三輪 終 

2015年06月27日(土) 0時39分
まずは能一曲という長文を最後まで読んで下さった方に御礼申し上げます。


ここのところ、五月の始めから休日返上で色々なプロジェクトに参加して参りました。(また、落ち着いたら書こうと思います。)


気がつけば、本番の日になってからも現代語訳を掲載する事になり、自分の日頃の『あともう少し』が足りなかった結果だと、悔しい思いを抱えております。また、この現代語訳を必要となさる方々にご迷惑をおかけしました事、この場にてお詫び申し上げます。申し訳ございませんでした。




まずは明日、しっかりと勤めて参りたいと思います。また、懲りずにこれからも現代語訳の掲載をしていきたいと思っております(笑)この現代語訳からお能に対する苦手意識や難しさを減らし、少しでも自分との繋がりや興味を持って下さる方がいれば幸いこの上ありません。今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。


宇高竜成

三輪 七 

2015年06月27日(土) 0時27分


地謡「まづは岩戸のその始め。隠れし神を出さんとて。八百萬の神遊。これぞ神楽の始なる。」
 
(まず、天照大神が天岩戸にお隠れ遊ばした時、大神を岩戸からお出し申そうとして、多くの神々が舞楽をなされた。これが神楽の起源です。)
 
 
 
シテ「千早振る。」
三輪明神(ちはやふる…。)
 
 
 
…と言って三輪明神は在りし日の神楽を舞う。段々とテンポが激しくなり、やがて岩戸隠れの物語を語り始める。
 
 
 
シテ「天の岩戸を。引き立てゝ。」
三輪明神(…天照大神が天の岩戸を閉めて…。)
 
 
 
地謡「神は跡なく入り給へば。常闇の世と。はやなりぬ。」
三輪明神(…中へお入りになってしまったので、この世はたちまち昼も夜も無い、常闇の世界となってしまいました。)
 
 
 
シテ「八百萬の神達。岩戸の前にてこれを歎き。神楽を奏して舞ひ給へば。」
三輪明神(多くの神々はこれを嘆いて、岩戸の前で神楽を奏してお舞いになると…。)
 
 
 
地謡「天照大神その時に岩戸を少し開き給へば。また常闇の雲晴れて。日月光り輝けば。人の面しろじろと見ゆる。」
三輪明神(…天照大神がその時に岩戸を少し開けてご覧になったので、ここにまた常闇の雲は晴れて、月日が光り輝いたので、人々の顔が白々と見えました。)
 
 
 
シテ「おもしろやと神の御声の。」
三輪明神(それで神々は喜んで『おもしろ!!』と仰った。)
 
 
 
地謡「妙なる始めの物がたり。」
三輪明神(…これが有難い神代の始めの物語です。)
 
 
 
シテ「思へば伊勢と三輪の神。」
三輪明神(伊勢天照大神とこの三輪の明神とは…。)
 
 
 
地謡「思へば伊勢と三輪の神。一體分身の御事。今更何と磐座や。その関の戸の夜も明け。かくありがたき夢の告。覚むるや名残なるらん。覚むるや名残なるらん。」

玄賓(おお、いかにも考えてみれば、伊勢天照大神とこの三輪の明神とは御一体のお分かれになったもので、今更事新しく申すまでもない事であった。…もはや、あの天岩戸の開いた時の様に夜が明けてきて、この様な有難い夢のお告げも覚めてしまうかと思えば、実に名残惜しい事でございます。)
 
 
 
…玄賓が感激していると夜が明け、夢と共に三輪明神は消えてしまう。


…おわり

三輪 六 

2015年06月27日(土) 0時04分
地謡「されどもこの人。夜は来れども晝見えず。ある夜の睦言に。御身如何なる故により。かく年月を送る身の。晝をば何と烏羽玉の夜ならで通ひ給はぬはいと不審多き事なり。」
 
三輪明神(ところが、その夫は夜は来るが、昼は来た事がないので、ある夜の睦まじく語り合った話のついでに妻は『この様に永い年月一緒になっているのに、あなたは何故昼を嫌がって、夜しかお出にならないのです。本当に不審に思われてなりません…。』)
 
 
 
地謡「たゞ同じくは永久に。契りをこむべしとありしかば。かの人答へ言ふやう。げにも姿は恥づかしの。洩りて外にや知られなん。今より後は通ふまじ。契りも今宵ばかりなりと。懇に語れば。さすが別れの悲しさに。帰る所を知らんとて。苧環に針をつけ。裳裾にこれを綴ぢつけて跡を控へて慕ひ行く。」
 
