ポツネン氏の庭 〜The spot garden of Mr.Potsunen〜

December 30 [Wed], 2009, 23:59
【作・演出・出演:小林賢太郎 公式HP:http://potsunen.net/

 『cube garden』という立方体を重ねたようなライブハウス、その匣の中で紡がれた物語たち。
 匣の中の箱庭、その中に作られた一坪の囲い。
 札幌でのみ行われたこの小さなパフォーマンスライブは、小さなワゴン(稼働式収納BOX)とともにやってきた。
 大掛かりなセットもなく、スクリーンに大写しとなるような映像もなく、けれど確かにそこにひとつの世界が構築される。
 小林賢太郎はやはり魔術師。
 近距離から見るその所作は、指の先まで美しい。
 そして、ただそこにいるだけで目を引き、完全な暗転をさせずに次の演目に移る際の水を飲む行為にすら笑いが起こる。
 紛うかたなきエンターティナー。
 
 以下、ネタバレを含む感想を印象に残っているものをメインにやや散文的に綴る。
 
 
 冒頭、挨拶しようとする彼に何かが追いかけてくる。
 音に合わせて動く彼のあとを追いかけてくる姿のない《何か》は、何かを与えられて食べてはまたほしいとねだって追いかけてくる。
 その後の攻防はもう、何が何やらわからない。
 射る、刺す、投げる、食す。
 視覚情報がないけれどジェスチャーで何が起きたかは分かる、けれど決定的な情報が掛けているから不思議でたまらない。
 見る側のイメージを弄ぶこの『何か』とは、いったい何なのだろう。気になって仕方がない存在だ。
 そんな入りから、一坪の話が進む。
 手作りのボードに張り付けられる、どんな形をしていても一坪は一坪、のマグネット。
 魔術師の手によって、ヨットになり、日本になり、時計を掛けて時計台になり、変幻自在にクロはキャンパスに物語を紡ぐ。
 一坪の国の一坪の王様。王様ひとり、国民ひとり、合計ひとり。そんな彼が手本にしたいと日本を目指して航海をする、そのたびの続きはまた後ほど、という引きは『ポツネン』シリーズの常套、かもしれない。
 ボードの次には紙芝居も待っている。

 『雨降って地固まる二十一の工程』『風が吹けば桶屋が儲かる四十七の工程』『ミイラ取りがミイラになる百の工程』の一連のシリーズには、繰り返される妙、笑い、そういったものが詰め込まれている。
 そのうえ、ぽつりと呟くコメントがツボに入る。
 『どのみち』というたった四文字の言葉がこれほどぐっとくることもないかもしれない。
 紙芝居は『白のキャンパス』にも変わる。
 白髪で色白で白い着物を着たおじいさんとおばあさんと白い犬のポチがどうなったのか非常に気になるところなのだが、ソレはそれとして。
 その日初めて舞台で試してくれた技に観客席から感嘆のため息が漏れた。
 白い紙の上の黒い円、印刷された円は穴になり、穴は再び黒い円になる、この仕掛けに対するどよめきを受けて『気持ちいい』と笑う賢太郎氏は可愛らしい。
 語り口という点では、秘密をささやかれて溜め込まれた壺、演目『ひみつぼ』は落語の軽快さ、小噺風なのがいい。
 何かを相手に診察している『小さなお医者さん』の演目は、視点の細やかさが素晴らしい。
 胃カメラは、胃まで降りて行って携帯カメラで撮影。
 血圧計は、カフが自転車の空気入れタイプのモノで対応。
 ちょっとお年を召した先生の、ちょっととぼけた会話がたまらなくステキなのだが、異常値をさらっと口にしながらそれが正常だと言い放たれるあたり、この患者の素性が気になるところ。
 冒頭の《何か》同様、見えないから気になる存在その2、だ。
 
