遠い思い出(クロ+ルル+ナナ 

2007年01月30日(火) 19時24分
穏やかな光が、部屋の中に差し込んでいた。
暖かな陽気に誘われ、既にナナリーは退屈して小さな寝息を立てている。

「兄様。まだですか?」
「…もうちょっと」
「先刻からそればかりですよ」

ふふ、と笑うルルーシュとは反対に、クロヴィスはチェス盤を覗き込んだままだ。

「これで、どうだ?」
「…チェックメイトですよ。」
「あぁ!またか!!」

くしゃくしゃと自慢の金髪をかき回す姿に、ルルーシュは笑う。
ルルーシュはこの兄が大好きだった。
身分も関係なく、とても自然体で自分たち兄弟に接してくれる。

「もうやめにしてお茶にしましょう。ほら、ナナリーも起きて」

はぁ、と大きなため息をつく兄に苦笑して、ルルーシュはナナリーを起こしにかかる。

「本当にお前達は仲がいいな」
「そうですか?」

ルルーシュのなかではこれが普通なので、小首を傾げるしか出来ない。
そうだ、とクロヴィスは頷いて、ルルーシュの体を抱き上げる。

「ぅわ」
「私にも、そんな仲良くできる兄弟が欲しい」

両親とも血のつながった兄弟が、そう言うクロヴィスにルルーシュは少し困って。

「僕達じゃ駄目ですか?兄様」
「駄目じゃないとも。」

だから、クロヴィスはここに足を運んでいるのだから。

「私も、抱っこされたいです。クロヴィス兄様」

大きいアメジストのような目で見上げられ、すまんすまんとクロヴィスは謝って、
右手でルルーシュを、左手でナナリーを抱き上げた。

「まぁ、クロヴィス兄様は力持ちですね」
「お前達二人を抱き上げるくらいはね」

これでも、お前達の兄なのだから、と言うクロヴィスに、ルルーシュとナナリーは顔を見合わせて笑う。

ーーークロヴィス様、お立場をお考えください!
ーーー何のメリットがあります!

メリット?
メリットならほら、こんなに多く。
お前達は知らないのだ。
こんなにも愛しいものがここにあると。
庶民の出がどうした。
マリアンヌ王妃とて、とても優しく、思慮深く、美しい人だというのに。
そしてこの子達は、こんなにも暖かく、可愛らしい。

「さぁ、侍女たちに頼んで、お前達の母上も勿論招待して、庭でお茶にしようか」



+++++++
クロヴィスって本当は愛情に飢えてたんじゃないかと。
シュナイゼルと似てたから両親ともにつながってるのかと思ったけど、違うみたいだし。
だったらルルとナナリーの関係をうらやんでこういう関係もありかなぁ、と。
ユフィがあの絵を見てるシーンで思いついて、メージュのガイド見て書こうと思ったネタ。
でも、こんだけ好きなルルに殺されるって言うのは寂しいよねぇ。(しくり。

正義なんて僕の柄じゃないんだけどね。(…あれ?) 

2007年01月25日(木) 21時01分
「なぁにしてるのかなぁ」

その声に、大げさに反応する男に、にやりと笑う。
知られないとでも思っているのか。
このラボには沢山の機密があって、侵入者だとか、いやにサーモグラフィの高いーーー要するに何かたくらんでいるーーー者には反応するようになっている。
そしてそれはダイレクトにロイドの愛機に通達されるようになっているのだ。

「婦女暴行はいけないなぁ。」

しかも、それが自分の大事な助手ならなおさらのこと。
彼女はどこか殴られでもしたのか、ぐったりと気を失っている。
それに眼鏡をきらりと光らせ、ロイドはますます笑みを深めた。

「で、君、だぁれ?」

言った途端、男は殴りかかってきた。



勿論、インドアで武術なんて経験したことのないロイドに勝ち目はなかったが、
そこはインドアらしく、文明の利器を持っていた。

「文明の利器…というにはいささか古典的だけれどもねぇ」

昔で言うスタンガンみたいなものだ。
ただし、気を失わせず、強い痺れだけを引き起こす。
声も出せず、ただこちらを睨む男に、ポケットから注射器を出して光らせてやる。

「ちょうどね、今新薬の開発もしてるんだ。僕」

その言葉に、こわばる男の顔に再び顔に笑顔を貼り付ける。

「そう。お察しの通り。ちょっと実験体になってよ」

いやだ、と口だけで繰り返す男に、情けなどかける必要はなく、消毒もせずに、その毒性の強い薬物を、なんの躊躇いもなく注入していく。
どうせ、生物兵器のために生み出されたものだ。
ここでゴミ一つ消すのに、なんの躊躇いもいらないだろう。
ロイドにとって、世界は二分される。
自分にとって有益か無益か。
その間はない。
そしてこの男は間違いなく無益なのだ。
ならば、自分にとって実験相手と言う名の有益にしてやろうという、そういう意思がはたらいただけだ。
そして、男は五分もせぬうちに、息絶えた。
なんだ、つまんないの。と呟いて、ロイドは気を失ったままのセシルを背負って、その部屋を振り向くことなく後にした。