三輪明神(『なるべくならば昼も夜もずっと変わりなく、いつまでもここに居て下さい。』と申しますと、その夫は『いかにもこの姿が恥ずかしくて、昼来たならば自然と他の人にも知られてしまうだろう。一層の事、今日以降は夜も通って来ないようにしよう。あなたとの縁も今宵限りです。』としみじみ申しましたので、女もさすがに別れを悲しんで『夫の帰る所を知りたい。』と思って、苧環の糸の先に針を付けて、それを夫の裳裾にとじ付けて、糸を道しるべとして、夫の跡を慕って行ったのです。)
 

 
シテ「まだ青柳の糸長く。」
三輪明神(初めのうちは糸が随分長かったのですが…)
 


地謡「結ぶや早玉の。おのが力にさゝがにの。糸繰り返し行く程に。この山もとの神垣や。杉の下枝止りたり。こはそも浅ましや。契りし人の姿か。その糸の三わげ残りしより。三輪のしるしの過ぎし世を語るにつけて恥かしや。」

三輪明神(次第に手繰って行くうちに、糸の先がこの山の麓の神杉で止まったのです。『これはなんという事でしょう。私の契りを結んだ人はこれであったのか…。』と驚いたのです。その時に苧環の糸が三巻『三わげ』残っていた事から、ここを三輪と言い、三輪のしるしの杉と言う様になったのです。こうした昔物語を申すにつけて、昔の事が思い出されてお恥ずかしゅうございます。)
 
 

…玄賓は神の物語に感動して、なお一層の信心を起こし、歓喜の言葉を述べた。
 

 
地謡「げにありがたき物語。聞くにつけても法の道なほしも頼む心かな。」
玄賓(ああ実に有難い物語です。お話を伺うにつけて、益々信心を厚くしております。)
 
 

シテ「さらば神代の物語。委しくいざや顕し。かの上人を慰めん。」
三輪明神(では、一層の事、神代の物語を詳しく示して、上人をお慰めしましょう…。)


…つづく

三輪 伍 

2015年06月26日(金) 23時34分
シテ「千早振る。神も願ひのある故に。人の値遇に。あふぞ嬉しき。」
 
三輪明神(神にもやはり罪業を救われたいという願いがあるので、こうして人に逢う事を嬉しく思いますぞ。)
  
  
ワキ「これなる杉の二本より。妙なる御声聞えさせ給ふぞや。同じくは末世の衆生の迷ひを照らし。御姿を拝まれおはしませと。念願深き感涙に。墨の衣を濡すぞや。」
 
玄賓(おお、この杉の木陰から霊妙な神の御声が聞こえる。どうか神様、我々末世の迷える衆生を照らすべく、そのお姿を拝ませて下さいませ。…こうやって深くお願い申し上げますと、感激の涙が溢れ出て、この僧都の衣を濡らすのでございます。)
  
  
シテ「恥かしながら我が姿。上人にまみえ申すべし。罪を助けて賜び給へ。」
 
三輪明神(では、お恥ずかしながらこの姿を、上人にお見せしましょう。どうぞ私の罪業をお救い下さいませ。)
 
 
ワキ「いや罪科は人間にあり。これは妙なる神道の。」
玄賓(いえいえ、罪業は人間にあるもので、あなた様は霊妙な神様なのですから…。)
 
 
シテ「衆生済度の方便なるを。」
三輪明神(いや、神も衆生を救って極楽へ渡す方便の為には…。)
 
 
ワキ「暫し迷ひの。」
玄賓(暫くは迷いの深い人間の心をお持ちになるのでございますか…。)
 
 
シテ「人心や。」
三輪明神(その通りである。)
 
 
 
地謡「女姿と三輪の神。女姿と三輪の神。ちはや掛帯引きかへて。たゞ祝子が著すなる。烏帽子狩衣。裳裾の上に掛け。御影あらたに見え給ふ忝なの御事や。」
 
玄賓(ありがたや、三輪の明神が女姿をして現れなさった。しかもチワヤも掛帯もお召しにならず、普通の巫女が着る様に、裳裾の上に狩衣を着し、烏帽子を被ってあらたかなお姿をお示しになった。実に勿体のうございます。)
 
