【作:垣川光太郎 角川書店(文庫) 本体価格514円】
角川ホラー大賞受賞作である【夜市】を含む二本の中編で構成された一冊。
文章には装飾が少なく、どちらかと言えばシンプルな構図なのだが、それがひとつの味となっている。
[夜市]
:幼い頃、彼は夜市で弟と引き換えに野球の才能を買った。けれどその罪悪感は時を経る毎に重く強くのしかかる。そして今夜、彼は高校時代の友人とともに再び夜市に足を踏み入れた――
切ないような、苦しくなるような、空虚さに満ちた心が描きだされた作品。
ホラーというよりはどこかファンタジーに近い感触だが、何とも言えない寂寥感と歪みを堪能することができる。
グロテスクさはどこにもなく、あったとしてもそれは綴られる物語に必要なエッセンスのひとつでしかない。
罪の意識に縛られた少年・祐司の内面描写は、他者視点であるがゆえに丁寧で現実的で繊細で、そしてより虚ろさと儚さが強調される。
遠い日の記憶に捕らわれた彼の意図するものと夜市が持つ『絶対のルール』、このふたつがキレイに噛みあい、ラストシーンへと美しい繋がりを見せる。
いくつかのエピソード、いくつかの意味ありげな台詞、いくつかの問答、いくつかの行動、それらがひとつの結論をもって解き明かされる瞬間がすばらしい。
[風の古道]
:友人とともに足を踏み入れた場所は、神と異形と人ならざるものが往来する位相の違う場所だった。
好奇心によって道を外れ、友人を取り戻すという使命感によって道を辿るカズキと、彼と関わる『永久放浪者』と呼ばれる青年との交流は、千切れた断片のエピソードをひとつの物語に変えていく。
この過程が面白い。
罪悪感がそこにあり、定めの糸がそこにあり、乱すこのとのできない理がそこにあり、物語全体を諦観と希望といたわりとが混ざり合った不思議な空気で包んでいる。
死という概念、違う位相の違う価値観、ひどく現実的な穢れや悪意、そう行ったものもまた、少年の前に提示されていくのだが、思いの他エグさは感じない。
どちらかといえば、鳥肌が立つような恐怖の代わりに、切ないような、何とも言えないざわめきがある。
そして異界の構築、描写、その手腕にうなる。
角川ホラー大賞受賞作である【夜市】を含む二本の中編で構成された一冊。
文章には装飾が少なく、どちらかと言えばシンプルな構図なのだが、それがひとつの味となっている。
[夜市]
:幼い頃、彼は夜市で弟と引き換えに野球の才能を買った。けれどその罪悪感は時を経る毎に重く強くのしかかる。そして今夜、彼は高校時代の友人とともに再び夜市に足を踏み入れた――
切ないような、苦しくなるような、空虚さに満ちた心が描きだされた作品。
ホラーというよりはどこかファンタジーに近い感触だが、何とも言えない寂寥感と歪みを堪能することができる。
グロテスクさはどこにもなく、あったとしてもそれは綴られる物語に必要なエッセンスのひとつでしかない。
罪の意識に縛られた少年・祐司の内面描写は、他者視点であるがゆえに丁寧で現実的で繊細で、そしてより虚ろさと儚さが強調される。
遠い日の記憶に捕らわれた彼の意図するものと夜市が持つ『絶対のルール』、このふたつがキレイに噛みあい、ラストシーンへと美しい繋がりを見せる。
いくつかのエピソード、いくつかの意味ありげな台詞、いくつかの問答、いくつかの行動、それらがひとつの結論をもって解き明かされる瞬間がすばらしい。
[風の古道]
:友人とともに足を踏み入れた場所は、神と異形と人ならざるものが往来する位相の違う場所だった。
好奇心によって道を外れ、友人を取り戻すという使命感によって道を辿るカズキと、彼と関わる『永久放浪者』と呼ばれる青年との交流は、千切れた断片のエピソードをひとつの物語に変えていく。
この過程が面白い。
罪悪感がそこにあり、定めの糸がそこにあり、乱すこのとのできない理がそこにあり、物語全体を諦観と希望といたわりとが混ざり合った不思議な空気で包んでいる。
死という概念、違う位相の違う価値観、ひどく現実的な穢れや悪意、そう行ったものもまた、少年の前に提示されていくのだが、思いの他エグさは感じない。
どちらかといえば、鳥肌が立つような恐怖の代わりに、切ないような、何とも言えないざわめきがある。
そして異界の構築、描写、その手腕にうなる。
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