松本清張 「男たちの晩節」(続々)

2010年04月26日(月) 0時05分
<空白の意匠>

力作。これも清張の実体験をベースに描かれている。

ある地方紙の広告部は、東京の大手メーカーからの
定期的な広告出稿を、広告代理店に頼っていたが、
同紙編集部の無理解により、たまたまそのメーカーの
売り出し中の新製品の広告掲載と同時に、医療事故に
その製品が使われたとの事件を報道してしまう。

ライバル紙はメーカーに配慮し、商品名を伏せたが、
結果的にその事故は当該製品のせいではなく
別の要因ということが判明する。

メーカーと広告代理店は激怒。
取引を停止されると経営に影響があるほどの大得意客。

必死の嘆願や接待の甲斐もなく、無常にも、
責任を取って広告部長は退職を強要されてしまう。

男の悲哀も極まれり、という物語。
身につまされる。ゾッとする怖いハナシだこと・・・。


<背広服の変死者>

これも清張の新聞社での体験をベースにしている。

新聞社でも最も日陰のポジションである、広告部の校正係。
定年(当時は55歳)をまだ先に控える38歳のノンキャリ社員は、
前途に絶望して、今夜自殺することを決意する。

不満をぶつけて退社した威勢のいい社員も、
羽振りを利かせて満額定年した元部長も、
退社したり定年したりした人間はそのほとんどが、
第二の人生で躓き挫折していく。

飛び出す勇気も、定年後のビジョンも何もない男の絶望。

しがないサラリーマンの悲哀が切なすぎる。


<駅路>

銀行を営業部長で円満定年退社した男。
家庭を守り子供を社会に送り出し、
ささやかな趣味はカメラ程度で、
浮いた噂や失敗など何もない、
サラリーマンとして恵まれた人生を全うした。

時々ひとりでぶらっと出かける小旅行は、
現役の頃からの趣味のひとつだった。

今回も家族は何の疑いもなく送り出したが、
1ケ月も帰ってこないのでついに捜索人願いが出される。

刑事が調べ上げた結果、10年前まで支店長を務めていた
広島で、元行員だった女性と愛人関係を続けていた。

定年後全てを投げ打ってその愛人と添い遂げるつもりで
出奔したが、愛人は急病で既に死んでいた。
愛人の親戚夫婦に騙され、財産目当てで命を奪われた男。

最後の急展開は、推理モノの傑作と称される。

しびれる作品だった。

フジテレビ100周年の記念ドラマになってたようだ。
関連サイトはここクリックどうぞ。




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