「ヒトラーの贋札」 2008年 独/墺
★★★★

第二次終戦後、かつて贋札作りの達人サリー(マルコヴィックス)は、大金を持ち、モナ
コの海辺のホテルへ現れる。ホテルの金庫に金を預け、華やかなカジノへと・・・。
そこで、目が合った令嬢と一夜を共にするが、腕に押された烙印を見て女は「貴方、収容
所にいたの?」と驚く。
消せない烙印。
消えない過去の記憶。
海辺で、彼は振り返る・・・・。
こうした冒頭部分は「ブラック・ブック」そっくり。
全く違うのは、男性だけの映画であり、恋愛のような甘い物は出てこないという所。
1936年、パスポート偽造を頼んできた婦人と、冒頭と同じようにベットを共にしアル
ゼンチン・タンゴを踊る贋作師サリーの部屋に、翌朝不意に現れた地元警察のガサ入れに
より身柄を確保される
が、犯罪者の送られる刑務所ではなく、ユダヤ人強制収容所マウトハウゼンに送り込まれる。
あちこちで、ナチスによる横行が日常的に行われ目の前で、弱った者、反発した者が虫ケラ
同然に殺される中、怯えて耐える日々が始まる。
元々、絵を描くのが得意だったサリーは収容所のお偉いさんに取り入り、家族や本人達の
似顔絵を描く仕事に就いた。
それから数年後、ザクセンハウゼン収容所に移されるが、サリーを待ち受けていたのは、
贋札作りで逮捕した時の刑事で、今はナチスの幹部ヘルツォーク(シュトリーゾフ)だっ
た。「特別待遇してやろう、イギリスの金融機関を麻痺させるために、贋札を作るのだ、
お前を主任として雇おう」
収容所の中の秘密の工場内には既に白い衣服を纏った、ユダヤ人技師らがいた。各収容所か
らかき集められた優秀な人材ばかりだ。サリーの他に、印刷技師ブルガー(ディール)らが
新しく参加する。
それまでの待遇とは違い、柔らかいベッドや食事を与えられ、贋札の研究に没頭していれば
良かった。が、レジスタンスでビラ配りをしていたブルガーは、憎きナチスに協力する事を
頑なに拒否。
「今日の銃殺よりも明日のガス室を選ぶよ」
サリーは、ブルガーを説得しつつも、完成した途端、皆殺される・・・。またしなくとも
殺される。時間を稼ぎながら、ヘルツォークとの駆け引きを始める。
家族をガス室やユダヤ人狩りで失った者がほとんど。
同じ境遇にいる同胞達が、家族であり大切な仲間だった。
終戦間際、焦るナチスは1週間以内に完成させないと5人を撃ち殺す、と強行作戦に出る。
既にポンドは成功させたサリー、そしてドルも完璧な贋札を完成させてあったが、ブルガ
ーが、印刷過程で失敗させていた。
その事を知る仲間の1人は「お前の正義感のせいで俺らも殺す気か?」と食ってかかるが
サリーは「ブルガーを告げ口したらお前を生かしては、おかない」と脅す。
サリーのお陰で生かされているのだ。
この狭い研究所の中では、誰もそう言わないが暗黙の了解でサリーがボスなのだ。
ロシア人の若い画家の青年は結核持ちで、彼を弟のように可愛がったサリーは、弱ってい
く彼を見て、彼に必要な薬と交換に、贋ドルを完成させるとヘルツォークに取引きを申し
出る。
迷いに迷っていたサリーも、同じロシア人である結核青年が襤褸切れのようにこの収容所
で死んでいくのは耐えられなかったのだ。
観ていてヘドが出るナチス将校達。
サリーがトイレ掃除をしている時に「付け上がって!このユダ公め!」と将校がおしっこ
をかけるシーンは、握り拳を握った。
一度でいいから、こいつらの悲劇的な末路を描いた作品を観てみたい。
映画の作りはあくまで収容所内だけなので派手な展開はないものの、明日の命さえ危う
い緊迫感、生き残るにはナチスの言う通りにするしかない葛藤がヒシヒシと伝わってくる。
飄々としていたサリーが、狡賢そうな眼差しで冷静に静観している所も中々いい。
イングランド銀行も太鼓判を押す出来映えの贋札を作るぐらいだから、本当に頭がいいの
だろう。命の尊厳もなく、ユダヤ人だというだけで迫害されてきた男達には、頭がいいと
か正義感が強いとかの「プライド」さえもズタズタにされているのだが。
やはりヘルツォークは裏切った。おそらくサリーも多少は想定していただろう。
が、その目で青年が撃たれるシーンを目撃し泣き崩れるサリー。ヘルツォークへの復讐を
密かに誓う。しかしそれは叶わぬ夢か?
