告白 

September 13 [Mon], 2010, 15:57
ある日何気なく電車の窓から外を眺めていると、少年が電車に向かって大きく手を振っていた。
良くありがちな光景にその時は気にも留めなかったが、その少年はその日から毎日、雨の日も風の日も、そして雪の日も電車に向かって手を振っていた。
少年の手を振る姿が脳裏に焼きつくようになり、いても立ってもいられず、俺は少年に会いに行くことにした。

いつも少年が立っている場所に向かってみると、少年の姿があった。
俺は少年に近づき声をかけた。

「なぜ君は毎日電車に向かって手を振っているんだい?」

少年は答えた。

「うん。あの電車にお父さんが乗ってるんだ。お母さんが教えてくれたんだ。」

「毎日お父さんに手を振っていたのかい?お父さんが大好きなんだね。」

「うん。でも僕・・・、お父さんと会ったことがないんだ」

「え?お父さんに会ったことがない?じゃあ、なぜ毎日電車に手を振っているんだい?」

「だって毎日手を振っていればお父さんが会いに来てくれると思ってさ。僕、お父さんに会いたいんだ。」

「・・・・・」

「あれ?もしかしておじさんが僕のお父さんなの?ねぇ、お父さんなの?」

「・・・・・」

「お父さん!お父さんなの!」

「・・・あぁ、お、お父さんだよ・・・。元気にしてたかい?待たせて悪かったな。」



それから少年は電車に手を振るのをやめた。そして俺と少年の奇妙な関係が始まった。



それから俺は、月に一度少年の父親として少年に会うようになった。
少年は俺と会うと目を輝かせながら色々な話をしてくれた。
学校のこと。友達のこと。母親のこと。ドッジボールが好きなこと、ニンジンが嫌いなこと。そして俺のこと。
ただ、俺はこんな関係がいつまでも続くはずがないと、いつも少年の話を上の空で聞いていた。
少年の卒業式も入学式も運動会も、仕事が忙しいと言って行くことはなかった。
いや、行きたくても行くことができなかったのだ。

ある日約束をしていた時間になっても少年は現れなかった。
これでもう終わりかと思い、これも仕方がない事だと考えていた。
こんな関係が続くわけがない。これでいいんだ。これで良かったんだ。そう自分に言い聞かせた。

しばらくすると向こうの方から別な少年が現れた。少年は俺にこう言った。

「おじちゃん、あの子ね、事故にあって入院しちゃったよ。」

あの子が事故にあった?入院している?俺は全身から血の気が引いた。
その子に病院を聞いて、とにかく病院を捜した。気が動転してわけも分からず走り回った。

やっと病院を見つけ、中に入ろうとした時、足が止まった。

「そうだ、俺はここに入れる資格のある人間じゃない。入ったって少年には会えないんだ・・・」

何もできない自分に腹が立った。事故にあって苦しんでいる少年に会えないなんて・・・。

俺は暗くなるのを待った。夜、病院に忍び込むのだ。
少年の様子が知りたい。せめて顔だけでも見たい。

暗くなり何とか病院に忍び込んで少年のいる部屋のドアを開けた。

少年が俺に気づいて大きな声で叫んだ。

「お父さん!来てくれたんだね!」

「しー、大きな声を出すな。大丈夫か?」

「うん。ごめんね。大丈夫だよ。僕、お父さんに早く会いたくて赤信号を渡っちゃったんだ。」
「そうしたら車にぶつかっちゃったんだ。ごめんね、お父さん。約束の時間に行けなくて」

俺は涙が止まらなかった。少年はなぜ俺が泣いているのか分からず「ごめんね」を繰り返した。


少年は無事退院し、また月に一度少年を会うようになった。不思議とこんな関係が数年続いた。


少年は素直に育っていった。俺の自慢の息子になっていった。
そして少年はお母さんの病気を治したいと医学部を卒業し医者になった。

そんなある日、少年が「お父さんに会わせたい人がいる」と連絡をしてきた。

ついにあの少年も結婚するのか。お父さんに会いたいと電車に向かって毎日手を振っていた少年が・・・。
でも俺は結婚式に出席することはできない。なぜなら・・・。


俺は覚悟を決めた。今度会ったら少年に本当の事を言おう。こんなことを続けていたらいつか少年を傷つけてしまう。
俺は少年の喜ぶ顔が見たくてできる限りのことはやった。少年は俺に力を与えてくれた。もう十分だろう。

少年と少年が連れてきた女性を前に俺は話を切り出した。

「実はな・・・、父さん実は・・・お前の本当の・・・」

少年とのこれまでの思い出が脳裏をかすめ、これが少年との最後だと思うと俺は胸が詰まって言葉が出てこなかった。

すると少年が話し始めた。

「父さん。俺、父さんにずっと黙っていたことがあるんだ。」
「俺、実は父さんの本当の子じゃないんだ。今まで騙しててごめん。」

「え?あ?え??」

少年は続けて隣の女性にこう言った。

「な、本当だろ。俺の言った通りだろ。こんなアホなやついるんだぜ。ウケるべ」
「うちのとうちゃん知ってるだろ?」「このオッサン誰?って話じゃね?きゃはははー」

すると隣の女性が言った。

「きゃはははー。このオッサンアホじゃね?どんだけだよ。死ぬの?きゃはははー」
「ニートと医者の区別もつかねーんだろ、このオッサン。ウケるー」
「つーかさ、本当のこと言わなきゃもっと金取れたんじゃね?きゃはははー、うぅー、腹いてー!!!」




「うそーーーーーん」

握手をしてもらえなかった人 

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