リバティーン

January 07 [Sun], 2007, 23:11
「リバティーン」 2006年 英

★★★★☆

何となく暗そうで、DVD化になっても触手がのびなかった一本でしたが
ジョニデ・ファンなら必見でしょう。
流石はジョニデ!!

特に彼の大ファンと言うほどでもない(普通にスキ^^)私でも彼の演技には
毎回唸らされてしまう。
彼を初めて観たのは「フェイク」でアル・パチーノ演じる落ちぶれ中年のマフィ
アに捜査のため接近した、新米潜入捜査官役でその苦悩を演じる彼の上手
さに恐れおののいたものだ。彼の出演した全作品を観てきた訳ではないけど、
クセのある個性的な役が上手いですよね。

今回ジョニデが演じた役は、ジョン・ウィルモットこと第二代ロチェスター伯
爵で、冒頭で「諸君は私を好きにならないだろう。いや好きにならないでくれ」
そんな前口上を述べる。
どんな嫌な男なんだろう?
そう逆に惹き付けられてしまう。

1660年代、王政復古のイギリス。
ジョニー(劇中でも^^デップ)は、放蕩の天才詩人として国王チャールズ二世
マルコヴィッチ)の寵愛を受けながら、卑猥な詩を公の場で読み、3ヶ月幽閉さ
れていた。
妻のエリザベス(パイク)は18歳の時に莫大な遺産を相続した直後待ち伏せ
していたジョニーに誘拐されそのまま娶られたのだった。

酒場で悪友達と呑んだり演劇を観賞したり(女優目当て)娼婦小屋に寝泊りし
たり、酒とセックスに溺れ放蕩の限りを尽くしたような人生だ。

彼が“天才詩人”なのは伝わってこないが(残念ながら)、現実には満たされず
いつも冷めた目で嘲笑しているがため、劇中の芝居で感動を覚えたい、
つまりは「刺激が欲しい」。と、渇望している。
そんなある日、大根役者とブーイングの嵐を受けた新米女優の演技に目をつける。

磨けば光る原石だ。
ジョニーは、変わった物を好む。平凡ではいられない性質なのであろう。
広場で主人のポケットから小銭を盗んだとして殺されようとしていた男(コイル
を買い取って自分の家来にしたり、今、まさに誰も目をかけぬような女優の卵を
育てようと決意。
元々劇作家でもある彼には芝居を通しての彼女との独自の稽古ほど心を動かさ
れたものはなかった。
女は自分の金や地位になびくか、妻のように枕元で愛を囁けば自分に夢中にな
るか・・・手に入らぬ女性などいないと過信していたが、この女優リジー(モートン
は違った。
「私は女優として評価されたいけれど見返りを体で払うなんて、真っ平御免だ、
魂も体も安く売らない。私は軽くない。」

女ったらしは、このようにプライドを高く持った貞淑な女性に、弱い。
簡単に落ちない女に、夢中になるのも当然と言えば当然だが。

初めて人を愛した事で、戸惑い、自分自身さえ見失いそこに大量の酒の摂取
も手伝い、次第に彼は自暴自棄な運命を辿る事になってしまう。
劇中には登場しないが、妻との間に子供も居たはず。
妻子を愛せずに、手に入れにくかった女優を大女優になるきっかけを指導した事
で愛に盲目になるあたり彼の精神の幼さを感じる。
知ったかぶった言い方したくないですが、ない物ねだりをする男は精神的にまだ
まだ子供な証拠です。
どんなに恵まれた環境でもそれを高い所から見下ろしてみてしまう癖も、物事の
「深さ」を知らない子供だという証拠です。

「自分に正直に生きた」結果どれだけ多くの者を傷つけてきたのか?
しかし、5年間(多分幽閉から解かれた日から)一度も“しらふ”ではなかった事
が、人を傷つけた分だけ酒で誤魔化していたのかな?と思うけども。

母親に「そんなに酒を呑んで・・・」と小言を言われると「私ほど腹をくくって呑んで
いる者はいないですから」

早死にをも厭わない。
破滅的な生き方は何時の世にもあるし、どの段階社会にもいる。

ジョニーは国王に「我が政治下に素晴らしい金字塔となる劇を」書いてくれと
命じられるのだが・・・・血迷う人の中でも、ここまで酷いと、貴族全体を呪い
たくなりますね。
民の税金で、何をする!!!じゃ。
王を辱めたかったとしか思えない。いかなる言い訳もまかり通らん。

