて、椅子毎後ろへ仰け反るように倒れてやった。
バランスを崩すとあとは…重力の導くままに。

見事に下敷きになったカカシ先生は、「いたたたたた」などと言いながらもクッションの役目を果たしてくれた。
『ざま〜みろ』
ヤツアタリは気ままにベクトルがピンと動くので意味なんてありゃしないんだけどね。
無意味な行動でも成功すると何となく気が晴れた。

下敷きになってなお、タバコを離してない辺り、一応気遣ってくれてるのだろう。
火の不始末は火事の元。
一応教師って事だな。

カカシ先生の指先に、濃く薄く未だ消えない炎を見て、急に家の明かりが恋しくなった。

「帰りましょうか」
そっとタバコを取り上げて、灰皿にぎゅっと押し付けながらボソリと言った一言に、子供のような笑顔が答えた。

マルボロ(紙巻煙草のブランド名) /2 

2006年02月22日(水) 0時00分
「う〜…っ」
と伸びをしてみると、背中がボキボキと音を立てた。
長時間同じ姿勢で机に向かっていたせいだろう。
片方の肩を、反対側の手を拳骨にしてトントンと叩くと、響く振動が気持ち良い。

『じじ臭…』

旧にがっくり老け込んだ気がして、肩から手を離し机に戻すと、煙草の箱に指が当たった。
不思議なもので、別に凄く吸いたい訳でもないのに、箱から一本…
『今消したばかりなのになぁ』
苦笑いと共に、また新しいタバコに火をつけた。
暗い室内に、濃くなったり淡くなったりの濃淡は、夏場の水辺に居る蛍のようだ。
蛍を沢山捕まえて、籠に入れて明かりに使ったこともあったっけな…等と考えながら、

パチリ

手元の小さな明かりを燈した。
煙草の明かりでは手元を照らすには足りないから。
そしてまた、黙々と答案に向かった。

ふっと左手が僅かに軽くなった。
「……?」
視線を移動させると、手からタバコが軽さの分だけ消えていた。
「?」
消えた方向の気配を探ると…

「危ないな〜イルカ先生」

肩口からニョッキリ腕が生えて…
『!!後ろか』
俺がギョッと後方を見遣ると、カカシ先生がいつのまにか俺のチェックしている答案を覗き込んでいた。
「フンフン」とか言っている辺り、少し前から居たに違い無い。
「…何時からいらしたんですか?」
気配に気がつけなかった気恥ずかしさを隠して、ジロリと睨んで答えを待った。

「う〜ん…貴方の指に紅い火がくっつくギリギリちょっと前ぐらい?」
ぎゅうぎゅう首に腕を巻き付け
「答案に集中し過ぎですよ」
耳元でぼそりと囁いた。
笑っているのだろう、三日月の様に細めた目が猫みたいだ。

手に火がつきゃいくら俺でもわかる。
『そこまで鈍くないぜ…』
俺の憮然とした表情を見たカカシ先生は、
「だって、心配で俺の心臓とまっちゃいますよ?」

こっ恥ずかしい事を…いっそ止まってしまえ。

004:マルボロ(紙巻煙草のブランド名)/1 

2006年02月20日(月) 21時42分
ふー
顎を上に上げて、ゆっくり煙を吐く。
放課後の教員室。
受付の任務は今日は無い。
生徒達が下校したアカデミーはひっそりと昼間の騒々しさはかけらも無く、対照的に教員室は生徒との一日の終りに安堵感と翌日の準備等々で、それなりにざわついてはいる。
ぐるりと回りを見渡すと、一人、又一人と、同僚が荷物を片付け、「お先に〜」と帰って行く。
家族の待っている者、恋人との時間に秒針を気にする者。
ガラガラと出入り口付近が賑やかだ。
俺はと言うと、のんびりと一服した所で、机の上に積まれた生徒達の提出物を捲り、一枚一枚をじっくりと見分する作業に入った所だ。

「イルカ先生お先に失礼します。鍵閉めよろしくおねがいしますね」
「あ…先生もお疲れ様です」
声を掛けられて、気がついた時には、最後の先生が教員室を出るところだった。

ガラガラ

ドアのしまる音と共に、しーんと静まった教員室。
ポリポリと鼻の頭を掻いて、何となくポツリと途切れてしまった気持ちを中和する為に、お茶を汲みに席を立った。
熱いお茶を入れてぐっと飲み干す。
『ふ〜』
気分転換っと。
もう一杯新たに入れて、今度こそ席に戻り新しいタバコに火をつけ、又作業に戻った。

「全くこんな問題もとけねーのかあいつは…」
溜息と苦笑いが独り言のようにもれてるのを気にもせずに、机の上の沢山のペーパーに向かった。
生徒達の一人一人の答え。
かっちりと原稿用紙の桝目に書いたような文字の奴、ミミズののたくったような字の奴。
一つ一つに性格が読み取れる。
学校の授業時間は短いから、こう言う小さな提出物でも生徒との繋がりには重要なものだ。
手を抜く事無く、文字の一つ一つを拾って読む。

