親知らずの痛み - Pain Of Wisdom Tooth 

October 07 [Sun], 2007, 10:34
親知らずの痛み - Pain Of Wisdom Tooth

概説

顔の中心から奥のほうへ数えて8番目の歯を親知らずといいます。この歯は生える時期が極端に遅く、平均寿命が短かった昔では親が死ぬ頃になって生えたことからこのように名づけられました。正しくは、智歯(ちし)または第3大臼歯(だいきゅうし)といいます。実際には、20歳前後に生えることが多いのですが、40歳代になってやっと生えることもあります。
 歯は生物の進化とともに退化する傾向があり、そのために大きさは大臼歯の中では最も小さく、形も萎縮したような変形のバリエーションが多くみられます。人によっては、左右上下そろえば4本ある親知らずのうちまったくない人から、全部ある人まで様々です。

症状

この歯は、生える時期が遅いだけでなく生える力も弱いので、なかなか完全には生えません。とくに下顎では、斜めになったり、真横に寝ていたりする歯(水平智歯)が多く、上顎では歯並びからはずれて外側を向いた歯が多いようです。そのために、咀嚼(そしゃく)に関与することが少ないといえます。

《親知らずが引き起こすトラブル》
[1]むし歯
 親知らずは最も奥まったところに生えるために、歯ブラシによる清掃が行いにくく、自身がむし歯になります。さらに、生え方が悪いと手前の歯との間に食べ物が残りやすく、手前の歯にもむし歯を作ります。

[2]完全に生えず(半埋伏)に中途半端な状態が長く続くために、周囲の歯肉を刺激し続け、歯肉が痛んだり、腫れたりします(智歯周囲炎)。智歯周囲炎は数カ月から半年ぐらいの周期で再発を繰り返すことが多くなります。

[3]とくに水平埋伏の状態や斜めに生える歯では、前のほうの歯を後方から押すために、前歯の歯並びを乱すことがあります。

[4]上下の親知らずが正しく噛み合わさっていないと、顎の関節に負担をかけます。

[5]向かい合う相手の親知らずが生えないと、伸びだして頬や歯肉を傷つけてしまいます。

標準治療

[1]智歯周囲炎の場合は、抗生物質や消炎鎮痛剤を内服します。
[2]歯肉を切除して萌出をうながします。
[3]抜歯します。

《抜歯の時期》
 痛いから一刻も早く抜いてほしいといっても、一般的には炎症が強い時には抜歯をしないものです。それは、炎症が強い時に、さらに抜歯という傷を加えると、痛みや腫れがますます強くなり、しかもそれが長期にひかなくなるからです。場合によっては、炎症が拡大して扁桃周囲炎を起こしかねません。また、口が開きにくくなったり(開口障害)、顔面が腫れあがることもあります。したがって、抗生物質や鎮痛消炎剤を投与して、炎症を抑えてから抜歯します。

生活上の注意

智歯周囲炎で歯肉が腫れるたびに消毒と内服薬に頼って、一時しのぎにしている人が多いようです。再発を繰り返す親知らずは、抜歯してもらう勇気を出して下さい。歯肉が強く腫れている場合には、当日の抜歯を避けて症状を治めてからにします。また、難しい抜歯(難抜歯)で時間がかかる場合も、急患で駆け込んだ当日の抜歯はできないことがあります。したがって、抜歯しなければならない親知らずを抱えている人は、症状が強く出ていない時に、ゆとりをもって治療に臨むことです。難抜歯後は、抜歯創の消毒や抜糸など、術後も何度か通院しなければならなくなりますから、予定しておく必要があります。
 どうしても抜きたくないならば、内服薬で症状を治めた後、むし歯や歯肉を腫らさないように徹底的に歯磨きを行う決意と実行力が問われます。

むし歯 - Dental Caries 

October 07 [Sun], 2007, 10:27
むし歯 - Dental Caries

概説

今からおよそ4,000年も前に、むし歯は歯が口の中にいる虫に食べられて穴があいたとする学説が唱えられ、以後ずっと信じられてきました。しかし、18世紀にそのような考え方は否定され、1890年になってやっと細菌が口の中で食べかすから酸をつくりだし、その酸で歯が溶けたとする考え方が出てきました。この考え方が基礎となって、今では次のような4つの条件がそろった場合にむし歯になると考えられています。