 まるでオムニバスドラマを見ているか、ノンシリーズの短編集を堪能させてもらっているかのような舞台の中で、最も心惹かれたのは【魂師(たまし)】だ。
 ちょっとしたマジックを取り混ぜて、物の魂を取り扱う業者の話。
 電子レンジが動かないのは、電子レンジの魂が抜けてしまったから。
 この発想はもちろん、それに対処するプロの業者がとても身近に感じさせる存在として作り込まれているうえに、それだけでお話しが一本できてしまうストーリー性と奥行きを見せてくれた。
 魂師のカトウさんは好青年。
 ぜひとも彼の別のお話しを見てみたい。
 それほどにお気に入り。

 何もかもが楽しくて、どこか気軽でアットホームな雰囲気もあって、舞台に立つ賢太郎さんも、舞台を見るわたしたちも、すぐ傍で『楽しさ』をやり取りをしている、そんな空気が幸せだった。
  • URL:http://yaplog.jp/takatsuki/archive/596
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ひかる
>とんぼがえり様
コメントありがとうございました!
そしてお返事が遅くなってしまってホントにすみませんっっ!!
当ブログが少しでも『共有感』を提供でき、光栄ですv

ポツネン氏の庭、幸いにも前作と今作の両方を見ることができたのですが、ちょっとだけヴァージョンアップした感じなんですよね。
SPOTもおそらくほぼ同じで、『ヴァージョンアップ』で来るのだと予想してますv
舞台は生もので、DVDにもならないとなると、もうじたじたしてしまいますよね。
私は北海道民なので、東京など都会でばかり公演予定があがるとジタバタしてしまいます。
レビューサイトを巡って、見た気になったりも良くしてます。
だから、『九州のことも考えて』のお気持ち、よくわかります(><)!!
九州⇔北海道は遠いですよねぇ……
でも、今回のポツネン氏の庭、わたしが行った回は道外組が半数を占めておりまして、冬の北海道に飛んでくるファンの方の愛の深さにしみじみ感動しておりました。

血圧の解釈、面白いモノを有難うございます〜
おお、看護学生さんなんですね。
知ってるとよりニヤリとできる、そういうのって観劇する時の楽しみ方の幅が広がるってことなのでステキですv


改めまして、当ブログにお越しくださり、コメントまで残してくださってありがとうございました!
のんびりまたーり運営ですが、また遊びに来てやってくださいませv
February 23 [Wed], 2011, 22:16
とんぼがえり
こんにちは。初めまして。当方、小林賢太郎大好きの大学3年生です。今度またSPOTが再演されるということで、なんとなく、ネットサーフィン(ていうのかしら?)してました。初めて北海道だけでポツネンやるってなった2009年は驚きました。「観れないじゃん!」と。九州のことも考えて、と。しかし、このブログを見る限り、2010年の前進となるネタだったみたいですね。羨ましいけど、2010年版は自分も観れたので、共有できてる安心感が湧きました。ありがとうございます。ところで、共有ということで1つ。実は、医者のコントで血圧測るところで、ポツネンさん大分 高い数値を「まあ、普通だね」と言ってましたが、あれは多分、血圧を測った動物の身長の高さを表現したかったのではないかと思います。というのも、身長の高い動物(キリンとか)は、あんなに脳が高いところにあるのに、それでも脳まで血液を送らなければならないので、必然的に血液を送る力(血圧)が高くなるんです。劇中で、謎の動物の足、大分太かったみたいですよね?だから、ポツネンさんはきっと、ゴジラみたいのが来たことを伝えたかったんじゃないかしら?と思うんです。ポツネンさん、動物好きそうでしたし。といっても、普通に人間としての血圧しか見ないなら、やっぱり300とか400とかの血圧は異常値ですよね。だから、別にどっちともとれる感じです。ただ、知ってたらより一層ニヤッとできることなので、長々と書いてしまいました。スミマセンm(_ _)m
ちなみに、デカい水銀計振り回してるのもニヤッとしました。当方看護学生故。

では、失礼しました。
February 06 [Sun], 2011, 22:01
P R
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