抱っこしてあげればいいよ

October 07 [Sat], 2017, 19:42
月に何回か、職場の保育園で遅番の当番が回ってくる。
遅番の保育士は、通常保育が終わった後、五時〜最長七時まで、お迎えの遅い子を一室で見ることになる。
昨日はその日だった。
五時を過ぎ、担任の先生から離れると、子どもたちは、不安定になったり、落ち着かなくなったりする。
お迎えがきて、ひとりふたりと少しずつ、子どもの数が減っていくと、そわそわして動きが多くなる。
この日も、二歳児の一人の女の子が部屋を走り回り、テラスへと走り出ようとした。
私も、何度か注意したが、本人はものすごいパワーで制止しづらく、ちょっと強い口調で責めてしまっていた。
その時、ひとりの五歳の男の子が静かにとことこやってきて、
わたしの耳元で、そっとささやくように
『怒らんと抱っこしてあげればいいよ』
とつぶやいた。
その子は、場面緘黙と言われていた子で私が、その子の声を聴いたのは
昨日がはじめてだった。
はじめて聞いた言葉が
『抱っこしてあげればいいよ』というのは、私は今までこの子のどこを見ていたのだろう。
この子は本当に素朴な優しさを持った子なんだなと思った。
もちろん、ほかのどの子も優しい面は持っているのだが、
この子の場合、自分が何かしら生きづらさを抱えていて、
同じように自分の気持ちを持て余してうまく表現できなかったり、走り回ってしまったり、叱られてしまったりする子の気持ちに敏感なのかもしれないなと思ったのである。
だからこそ、「しゃべらない」という自分の中のルールを休止して、伝えたかったのだ。
誰かを困らせたくてこうなってるんじゃないということを。
『●●くんは、ほんとに優しいんやね』というとちょっとうなづいてまた静かに離れていった。
その後、その子は、別の〇歳の子が眠くなって、泣き出すと、黙ってふとんを持ってきてくれようとしたりもした。
その子は毎日、遅番の時間までいるので私以上に他の子の特徴を知っているのかもしれない。
饒舌ではない人が、不器用な中に意外な繊細さを持っている・・・というのは大人の世界でも往々にしてあるが
それは、子どもの世界でも同様のようである。


月影ベイベ

September 04 [Mon], 2017, 22:29
小玉ユキさんの「月影べイベ」を読んだ。
富山が舞台で、伝統芸能の「おわら」に情熱を注ぐ若者たちが描かれている。
『おわら』とは、またすごくかわった切り口でびっくりした。
・・というより、「おわら」そのものをよく知らないし、おわらを「かっこいい」ものとして熱中する高校生がいるということが、最初ぴんとこなかった。
しかし、読み進めていくと、やはり『かっこいい』のである。
若い人のエネルギーは、世代を凌駕して、古くからある伝統芸能を持続させていくものなのかな。
絵で見てるだけだけど、いろんなポーズや首の傾け方が色っぽくて風情あるもののように感じた。
それともうひとつ、着目してしまうのが、富山独特の方言。
なんともいえず、情緒があって、可愛い。
『〜しられ』『だーらー』とか。要所要所に、出てきて、
おそらくその土地の人なら、ぴたりとはまる表現や微妙なニュアンスがわかるのだろう。
光と蛍子、円と繭子のあやういやりとりも、甘酸っぱくもほろ苦い。
どの登場人物も、少しずつ不器用で、いろんな人たちに感情移入してしまう。
いつか、光くんの思いが成就しますようにと願わずにはいられない。。。
小玉ユキさんの漫画は、「坂道のアポロン」もそうだったけど、
古きよきもの、古いけど新しくてなつかしいものへの愛情が感じられて素敵だなあ

月と指の間

September 03 [Sun], 2017, 16:06

この漫画のヒロインは、五十五歳の漫画家。
ここ最近、漫画では、自分より年下のヒロインしか見てなかったけど。
この年齢だからこその迷いや戸惑い、自信と不安が興味深い。

ところで、おもしろい漫画を見ると、漫画家さんって、いったい何歳なんだろうって、興味ありますよね。
自分が小中学生の時から、活躍してる人が今も第一線で活動してるのを見ると
(しかも内容的にも全く古くなく鮮度を保ってるのを見ると)
いったい、この人たちの頭の中はどうなってるんだろうと驚愕してしまう。

でも、みんな生身の身体だから、変化はしてるはずなんだよな・・・
それを劣化と、とらえるか、
円熟と、とらえるのか
変化してることを経験できるのも生きてるからこそなんだろうけどね。