[1]むし歯になりやすい歯の質、歯並び、噛み合わせになっている。
[2]むし歯菌が旺盛な活動をしている。
[3]歯につきやすい甘いもの(糖質)を多く摂取する食習慣がある。
[4]プラーク(歯垢〈しこう〉、歯くそ)が歯に付着したままになっている時間が長い。

 逆のいい方をすると、これらの条件のどれか1つでも欠けると、むし歯はできないといえます。

症状

口の中には、常在菌が少ない人でも120種、多い人では350種以上も存在しています。その中のミュータンスなど数種類のむし歯菌が歯の表面に付着しているところに、砂糖などの糖質がつくと、菌体内多糖という糊(のり)のようにべたつくものをつくりだして歯に強力に付着して、繁殖を始めます。この状態をプラークといい、歯磨きをしていない状態の歯の表面を爪や楊枝で掻き落とすとチーズのような粘着物として目で容易に見ることができます。
 このプラークの中で砂糖や炭水化物が発酵し、酸が産生され、蓄えられます。そして、この酸によって硬く石灰化していた歯質が脱灰(だっかい)されてしまいます。初期の脱灰は、歯の最表層よりも、内層に数十ミクロン入ったところのほうが強く起こり、歯の内部に浸透した光が複雑に屈折反射するために白濁(はくだく)した様相(白斑〈はくはん〉)を呈しています。
 この白斑のレベルであれば、ていねいな歯磨きを続けることで唾液の生理的作用によって再石灰化が期待できます。このように脱灰と再石灰化が繰り返しつつ起こりながら、再石灰化よりも脱灰が多く起これば、その結果としてむし歯が発生することになります。

診断

1)第1段階:C0
 歯の表面のエナメル質の内部に、脱灰の初期の白斑が生じます。肉眼的にはむし歯の穴が認められないものです。再石灰化により、正常に復する可能性があります。

2)第2段階:C1
 むし歯がエナメル質の中にとどまっていますが、再石灰化は期待できない状態です。エナメル質には神経がきていないので自覚症状がなく、なかなか存在に気づきません。

3)第3段階:C2
 エナメル質の内側は象牙質という組織です。この部分にまでむし歯が進むと、神経(歯髄〈しずい〉)とつながっているために種々の自覚症状が出てきます。すなわち、冷水や甘いものがしみることがあります。強く噛むと痛むこともあります。象牙質はエナメル質よりもはるかに軟らかいので、ここまで達したむし歯は急速に拡大進行します。

4)第4段階:C3
 C2を放置しますと、むし歯が象牙質の深層に達し、熱いものがしみたり、睡眠中にひどく痛んだりしてきます。これは神経に明らかな炎症が起きているので、歯髄(神経)をとります。この状態でも我慢強く、鎮痛剤の連用などで乗りきると、痛まなくなることがあります。これは、治ったのではなく、神経が死んでしまい痛みを感じなくなったのです。C1以降では、むし歯が放っておいて自然に治ることはありません。

5)第5段階:C4
 歯の崩壊がさらに進むと、ほとんど根だけ残った状態になります。この段階までくると、抜歯しか方法がないことが多いようです。また、たとえ根を治療して残しても、神経が死んだあるいは除去した歯は数年たつと枯れ木のようにもろくなり、折れたり割れたりして抜歯に至ることが多くなります。

標準治療

1)第1段階
[問診と診査]
 痛みがあるかないか。痛むならば、いつどのように痛むかを詳しく聞きます。歯や顎(あご)をみるだけではなく、噛み合わせ状態や顎の動きも調べます。診査には多くの場合レントゲン撮影をします。レントゲン撮影は、顎全体を1枚のフィルムで撮影するパノラマ撮影と個々の歯を撮影するデンタル撮影があります。歯髄(神経)の健康状態を調べるには、歯に微小な電流を流す歯髄診断器を用いることがあります。

