星の見えない村のプラネタリウムに捨てられ、彗星にちなんだ名前をもつ銀髪の双子。ひとりは手品師に、ひとりは星の語り部になり、遠く離れた場所で暮らしていく。
それぞれに運命から与えられた役割を果たしながら…。
しずかなお話です。冬の高原で膝をかかえてひとりきりで星を見上げているような、シンとしたさびしさ。
いしいさんの小説は「麦ふみクーチェ」「ぶらんこ乗り」と3作品を読みましたが、登場人物はいつもどこか欠けていたり、ほんの少し普通の人とバランスが崩れています。そしてお互いを静かに大切にしながら、淡々と暮らしています。
泣き男のプラネタリウム、タットルの熊、テンペルの手品、老女の手紙。
そんなものを通して、はるか遠くから送られてくる大切な手紙をもらったような、温かくも悲しい気持ちで心がいっぱいになるやさしい作品です。書かれている内容は必ずしも楽しいことばかりではなく、どうしようもなく悲しい出来事もあるのですが、それでも読後感はほんわりと温かい。
少し前に、世界最高性能のプラネタリウム「メガスター」をたった一人で作り上げた大平貴之さんが話題になりました。
大平さんは「肉眼で見えない星が夜空に奥行きを作っている」と考え、前例のない100万個の恒星をうつしだすプラネタリウムを作ったとか。
⇒Tech総研 恒星数500万のプラネタリウムを一人で創った大平貴之
見えない星が空に奥行きを作るように、人は見えない6本目の指を後ろにまわして密かにつなぎあっている。
プラネタリウムも手品も虚構のことであり、それでも人は幸せにだまされています。
「ひょっとしたら、より多くだまされるほど、ひとってしあわせなんじゃないだろうか」
タットルの言葉がひっそりと胸に落ちてきます。
とても久しぶりに、プラネタリウムを訪れたくなりました
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