しかし劇は途中、王が怒ったので中断されるが、中々笑えます。
「プロデューサーズ」も真っ青^^ 「これが貴方の政権の金字塔」か・・・。
男も女もイロきちがいだったと言うの?
貴族体制のせいよね。
暇でお金を持てはやすと人間、勉学よりも娯楽へ・・・娯楽から快楽を追求した
方が生きる上で、楽しいもの。

そうして国王の追っ手から逃げるようにして田舎に居たジョニーは・・・例の
家来と昔から懇意にしていた娼婦と3人で「偽物医者」を演じて金を稼いで
いた。
「友を裏切って逃げた卑怯者」と呼ばれながらも(追っ手から、逃れる際に男
の恋人?が殺された騒ぎに便乗して逃げたので)不遜な思想は健在、しかし
形相は見事に変わり果てていた。
梅毒に侵され、顔中に出来物ができていたのだ・・・・。
痛々しいけど、この変わり果てたジョニーが、上手い!!

結局、最後は妻の元に戻るのだが(ズルイよね^^)その妻も、ジョニーを愛し
ていたので、自分の元に戻った事が嬉しいようだ。

「最後に戻るところは・・・・」
(この場合金も尽きて、行くあてがなかったからでしょうけど女にしてみれば
結局私の元へ帰ってきたのね、で複雑ながらも嬉しい筈)

鬼気迫る、破滅的な男をジョニデが、見事なまでに演じている。
かなりエロティックなシーンもあるが、中性的なジョニデが演じる事で厭らしく
ならない事も魅力♪

「何処でも女とヤル」ような前口上程、ガツガツしたシーンはなかったけど。
ラスト近く、王の決議案に、鼻にマスク(?)のようなものをし(梅毒では鼻が
落ちるとよく言うけど・・・)よろけながらも、現れ彼なりの講釈をする。

誰もが、今や死の近い哀れな姿の彼には反論できない。
死の間際に、放蕩ぶりを大きな器量で包んでくれていた王に報いたのだろう。
いつも皮肉しか言えない彼だったが・・・。

そして今や女優として大成功したリジーに会いに行く。
全てを曝け出す彼らしい姿なのかもしれないが、過去に囚われる事なく、前に
突き進む若いリジーは、「もう会う事はないわ。貴方の心の中にいつもいる」
と明らかに迷惑顔だった。
このリジーも何処までが演技なのか、心して観ないと見落としてしまう。
彼が望むような台詞だが、本心なのか?

そしてジョニーの部屋には、エロイ絵などが一杯で、それを庭で焼く母の姿も
また悲しかった。どうしてこんな子に??

エロスを追求しても、万人には受け入れがたい事だ。
秘め事は、秘めてあるからこそエロスであり、おおっぴらに曝け出すと、吐き気
すら生じるものだ(少なくとも私には)。

性愛が全てではない、妻のように寛容な聖母のような愛こそ尊い。
師弟関係を通り越し愛憎の果てに?利益を貪った、リジーとの愛は、愛を軽るん
じていた男が入り込んだ落とし穴。
男は女を、女は男を、軽くあしらっているといつか必ず痛い目に遭うのです。

ジョニーの場合は、女を・・・というよりは、国王をこ馬鹿にした事への報い
とも感じられますが・・・。
私がこの作品で感じた、強いメッセージはこれです。
自分を誰がどのように守っていてくれるのか、それをちゃんと見据えて生き
ていないと、過ちを冒しかねない。
こうしたドラマには、反面、こんな風に生きたら駄目だよというような教訓も
感じます。

33歳で生涯を閉じた彼には、気の毒とはいえ同情しきれませんが
ラストに「こんな私を好きになったか?」の問いには、ジョニー・デップが演じ
たせいで憎みきれない、と呟いた私でした。
白っぽい映像(自然光だけで撮ったそうです)も暗めな映像も・・・・
遙か彼方の昔の英国・・・そんなイメージが出ていて私は気に入りました。

監督 ローレンス・ダンモア
出演 ジョニー・デップ 、サマンサ・モートン 、ジョン・マルコヴィッチ 、ロザムンド・
    パイク 、トム・ホランダー 、ジョニー・ヴェガス

【DVD観賞】
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リバティーン

監督 ローレンス・ダンモア
出演 ジョニー・デップ   サマンサ・モートン  ジョン・マルコヴィッチ  ロザムンド・パイク 、トム・ホランダー  ジョニー・ヴェガス

2004年







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