 
…やがて三輪明神が巫女に移って玄賓の前に現れ、神話の物語を始める。
 
 
地謡「それ神代の昔物語は末代の衆生の為。済度方便の事業。しなじな以って世の為なり。」

三輪明神(神代の昔物語は、仏法の衰えた末世に迷う衆生の為に、その苦悩を救って極楽へ渡す方便として示されたものです。その物語は色々様々ありますが、いずれも世の為に示されたものに外ならないのです。)
 

 
シテ「中にもこの敷島は。人敬つて神力増す。」
三輪明神(その中でも、殊に和歌は尊いもので、人々がこれを敬えば、益々神の威光が増して行くのです。)
 
 
地謡「五濁の塵に交はり。暫し心は足引の大和の国に年久しき夫婦の者あり。八千代をこめし玉椿。変らぬ色を頼みけるに。」

三輪明神(さて神は、衆生を救う為に、この濁った人間界に降り、従って一時は神の心も人間の様になるのですが、その一例に…この大和の国に永年住み慣れていた夫婦の者がありました。そしていつまでも、いつまでも互いに変わらないようにと契っていたのでした。)


…つづく

三輪 四 

2015年06月26日(金) 22時56分

※シテは作り物の中に入ってしまう。やがて間狂言が登場する。

…一人の里人が三輪明神に参詣している。どうやら祈願の為に、数日通っていて、今日がその満願の日の様だ。神前に拝をなして、帰ろうとすると、男は三輪の神杉に衣が掛かっているのを見つける。よく見れば、三輪の山陰に住んでいる玄賓僧都の衣であった。男は普段から僧都の元で説法を聞いたりしているのだが、祈願の為に暫く無沙汰にしていた。この事を知らせる為に男は玄賓僧都の元へと向かった。


…挨拶をすると「近頃は怠られましたな。」と玄賓僧都。男は三輪明神に祈願の為参詣をしていた事、そして満願の日を迎えた事を話し、やがて神杉の衣の話をする。玄賓は驚き、この頃樒・閼伽の水を持って通う女の話をする。もしかしたらそれこそが、三輪の明神ではないのかと男は言う。玄賓は久しく出ていない草庵の外へと足を運ぶことになった。


ワキ「この草庵を立ち出でゝ。この草庵を立ち出でゝ。行けば程なく三輪の里。近き辺か山陰の。松は標もなかりけり。杉村ばかり立つなる。神垣は何處なるらん。神垣は何處なるらん。」

玄賓(この草庵を出て行くと、間もなく三輪の麓に来たのだが、三輪明神はこの近くなのであろうか。この山陰には目印の松はなく、ただ杉林があるばかりだが、一体お社はどこの辺りなのか知らん…。)


…やがて玄賓は二本の杉の元へ辿り着く。そこには男の話の通り、あの女性に渡したはずの衣が掛かっていた。


ワキ「不思議やなこれなる杉の下枝を見れば。ありつる女人に与へつる。衣の懸りたるぞや。寄りて見れば衣の褄に金色の文字すはれり。読みて見れば歌なり。三つの輪は清く浄きぞ唐衣。くると思ふな。取ると思はじ。」

玄賓(おお、これは不思議だ。この二本の杉を見ると、先程の女に与えた衣が掛かっているぞ。そばへ寄ってみると、衣の裾に金色の文字が書いてある。読んでみると、一首の和歌だ。…『三つの輪は清く浄きぞ唐衣、くると思ふな取ると思はじ※』…この衣は三業の惑いを砕く三輪の様な、清浄で空寂なものである。だからこれを人に与えたと思ってはいけない。私ももらったとは思うまい。)


※三つの輪とは、『身・口・意』の三業の惑いを打ち砕く三輪(さんりん)を言う。三輪とは、『施者・受者・施物』の事で、『清浄・空寂』とは施す人も、それを受ける人も、何とも思わず無心である事を言う。


…玄賓は衣に書かれた和歌を詠んで暫く神杉の元に佇んだ。すると、神杉の方から声が聞こえてきた。


…つづく

三輪 三 

2015年06月26日(金) 21時29分
ワキ「何事にて候ぞ。」
玄賓(何でしょうかな?)


シテ「妾に御衣を一重賜はり候へ。」
里女(僧都様の御衣を一枚、私に頂けませんでしょうか?)