それでも、見せたいものと見せたくないものの区別くらいある。
この女性に限らず、あの枢木准尉にもそうだ。
自分にとって有益をもたらしてくれる人々に、見せたくないものくらい、自分だって持っている。
勿論、見られたら見られたで構わないが、そのあと生じるであろう不都合を考えればやはり見られたいものではないだろう。



「ロイド…さん?」
「やぁ、起きたかい。」

セシルが現状を把握しようと瞬きを繰り返すのに、ロイドはいつもの笑顔で答える。

「言っとくけど、間一髪、君は何もされてないからね」
「……助けて、くださったんですか?」
「なんだい、その意外そうな声。ひどいなぁ…。それと、君はもう少し自覚したほうがいいね。このラボの中で数少ない女性だって言うことを」

その言葉に、はい、と揺るぎなき声で頷いて、失態は二度と繰り返しません、という彼女にそうしてね、と軽い口調で言う。

「ロイドさん」
「はへ?」
「ありがとうございます」
「ふふふ。この借りは高くつくよぉ?」
「じゃ、今度おにぎり作ってきますね。」

ありがとう、なんてかゆい言葉、僕に使わなくてもいいのに。
そんな言葉はもっと大事な人にとっておけばいいと思う。
僕にありがとう、なんていうときは、ランスロットのことを褒めてくれるときだけで十分だよ。

とにかく、彼女の作るおにぎりの中身がマーマレードなのかイチゴジャムなのか。
そんなことに頭を働かせていると、お腹が小さく鳴った。


++++
ロイドさんは、結構人殺しとか平気でやれちゃいそうな気がします。
他に興味がないから。
自分の興味あるものと、ないものの差がすごい激しい気がするんですね。
でもってセシルさんのおにぎり、結構彼は楽しみにしてるんじゃないかなぁと思うんですよ。マジで。
だってロイドさんって味覚崩壊してそうですもん。
そしてこれはロイセシじゃないんですよ。
ロイド+セシルなだけで、愛情とかはないんです。
あくまで同僚としての存在。ただそれだけ。


すき。(ヨザケン) 

2007年01月03日(水) 11時21分
輪廻を繰り返すことは、そう悪いことだけでもないのだ。
たとえば、母に抱かれるとき。
そのぬくもりは、大人になってしまえば二度と得られないぬくもりだ。
それを何度も味わえるのも、そう悪くはない。

そして。

「何考えてらっしゃるんで?」
「んー?」

この男と、めぐり合えたのもまた一つ。

「君の髪の毛を抜いて10円ハゲ作ってあげようかなあー、と」
「…勘弁してくださいよぉ、猊下ぁー」

情けない顔で、一糸纏わぬ姿で擦り寄ってくる男に、邪魔だよ、と眉をひそめて。
でも、そのぬくもりは嫌いじゃない。
君に触れられるのは嫌いじゃない。

好き、だ。

君の顔が。
君の目が。
君の手が。
君の声が。
君の笑顔が。
君のぬくもりが。

どうしようもなく好きで。
愛おしくて。
でもセーブしてしまう。
それは、自分の立場と君の立場が違いすぎるのもあるし、
僕の役目が重要すぎることも関係している。
だけどこれは村田健だけが知っている感情で。
言ってはやらないけれども。
けれど。

「ねぇヨザック」
「なんでしょう?」
「僕が、君を嫌いだと思う?」

それに、ヨザックはニヤリと笑った。
狡猾な、利口すぎる狼。

「貴方が俺を嫌いなんて、世界が崩壊するほどありえないですね」
「……随分と買いかぶりすぎだね。」

君自身を。
けれど、確かにそうなので、悔しいから頬にキスを一つ。

「せいぜい、嫌われないようにがんばるんだね」
「了承しておりますよ、猊下」

にっこりと笑えば、鏡で映すようににっこりと笑顔が返ってきた。
それに。あぁやはり好きだ、と思って。
今年もこの男に振り回されるのかと思えば辟易した。
勿論僕は、振り回すほうが好きだけれども。
振り回されるこの男を見るのがすきなのだけれども。
まぁそれも一興か、と再び体を求めてきた男の首に腕を絡めた。

+++++++
とにかくヨザックが好きな村田さん。

猫(コンムラ) 

2007年01月02日(火) 18時12分
部屋に入れば、黒を纏うその人が膝の上に乗って丸まっている猫の背を撫でながら小さく欠伸した。
そんな様子を見て、くすりと微笑めば、何、と返される。
とても可愛らしい、なんてこの方には言えない。