2)第2段階
[軟化象牙質の除去]
 エナメル質はほとんどすべてが無機質ですから、むし歯の脱灰によって溶け去ります。しかし、象牙質は約30%の有機質と水分でできているので、脱灰後も軟らかい基質が残ることになります。これを軟化象牙質といい、その中には引き続き脱灰を進行させる酸や細菌が含まれています。したがって、むし歯の進行を防止するために、歯を削ったり、刃物でかきとって除去します。その際に、歯髄が出てきたり、出そうな状態になると、歯髄を鎮静させ、保護するための貼薬やセメントを置いて覆髄(ふくずい:覆罩〈ふくとう〉)処置をします。これらの処置には、しばしば表面麻酔や浸潤麻酔を行います。

3)第3段階
[充填(じゅうてん)またはクラウンの装着]
 比較的むし歯が小さければ、充填処置をします。その場合に、残った歯質が欠けないように、あるいはむし歯になりやすいところを予防的に充填するために、また充填したものが外れないように歯を削ります。これを窩洞(かどう)形成といいます。むし歯が大きければ、全体を覆うクラウンをかぶせるので、それに適した形に歯を削ります。これを支台歯(しだいし)形成といいます。このように、小さいと思っていたむし歯でも、大きめに削る必要があります。クラウンは、必ず歯型をとって歯科技工士が作りますが、充填は型を採る場合と直接つめるものがあります。

生活上の注意

[1]食事や間食は規則正しくとって、砂糖を控えます。
[2]硬い食品をよく噛んで食べれば、唾液の自浄作用が期待できます。
[3]歯ブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロスなどを適材適所に使って、正しい歯磨きをします。
[4]フッ素化合物を歯科医院で歯面に塗布してもらいます。
[5]フッ素、デキストラナーゼ、クロルヘキシジンなどの薬剤の入った歯磨剤を使います。
[6]むし歯になりやすい部分をあらかじめ予防充填しておきます。

歯根嚢胞 - Radicular Cyst 

October 07 [Sun], 2007, 10:20
歯根嚢胞 - Radicular Cyst

概説

体の中に病的に作られた袋状のものを嚢胞と呼び、歯の炎症が原因で歯根の先にできた嚢胞を歯根嚢胞といいます。袋の中は液体や半液体状のものがたまっています。原因は、むし歯によることが多く、進行すると歯の神経が壊死(えし)し顎骨中の根の先に嚢胞が形成されます。そのほか過去に根管治療(根の治療)を行っていても細菌感染を起こしできる場合もあります。歯根嚢胞は顎にできる嚢胞の中で最も頻度が高く、ほとんどが上顎の前歯部に発生します(図1:上顎前歯部の歯根嚢胞)。

症状

痛みなどの症状がなく、多くの場合歯科医院でレントゲンを撮影した際に偶然発見されます。ただし二次的に感染すると、歯の痛みや咬合時痛(咬んで痛い)、歯肉の腫れや痛みを伴い、歯肉に瘻孔(ろうこう:膿の出口)をつくることもあります。放置すると、徐々に大きくなって歯並びの異常や顎の骨をとかし、顎骨の膨隆、歯根の吸収、歯の動揺がみられます。

診断

X線写真で、原因歯の根尖部に境界のはっきりした円形の透過像(黒い像)がみられます。原因歯は、神経が死んでいるので電気歯髄検査で反応がありません。試験穿刺(嚢胞に針を刺す)により黄色い液や膿などの内容液を認めます。大きな嚢胞では、CTやMRIが有用です。

