親友と、言える存在 

April 01 [Sat], 2006, 21:32
自分にとって、きっとアイツ以上の存在なんていない。
アイツと会って、笑う楽しさを知った。
アイツと会って、独りの悲しさを知った。
アイツと会って、―――失うことの恐怖を知った。

気が付けば側にいて、隣で顔を見合わせて、笑いあって。
そんな日常が、この先もずっと続いていくと思っていた。
一年先も、五年先も、十年先も、二十年先も。
お互いに大人になって、例え会う時間が減ったとしても、この関係は続いていくと思っていた。

目の前であいつが倒れたのは、五年前。
漸く一人前として、師であるテオ様に師範代として認めてもらった、たった数日後。
真っ青な顔。繰り返されない呼吸。見開かれた瞳。強く握りしめた胸元。
原因は今もわからない。だから誰を頼ったらいいのかすら解らなかった。
その時に選択を間違えなければ、きっと今も。
大人に近づいて、それでも笑いあっていられたんだろうか。

今、そんなことを後悔しても無駄なことは解っている。
だからこそ、側にいて、支えて、支えられて。
それでもアイツは無理をして笑っているだろうから。
アイツが本当の笑顔を見せてくれるように、アイツの本音のはけ口になろうと決めた。

今では。
アイツの仕草で、体調が解るほど。
アイツの動きだけで、機嫌が解るほど。
アイツの笑顔でも、その言葉が本当かどうかがわかるほど。
それなのに。

―――どうして、俺なんだろうね・・・?

あのとき以来、俺はアイツの涙を見ていない。

大切なのは、静かなひととき 

March 17 [Fri], 2006, 17:53
どうしてここに自分がいるのかと考える。
それはあの人が、側に置いてくださっているから。
だから決めた。彼の支えになろうと。

初めて出会ったのは、彼の実家の道場。この国でも五指に入る有数の道場。
知り合いの道場だからと、叔父のヨシュアさんが連れてきてくれたときのことだ。
その時見た光景は、おそらく一生忘れられないだろう。
対峙していたのは、あまりにも体格の違いすぎる二人。
一人はヨシュアさんと殆ど変わらない体格。広い肩幅、鍛え上げられた腕、揺るぐことのない構え。
もう一人は、小柄な少年。短い黒髪の間から覗く瞳は、真っ直ぐと相手を見据えていた。
小柄な体躯を利用して相手の懐に入り込んだ少年の拳は、相手の掌に収まってしまった。それと同時に繰り出された膝蹴りを、左腕で受け止め、左足で身体を支え、右足で相手の腹をねらう。
そんな攻防が、一時間ほど繰り返された。その間、ずっと目を離すことは出来なかった。
少年には、いくつかすり傷が出来ていた。けれど、相手にはどこにも傷を負わせることが出来なかった。
けれど。

「強くなったな、天黎」

その言葉に顔をほころばせた少年は、その時初めて年相応の笑顔で微笑んだ。
その道場に入門したのは、それから一週間後のことだった。
あの時には20cmほど在った身長差。
今は、もう殆どない。


日常の放課後 

March 05 [Sun], 2006, 19:39
第一印象は、すごいヤツ。
頭も良くて、容姿も良くて、運動も出来て。本当にこんなヤツがいるのか、と感心したほど。
絶対口には出さないけれど、実は憧れてた。
初めて見かけたのは図書室の一角。
医学書を大量に積み上げて、夕陽を背に、眼鏡を掛けて本を読むその姿は、本当に綺麗で。
生徒会選挙では、躊躇うことなく彼に票を入れた。と言っても、例え僕が入れなくても、彼は当選確実だったけれど。
同じ生徒会に入れると知って、少し嬉しかった。
柄にもなく、少し緊張して生徒会室の扉を開けると、既に彼は生徒会室にいた。
「これからよろしく」、と良いながら差し出された手に、「こちらこそ」と言葉を返して握り返す。
にっこりと微笑みながら、

「君、女の子みたいだね」

と言った彼の第二印象は、最低だった。

overture 

March 04 [Sat], 2006, 22:42
いつ始まったのか。
どうして僕だったのか。

疑問ばかりが、通り過ぎていく。







屋上の風はとても気持ちよかった。
風を身体全体で感じたくて、閉じていた瞳をゆっくりと開く。そして見えた景色に、思わず苦笑いが溢れる。

夕暮れで朱に染まった校庭には、人一人いない。静まる校舎の中には未だ数名いるのだろうが、今、瞳に映る世界には人は誰一人として存在しない。
まるで、この世界には自分唯一人しかいない。そんな錯覚に陥りそうになる。
けれど、寂しいなんて思わない。哀しいとも辛いとも思わない。―――思えない。

フェンスを握りしめている両手。何故か右手首には真白の包帯が巻かれている。
その包帯をフェンスから離し、眩しい視界を遮るように自分の顔の前に翳す。
夕陽で透けた手は紅かった。

一応血は通っているのだと、少しだけ感じた。

日はどんどん沈んでいく。夜になれば闇色の空には月や星が輝き、そしてまた陽が昇る。そうして一日が終わり、新たな一日が始まる。
一日が終わり、一週間が過ぎ、一ヶ月が通り過ぎ、気が付けば一年が経っている。
そんな短期間の中で人は成長していく。それは心の成長であり、肉体の成長でもある。
自分は未だ子供『だった』。今でも他人から見れば子供なのだろう。けれど、『子供』ではない。
P R
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