贋札ドルを完成し、にわかに感謝祭を興じるが、そのお祭りの後で皆殺しにされる可能性
だってあった筈だ。
そして、終戦が決まり研究所にあった物は全て取り壊される。
薄いベニア板一枚で隔たれていた、彼らの居場所に収容所の他の生き残り達が襲おうとす
るシーン。味方同士で・・・ドキドキした。
ゾンビかと思う程、精気を失くした彼らは、それでも将校達から奪った銃を手にし虚ろな
目で徘徊する。どんな目に遭わされたのだろう?
映画では描かれていないような世にもおぞましい事が起きていたに違いない。
面白いのは、サリーが、ヘルツォークを殺さず、その金をどこかに隠した事だ。(と思う
んだけど?)屁のような男を殺す事より明日の「大金」を選んだ。
そうして・・・ラストは冒頭のカジノへ。
苛立ちを無茶なギャンブルで使い、金庫の金も「こんな物」とばかりに賭博場で散財する。
「金なんか、また造ればいいのさ」
海辺で、踊るタンゴのシーンが、私は凄く好き。
地獄を見た男が、美しい海原をバックに踊る・・・・。

ラスト近くにはもっと大きな意味が含まれているかもしれません。
ひょっとしたら、サリーの冒頭とラストは夢かもしれません・・・最後集中力が途切れ
ました^^DVDになったら要チェック!
監督 ステファン・ルツォヴィツキー
出演 カール・マルコヴィクス、アウグスト・ディール、デーヴィト・シュトリーゾフ
【映画館での鑑賞】
TBのお返しが遅れていてごめんなさい。
★★★★

第二次終戦後、かつて贋札作りの達人サリー(マルコヴィックス)は、大金を持ち、モナ
コの海辺のホテルへ現れる。ホテルの金庫に金を預け、華やかなカジノへと・・・。
そこで、目が合った令嬢と一夜を共にするが、腕に押された烙印を見て女は「貴方、収容
所にいたの?」と驚く。
消せない烙印。
消えない過去の記憶。
海辺で、彼は振り返る・・・・。
こうした冒頭部分は「ブラック・ブック」そっくり。
全く違うのは、男性だけの映画であり、恋愛のような甘い物は出てこないという所。
1936年、パスポート偽造を頼んできた婦人と、冒頭と同じようにベットを共にしアル
ゼンチン・タンゴを踊る贋作師サリーの部屋に、翌朝不意に現れた地元警察のガサ入れに
より身柄を確保される
が、犯罪者の送られる刑務所ではなく、ユダヤ人強制収容所マウトハウゼンに送り込まれる。
あちこちで、ナチスによる横行が日常的に行われ目の前で、弱った者、反発した者が虫ケラ
同然に殺される中、怯えて耐える日々が始まる。
元々、絵を描くのが得意だったサリーは収容所のお偉いさんに取り入り、家族や本人達の
似顔絵を描く仕事に就いた。
それから数年後、ザクセンハウゼン収容所に移されるが、サリーを待ち受けていたのは、
贋札作りで逮捕した時の刑事で、今はナチスの幹部ヘルツォーク(シュトリーゾフ)だっ
た。「特別待遇してやろう、イギリスの金融機関を麻痺させるために、贋札を作るのだ、
お前を主任として雇おう」
収容所の中の秘密の工場内には既に白い衣服を纏った、ユダヤ人技師らがいた。各収容所か
らかき集められた優秀な人材ばかりだ。サリーの他に、印刷技師ブルガー(ディール)らが
新しく参加する。
それまでの待遇とは違い、柔らかいベッドや食事を与えられ、贋札の研究に没頭していれば
良かった。が、レジスタンスでビラ配りをしていたブルガーは、憎きナチスに協力する事を
頑なに拒否。
「今日の銃殺よりも明日のガス室を選ぶよ」
サリーは、ブルガーを説得しつつも、完成した途端、皆殺される・・・。またしなくとも
殺される。時間を稼ぎながら、ヘルツォークとの駆け引きを始める。
