はじめの理由 

May 13 [Sun], 2007, 22:52
「どうしてあんなことしたの」
 ようやく落ち着いて出されたコーヒーをすすりながら、ルナマリアは隣の妹に尋ねた。
 どこの艦であってもモビルスーツデッキの壁の冷たさは変わらない。背中をデッキの壁に預け、立ったままコーヒーカップを持っている姉に向かって、メイリンは装備が詰まった箱に座りながら口を開く。
「あんなことって、どのこと?」
「初めからよ。どうしてアスランを逃がそうなんて思ったの。ましてや一緒に逃げるなんて」
「………………」
 自分でわかっている理由を考え、メイリンは躊躇した。姉にこの気持ちを話したところで、理解してくれるとは思えない。
 しかし、嘘をつくことも、また黙っていることも出来ない。自分がザフトでしでかしたことで、最も迷惑を被ったのはこの姉なのだ。
「…私がしたこと、お姉ちゃんの軍歴に関係、ある?」
「大有りよ。実妹が軍から脱走したなんて、エリートコースの汚点以外の何でもないでしょうが」
「…ごめんなさい」
「で、それは答えになってないわよ。ちゃんと言いなさい」
 歳はいくつも違わずとも、ルナマリアは『姉』だった。それを痛感させる厳しい口調での追及に、メイリンはうなだれる。
「…さいしょは、この戦いを終わらせたいとか、アスランさんは別のところに行くべきだとか、そういうちゃんとした理由があったわけじゃなかったの」
 あの雨の夜、彼を逃がしたいと思った最初のきっかけ。
「お姉ちゃん、私ね、あの人が好きなの」
 ルナマリアが柳眉をひそめる気配が伝わった。
 バカだ、とメイリンは内心で己をあざ笑う。今でも思う。あのときの自分は、本当に愚かしかったと。
「力になりたいって思っただけだったの。好きだから、ただあの人が困ってたから、出来ることなら何でもしようって一瞬でも思っちゃったの」
「そんなことで…」
「そんなことでしちゃったの。…好きだったから」
 好きだったから、何でもしたかった。少しでも彼に好かれるきっかけになるのなら、何でもしたかった。
「手に入るきっかけになるなら何でもよかった。死なせたくもなかった。ザフトの軍規とか、自分がこれまで頑張ってきた経歴とか、周囲のこととかそういうの全部どうでもいいって思ったよ」
 あの人が、少しでも自分を見てくれるなら。
 正義感や倫理観、忠義も誇りも、どうでもよかった。
「…バカだよね。結局、たくさんの人に迷惑かけて…」
 アスランの心も手に入らなかった。彼の心にはずっと金の髪の姫が棲んでいるのだと思い知らされただけだった。
 唯一の救いは、戦闘中の姉の歯止めになれたことぐらいだった。
「バカでしょう、お姉ちゃん」
 賢い姉ならばそんな道は絶対に選ばないだろう。メイリンの思いも理解できるはずがない。そう感じながら、メイリンはひっそりと自嘲した。
 ルナマリアはコーヒーを一口すすった後、小さく息を吐く。
「…ほんと、ばかね」
 つん、とメイリンの頭をルナマリアの指が突いた。
 吐息に似たルナマリアの声は、メイリンを責めてはいなかった。ずっとそうだったとメイリンは思い出す。強くて優しい姉は、出来の悪い妹を貶しながら、絶対に手を離したりはしない。
「あんたってほんと、ばかよ」
 優しすぎるなぐさめは、メイリンの決断を否定したりはしなかった。

タイニープリンセス(キラ編) 

April 29 [Sun], 2007, 0:56
 幼子を膝に寝かしつけながら、彼は幸せそうに笑う。



「…ときどきさ、こんな幸せがあるんだなぁってしみじみするんだ」
 昼から降り続いていた雨が、夜半になって止んだ日のことだった。
 星が見えるサンルームで、藤のソファに座ったキラは微笑みながら幼子の髪を撫でる。キラの膝を枕にして、栗色の髪を持った子どもが静かに寝入っていた。
「可愛くてしょうがないんだよね」
「そうみたいだな」
 キラの対面の椅子で苦笑するのは、双子の片割れだった。金色の髪をしたカガリは、キラが言葉通り目の中に入れても痛くないほど可愛がっている幼子を見やり、両方の腕で頬杖を突いた。
 キラを覗き込めば、彼は幼子から顔を上げ、カガリに向かって笑う。
「…自分に似てる子が、こんなに可愛く思えるのって異常かな」
「…お前の場合は、『似てる』けど『違う』から、可愛いんじゃないのか?」
「うん、まさにその通り。…こんなに僕に似てるのに、僕とは全然違ってて嬉しいよ」
 荒れたところのない手で、キラは二度三度と眠る子の髪を梳く。癖の無い真っ直ぐな栗色の髪。色だけではなく、少し芯が残ったような手触りもキラのものとよく似ている。今は閉じられた目も、開けば夜明けのような紫色。それもキラと同じだ。
 血縁関係を持つ者が、外見的特徴を同じくするのはままあることだ。しかし、色彩といい、顔立ちといい、こうも自分に似ている子がこの世に誕生するなどキラは想像したこともなかった。
「可愛がるのはいいが、あんまり甘やかすなよ」
「わかってるよ。叱るときはちゃんと叱るし、しつけは頑張ってるつもりだよ」
「悪いな、お前に父親をやらせて」
「それはもう全然気にしてないよ。むしろ、本当に感謝してる」
 キラは穏やかに笑ってカガリを見る。その顔を見ると、カガリはこの双子のきょうだいが本当にその子を想ってくれているのがわかり、安堵する。と同時に、この彼が幸せそうにしてくれる理由がこの子であるのなら、苦労を覚悟で産んだ甲斐があったというものだ。
「子どもが出来たって聞いたときはアスランを殺してやろうかと思ったけど、今じゃ本気でありがとうって思うんだから、ほんっと子どもっていうのはこわいね」
「……ああ、やっぱり殺そうと思ったのか」
「そりゃそうでしょう。身内の男として、やっぱりね」
 数年前の騒動を思い出し、カガリはひきつった顔でアイスティーのグラスを口元に運んだ。
 対するキラは、わざとらしく明るい口調を装ったが、当時の怒りを思い出したのかやや剣呑なものがその口端に滲んだ。
「…幸せなのは僕ばっかりで、本当はこの子だって寂しいと思うよ、カガリ」
「………………」

臨時版設定してみました。 

April 29 [Sun], 2007, 0:53
 本元日記のさらに書きにくいような衝動小ネタを適当に書く場です。
 旧携帯日記の代わりということで。

 実際使う分には、エンピツさんよりもこういったブログのほうがカテゴリ分けとかが楽だと思うのですが、エンピツさんには愛着があるのでやはりメインはあちらです。

テストてすと。 

March 31 [Sat], 2007, 13:07
 書き込みテストです。
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