おでん、食べる? お団子もあるよ

November 08 [Mon], 2010, 7:54
『昨夜、私は彼女のことを考えていた。いつもよくやるように、頭の中で、実際に彼女の前にいるよりも気安く、彼女相手に話をしていた。だが突然、私は自分に言った。でも彼女は死んでるのだ……』
 これは……小説?mbt『たしかに、長い間つづけて、彼女から遠く離れて暮していることは屡々あった。だが、少年時代から、自分の一日の収穫を彼女に報告して、自分一人の胸の中で、彼女に悲しみや悦びを与にして貰うことが習慣になっていた。そこで昨夜もそれをしていたのだが、突然、彼女が死んでしまっていることを思い出したのだった』
 テーブルに移動し読み進むうち、ジッドが妻のマドレーヌについて回想風に書いた日記であることがわかった。解説を見ると、彼の死後に公開されたらしい。mbtシューズ ずっとさつきの帰りを待っていたのだろうか。知らなかったとはいえ可哀想なことをした。さつきは身体を屈め、彼の目の高さに姿勢を合わせる。
「おでん、食べる? お団子もあるよ」
 恥ずかしそうに頬を染める少年に、さつきは家にあがるよう促した。
「え? あ、はい! 僕、もうおなかペコペコで」
 もう一度悠太の身体から空腹の音がして、二人は目を合わせて笑いあった。
 いつから待っていたのかと訊くと、ほんの少しです――と答える。
 大人が利用するコーヒー専門店で、ぼくは自分の担当だった人と向かい合っていた。
 店内はアンティークな造りで、天鵞絨のソファーのクッションはやわらかく、照明は暗かった。ほろ苦いコーヒーの香りが、白い湯気と一緒にぼくらの鼻先をかすめてゆく。MBTの靴 佐々木さんは、縁にターコイズブルーの模様がある上品なカップを手にぼくを見つめ、懐かしそうにつぶやいた。
「はじめてきみに会ったとき、あの小説を本当に中学生が書いたのかと驚いたよ。
 同時に、この子でなければ書けなかったかもしれないと納得した。あれは多分、あのときの――十四歳のきみにしか書けなかった小説だ。それを本にする仕事に関われたことを、私は今も非常に幸運なことだったと思っている」



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