時間

July 02 [Sat], 2016, 16:26
 時間


はじまるところ

おはるところ

くぎりをつけるのは
わたしのこころ

ならば
時間をつくるのは
わたし?

でもひとりでつくる時間は
つまらない

ひととつくる時間は
いつも思ひどほりにはならない

ときどきつかれる
おちこむ
いらつく

しかしけつきよくは

おもしろいので
やめられない




(二〇一六年六月二十七日)

きのふ

June 25 [Sat], 2016, 16:07
 きのふ


きのふ おれが見たものは何だつたかなあ

つまらんことだが
だいじなことだつたやうな気もする

ここで思ひ出さんと その映像は
おれのなかで永遠に消えちまふ
といふはなしをどこかできいたぞ

なくしたくないな いやだ それは

だが 思ひ出せん

思い出せんよ

かうして きえていくのか
おれの一部が
また




(二〇一六年六月十九日)


雲のちぎり絵(習作)

June 23 [Thu], 2016, 16:27
(本作はワークショップの課題用に制作した習作です。)

 雲のちぎり絵


白い
坂道が
空まで続いていた

短くて
気まぐれな夏だった

そよ風はこぶ 
過ぎたざわめき
あなたはひどくはなれてた

吹きすさぶ潮風に あなたは
息をとめていた
手紙を入れた ガラスびんをもって

声にさえもならなかった
あのひとことを
宇宙の片隅でつぶやき合う
永遠は 幻だと知っていても

輝きは戻らない
二人の言葉はあてもなく
過ぎた日々をさまよう
この場所に おなじ時間に

心の奥に しまい忘れた
たいせつな箱
死にたいほど 傷ついても
なつかしいこと
とても幸せな淋しさを抱いて

おしえて
大人になるっていうのは
もう 平気になる心
光る風 草の波間を
かけぬけるわたしが見える

霧が晴れたら
小高い丘に立とう

永遠の輝きに
命の舵を取ろう

海の碧さを
もう一度伝えるために

遠い波の彼方に
名もない島が
見えるかもしれない




◆作者補記 ―― この作品は、すべて荒井(松任谷)由実さんの楽曲を素材として、さまざまな曲の歌詞をつなぎ合わせてつくられています。手法としてはコラージュ、あるいはサンプリングというのでしょうか。しかし、そういう横文字の美術用語やデジタル臭い用語よりも、「ちぎり絵」という純和風の、手仕事的な言葉の方がしっくりするのでタイトルを「雲のちぎり絵」としました。なお「雲」は、この作品の冒頭を読めばおわかりでしょうが、もちろん永遠の名曲「ひこうき雲」から取られています。

素材にした曲は以下の通りです。
ひこうき雲
Hello, my friend
最後の春休み
翳りゆく部屋
潮風にちぎれて
瞳を閉じて
雨のステイション
やさしさに包まれたなら
9月の蝉しぐれ
あの日にかえりたい
ダンデライオン 〜遅咲きのたんぽぽ
朝陽の中で微笑んで
空と海の輝きに向けて

(二〇一六年六月十八日)

星のはなし

June 20 [Mon], 2016, 17:17
 星のはなし


また おろかな人生だつた

こんども はんぱだつた
いろいろ だめだつた

愛したひとはゐたが
愛せなかつたひともゐた

もう怒るまい ときめてたのに
なんども怒つちまつた

だめなやつだつた こんども

なつちやなかつた

ばかだつた

ちきしやう

でもな どのみちもう何年かいきるんだ

出逢ふひとがみな しあはせであるやうに

もうすこし おれは何かをしよう

さうだ

もうすこし
うつくしい物語をかたつてみよう

もうすこし

あと何年か 何日かでもいい

うん

あした 月の裏がはから見える星のはなしを
あいつにしてやらう



(二〇一六年六月十九日)


June 20 [Mon], 2016, 17:15
 夢


けふも一日 つかれた

星のまたたきをみつめた

ここにおちてきた日はいつだつたか

それをおもひださうとしてゐたんだが

きのふだつたかなあ

いや


まいにちみている夢かもしれない




(二〇一六年六月十八日)

夏帽子

June 17 [Fri], 2016, 16:17
 夏帽子


古いあやまちを思ひ出しては
翳をえらんで歩く それゆえの夢の弱さを私は恥ぢる
聖らかさとやさしさ いつもそれだけ欠けてゐる

夏帽子のひとは永遠に遠景のまま
その手前をいくつもの季節が過ぎる

野は若さの盛り むせかへるほどに鮮やかな油彩をえがいて
光はますます美しい きらめくものに憧れたいなら
濃くなる緑 夏が来る そんなことはわかつてゐる

それでも私は
叡智が選び取る ただひとつの簡潔な線でこれをとらへたい

四十七の感覚器をおもふさまひらいて
明るい世界のすべてをうけとめる それを恐れなくなるまで

時はひとつの無限旋律 といふ幻想 だつたら
このうたは時を超える幻想になれるのか
さうぢやない

青ざめた可能性ではなく
時に先立つ無限のゼロから
一瞬で飛翔するすきとほつた決断
欲しいのはそれだ

駆け抜けてみよう 自転が止まるまで それが賭け
遠くで笑ひながら見てゐるのは 夏帽子がまぶしい君

いいだらう
いつか君に追ひ付く



(二〇一六年六月五日)




