第8話 空飛ぶ蒸気機関車”99” その3 

January 30 [Tue], 2018, 17:36
「第7話 空飛ぶ蒸気機関車”99” その2」
http://yaplog.jp/teruteru10/archive/7
からのつづき


*****前回までのあらすじ************

うさぎ星からやってきたウサタロウ。

ウサタロウは遠くの宇宙で悪い宇宙人に追いかけられて、行先指定なしの緊急ワープで逃げた。
そうして偶然地球の近くにたどり着いたが宇宙船が地球人の出した宇宙ゴミとぶつかって壊れ、チュータの家の近くの竹やぶに墜落してしまった。
ウサタロウは燃えさかる竹やぶの中で大火傷してしまったがチュータロウに救助されてDr.チューの手当てですっかり元気になった。
でもその宇宙船は壊れてしまっていて、ウサタロウはうさぎ星に帰れなくなってしまった。
ワープトンネルの出入り口では大きな衝撃を受けるので一度壊れた宇宙船では強度が足らなくてバラバラになってしまうというのだ。
うさぎ星に連絡しようにも地球から600光年も離れているので電波が届くにも600年かかってしまう。

それでチュータロウは蒸気機関車C11型を宇宙船に改造しようと考えた。

しかし出力121万KWの質量電池が壊れていてこのままではワープキャノンが使えないことが分かった。ワープキャノンはワープ花火を打ち出してワープトンネルを作るのだが121万KWもの電力を必要とする。
121万KWの電力といえば大型の原子炉ひとつ分という途方もない大きさだ。

しかしチュータロウは500KWにも満たないC11型の蒸気機関のパワーを使ってみようと提案した。
動輪の軸に発電機を取り付けた。
繰り返すがC11型のパワーは121万KWには遠く及ばない。
それでもチュータロウはやってみようと言う。
実際に作り実験しながらいいアイデアを思いついてなんとかするのだと言う。

*****C11型改、飛ぶ************

チュータロウはC11型改に水を入れ燃料を入れた火を着けた。

何十年ぶりの蒸気機関の再起動。でも自信はある。ずっと点検整備は欠かさなかった。

水温が上がり沸騰が始まった。蒸気圧がぐんぐん上がり始めた

チュータロウ
「蒸気圧15気圧。運転開始。」

C11型改
「ぷおーっ」
「ヒューン」

汽笛の音に混じってタービン音が聞こえる。蒸気タービン式の小型発電機の音だ。
次の瞬間、10cmくらいふわりと浮いた。

チュータロウ
「動輪を前進回転。」

C11型改
「シュッシュッシュッシュッ」

力強くピストンが動いて動輪が回り始めた。
同軸上の発電機から蒸気タービンよりもずっと強力な電気を144個の超重力装置に送り込める。
ちなみに電線類は全てうさぎ星で発明された超電導合金電線を使っている。
ウサタロウのヘルメット型コンピューターに作り方がインストールされていたのでチュータロウがつくった。

ウサタロウ
「高度100mまで上がろう。チュータロウ、もっとパワーを上げて。」

チュータロウ
「了解。出力、全開!」

C11型改
「シュシュシュシュシュシュシュシュ」
動輪の回転数があがってゆっくりと力強く高度が上昇していった。100m上がるのに約3分。
C11型改が重量66トン+α、出力450KW、地球の重力加速度9.8m/s毎秒から計算すると発電機や超重力装置の変換効率はだいたい100%近いということが分かる。

ウサタロウ
「高度100mに到達。最高速度を試そう。」

チュータロウ
「了解!」

時速100Kmがワープトンネルに飛び込む=ワープインするために必要なスピードだ。
C11型が線路を走るときの最高速度は時速85Kmだけど今動輪が駆動しているのは線路ではなく発電機。
時速85Kmの回転数より少し遅く、だけど強い回転力でもっとたくさんパワーを出せる。
これなら最高時速140Kmくらい出そうな感じだ。

C11型改
「ぷおーっ」
「ヒューン」
「シュシュシュシュシュシュシュシュ」
まるで空の線路の上を進むようにC11型改は力強く走る。
しかしメーターを見ると速度が上がれば上がるほどワープキャノンのスタンバイ電力がどんどん低下していく。
そもそも最大でも450KWしかなくて121万KWには遠く及ばないのだが。

そしてたぶん最高速度、それ以上加速しなくなった時、とうとうスタンバイ電力はゼロになってしまった。
空気抵抗や動輪の回転抵抗などいろいろな抵抗が蒸気機関の出力を全部食いつぶしたからだ。

ウサタロウ
「チュータロウ、やっぱり全然パワーが足りないよ。」

チュータロウ
「ウサタロウ、下向き30度くらいの角度で急降下して時速200Kmくらいまで加速した後、10Gで急減速してみて。」

ウサタロウ
「了解。」

C11型改はスキー場の急斜面を降りるような角度で急降下を始めた。
スピードがぐんぐん上がる。まるでジェットコースターだ。時速200Kmになった時、ウサタロウはチュータロウの注文通りに10Gの急ブレーキ操作をした。

「ぎゅうううううううううん!」

まるでロケット発射の逆回しを見ているような急減速。だけどチュータロウとウサタロウは急ブレーキの衝撃を感じていない。
なぜなら超重力装置に囲まれた空間は重力制御ができるのでいつも一定の下向きの重力が保たれているようにコントロールされているからだ。