家族をガス室やユダヤ人狩りで失った者がほとんど。
同じ境遇にいる同胞達が、家族であり大切な仲間だった。
終戦間際、焦るナチスは1週間以内に完成させないと5人を撃ち殺す、と強行作戦に出る。
既にポンドは成功させたサリー、そしてドルも完璧な贋札を完成させてあったが、ブルガ
ーが、印刷過程で失敗させていた。
その事を知る仲間の1人は「お前の正義感のせいで俺らも殺す気か?」と食ってかかるが
サリーは「ブルガーを告げ口したらお前を生かしては、おかない」と脅す。
サリーのお陰で生かされているのだ。
この狭い研究所の中では、誰もそう言わないが暗黙の了解でサリーがボスなのだ。
ロシア人の若い画家の青年は結核持ちで、彼を弟のように可愛がったサリーは、弱ってい
く彼を見て、彼に必要な薬と交換に、贋ドルを完成させるとヘルツォークに取引きを申し
出る。
迷いに迷っていたサリーも、同じロシア人である結核青年が襤褸切れのようにこの収容所
で死んでいくのは耐えられなかったのだ。
観ていてヘドが出るナチス将校達。
サリーがトイレ掃除をしている時に「付け上がって!このユダ公め!」と将校がおしっこ
をかけるシーンは、握り拳を握った。
一度でいいから、こいつらの悲劇的な末路を描いた作品を観てみたい。
映画の作りはあくまで収容所内だけなので派手な展開はないものの、明日の命さえ危う
い緊迫感、生き残るにはナチスの言う通りにするしかない葛藤がヒシヒシと伝わってくる。
飄々としていたサリーが、狡賢そうな眼差しで冷静に静観している所も中々いい。
イングランド銀行も太鼓判を押す出来映えの贋札を作るぐらいだから、本当に頭がいいの
だろう。命の尊厳もなく、ユダヤ人だというだけで迫害されてきた男達には、頭がいいと
か正義感が強いとかの「プライド」さえもズタズタにされているのだが。
やはりヘルツォークは裏切った。おそらくサリーも多少は想定していただろう。
が、その目で青年が撃たれるシーンを目撃し泣き崩れるサリー。ヘルツォークへの復讐を
密かに誓う。しかしそれは叶わぬ夢か?
贋札ドルを完成し、にわかに感謝祭を興じるが、そのお祭りの後で皆殺しにされる可能性
だってあった筈だ。
そして、終戦が決まり研究所にあった物は全て取り壊される。
薄いベニア板一枚で隔たれていた、彼らの居場所に収容所の他の生き残り達が襲おうとす
るシーン。味方同士で・・・ドキドキした。
ゾンビかと思う程、精気を失くした彼らは、それでも将校達から奪った銃を手にし虚ろな
目で徘徊する。どんな目に遭わされたのだろう?
映画では描かれていないような世にもおぞましい事が起きていたに違いない。
面白いのは、サリーが、ヘルツォークを殺さず、その金をどこかに隠した事だ。(と思う
んだけど?)屁のような男を殺す事より明日の「大金」を選んだ。
そうして・・・ラストは冒頭のカジノへ。
苛立ちを無茶なギャンブルで使い、金庫の金も「こんな物」とばかりに賭博場で散財する。
「金なんか、また造ればいいのさ」
海辺で、踊るタンゴのシーンが、私は凄く好き。
地獄を見た男が、美しい海原をバックに踊る・・・・。

ラスト近くにはもっと大きな意味が含まれているかもしれません。
ひょっとしたら、サリーの冒頭とラストは夢かもしれません・・・最後集中力が途切れ
ました^^DVDになったら要チェック!
監督 ステファン・ルツォヴィツキー
出演 カール・マルコヴィクス、アウグスト・ディール、デーヴィト・シュトリーゾフ
【映画館での鑑賞】
TBのお返しが遅れていてごめんなさい。
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