ワキ「何と衣の所望と候や。易き間の事この衣を参らせ候。」
玄賓(何と、衣が欲しいと申されるか。それはお易い事です。この衣をあげましょう。)


…秋も深まり帰り道も寒かろう…と、やがて玄賓は女に自分の使っている墨染めの衣を渡した。


シテ「あら有難や候。さらば御暇申し候はん。」
里女(有難うございます。それでは、これでお暇申します。)


……女は意味ありげに衣の御礼を申して、草庵から立ち去ろうとした。かねてより女の素性を聞こうと思っていた僧都は、女の後ろ姿に声を掛けた。


ワキ「暫く。この程樒閼伽の水を持ちて来り給ふ御志。返す返すも有難う候。さてさて御身は何處に住み給ふ人ぞ。住家を御明かし候へ。」
玄賓(ちょっとお待ちなさい。ここのところ毎日、樒や閼伽の水を持って来て下さった事、本当に有難うございました。さて、あなたは何処にお住まいになる方ですか?住居を教えて下さらんか。)


シテ「わらはが住家は三輪の里。山もと近き所なり。しかも我が庵は。三輪の山もと恋しくはとは詠みたれども。何しに我をば尋ね給ふべき、さりながら。なほも不審に思し召さば。訪ひ来ませ。」
里女(私の住家は三輪の里の、山の麓に近い所でございます。そして歌にも『我が庵は三輪の山もと恋しくは、訪ひ来ませ杉立てる門※』と詠まれておりますが、とてもお訪ね頂けるような所ではございません。ですが、もしもご不審に思し召すならば…その歌の様に『訪ひ来ませ』…。)
※古今集詠み人知らずの歌。


地謡「杉立てる門を知るべにて。尋ね給へと言ひ捨てゝ。かき消す如くに失せにけり。」
里女(…『杉立てる門』を目印にして、お訪ね下さいませ。)


…と言い捨てて、消えるようにいなくなってしまった。


…つづく

三輪 弐 

2015年06月25日(木) 0時14分

…女が庵を訪ねる少し前、僧都は秋も深まる庭を眺めながら一人物思いに耽っていた。


ワキ「山頭には夜孤輪(よるこりん)の月を戴き。洞口には朝一片(あしたいっぺん)の雲を吐く。山田守るそほづの身こそ悲しけれ。秋果てぬれば。訪ふ人もなし。」

玄賓(ある詩に『夜には山の頂に月が照り、朝は岩穴からちぎれ雲が出て行く』とあるが、ここは正にそんな淋しい所だ。私もその心を歌にするならば…『山田守るそほづの身こそ悲しけれ、秋果てにれば訪ふ人もなし』…と言ったものか。山田の番をしている案山子の身の上は本当に哀れなものだ。秋の取り入れが終われば、もう誰一人訪ねてくれる人もいない。私の身の上も同じだ。)

※“そほづ”は案山子の事。“そほづ”と僧都の身の上を重ねて玄賓の詠んだ和歌。

…僧都が独り言を言っているところに、外から案内を頼む女の声がした。


シテ「この内へ案内申し候。」
里女(…この庵の内へお取次ぎをお頼み申します。)


ワキ「案内申さんとはいつも樒閼伽の水を持ちて来れる人か。」
玄賓(案内を頼むのは、いつも樒や閼伽の水を持って来て下さる人か。)


シテ「山影門に入つて推せども出でず。」
里女(今宵の月夜の景色は、昔に詠まれた詩の様で『山の影は門の中に入って、いくら押しても出ようともしません。』)


ワキ「月光地に敷いて掃へども又生ず。」
玄賓(その通り。『月の光は地面いっぱいに照り映って、いくら掃いても、またすぐに月影が出来る』という有様ですな。)


シテ・ワキ「鳥声とこしなへにして。老生と静かなる山居。」
里女(そして鳥の声が絶えず聞こえて、心静かにお暮らしになるのに相応しい詫び住まいですね…。)
玄賓(…ですな。)


地謡「柴の編戸を押し開き。かくしも尋ね切樒。罪を助けて賜び給へ。」
…やがて女は柴で編んだ戸を開けて中に入り玄賓に樒の切り枝、閼伽の水を渡した。
里女(こうして樒を切り摘み、お伺いしております。どうか私の罪をお救い下さいませ。)


地謡「秋寒き窓のうち。秋寒き窓のうち。軒の松風うちしぐれ。木の葉かき敷く庭の面。門は葎(むぐら)や閉ぢつらん。下樋の水音も苔に。聞えて静かなるこの山住ぞ寂しき。」