ハナミズキ

July 17 [Mon], 2017, 9:49
細々と続けてるピアノのレッスン教室の主催で
発表会に参加した。
参加は今年で三度目。
今回はハナミズキを弾くことにした。

前日のレッスンで
自分では、そこそこなんとか弾けてた気がしたのだが、
先生の指摘は「はがねで出来た花みたいな弾き方。」と言われたのか刺さった。
当日は、ハナミズキらしい可憐でみずみずしい演奏をしましょうと言われた。

そうなのだった。
私は、その時、何かに怒っていて
その荒ぶる感情をピアノにのせて弾いていた。
それが音に如実にあらわれたのだ。
恥ずかしい。
何かにつけて安定感の無い自分が心底恥ずかしい。

可憐でみずみずしいハナミズキの曲なんて
今の私に弾けるんかい・・・

と思いつつも、
当日は、自分の周りの大切な人の顔を思い出しながら
弾いた。

演奏後、しばらくして、ピアノの先生や見てくれてたママ友さんから
良かったよのあたたかいラインが届いていた。うれしかった。

無理せず
楽しみながら

ゆっくりゆっくり・・・
不安定な時も
自分の感情を微調整する。
手の届く範囲の目的に向かっていく

それが今の自分にできる精一杯だ。

永い言い訳

May 23 [Tue], 2017, 23:19
 永い言い訳という映画を観た。
西川美和の小説を西川美和本人が映画化している。
『ゆれる』を作った監督さんで「ゆれる」もすごく印象的な映画だったので、この映画も観てみたかった。
 つまるところ、この人は、根っこのところで「人間」が好きなんだろうなとおもう。
愚かしさもやりきれなさも、みっともなさも全部ふくめて好きなんだろうと。
この映画の主人公も、奥さんがバス事故で亡くなる瞬間も、愛人と会ってたという最低野郎なのだが、
なぜか、その気持ちの揺れ動きに目が離せなくなる。

結婚って、打算と惰性と妥協で成り立っていると、あるドラマの中で、誰かが言ってたが、
それはしょせんお互いが元気だから、言える冗談で
どちらかが、亡くなるなんてことになれば、そんなことはたとえ思っていても言えないし、
言ってみたところで誰も笑えないだろう。

主人公の幸夫も、妻の死にどう対峙していいのかわからず
必死で悲しむ夫を演じてみたり、
言葉を尽くして、なんとかきれいな感じに語ろうとしてみるのだが
どうにもこうにも、中身のないハリボテ感がぬぐえない。、
それでもって、職場でやつあたりして派手に暴れてみたり。
そんな自分に嫌悪感を募らせてるところに
同じ事故で妻を亡くした陽一という男と出会う。
この陽一という人が
どストレートに妻を亡くした悲しみをダダ漏れに表現する愛すべき好人物で
本当に妻を大事にしてたんだなと感じさせる、
幸夫とは真逆の存在として描かれる。
とはいえ、この陽一も、幸夫とは別の意味で欠落のある人物であるのだが。
それすらもいとおしく思えるような描かれ方がされており、
このふたりの関係性も
どこか奇妙なおかしみと人間ぽさを感じさせる。

家族の大黒柱として見たときに
陽一のような部分だけでも、幸せにはなれないし
幸夫のような部分を持った人だったら、神経が疲弊してしまうだろう。
どこかで許しあうしかないし
ちょっとずつ、かわろうとしている

陽一を演じたのは
『竹原ピストル』という人らしい。
最初だれ?って思ったんだけど
CМで『よぉーそこのわけーの』って歌ってる人って聞いたらぴんときて、思い出した。
男性のファンも多い人らしい、なんだかわかるような気がする。


聖の青春

May 17 [Wed], 2017, 22:12
『聖の青春』を観た。
実在した棋士、村山聖の半生を描いた映画。
松山ケンイチが20キロ増量して役作りしたことでも話題になった。
村山は、幼いころに、ネフローゼを発症し、そのため、闘病生活を余儀なくされたが、
それをきっかけに父親から将棋をすすめられ、のめりこんでいく。
異例の速さで、昇進していくのだが・・。

映画では、将棋にのめりこむあまり、他のことには無頓着で
歯に衣きせぬ物言いや、時に常軌を逸した行動をする姿も描かれていたが、
不思議と、いろんな人に愛される人だったようである。
まわりがどうしてもほうっておけない危うさと
誰も寄せ付けない硬質な核と
の両面を持っていた人のように思う。
ちょっとシャイでお茶目な面も持ち合わせているのが面白かった。