「そんな猫、一体何処から…」
「んー。多分フォンヴォルテール卿のところじゃないかなぁ。
 ほら、明らかに彼が好きそうだろ?これくらいの仔猫」
「それはそうですが…」

だったら兄が今頃は探し回っているはずだ。
本当にグウェンダルは動物や女子供に甘い。
が、そうかと思った瞬間、グウェンダルの悲鳴が遠くで聞こえた。
まぁそれは心配することはないだろう。
どうせいつものことだ。
心の中で手を合わせて、コンラートは村田に近づいた。

「猫、お好きなんですか?」
「嫌いだね」

その言葉に、おや、と目を瞠る。
その割には、その背を撫でる手がとても優しいのに。
何故、と問いかければ、なんとも村田らしい答えが返ってきた。

「だって、気まぐれだろう?懐くときはこうやって素直なのに、
 離れるときはすぐに離れていく。爪を立ててね。そんな気まぐれ、好きになれないな」

それに、思わず噴出した。
まるで猊下そのものではないか。
前々からそう思ってはいたけれど。

「………君、何が言いたいの」
「お分かりでしょう?」
「…言っておくけど、僕は渋谷には素直だよ。ご主人様だからね」
「そうですね」

ただ、それは作った素直さでもある。
それを十分分かっているから、比較されても気にはならない。

「君に対して素直になる必要なんてないだろ?」
「十分貴方は素直ですよ」
「は?」
「だって、そんな不機嫌さを見せてくれることが素直さの証明でしょう?」

にこりと笑えば、苦虫を噛み潰したような村田の表情。

「恥ずかしい男だね」
「よく陛下にも言われます。」
「………」

ふぅ、とため息をついて、村田は猫の背から手を離した。
それに不満げに、猫がメェ、と鳴く。
代わりに手を伸ばせば、何が気に入らなかったのか毛を総毛立たせ、
猫は村田の膝から降りて開いていた窓から出て行ってしまった。

「君は、猫には好かれないみたいだね」

その様子におかしいとばかりに肩を振るわせる肩に、手を置いて。

「そうでもないでしょう?」
「そうかい?で、この手は何?」
「少なくとも、この猫には好かれていると思いまして、ね」

ちゅ、と頬にキス。
それに呆れた、とばかりに顔を歪めて、村田は肩に置かれた手を払うと
近くにあった本に手を伸ばした。

本当は、部屋に入ってきたときから猫が羨ましかったのだといえば
この方はどうするだろう。
それこそ笑われるだろうか。
貴方の気持ちよい滑らかな手で、背を撫でられるのはどれほど気持ちよいだろうかと。
そんなどうしようもないことをずっと思っていた。

本を読み進める村田の顔は真剣で、それに満足する。
そう、これでいいではないか。
お互い触れすぎず、踏み込みすぎず。
それはお互いに望んだ距離。

そうして窓際の低位置に背を預ければ、小鳥のさえずりが聞こえた。



++++++
・・・・・・・・・恥ずかしい人たち・・・

弱音(ヨザケン) 

2007年01月01日(月) 18時19分
まるでバケツをひっくり返したように雨が降っていて、
有利は折角のキャッチボールタイムを奪われて不満だった。

「いや、天気が変わるのはどうしようもないし、雨がないと農作物もできないからいいんだけどさ」

いいんだけど、やっぱり健康優良児、&野球少年としては恨めしい。
そう言えば、コンラートは苦笑した。

「そうですね。先程まで晴れていただけに残念でしたね、陛下」
「陛下っていうなー名づけ親」
「失礼。折角仕事も終わったのに災難ですね」
「本当だよー。もー」

ぶつぶつと恨めしく窓の外を見つめている有利に、
壁際で護衛しているコンラートは心中で小さくため息をつく。
雨でキャッチボールが出来ないのも嫌だが、それよりも恋人との甘い時間をすごせないだろうか、と。
そうしてコンラートが一歩踏み出した瞬間、
有利が大きく目を見開き、ガタン!と椅子を倒して立ち上がった。

「ユーリ?」
「タオル!」

いきなりの脈絡のない叫びに、コンラートは一瞬ためらう。

「どう…」
「いいからタオル!早く!」

そう言って部屋を駆け出していく有利に、
コンラートも急いでタオルを用意し途中侍女に風呂を用意するようにいいつけて後を追った。

執務室からは裏庭が見える。
こっそりと裏庭の通路から衛兵達に見られることなく入ってきた影。
それは黒を纏っていた。
自分以外に黒を纏っている双黒のものなど、一人しかいない。