標準治療

嚢胞が小さい場合には、根管治療(根の中の死んだ神経や汚れた歯質を除去し、消毒薬を入れる)のみで治癒することもありますが、根管治療で病巣が治らなかったり嚢胞が大きい場合には嚢胞の摘出術が必要です。原因歯は歯の動揺が著しい時や嚢胞の大きさが根の長さの2/3以上などの場合には抜歯しますが、抜歯しないで嚢胞内にある根の先だけ切除する歯根端切除術を行い歯を保存することもあります。嚢胞内に含まれる原因歯の隣接歯も神経が死んでいる場合もあるので、電気歯髄検査を行い反応がなければ根管治療を行うなど、原因歯と同様な処置を行います。
 手術は局所麻酔で可能ですが、嚢胞が大きい場合には入院して全身麻酔で行うこともあります。手術は、歯肉を切開し嚢胞周囲の顎の骨を除去し、嚢胞をとり出し、歯肉を元に戻して縫合します。嚢胞を摘出した後の骨欠損部は、少しずつ骨が新生されますが、大きい場合には他の部位の骨を移植したり、人工材料で埋める場合もあります。完全に骨ができるまでには数カ月かかりますので、レントゲン撮影し経過をみる必要があります。手術の翌日は手術部位の消毒をし、通常1週間後に抜糸を行います。

生活上の注意

原因歯を抜歯し嚢胞が完全に除去されれば再発はありません。歯を保存した場合には再発することもありますが、極めてまれです。原因歯だけ抜歯し嚢胞を除去しないと、顎骨内に嚢胞が残留します。これを残留嚢胞といいます。

歯髄炎 - Pulpitis 

October 07 [Sun], 2007, 9:56
歯髄炎 - Pulpitis

概説

むし歯がある程度進むと、自覚症状が出てきます。冷たいもの、熱いもの、甘いもの、酸っぱいものなどを口にした時にしみて痛みを覚えます。これは、歯科健診でC2(齲蝕〈うしょく〉2度)と判定されるレベルですから、たいていの人が経験しています。さらにむし歯が進みC3となると、むし歯の穴が大きくなり、そこに入り込んだ食べ物などによってずっと激しい痛みが誘発されます。また、C2の治療を受けた後でも、冷たいものなどで引き起こされる痛みがより激しく、しかも持続します。
 夜間に歯が痛くて目が覚めるということもあります。これは、歯の内部にある歯髄(しずい:俗にいう歯の神経)が炎症を起こしているからでてくる症状です。最近までは、この炎症は口腔内の細菌が歯髄に感染して炎症が起こるとされていましたが、最近の研究は細菌によって起こったものではなく、神経そのものが炎症を起こしたと考えられています。歯髄炎を起こしても、忙しいからという理由などで治療を受けずに鎮痛薬を服用し続けるうちに、ある時、痛まなくなって治ったようにみえることがあります。そして、さらに放置してしまいがちですが、歯髄が完全に壊死(えし)してもはや痛みを感じなくなったのです。そしてさらにやっかいな歯根膜炎に進行します。

症状

歯髄は歯の中心に存在する軟らかい組織で、神経、血管、象牙芽(ぞうげが)細胞、歯髄細胞、その他の細胞、コラーゲン線維、細胞間質など多くのもので構成された組織です。萌出(ほうしゅつ)した後でも、歯は歯髄の血管から栄養をもらい、歯髄は歯の硬いエナメル質と象牙質で守られています。
 むし歯ができて、歯髄を守る歯質の壁が薄くなり、刺激が伝わってくると、象牙芽細胞が活動を始めます。すなわち、象牙芽細胞が第2象牙質を歯の内部につくり、象牙質の厚みを増していきます。その目的のために歯髄細胞はどんどん分化して、第2象牙質をつくるべく象牙芽細胞をつくります。必要に応じて、さらに歯質を厚くするように透明象牙質と呼ばれる組織をつくることもあります。
 これらの生理的な作用がスムーズに行われるには豊富な血液の流れが必要であり、歯根の先端にあいている根尖孔(こんせんこう)から細い動脈が歯髄内部に入り込み、細分化し細静脈網を形成して再び根尖孔から静脈となって還流していきます。
 一方、歯髄の神経は痛みを伝える重要な働きをしていますが、これにはA線維とC線維の2種類あります。A線維は髄鞘(ずいしょう)という鞘(さや)をもち、痛みをすばやく伝えます。C線維は鞘をもたず、痛みをゆっくり伝えます。A線維はチクッと突き刺さるような痛みと、温かいというような穏やかな感覚を伝えます。それに対してC線維は、ずきずきうずくような痛みを伝えます。神経の伝達にかかわる物質に神経ペプチドがあり、正常な状態でも歯髄中に存在していますが、何らかの刺激がきっかけとなって歯髄中にどんどん放出されると神経細胞が興奮し、炎症が引き起こされ、歯髄炎独特のずきずきした激痛が持続することになります。