羽生善治とのやりとりは特に印象に残る。
言葉少なで、短い会話の中に
将棋に対するふたりの思いのすべてがつまっている。


羽生さんを演じたのは、東出昌大だが、
将棋を指す指が、繊細で美しくて、色っぽい。
ちょっと首をかしげる姿など、すごく本人のしぐさに似ている。

静かなる天才と型破りな怪童、
タイプの違う二人が深いところで、共鳴しあい、影響を受けあっていることが、伝わってくる。




何者

May 16 [Tue], 2017, 0:22
イタイとか
さむいとか、
きもいとか、
こいつ絶対やばいとか・・・
昔はあんまり使われなかったそういう言葉が世の中で普通に使われだしてから、
もうかなりの年月が経つんだろうな。。。
気がつけば、
もう、その四つの言葉にあてはまりたくなくて、みんな必死。・・それこそが本当に痛いことなのに。
『何者』という映画も本当につらい映画だった。
軽い気持ちで見てたら、えらい目にあった。あー怖かった。
いい映画は何度でも見たくなるけど、
この映画は、いい映画で俳優さんたちも素敵だったのに、怖すぎてもう見たくない。
最近、「怖かった」という感想が多い私。
語彙が少なすぎてすみません。
なにかにおびえてるというか、ビビってる。

この映画の登場人物たちもそれぞれに違う闇と痛さを抱えていて、
それを冷静に傍観し、分析してるかに見えるタクトが実は一番痛々しい。

それにしても、今の就活って本当になんていうかすごいんですね。
今の時代の若者に生まれてなくて良かった・・と自分で自分を納得させてみたり。








あなたのことはそれほど

May 06 [Sat], 2017, 23:22

ドラマを見て、興味を持ち原作を大人買い。
はまった。
妻の出産中に、ダブル不倫する男女とその周辺の話と言ってしまえば、みもふたもないけれど
まあそんな話である。
サイテーのクズだなあ。。とは思うけれど、
・・・思うけれど、そこに至るまでの心情やら言い訳やら、その後につづくごたごたがすごく細かく描かれていて面白いのである。
ことの善悪だけではおさまりきれない・・男女の愚かしさや情けなさ。
みっともなさ、かっこわるさ、
こんなにも、面倒で苦しい状況に、自らを追い込んでいってしまったふたりを作者は、冷たく突き放すように描いていく。これから結婚しようという人は読まない方がいいかもしれないが、有島くんのようなタイプの人には、読ませてたっぷり怖がらせた方がいいかもしれない。

ただ、困ったことに確かに、見た目がかっこいいのは、涼太より有島だ。
そして、また困ったことに、妙に可愛げがあるのも有島である。
それから、もう一つ、有島の褒めるべきは、麗華を嫁に選んだこと。
こんないい女を悲しませるようなことをなぜしてしまうんだろうね。有島くん。
それと、もうひとり登場人物で好きなキャラは香子さん。
あんないい友人がいるのに、その友人の優しさを裏切るようなまねをなぜしてしまうんだろうね。美都ちゃん。
答えは本人たちにもわからないのかもしれない。





カルテット

April 01 [Sat], 2017, 23:58
少し前だが、ドラマ『カルテット』が終わった。
終わってしまってさびしい。カルテットロスである。
久々に良いドラマ。
ありとキリギリスのありではなく、
キリギリスとして生きる・・・いや正確にはありにもきりぎりすにもなりきれない人たちの
ポリシーが
開き直りが
ふざけすぎて、いかれすぎて、素敵だった。このドラマ、高橋一生にばかり目がいく。
あかんあかんと思いつつ目で追う。
ダメ男に惹かれるのはよくない癖である。
だめじゃないけど。

しかし、
人が
欠落のある人に惹かれるのはどうしてだろうね。
その欠落を自分が埋めたいから?いやいや、そんな不遜なこと思ってはいないだろう。
『ドーナツホール』・・・ホールも含めてドーナツ。
欠落も含めて自分なんだという覚悟。
やったろうぜ・・みたいな居直り。
が気持ちいい。


三月の終わりに

March 28 [Tue], 2017, 19:34
二十八年度が終わり、
もうすぐ、新年度を迎える。
この時期になると、保育園では
誰が異動するか、
誰が異動してくるか。
誰が、どのクラスの担任になるか
複数担任の場合、誰と組むのか。
職員は、あけてもくれてもその話題に集中する。

そしてまだ、それは発表されていない。
今年、私は前年度にひきつづき、ゼロ歳児の担当だった。
ゼロ歳児というのは、つくづく奥深い。
言葉がない分、密着度も強く、
この子たちと、離れるのがすごくつらい。

P R
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