「村田!!」
「あ。渋谷〜」
「渋谷〜じゃないだろ?!なんでお前ずぶぬれなんだよ?!」
「傘。忘れちゃってさぁ」

忘れちゃってじゃないだろ?!
そう言って、へらりと笑っている親友の腕をつかんで風呂場へ向かう。
すぐに追いついてきたコンラートが驚いたように目を見開き、村田にタオルを渡す。

「ありがとう。ウェラー卿」

その笑顔に、いつもと違うなにかを感じ、コンラートは眉をひそめる。
そして有利を見ると、有利も何か思うところがあるらしく、そっと視線を交し合う。

「やっぱり雨に濡れると寒いねー」
「当然だろ?ったくもー、しゃぁねーなぁ。」
「いいよ。お風呂一人で行くし。ウェラー卿も…」
「いいからお前はコンラッドについててもらえ。おれは着替えとってくるよ」
「え?いいよ〜別に。」

放ってくれよ、と言いたげな、それでも笑顔を崩さない村田に、
首を振って有利はコンラートが頷くとその場を駆け足で離れた。

「君はいいのかい。王を放っておいて、さ」

その言葉にトゲがあるのは分かっているが、コンラートは微笑する。

「大丈夫ですよ。今日は兵も多いですし、城内ならば平気でしょう」

本気で思っているわけではない。
勿論コンラートとて、このような状況でなければ有利と行動を共にするだろう。
そうできないわけが、今日の村田にはある。

「さ。お背中お流ししますよ」
「それはどうも。でも放っておいてくれるかな。分かるだろうけど今機嫌悪いんだ」
「だから、ですよ。」

その言葉に村田は笑顔を消し、一瞬目を細めたが、
なら勝手にして、と服を脱ぎ捨てて風呂場に入っていった。
ここまで感情を露にする村田は大変珍しく、だからこそ放ってはおけなかった。

タオルを持って浴室に入れば、村田が湯船に浸かって、ほぅ、と息を漏らしたところだった。

「大分、お体が冷えたでしょう?」
「そうだね。眞王廟を出たらすぐに降ってきたから」

その言葉に、コンラートは目を瞠る。
ならば、何故傘を取りに戻らなかったのか。

「…ヨザック、ですか?」

原因は。そう尋ねれば、しばらく沈黙した後、コンラートに背を向けたまま頷いた。
ぱしゃり、と顔にお湯をかけて洗う村田に。
それが何回も繰り返されて、やっと気づいた。

「猊下」

村田が、泣いていた。
いつからか。
きっと、雨に濡れていたときから。

「あいつが、何かしましたか。」
「違うよ」

「僕が、したんだ。酷いことを、言った」

そう。酷いことだ。
どうしようもないことだ。
それでも言わずにはいられなかった。
どうしようもなく。
あの場所だから、『彼』にあてつける意味も含めて。

−−どうせ「僕」をおいて死ぬくせに!

その瞬間の、ヨザックの顔が忘れられない。
なんて言葉を発していいのかわからない、という顔。
酷く、傷つけたような気がする。
イラついていたという理由だけでは片付けられない、酷いことだ。

「…別に僕は、何を言っても彼が傷つかないなんて思っちゃいない」

そりゃ、普段は馬鹿だの筋肉だの変態だの言ってるけども。
そんな軽いものじゃない。
そんな笑って済ませられるものじゃないんだ。

「……ヨザックなら、大丈夫ですよ」
「…そんなの、わから…」
「分かります。俺には」

その言葉に、村田は振り向いた。
其処には、真剣な顔をしたコンラートの姿があった。

「あいつは、大丈夫です。あいつなりの答えを出して、猊下の元に戻ります」
「……幼馴染の勘、ってやつかい?」
「そうですね。それもありますが…あいつは心底、貴方に惚れていますから」
「知ってるよ」
「なら、大丈夫ですよ。」

正直、その自信がどこからくるものなのか分からなかったけど。
それでも、コンラートの目が、表情が、大丈夫だと物語っていたから。
信じてみようかと思った。
彼の幼馴染で親友で、きっと村田以上に彼のことをわかっているだろうこの男を。

「……君は、今日ヨザックに会う予定は?」
「今、できましたね」
「ならば、今夜僕の部屋に来るように、と」
「分かりました」

会うのが怖い。
でも会いたい。
謝らなければいけない。
そして笑って欲しい。
いつもの冗談ぽく、でも自分をちゃんと見てくれるように。

そう思って、村田は目を閉じた。

+++++
正月から暗くてすみません。
先ほどのお口直しに辛口で。
でも甘いのはなーぜーーー。

あけおめ。(ヨザケン) 