ゆびさき詩篇 二〇一六年五月二十八日

June 06 [Mon], 2016, 16:24
ゆびさき詩篇 二〇一六年五月二十八日



 雲

風が香ばしい
炙つたうるめ鰯をかじる にがい

雲をたべてみたくなつた


------


 かくれるところ

うつくしくあるものよ

わたしを 見るな

かくれるところがないんだ



(二〇一六年五月二十八日)


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「空に、君への通信おくります。」〜森雅之「ガーネット」に寄せて

June 04 [Sat], 2016, 16:28


  「ことばは
  電波のように
  空をとぶ。

  受信機は
  遠くの街の
  くたびれた心臓。」― 森 雅之


 漫画で詩をかく大詩人、あるいは詩で漫画を描く大漫画家、森雅之さんの最初期の作品を集めた『夜と薔薇』という自選作品集がある。

 この作品集の中で私が特に愛するのは「街でうたう雲雀」と「ガーネット」の二篇だが、中でも私にとってかけがえのない大切な作品が「ガーネット」である。

  「うん。
  良い物語を
  つくろう。」

  「いつか…
  いつか
  わからないけど
  ずっと
  先でも」

  「それが
  電波の送り主に
  届かないとは
  限らない。」

  「そうして
  少しでも
  うれしくさせないとは
  限らない。」…

  「…どうかこの
  ガーネットのような
  ロマンチックが
  いつまでも
  つづきますように。」

  「遠方から
  遠方への
  ロマンチックが
  つづきますように。」

  (森雅之「ガーネット」より)


 この饒舌すぎる世界の、どこの誰に向けられているのかわからない大量の言葉の十字砲火のさなかで、詩や詩人の言葉さえその饒舌さの一翼を担って飛び交うさまを目にしながら、自分の位置と自分の言葉の行き先を見失いそうになった時。

 あるいは、見失ってしまった時。

 私はこの作品を読む。

 すると、あらゆる目くらましが私の世界から消え、目の前に一本の通信線がくっきりと現れる。

 「そうだ、よい詩をかこう」

 そうして私は机に向かい、まだ見ぬひとに読んでもらいたい詩をかき、その通信線に乗せて送り出す。そのひとに。

 それがどこの誰なのか、彼氏か彼女か、いつ届くのか。そんなことはわからない。

 が、必ずどこかにいるその誰かに、いつか届く言葉。
 
 これは願いではなく、望みでもない。確信だ。

 作者がその確信に達するまでかかれた詩、それが私の考える「いい詩」である。

 そういうものがかきたくて、今日も私は机に向かい、よい詩をかくために心を澄まし、世界の饒舌さにかき消されていた「もののあはれ」の静かな声に耳を傾けようとする。

 これは、君への手紙だ。ひとびとの饒舌さが一個の巨大機械と化して騒々しく自動増殖を続けるこの世界で、何を血迷ったか詩人として生きるという孤独な道 ―― 孤独になるほかない道を選んだ君に、私はこの手紙を贈る。そして、いつか「ガーネット」を読んでくれることを心から願う。できれば今日。無理なら明日。せめて、君がろくな詩ひとつ残せずにこの世を去る前に。

 孤独さは不幸かもしれないが、饒舌な世界の中で自らの位置を見失い、自分自身がその饒舌な機械の歯車となってしまうまでにすさんだ心で生きていくほど、不幸ではない。

 だから、心ある友よ、よい詩をかき給え。

 そうすれば君はもう孤独ではない。君の言葉は、君がまだ知らない、しかし間違いなくどこかにいるそのひとに、いつか必ず届くだろうから。


ゆびさき詩篇 二〇一六年五月二十三日

May 25 [Wed], 2016, 16:26
ゆびさき詩篇 二〇一六年五月二十三日



 紫陽花

こころが とぢた

雨をみつめる とほくに紫陽花



 ひざ

ひざをかかへてゐたら
父のどなり声をおもひだした

うまれるまえにきいた声



 ぶらさがる

ぶらさがるんだ

ぶらさがるんだ

まだ 生きてゐなくてはならない



 げんじつ

げんじつは 嫌ひだ

どうしてなんて 云ふな

嫌ひだから 嫌ひだ

好きになれなんて 云ふな

お人好しも いいかげんにしろ

げんじつは じぶん勝手だ

げんじつは ひとの話をきかない

げんじつは ずるい いぢがわるい

こんなやつと ともだちになれるか




(二〇一六年五月二十三日)

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たのしみ

May 21 [Sat], 2016, 16:55
 たのしみ


昨日はちよつとつらかつたけど
今日はいいお天気

花は咲かないのかな

鳩はおりてきたけど

花は咲かないのかな

土をゆびでなぞつて三時間

まだ陽はあかるいね

花は咲かないのかな

「いや、私は学者ではありませんので」

あなただれ?

「いや、それは要点ではありません」

ようてん?

「つまりです、早く咲いてほしいんですよね」

うん いいの 待つてるから

「さうですか。ぢやあ、さやうなら」

さやうなら

くらくなってきちゃつた

花は咲かないのかな

(ねえ、僕も一緒にみてていいかな)

うん いいよ 一緒にみませう

花は咲かないのかな

(花は咲かないのかな)

花は咲かないのかな

(はやく咲くといいね)

はやくなくてもいいの 待つてるから

(さう 僕 もうかえらなきや)

うん さよなら

(さよなら)

花は咲かないのかな

星はきれいだけど

花は咲かないのかな

あしたになつても
ひとりのわたしだけど

お医者さんはだめだつていふけど

花が咲くまで みてゐるのは

たのしいの



(二〇一六年五月二十一日)

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