ウサタロウは電気出力のメーターを見て驚いた。
「え?瞬間最高電気出力36万KW?蒸気機関の出力は450KWしかないはず。なぜ桁違いの電気出力が出た?」

チュータロウ
「思った通りだ。回生ブレーキ発電だよ。地球の電車はブレーキの時、スピードのエネルギーを電気に変える。超重力装置もきっと同じじゃないかと思っていたんだ。これは使えるぞ。もっと高いところまで行って急降下すればもっとスピードが出て121万KWを出せるかもしれない。」
「名付けてジェットコースター法だ。」

ウサタロウ
「そうか!基本的な物理学だね!何で今まで気が付かなかったんだろう。これなら確かにできるかもしれない。」
「ワープキャノンがワープ花火を打ち出すには121万KWを約0.3秒以上続ける必要があるけど。。。ちょっと待って、計算してみる。このC11型改の重さが約66トンで減速度を10Gにした時。。。」
「えーと、だいたい時速800Kmくらいのスピードがいる。地球のジェット旅客機と同じくらいのスピードだね。B787は50トンくらいの推進力で時速900Km以上を出しているようだから66トンの重量があればいけそうだ。」
「それから、その時に最低必要な高さは約23,000m。だけど空気抵抗でブレーキがかかる分もっと高くまで上がらないと。でも高くあがれば空気も薄くなるから大気圏内で121万KWを0.3秒以上出せそうだ。」

チュータロウ
「じゃあ、さっそく燃料をもっと積んで、もっと高く上がって急降下でスピードのパワーを121万KW以上にしてうさぎ星にワープしよう。」

ウサタロウ
「残念ながら、すぐにはできないよ。」

チュータロウ
「なぜ?」

ウサタロウ
「ワープアウトは位置エネルギーの同じ場所にしかできない。うさぎ星の重力は地球とほとんど同じだから地球でワープインした時と同じ高度のうさぎ星大気圏内にしかワープアウトできないんだ。」


説明しよう。
ワープキャノンは121万KW以上の電気出力を受けてワープ花火を打ち出して炸裂の一瞬にワープトンネルを作りどんな遠くでも一瞬で移動できるワープを可能とする。
しかし宇宙船はワープインした時と位置エネルギーや速度エネルギーが同じになる場所にしかワープアウトできない。
ワープアウトできる場所は近くにある大きな質量の物体(ほとんどの場合、星)を基準としてワープインした時と同じ位置エネルギーと同じ速度エネルギーが保存されるのである。

うさぎ星ではかつては宇宙空間座標原点を基準とした絶対位置エネルギーや絶対速度エネルギーがワープ前後で保存されると考えられていた。
しかしワープキャノンが開発されワープ実験が可能になった結果、近くの大きな質量体基準でエネルギー保存則が適用されていることが判明したのである。


ウサタロウ
「うさぎ星重力圏内への『無許可ワープアウト』は法律で固く禁じられている。たくさんの宇宙船が飛んでいるところにあてずっぽうでワープアウトして、もし他の宇宙船にぶつかったら大変だよ。」
「地球から、うさぎ星に連絡するには600年かかる。うさぎ星管制局にワープアウトの時間と場所を確保するための連絡ができないんだ。ワープは一瞬なので電波より先に僕たちがうさぎ星に到着してしまうから。」

チュータロウ
「そうか。ウサタロウが地球に来て宇宙ゴミにぶつかった時みたいになるかもしれないのか。」

ウサタロウ
「そう。もし運悪く他の宇宙船にぶつかったら大事故大惨事になる。、『無許可ワープアウト』はすごく危ないことなんだ。だから、たとえ運よく他の宇宙船にぶつからなくても、とても重い犯罪行為とされていて、うさぎ星宇宙交通法違反で宇宙船操縦免許取り消しと10年の禁固刑になる。」

チュータロウ
「一時停止無視の交差点出会い頭衝突事故みたいなものだね。」

ウサタロウ
「この辺でいうとそんな感じかな。でも何か方法があるはずだ。うさぎ星への帰り方をうさぎ知恵袋で調べてみる。」
ヘルメット型コンピューターで遠く離れた場所から帰る時の手順を検索してみた。

「うさぎ星から遠く離れた場所から帰る方法=『2回法』」にヒット。
・うさぎ星から30億Kmくらい離れたPU244星に一旦ワープ。
・PU244星には空気も資源も何も無くて普通誰も来ない。宇宙ゴミも無くて宇宙船に何かがぶつかる確率10億分の1以下。
・そこからうさぎ星管制局に帰着許可申請連絡をして指定の場所と時間に合わせてうさぎ星にワープする。

ウサタロウ
「連絡の為、うさぎ星の近くに行くワープとうさぎ星に帰るワープの2回で帰るということ。」

チュータロウ
「うーむ。空気のないところで発電してもう一度ジェットコースター法でワープキャノンに121万KW送り込む必要があるってことか。」
「これは大変だ。燃料はともかく空気を積むのは大変だよね。うーん、どうしよう。」
「あー、難しいこといっぱいで頭がもやもやしてきたー。」
「うーん、こういう時はいい方法がある。」

ウサタロウ
「いい方法?なになに?」

チュータロウ
「みんなでどこかに遊びに行こう。気分転換だ。」

「第9話 空飛ぶ蒸気機関車”99” その4」
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に続く
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