2007年01月01日(月) 17時21分
別に正月だからと言って、その日を特別視する理由はない。
それでも…

「……こんな迎え方はしたくなかったなぁ…」
「はいぃ〜?」

なんですかぁ?とふざけた調子で擦り寄ってくる男を押しのけてため息をつく。
男とヤっている最中に日付が変わるなんて…。
否、珍しいことではないのだが(それもどうかと思うけれど)
一年の最後も一年の初めもソレだと、ちょっとどうかと思うだけだ。

きっと健全な親友は今頃夢の中だろうに。

まぁ。でも。
滅多に休暇などもらえない男が傍にいて。
それが自分の(言いたくないけど)愛しい男で。
こんな新年の迎え方をしたのも一つの縁で。
シンオウヘイカのお導きなら唾を吐き捨てるけれども。
それでも、幸せなのだろうと思う。

少なくとも去年までは親もいない、ただ一人でゆく年くる年を見ながら年を越していた、あのつまらないときに比べれば。
こうして、新年を一緒に迎えたいと思う人がいるというのは幸せなことだ。

「ねぇ、ヨザック」
「はい?」
「あけましておめでとう」
「?」

その言葉にヨザックが首をかしげる。
それが可愛いと思う動作なら今すぐやめたほうがいいと思ったけれど、言うこともなかった。
こんなときくらい毒を吐くのはやめようと思ったからだ。

「日本ではね、年が明けるとそういうんだよ。新しい年があけました。また新しい年を迎えられてよかったですね。おめでとうって」
「そうなんですか。…おめでとうございます。猊下」

にっこりと笑ったヨザックの顔がかっこいいと思ったなんて言ってはやらないけれど。
こちらもにっこりと笑ってヨザックの背に手を這わす。

「ねぇ、ヨザック」

姫始め、しよっか。


++++++++
ひめはじめは秘め始めと書くのだろうが、気分的にこっちで。
つーかヨザックに通じるのか。
あぁ雰囲気で分かるよね。ヨザックだもんね。
どうしてこの二人はこんなに甘いのか。

happy new year!(コンムラ) 

2007年01月01日(月) 16時55分
新年の挨拶なんて面倒なだけだ。
日本ならともかく、この世界では。
数多く新年の挨拶を述べようと集まってくる貴族達に愛想よく応えながら
村田はそう毒づいた。
それでも自分はマシなのだろう。
きっと、魔王が健在ならば魔王の元によっていく虫けらどもがもっと沢山いる。
それを考えれば正月なんかに風邪を引いて寝込んでいる渋谷は
幸せだったのかもしれない。
否、それでも回復すればその祝いと正月の祝いを両方でされるのだから結局は同じことか。

「猊下」

呼びかけられて、はっと息を呑む。
自分ながら情けないことに、どうやら考えにふけっていて呆けていたようだ。
ごめんね、何?と笑いを浮かべれば、慣れてしまった男に、苦笑された。

「お疲れのご様子。今日はこのあたりで切り上げられてはいかがですか」

勇気ある発言だ。
未だ謁見を申し出ているものは沢山いる。
それなのに、君が、それを言うのか。
君に反感をもっているものは多いはずなのに。
まぁ混血だから反感を持つ、なんて渋谷が聞けば怒るだろうけれども。

「ウェラー卿!我らは遠い地からはるばる…!」
「けれど、お疲れの猊下に無理を強いて陛下のように風邪でも召されたらどうなさいます?」
「…っ」
「その通りです!コンラート!猊下がお体を壊されたらどうしようもありません!
 貴方達の謁見はまた明日行いましょう!それでよろしいでしょう?!ロイド卿!」

へぇ。ロイド卿。
純潔派でフォンシュピッツベーグ卿を支持しているとかなんとか。
そりゃぁウェラー卿が気に入らないだろうねぇ。
けれどロイド卿はそれで無理やり納得せざるを得ない。
ウェラー卿だけならともかく、フォンクライスト卿にまで言われちゃね。
勿論、僕がウェラー卿を軽視しているわけではないが。
撤退していく人々を見送って、ふぅ、と息をつく。

「それでは猊下。ゆっくりお体をお休めください。私は陛下の元へ…へいかぁぁぁぁぁぁ!!」

どちらかと言えば、フォンクライスト卿は渋谷の元に行きたかっただけなのではないかと思うけれど。
そこはなんともいえない。
別にどうでもいいし。
それより。

「君は渋谷のところに行かなくてもいいの?」

一人自分の傍に残ったウェラー卿は優しく微笑んだ。

「グレタもヴォルフラムもギュンターもいます。これ以上、人が行って陛下を疲れさせるのも考え物でしょう?」
「……僕は、そのメンバーなら却って君が行くほうがいいんじゃないかと思うけどね」
「ヴォルフラムも病人相手に騒ぎ立てませんよ」