灰がポトリと机の上に落ちて、慌ててぎゅーっと灰皿に捻り込んだ。
危ない危ない。
タバコのことなどうっかりしていて、大切な生徒の提出物に穴をあける所だった。
ポリポリ…
別に誰にとがめられた訳でもないのに、顔が火照ってくきて、キョロリと周りに人の居ないことを確認した。
何時の間にか大分時間が過ぎたようだ。
窓の外に目をやると、日も山の端を照らすのみになり、部屋の中は随分と暗くなっていた。

バレンタイン 

2006年02月14日(火) 0時29分
「イルカ先生チョコレート頂戴vvv」
両手を差し出しニコニッコしているカカシ先生が目の前に居る…。

今日はバレンタインという”お菓子屋の陰謀”に人々が踊らされる日。
例に漏れず目の前で浮かれてる人が一人…
目がキラキラしてるよ(汗)…どうしよう…用意してたチョコは生徒に上げてしまったなんて…

い・え・な・い・・・・・

放課後の教室に居た生徒が、戸締りをしに戻った教室に未だ居たから、
『どうしたんだ?』
そう声をかけた時に…子供心にバレンタインにチョコレートを貰えないことが悲しくて皆と行動ができなかったことを知った。
一つぐらいはどの子も貰っている。
俺のかばんの中にはカカシ先生に上げようと思って買っておいたチョコレートが一つ。
カカシ先生の顔が目の前に浮かんだ。
しかし…
俺は鞄からチョコレートを取り出し、
「特別に先生からだぞ?皆には内緒な」
頭をポンポンってしてやりながら渡した時の子供の顔。
半分後悔、半分満足。

帰宅した目の前は…
思いっきりブルーになった…
どうしよっかな…この目は貰えないことなんて考えても無い目だ…

003:荒野 

2006年02月09日(木) 23時35分
ずっと同じ風景。
一面にべったり茶色を塗りたくった平面。

歩いて歩いて歩きつづけて…ぺったり尻を脚の裏と同じ位置に下ろした。
ゆっくり息を吐いて、ぐるりと回りを見渡した。
一体どこまで続くのだろう?
見飽きちゃったよ。

どうして俺はここに居るんだっけ?
どこに向かって歩いていたのだろう?

あぁもう・・どうでも良いや…

目を閉じてゆっくりと意識を手放すと、心地よい闇が俺を包み込む。
同じ何も無い世界なら、こっちのほうがずっと良い…深く深く落ちて落ちて…

「…」
何だろう?
「・・シ・・ …」
何?
「…カカシさん」
煩いな…
「…カカシさ・・ん!カカシさん!」
…あぁ…俺の名前だ

誰だよ俺の邪魔する奴は…折角…
せっかく…
あれ…

重く優しい闇を押しのけ、目を開けて周りを見渡すと、さっきまでの無限の荒地に綺麗な色が見えた。
色は強い光。
近づいて、そっと手を伸ばして触れてみた。
色々な色が流れ込んで…

真っ白い天井
消毒の匂い
「イルカ先生泣いてるの?」
呼び戻してくれた人に笑顔を向けて。

002:階段 

2006年02月07日(火) 21時51分
「カカシ先生」
呼びかけると、ぼんやりした笑顔で返事を返してくれる。
「何ですか〜イルカ先生?」
何気ないやり取り。

ぼんやりした表情の下にあの人の本心があるのだろう。
もっと貴方に近づけたら・・・
後少し…後少し……

後一歩が追いつけない。
まるで・・・そう、まるで螺旋階段のよう。
鉄の柵で、一歩前が区切られたような。

くるくるくるくる追いかける…
かんかんかん…指先が貴方に触れそうな位置だっていうのに…
響く靴音半音ずれて、手に温もりが触れそうな、一瞬の隙間にスルリと抜ける。

つかず離れず見せる笑顔に、手を触れられることは未だ無い。


『野良猫め。…何時か首輪をつけてやる(苦笑)覚悟しやがれこん畜生!』
2006年04月
« 前の月  |  次の月 »
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30
最新コメント
アイコン画像チーズ
» 006:ポラロイドカメラ/1 (2007年07月30日)
アイコン画像BlogPetのチーズ
» 006:ポラロイドカメラ/1 (2007年07月05日)
アイコン画像BlogPetのチーズ
» 006:ポラロイドカメラ/1 (2007年06月28日)
アイコン画像BlogPetのチーズ
» 006:ポラロイドカメラ/1 (2007年06月14日)
アイコン画像BlogPetのチーズ
» 006:ポラロイドカメラ/1 (2007年06月07日)
アイコン画像BlogPetのチーズ
» 006:ポラロイドカメラ/1 (2007年05月31日)
アイコン画像BlogPetのチーズ
» 006:ポラロイドカメラ/1 (2007年05月16日)
アイコン画像BlogPetのチーズ
» 006:ポラロイドカメラ/1 (2007年05月09日)
アイコン画像BlogPetのチーズ
» 006:ポラロイドカメラ/1 (2007年05月02日)
アイコン画像BlogPetのチーズ
» 006:ポラロイドカメラ/1 (2007年04月25日)
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:triplu-happy
読者になる
Yapme!一覧
読者になる