標準治療

歯髄は、歯のコントロールタワーのような重要な役割をしていることから、「歯の命」という呼び方をされています。歯髄のもつ防衛作用の点からだけでも存在価値が高いので、若年者では薬剤によって保存処置を講じますが、結果が思わしくなければ歯髄を一部あるいは全部除去することになります。高齢者では、歯髄の中身が退行変性していることもありますから、はじめから残さないほうがよいこともあります。
 全部除去する治療法は、俗に神経をとるといういい方をしていますが、抜髄(ばつずい)処置とか根管(こんかん)治療と呼ばれるものです。

そのステップは次のようになります。

[1]歯に麻酔を打つ。
[2]歯に穴をあけて、歯髄を引き抜く。
[3]歯髄を入れていた歯の空洞(歯髄腔)を消毒する。
[4]歯髄腔を密閉する。

これらの操作は、1日で終わることもあれば、数回の通院が必要なこともあります。

生活上の注意

予後が不良になることがあります。1つは、口腔内で行う抜髄処置を完全に無菌的に行うことが難しく、知らないうちに歯髄腔内を感染させていたという場合です。一般には数年後に、噛むと痛む、歯が浮いたような感じがするという症状を訴えてきます。これは、細菌が根尖孔から歯の外部に出て、歯根膜炎を起こしていると思われます。このような場合には感染根管治療を行います。もう1つは、やはり数年後に歯が割れてしまうことがあります。同じ形でも、生木と枯れ木では強さが違うように、生きている歯と抜髄して死んだ歯では強さが違うのです。そのために、抜髄した歯は、内部を補強処置して全体を金属冠などでかぶせておくことが勧められます。

歯根膜炎/根尖性歯周炎 - Periodontitis/Apical Periodontitis 

October 07 [Sun], 2007, 9:53
歯根膜炎/根尖性歯周炎 - Periodontitis/Apical Periodontitis

概説

むし歯を治したり、歯髄炎の処置をした歯が、ずっと後になってから食物を噛むと痛むとか、歯が浮いた感じがするといった症状が出てくることがあります。深いむし歯の処置では、その時には歯髄(しずい:神経)をとらずに治していても、すでにその時点で象牙質が口腔内の細菌に感染して、後になって歯髄が自然死していることがあります。あるいは、歯髄炎の処置として歯髄をとってしまっていても、歯髄を入れていた歯の内部の空間(歯髄腔、根管)の形態が複雑なために、徹底的に歯髄除去ができず、一部の感染した歯髄が残ってしまうことがあります。これらの場合には、死んだ歯髄(歯髄壊死〈えし〉、歯髄壊疽〈えそ〉)が異物となって、歯の根の先の穴(根尖孔、根端孔〈こんたんこう〉)から歯の外へ出て、歯根膜や歯槽骨に炎症性の病変を起こすのです。

症状

急性の場合には、食物を噛んだり、歯をこつこつたたくと痛みがひどく、咀嚼(そしゃく)が不自由で歯が浮いた感じがします。歯根の付近の歯肉が赤く腫れていて、押さえるとうずくように痛みます。慢性の場合は自覚症状はあまり強くはないのですが、歯が浮いた感じや噛む時に痛みが出ます。まれには本人は自覚症状がまったくなく、レントゲンを撮った時に見つかることもあります。

診断

●第1段階 : 歯根膜
 歯根膜は歯根の表面のセメント質と歯を支える歯槽骨を結ぶ線維性の結合組織です。食物を噛んだりして歯に力がかかった時に、このコラーゲン線維が圧縮や引っ張られて、歯ざわりや歯ごたえを感じます。ところが、根尖組織に壊死、感染した歯髄がでてくると、生体の防御反応が起こります。すなわち、組織の細胞からヒスタミンが放出され、それによって歯根膜に分布する毛細血管は充血し、好中球やマクロファージが浸出してきて、炎症反応が起こります。このようにして歯根膜に炎症が起こると、力がかかった時に痛みや歯が浮く感じとなります。