優しい子ですから、と、どの口がそれを言う。
兄馬鹿もいい加減にしたほうがいいと思うが、兄弟のいない僕にはいまいち実感がわかない。
最も、過去の記憶を探ればいいことだが、
疲れているときにそんな疲れることをわざわざこの男のためにしたくはない。

「猊下。あけましておめでとうございます」
「……うん。今更だけどおめでとう」

朝からバタバタしていて、気づいたらここに座っていて。
そんな普通のことを言う暇などなかった。
この男はすぐ傍にずっといたというのに。
…言う必要など、ないとも思うのだが。
これだけ傍にいて、おめでとうも何もないと思うけれど。
そこは親しき相手にも礼儀ありということか。
そしてこの男はそういうことはこと細かに欠かさない。
こちらでは習慣のないクリスマスにも予想も出来ない金額がかかっているだろうプレゼントをくれたりと
どこか頭の螺子が三本ほど抜けているのではないだろうか。
まぁ。でも。
昨年には傍にいなかった男。
その存在が過ぎ去りし一年でどれほど大きくなったのか。
自覚している部分と、そうではない部分。
きっと自分が思っている以上に自分はこの男に好意を抱いている。
言わないけれど、そして言って欲しいとも思わないけれど、
この男も思いは同じはず。

「ウェラー卿」

にっこりと笑って手招いて。
なんですか。という男に手を伸ばす。

「お年玉、頂戴」
「…貴方に必要ですか?」
「お金なんて欲しくないよ」

財力なんてこの世界で気にする必要なんてない。
勿論基本は民衆の血税だから使うのには神経を尖らせているけれど。

「………」
「どうしたの?」

明らかに困っています、と顔に書いてある様子にくすくすと楽しそうに笑う。

「……では」

そう言って、躊躇いがちに触れてくる唇に、やはり笑ってしまう。

「猊下…」
「だって、それじゃ君、初めてキスする少年みたいじゃないか」

ほとほと困りました、といった顔にこちらからキスしてやる。

「これ、僕からのお年玉ね。一応上司だし?」
「セクハラ、ですね」
「おや。僕にそういうこと言うの?」

俺を困らせてばかりの貴方には適応されると思いますよ、といわれて少しむっとする。

「今年も十分困らせてあげるから」
「白髪が増えたらどうするんですか」
「別に僕は気にしないよ。毛染め薬を作ってもらおう。フォンカーベルニコフ卿に」
「猊下…」

やめてください。と真剣な顔で言ってくる君がおかしくて。
あぁ、やっぱり今年も何も変わらないな、と安心した。
今年もきっと、こんな調子で一年がすぐ過ぎていくのだろう。

さぁ。渋谷のお見舞いに行こうかと、僕は腰を上げた。
そしてウェラー卿は僕の後ろについてくる。
それは、僕の後ろか渋谷の後ろかどちらかだけで、きっと二度と変わることはないだろう。

A HAPPY NEW YEAR!

メリクリ(コンムラ) 

2006年12月30日(土) 23時10分
メリークリスマス!と渋谷が騒いで…もとい楽しげにはしゃぎまわっている姿を
微笑ましいと思って見ていれば、横に慣れてしまった男の気配を感じた。
が、何も気付かないよう振る舞う。
実際声をかける必要など見当たらない。
必要ならば彼が声をかけてくるだろう。

「猊下」

かけられた声に穏やかに、なんだい、と視線はむけずに返す。

「貴方は参加しないんですか?」

このパーティーに?
バカバカしい。

「参加してるじゃないか。」

こうして礼装にまで身を包み、
魔王の望み通り親しいものたちを集めての
クリスマスパーティーにちゃんと参加している。

「でもお楽しそうではありませんよね」
「……そうかな?」

笑みは浮かべているし、寄ってくれば誰とでも話しをする。
きっとこの男との会話すら遠目には他愛もない楽しげな会話に見えているはずだ。
それなのに気付くのは……この男だけだ。
困ったように笑みを浮かべてやっと長身の男を見遣れば、
こちらも困ったというような笑みを向けられて更に困る。


別に僕に構う必要なんてないだろう?
僕なんかほうっておけばいいのだ。
渋谷が絶対の存在なのだから。
影は影らしくひっそりとそこに存在するだけでいい
勿論政治的な場面ではその力を十分に発揮して魔王を支え、
時には汚いことにも手を汚すこともあるがあくまで僕は表に出ることはない。
それを十分にわかっているはずなのに、この男はいつもこうやって聞いてくる。

「貴方はもっと」
「『子供でいいんですよ?』とでも言いたいの。」

男が言いたいのだろうことを前以て言いやればため息で肯定される。
それにくすくすと笑えばウェラー卿は尚更困ったように頭をかいた。

「困ってる?」
「かなり」
「渋谷と僕、どっちが君にとって厄介なのかな」
「厄介などとはとんでもない」

どちらも大切な存在ですよ、と柔らかく微笑むその顔ににっこり笑ってやる。
これ以上余計なことを言って僕を怒らせるな、と牽制の意味をこめて。
そしてそれをわからぬ男ではない。

