植物工場は農業の救世主になれるか?(産経新聞)

May 31 [Mon], 2010, 17:53
 密閉された静かな空間で栽培される野菜。自然環境の影響を受けず、人工の光や空調で野菜を育てる「植物工場」に参入する企業が増えてきた。LED(発光ダイオード)や蓄電池、制御機器といった先端技術が、「自然相手の肉体労働」という農業のイメージを一変させようとしている。背景には国内の農業の担い手不足、世界的な食糧危機の深刻化があるようだ。

 「農業ってこんなスマートなものかと、若い人が思ってもらえるようにするのが私たちの夢」。制御機器メーカー、IDEC(大阪市淀川区)の●木俊之会長兼社長はそう語った。

 同社は旧富山事業所(富山市)の敷地内に、約320平方メートルのビニールハウスを建て、昨年9月からイチゴ栽培の実証実験を始めた。産業現場向けに約30年間の実績があるLED照明、水質浄化に有効な独自のGALF(超微細気泡発生技術)を内部に設置した。

 LEDは波長制御で病害虫を防ぎ、明るさを調節することで富山のような冬に日照の少ない土地でもイチゴを栽培できる。GALFは育成速度や味の向上が期待できる。それらを同社が得意とする自動制御システムで一元管理するため、現地では社員数人のみが常駐。データを大阪の本社で直接集めている。

 この冬は例年にない大雪だったにもかかわらず、今春、甘いイチゴを大量に収穫できた。●木社長は「もう1年ほど研究を進め、平成24年度までに事業化したい」と意気込む。

 一方、三菱化学は今年1月、貨物船用のコンテナ(長さ約12・2メートル、幅約2・4メートル、高さ約2・9メートル)で野菜を育てる「コンテナ野菜工場」を発売した。内部に設置された9段の棚で、1日50株程度のレタスや小松菜をつくる。LEDなどの照明と空調、水循環設備をそなえ、砂漠や寒冷地でも農業ができる。

 また、同コンテナは三洋電機から太陽電池と、高容量のリチウムイオン電池を組み合わせたシステムの供給を受けている。太陽電池で発電し、リチウムイオン電池に蓄電することで、消費電力の節約につながる。

 現在は電力会社の商用電源との併用だが、「将来的には太陽光のみによる稼働も視野に入れている」(三菱化学)。そうなれば、電力網の整っていない地域での栽培も可能だ。

 9月ごろには第1号機をカタールに納入する予定で、1基5千万〜1億円という価格にもかかわらず、中東を中心に問い合わせが相次いでいるという。同社では「異常気象や食糧危機が問題になる中、新しい農業を可能にする手段として国内外で展開したい」としている。

 「天候や水不足など自然に左右されるこれまでの農業と違い、植物工場なら内部ですべてを管理し、最適化できる」。そう語るのは、植物工場の研究を20年以上続けている大阪府立大大学院の村瀬治比古教授。

 植物工場には、生産設備の高コスト化▽現状で栽培できるものが葉物野菜に限られる▽専門技術の人材が少ない−など課題も。しかし、村瀬教授は「日本の農業が直面する危機に比べれば、技術改良や人材育成で解決できるこれらの課題は小さい」と強調する。

 農業の担い手は高齢化する一方で、いったん荒れた農地を再生させることは容易ではない。日本の食料自給率は41%(20年度、カロリーベース)にとどまり、打開策が見つからないのが現状だ。

 「植物工場なら農薬をまったく使わないので安全で、作物の価格も安定する。制御システムの中に伝統的な農業の経験・知識を組み込むことも可能」。植物工場は農業の救世主になれるか。企業のビジネスチャンスもそこにある。(牛島要平)

【関連記事】
「トマト工場」本格展開 溶液栽培で収穫2倍、三菱樹脂グループ
「まぼろしのタマネギ」普及へ 23日に産地の田尻で即売会
「半農生活」農園選びが大切 指導者・距離・広さ、ポイント
家庭菜園 成長止めるな クボタなど講習会 顧客つなぎ止め
「葉っぱはキャベツ、根は大根?」 キャベコン展示に人気
「はやぶさ」帰還へ

<タクシー強盗>銀行の2副支店長を逮捕 兵庫県警(毎日新聞)
<在日米軍再編>普天間移設 鳩山首相、あす2度目の訪沖 知事らに政府方針説明(毎日新聞)
「飲み放題」が消える日 WHO「酒規制」が仕掛けた爆弾(J-CASTニュース)
熱海の岡本ホテル、市2度差し押さえ (産経新聞)
「親族優先」初適用 亡夫の角膜移植へ(産経新聞)
  • URL:http://yaplog.jp/t9q3mex3/archive/17
Comment
小文字 太字 斜体 下線 取り消し線 左寄せ 中央揃え 右寄せ テキストカラー 絵文字 プレビューON/OFF

不正な自動コメント投稿を防ぐため、チェックボックスにチェックをしてください。

利用規約に同意
 X 
禁止事項とご注意
※本名・メールアドレス・住所・電話番号など、個人が特定できる情報の入力は行わないでください。
「ヤプログ!利用規約 第9条 禁止事項」に該当するコメントは禁止します。
「ヤプログ!利用規約」に同意の上、コメントを送信してください。