●第2段階 : 歯槽骨の吸収
 次いで炎症反応の過程でリンパ球が出てきて、歯根膜に存在する破骨細胞を活性化する因子となり、マクロファージがつくるプロスタグランジンなどとともに、根尖周囲の歯槽骨を破壊、吸収していきます。

●第3段階 : 骨膜下から粘膜へ炎症の拡大
 炎症が拡大して表層に近づくと、自発痛もひどくなり、歯肉の発赤や腫脹(しゅちょう)が起こり、さらに進行すると膿(うみ)で腫れてきます(根尖膿瘍〈こんせんのうよう〉)。

標準治療

[1]抗生物質、鎮痛消炎剤の投与を数日行います。

[2]感染根管治療として、感染象牙質と感染して残っている歯髄を除去します。さらに低刺激の薬剤で消毒、貼薬します。

[3]噛み合わせを少し低めて安静にするために、歯を少し削ります。

[4]さし歯などが施してあり、通常の感染根管治療が難しい場合には、根尖周囲組織を外科的に切除(歯根端切除)します。その場合も、入院は不要です。

《鑑別診断》
 歯の根に相当する部分の歯肉が腫れるのは、いわゆる歯周病でも起こります(歯周膿瘍〈のうよう〉)。根尖膿瘍では歯周ポケットは深くなっていませんから、プローブを挿入すればわかります。また。レントゲン写真をとれば、透過像(陰影)が根尖部に限定してあれば根尖性歯周炎であり、歯根の側面にまで広がっていれば歯周病です。ただし、同時に両方罹患(りかん)しているケースもあります。この場合は、根尖性歯周炎の治療を優先させます。

生活上の注意

身体の防御反応の結果によっては、炎症が歯根膜から骨の中に達し、しかも広く拡大してしまうことがあるので注意が必要です。急性の場合は次の機転をたどります。

[1]歯槽骨炎
 局所リンパ節の腫脹、発熱を伴うことがあります。多くは根尖部の骨膜下、粘膜下に膿瘍を形成しますが、まれには膿瘍を形成しないことがあります。膿瘍を形成すれば切開して、排膿(はいのう)させます。

[2]顎骨炎(がくこつえん)
 歯槽骨炎から炎症が拡大したもので、急性顎骨骨髄炎の症状が出ます。すなわち、疼痛(とうつう)が激痛となり、発熱し、頸部リンパ節が腫脹します。原因となった歯は、打診痛が激烈となり、ぐらつきも出てきます。原因歯以外の周辺隣接歯にも打診に対する過敏症が出てきます。これを弓倉症状(ゆみくらしょうじょう)といいます。また、歯肉の異常感覚や知覚麻痺が起こるワンサン(Vincent)症候に、やがて顎骨は腐骨(ふこつ)となり、膿は内歯瘻(ろう)、外歯瘻を形成して流出してきます。

慢性の場合には、次のものがあります。

[1]歯根肉芽腫(しこんにくげしゅ)
 根尖部の慢性膿瘍が長年のうちに肉芽組織に置き換わったものです。周囲を線維性の皮膜で覆われた限局性のものです。初期のものはレントゲン写真で境界がはっきりとわかりますが、骨の新生が起こってくると境界が不明瞭になります。

[2]歯根嚢胞(しこんのうほう)
 歯根肉芽腫が炎症の継続によって、水腫、粘液化、脂肪変性と進み、やがて嚢胞を形成します。この嚢胞は顎骨内発生し、歯に由来する嚢胞の中で最も多く、レントゲン写真で簡単にわかりますから小指頭大以下で見つかります。しかし、歯根嚢胞は自然治癒することがなく、放置すれば周囲の骨を破壊しながら成長していくので、顎骨が薄い骨しか残らないほどにまで巨大化するものがあります。大きなものは術後感染の危険もあるので、数日の入院で手術します。
P R
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