「さぁ。渋谷のところへいっておいで。そのほうが君も楽しいだろう?」
「それはできません」
「どうして?」
「これが陛下の望みでもありますから」

は?と思っていれば、左手をとられ、その上に小さな包みが乗せられた。

「陛下が、クリスマスくらい恋人の傍にいてやれ、と」
「………何考えてるんだか。」

それでもそう言った渋谷の様子が目に浮かんで、苦笑した。
恋人、なのだろうか。
わからない。
肌を何度も重ねはしたけれど、彼から愛の言葉ももらっているけれど
それでも自分は口にしたことのない、この関係は。
渋谷は勝手にそう思っているようだけれども。

「開けていいの?」
「どうぞ」

出てきたのは繊細な細工が見事に映えているブックリーフだった。
きらきらと光るそれは実用的というにはもったいない気がするが、
それでもこの男なりに時間をかけて選んだ、もしくは作らせたものなのだろう。

「ありがとう」
「喜んでいただけたなら幸いです」

まぁ僕もものをもらって礼を言わないほど偉そうに生きてるわけじゃないからね。
そう思いつつ、言葉には出さない。

「じゃ。僕もこれあげるよ」
「…なんですか?」
「ポケットの中に入ってた黒飴」

黒飴ってお前何歳だよ、なんて声が聞こえてきそうだけれども。
後で食べようと思ってとっておいたものだ。
こちらの世界では貴重なものだし、プレゼントにしてもいいだろう。
そんな、渋谷が聞いたら『それは違うだろ!』と怒りそうなことを考える。
だが、ほら。
現にこの男は嬉しそうに頷いて、それがまるで貴重な宝石のようにそれをポケットに入れた。

それがなんだかおかしくて。
そうしたら渋谷がこちらをちらちら見ているのに気づいたから。
あぁ、もう16歳の村田健に戻らなきゃな、と思って。
この男の手を引いて、楽しそうに振舞いながら広間の中央へと戻っていった。

+++++++
大賢者としての村田さんと、16歳としての村田さんをわけて書こうとしたら無理がありました。
うーんうーんうーん。
基本は村田さんは立場に縛られてる人だと思うので。
にしても、年内にあげるにしてもクリスマスには遅すぎる(汗

メリクリ!(ヨザケン) 

2006年12月24日(日) 10時33分
寒いなーと思っていたら肩にコートが被せられた。
それにありがとうと言う必要はない。
彼と僕の立場を考えれば。
そして言われなくともこの男は理解する。
そのかわり、よくわかったねと呟く。

「猊下のことならなんでもわかりますよ」

嘘つき。
もちろん彼はそういった心の動きを読むのに長けているし、僕の仕種からそれを察することなど敏腕諜報員には朝飯前だろう
それでも、ヨザックには僕の心の中にある深淵まではわからない。
その片鱗を知っているだけだ。
だからこういう不安定な時期に、彼と会うのは本当なら避けたいのに。

「お気に召しませんでしたか」
「何が?」
「先程の軽口と、このコートですよ」

そう言われてあらためて肩にかけられたコートを見るとそれは僕の体にちょうどよく、この男のものではありえなかった。

「…どうしたの?これ」
「今日は陛下に“大切な人に贈り物をする日だ″と教えていただきましたので」

そう言われてあまり働きたくないと主張する頭を稼動させれば、あぁ今日はクリスマスだったと思い出す。

「僕はなにも用意してないからね」

だいたいこちらでは宗教すら違うのだ。
眞王を絶対と崇めるこの国でキリストの誕生日を祝ってもどうしようもない
大体たかがニ千年前の人間を崇めるなら僕を崇めればいい、なんてそれは冗談だけれども。
最も渋谷はきっと行事の楽しさを取り入れたかっただけに違いないけれども
グレタの枕元にそっとプレゼントを置く渋谷が容易に想像できて少し笑えた。

「猊下?」
「なんでもないよ」

そしてもう一度コートを胸の前で引き寄せる。
温かい。
この胸の中にある思いはどうしようもなく深くてまだ未熟な自分の中で処理できないことも時にはあるけれど。
でも。
僕は一人ではない。
少なくとも理解しようとしてくれる者は、いる。
そしてこの男を愛しいと思う。

「うん。このコートは気に入ったよ。」
「それは光栄です」
「ありがとう」

その言葉にヨザックが軽く目を見開いた。
そしてそれは幸せそうに満面の笑みを浮かべ、こちらこそありがとうございます。と一礼した。
その笑みに、わだかまっていた思いが少しだけ楽になる。