…秋の暮、このうすら寒い僧庵の内は、軒の松に吹き渡る風の音が、まるで時雨の様に聞える。庭には木の葉が散り敷いており、門は雑草に閉じ込められ、地に引いた樋(とい)の水音が苔の中から聞え、如何にも静かな、寂しい有様である。


…二人が庭を眺めていると、やがて女が僧都に話を切り出した。


シテ「いかに僧都に申すべき事の候。」
里女(もし、僧都様にお話したい事があります。)


…つづく

こんばんは!(消えてしまったので再度掲載) 

2015年06月24日(水) 0時48分
前日の記事のアップしてから、これまでの活動を振り返って、そこからシテを勤めさせて頂く事になった若手能の宣伝、そして三輪の現代語訳…と計画を立てていたのですが、思わざる外に風邪をもらってしまい、今日になってしまいました。


活動を振り返るのは後日として、まずは今月末にシテを勤めさせて頂きます若手能京都公演のお知らせと、僕がシテを勤める能「三輪」の現代語訳を掲載させて頂きます!



若手能は日本芸術文化振興会の主催する公演で、次世代を担う若手能楽師達と新たなファン層を育てる会です。


また、演能形態としては、古来より続いてきた立ち合い形式です。即ち金剛流と観世流が舞台の上で芸を競い合い、見所(観客席)の人々は拍手の大きさで評価を下します。


舞台の上で若さの花が咲き競うひとときを是非ご覧頂き、次世代の能楽シーンを盛り上げて頂ければ若手能楽師は幸いこの上ありません。


また、近日中に当日の演目の解説も掲載する予定をしております。ご高覧の程、何卒宜しくお願い申し上げます!

第二十五回 若手能京都公演


宇高竜成は、能「三輪」のシテを務めさせて頂きます。また、金剛流からは、若宗家金剛龍謹氏による、舞囃子「唐船」もございます。その他、観世流能、大蔵流狂言、と京都、名古屋の若手能楽師たちの特別な競演をお見逃しなく。
?
6月27日(土) ? 11:00〜16:00 ? ?(10時半開場)
於 京都観世会館 (京都市左京区岡崎円勝寺町44)
チケット:一般前売2,600円 / 一般当日3,100円 / 学生1,500円


http://www.kyoto-kanze.jp/wakatenoh/wakatenoh.htm 




※若手能京都公演のチケットはタツシゲの会にてお取扱いございますので、Email、もしくはお電話にてお問い合わせ下さい。


竜成の会事務局


http://www.tatsushige3.com

TEL 080-4243-7440
(受付/平日10時〜16時)
info@tatsushigenokai.com

三輪 壱 

2015年06月24日(水) 0時11分
※舞台に囃子方、地謡方が着座すると、二本の杉をかたどった作り物が引廻(ひきまわし)という幕に覆われて出てくる。引廻は、その物を隠す意味があり、物語の世界ではまだ目に見えていない設定になる。

※やがて笛が名乗笛(なのりぶえ)の旋律を奏でると、幕が上がりワキ(玄賓僧都)が登場する。ワキは観客に名乗る。

…所は大和の国、三輪の山影。玄賓僧都は今は都の世俗を離れ、隠居生活を送っている。秋も深まる頃、僧都の元を尋ねる一人の女がいた。


ワキ「これは和州(わしゅう)三輪の山陰に住居する玄賓(げんぴん)僧都にて候。こゝに何處とも知らぬ女性。毎日樒閼伽(しきみあか)の水を持ちて来り候。今日も来りて候はゞ。いかなる者ぞ住家を尋ねばやと思ひ候。」

玄賓(私は大和の国、三輪山の麓に住んでいる玄賓という僧です。さてこの頃、どこからともなく女性が、樒を摘み、閼伽の水を汲んで私の所へ持って来るのです。今日も来たならば、どういった方なのか、またどこに住んでいるのかを尋ねようと思います。)


※ワキが座に着くと、囃子方が次第(しだい)を演奏する。やがて幕が上がりシテ(里女)が登場する。シテは木の葉を持っているが、実は樒や閼伽の水(仏前に手向ける水)一式を持っているという設定。敢えてリアルに演じない事で、観る人に想像する隙間を与える演出である。

…一人の女性が玄賓の草庵に向かって通い慣れた道を歩いて来る。手には樒、閼伽の水を持っている。山は秋も深まって、葉は落ち、寂しさが増してきている。


シテ「三輪の山もと道もなし。三輪の山もと道もなし。檜原(ひわら)の奥を尋ねん。」

里女(三輪山の麓には道もありませんので、道を変えて檜原の奥へ行きましょう。)


