相棒‐劇場版U‐ 警視庁占拠!特命係の一番長い夜

December 31 [Fri], 2010, 20:53
【監督:和泉聖治 脚本:輿水泰弘/戸田山雅司 出演:水谷豊/及川光博/岸部一徳/神保悟志/小西真奈美/小澤征悦 公式HP:http://www.aibou-movie.jp/

 警視庁本部で突如起きた人質籠城事件――人質は、田丸警視総監、長谷川副総監をはじめとした各部の部長ら幹部12名である。
 犯人の動機は不明。
 杉下右京は相棒の神戸尊と共に籠城事件の情報をいち早く察し、奇策に転じるが、しかし、事件は思わぬ方向へと突き進むこととなる。

 2008年の劇場版Tからスピンオフを経て、相棒10周年という記念の年に本作が製作された。
 時系列としてはseason8とseason9の間であり、劇場公開の前日には《予兆》というタイトルで繋がる物語が放送されるという構造を持っている。
 また、前作の外へ外へと向かっていく物語とは真逆に、物語は密室劇に等しく、巨大な組織という名の《箱》の中で多角的に変容していく。
 何が正義で、何が悪なのか。
 追いつめられた人間は、一体どこに何を見るのか。
 己の中の《正義》を問われた時、警察官は何を選ぶのか。
 立場によって正義が変わるという、ソレはひとつの答えであるのかもしれない。
 しかし、それだけでは終われないモノがそこにある。
 非常に物語としての密度が高く、冒頭からラストまで、美しいスピード感と適度な緊張感、そして緻密さを堪能させてもらえた。
 二転三転していく『真相』の果てにあるモノを追いかける時、行動原理、動機、信条が大切な軸となるのだが、主要レギュラー陣だけでなく、犯人やその関係者を含め、絶妙かつ繊細な揺れと説得力が存在している。
 またseason7のラストから新相棒となった神戸尊と杉下右京の関係性はもとより、右京と小野田官房長、神戸と大河内監察官といったベクトルでの関係が興味深く、感情の行き来、ぶつかり合い、すれ違い、それぞれがその身に抱く《正義》が丁寧に描き出されていた。
 杉下右京は天才であり、自身の絶対正義を貫く人間でもある。その軸はいっぺんたりともぶれず、彼の《正義》は、いつだって、どんなときだって、他者の思惑や情による融通なんてものとは懸け離れている。
 しかし、普通の人は揺らぐのだ。
 その『普通』の感覚が、神戸尊であったり、大河内春樹であったり、あるいは捜査一課の面々であったりするのだろう。
 中でも特命係として右京の《相棒》として彼の行動を間近で見、自分なりの正義と向き合うこととなった神戸尊の揺らぎは大きかったように思え、彼のめずらしいカオを見れたように思える。
 また、ヒロインとして登場する小西真奈美演ずる朝比奈圭子のスタンスも秀逸だ。
 彼女の凛とした佇まいと内に秘めた想いから来る眼差しは、彼女だからこそ生み出せるものだろう。
 三つのラブストーリーであると語られたとおり、複雑に絡み合った心理描写の濃密さは素晴らしく、静でありながら動の物語として観るものを引きつける。
 そこへ相乗効果として、ベテラン俳優陣による腹芸と、一筋縄ではいかない空気感が、画面に無言の迫力を生み出していた。
 もちろん、重苦しいだけではない。
 キュートでユーモラスなシーンが巧妙に配置されており、思わずくすりと笑いが漏れてしまうシーンは、貴重なもうひとつの相棒として魅せてくれている。
 確立された世界観、確立されながらも互いに影響を与えながら変化していく登場人物たちならではの、このやりとりは必見。

 非常に細かなところまで行き届いた演出や、練り込まれた台詞まわし、鮮やかなシーン展開も含め、作り手と演者の愛と思い入れがダイレクトに伝わってくる濃密な人間ドラマ。
 《相棒》であるが故に帰着する物語は、重く、愛しく、面白い。
 この映画は《相棒》という世界の集大成であり、ひとつのターニングポイントであり、できることなら二度三度と観たいと思わせてくれた。
  • URL:http://yaplog.jp/takatsuki/archive/624
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