なにもプレゼントを用意していない、残るものなどあげようとも思わない僕からの、ただ一つのクリスマスプレゼント。

ナイトメア 

2006年12月24日(日) 7時37分
ドアを開ければそこには親友であり敬愛する魔王陛下の姿があった。
それに少し驚いて。
否、いることはなんら不思議ではない。
ただ現在は夜中。
常ならば自分は起きていてもなんらおかしくないがスポーツマンの彼はもうとっくに寝ているはずの時間である
そしてもう一つ。
フォンビーレフェルト卿がいない今日は熟睡できると本人も言っていたはずなのにその困った顔は如何したことか
そんなことを考えながら渋谷を通し、お茶を差し出す。

「…ウェラー卿と何かあった?」

この友人が眠れないほど悩むことといえばやはりあの男が元凶ではないのか。
瞬時にその可能性を疑い声をかければ首を横に振られる

「それよりお前まだ起きてたんだ?」

部屋の明かりとベッドの上に散乱した本を見て渋谷は呆れたように言った
実はさっきまでヨザックに邪魔されていたなんて言えるはずもなく、もう寝ようと思っていたところだよと苦笑する。
渋谷の登場と共に姿を隠した庭番も渋谷の様子のおかしさには気付いていることだろう。

「砂糖菓子食べるかい?甘くておいしいよ」
「こんな時間に菓子はいらねーよ」
「そう?糖分補給は頭を働かせるのにいいと思うけどね」

そう言えば、こんな時間に頭を働かせてるのはお前くらいだと返される。
うーん。今の渋谷は何か思いつめてるようだから言ったんだけど通じなかったか。
まぁその鈍ささえ愛しいけれども。
こんなことを言えばまたヨザックが拗ねるだろうなーと思いながら沈黙で渋谷の話しを促した。
落ち着かないように何度もカップを手に取ったり戻したりをしていた渋谷はしばらくしてやっと口を開いた。

「夢、見たんだ」
「うん」
「…っありえない…夢」

夢は所詮夢だ。
でもときにはなにかを示唆することもある
僕にとっては壊れた記憶のレコーダーでしかない夢も他の人にとってはきっと意味があるように感じるだろう。
そう。僕と違い正常な人間には。

「…それは、彼に関することなんだね?」

それに渋谷は俯いて、小さく肯定した
確認するまでもないとわかっていても、続きを促すためには必要な確認だ。

「彼がどうしたの」
「…っ魔族を裏切って…っおれを棄てて…っ今度こそ帰ってこなかっ…っ」

ボロボロと涙を流して、渋谷は辛いんだと歎く。
一度心に芽生えた疑念を取り除くのは難しい。
前科があればなおさら。

「わから…ないんだ」
「何がだい?」
「コンラッドにとって、本当にここにいるのが…幸せなのか…いっそ」
「それは当然だよ。彼にとって安息の地はここしかない。それは君のほうがよく知っているはずだろう?」
「……でも」
「渋谷は彼の気持ちが嘘だと思うの?何度も肌を重ねたんだろ?」

「でも前は…」
「あれはあの馬鹿王の命令だったからだろ?もう大丈夫だよ。僕がそんなことさせないから」

僕を誰だと思ってるのさ。ムラムラダイケンジャー様だよ?

そう茶化せば渋谷は呆れたようにこっちを見遣る

「ねぇ渋谷。夢は所詮夢だよ」
「……うん」
「それにそんなことを心配されてると知ったらウェラー卿はどう思うだろうね?」
「…だからお前に相談にきたんだろ」
「まぁそうだけど。大丈夫大丈夫。夢は人に話すと正夢にならないから」
「本当かよ?!」
「うん」

統計的にはね。
僕には絶対あてはまらない法則だ。
それでも渋谷にとって救いとなるのなら。
それにしてもウェラー卿には困ったものだ
否、元凶はあの男だけれども。
あの行為が純粋にウェラー卿を好きな渋谷にとってどれだけ深い傷をのこしているのか……
おそらく本人もわかっていて苦しんでいるのだろうがそんなことは自業自得だ。
僕の知ったことではない。
ちらりと窓辺に目をやれば同感だと言わんばかりに肩を竦める庭番が。
それに頷くと庭番はそっと姿を消した。
現状を彼に伝えにいったのだろう。
ならば彼が急いで駆け付けてくるまでの間、落ち着いて来た渋谷を笑わせておこう。
来たときの彼の顔が楽しみだ。


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きっと庭番は村田さんとチョメチョメする気だったのに邪魔されて次男にあたるんですよー
次男は、全部ヨザックに聞いてしってるんだけどユーリが部屋にいないのに気付いて来た、みたいな感じで来ると思います。
だってそのほうが陛下を追い込まずにすみますものね
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