シテ「げにや老少不定(ろうしょうふじょう)とて。世のなかなかに身は残り。幾春秋をか送りけん。浅ましや為す事なくて徒らに。憂き年月を三輪の里に。住居する女にて候。」

里女(本当に人の命というものは定めないもので、老人が先に死んで、若い者が後に残るとは限らないものですから、私みたいな者がいつまでも後に残って生き永らえて、もう随分と長い年月を送り迎えてきました。私は何を為すわけでも無く、ただ生きているばかりで、徒らに情けない年月をこの三輪の里で過ごしている女でございます。)


シテ「又この山陰に玄賓僧都とて。尊き人の御入り候程に。いつも樒閼伽の水を持ちて参り候。今日もまた参らばやと思ひ候。」

里女(ところで、この山の麓には玄賓僧都とおっしゃって、大変尊い高僧がおいでになるので、いつも樒を摘み、閼伽の水を汲んでお持ちしているのです。今日もまたお伺いしようと思います。)


…女は身の上を語り、玄賓僧都の草庵へ向かう。やがて玄関から内へと声を掛けた。


シテ「いかにこの内へ案内申し候。」
里女(もうし、この庵の内へお取次ぎをお頼み申します。)


…つづく

三輪 序 

2015年06月23日(火) 23時01分
これから若手能京都公演にてシテ(主役)を勤めます「三輪(みわ)」の解説、現代語訳を掲載します。
三輪の詞章は金剛流謡曲本「三輪」(檜書店)、現代語訳は「謡曲大観」(明治書院)を参照しました。
また、訳の内容は出演を控えた一能楽師の主観に基づくものですので、決してこれが正解というものではありません。
この現代語訳を通して、当日の演能がより面白いものになれば、幸甚です。それでは参ります。



曲名 三輪(みわ)
季節 晩秋
場所 大和国 三輪の里

世阿弥作、原典は「俊頼無名抄」。

あらすじ

 これは「南都第一の碩徳(せきとく)」「天下無双の智者」と言われた玄賓僧都と、三輪の明神の交流を描く、神佛習合の物語です。大和の国、三輪の山に隠居していた玄賓(げんぴん)僧都の元へ、毎日樒(しきみ)閼伽(あか)の水を持ってくる女性がいます。いつものある日、女は僧都に衣を一重(いちえ)頂きたいと言うので、僧都は衣を与えて、女性に住処を尋ねると、「二本の杉の辺です」と言って消え失せます。

 暫くすると、里人が「三輪の神杉に僧都の衣がかかっています」と知らせに来たので、僧都は不思議に思って神杉の元へ行くと、杉の下枝に僧都の衣がかかっいて、それに金色の文字で「三つの輪は清く浄きぞ唐衣、くると思ふな取ると思はじ」という歌が記されています。やがて僧都の夢の中に三輪明神が現れて、三輪の神話を語り、天の岩戸の神楽の有様を示しますが、そのうち夜も白々と明け、僧都の夢は覚めてしまいます。


登場人物

前シテ 里女…
三輪の里に住む女。山の麓に住んでいる玄賓僧都の元に通い、樒や閼伽の水を捧げる。実は彼女は三輪の明神の仮の姿で、ある日、玄賓に衣を一重所望する。衣の所望は、神が佛と縁を結ぶ事を暗に意味していると思われる。

後シテ 三輪明神…
男体の三輪の明神が巫女に移って現れた姿。玄賓僧都に三輪の神話を物語り、天岩戸の物語を語る。

ワキ 玄賓僧都…
河内の国の出身で、俗姓は弓削氏。南都第一の碩徳、天下無双の智者と讃えられた高僧で、奈良興福寺の宣教に活躍し、後は俗世を離れ、三輪川の辺りに草庵を結んで隠居した。

間狂言 里人…
日頃は玄賓僧都の元へ訪れて、説法を聞いている里人。さる宿願の為に、数日三輪明神へ参詣しているが、満願の日、三輪の上杉の一の枝に玄賓僧都の衣が掛かっているのを見つけて知らせに来る。
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宇 竜成 (うだか たつしげ) 金剛流 能楽師 昭和56年12月21日生まれ。 舞台活動の傍ら、初心者にもわかりやすく楽しめる 「能楽ワークショップ」を企画し、2007年にはパリ、 2008年には韓国にてもワークショップを行う。 現在京都を中心に活動中。
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