晴れた日の庭で 1 

2006年10月07日(土) 11時22分
「ルーク」
呼びかけられ、ルークはその声にビクリ、と竦み上がる。
軟禁時代にはあまり寄り付かなかった裏庭の一角。
墨やら何やらの消耗品の置き場になっている小屋のそのまた裏。
絶対に人が来ないところへと逃げて隠れた場所だった。
部屋には逃げ込めなかった。

誰かが来るかもしれないから。

漸く人の気配が…人の目が無いところに来れてほっと一息ついた、そんなときにその声は聞こえた。
苦手な声だ。昔はただ自分に何も期待していない、無関心さゆえに嫌いだった。
今は違う。
あれこれと自分のやる事に口を出し、去っていった元使用人以上に厳しく、
かつ多岐に渡って口出しをしてくる。
それは煩わしくはあったが、それ以上に自分にそこまで干渉してもらう必要が無いようにも思えて、
複雑な気分になる。

自分は「ルーク」ではないのに。
その事実を知ってからも、この家の人間は自分のことを「ルーク」と呼ぶ。
ほかに呼びようもないのも事実だが、その裏では「本物のルーク様」が囁かれている。
今日、こんなところまで逃げてきたのは、使用人たちの囁きを耳にしたからだ。
その上聞いていた事に気づかれてしまった。
だから、部屋には戻れない。
戻れば恐らく彼らは恐縮しきって、首にはなりはしないかと恐れて、縮こまって謝罪に来るのだろう。
その裏で「本物ではない」と思われながら。

「ルーク」

もう一度、呼ばれた。
かすかに声に苛立ちが混じっている。
恐る恐る振り返る。
声の通り眉間に皺を寄せた、ファブレ公爵がそこにいた。


自宅の中だと言うのに一分の空きもない堂々とした威厳を持ち、毅然と立つその姿にルークは少しばかりの居心地の悪さを感じる。
自分を何者かを知る前は、そんな「父」に対しウザイだの、突っかかっていたりも出来たが、
今はそんな事もできない。
してしまって、拒絶されてしまったら…怖い。
おどおどとした態度になってしまったのか、ファブレ公爵の眉間の皺がますます深まる。
「この人」は「息子」が情けない姿をするのが嫌いなのだ。
ある意味感情を素直に出してくれるので、裏でしか本音を言ってくれない使用人達よりも信頼は置けたが。
「何て顔をしている、ファブレ公爵家の人間ならばもっと毅然とした態度を取らんか。
 それにこの時間は家庭教師が来ている筈だが、勉強はどうした。
 今まで7年間勉学をおろそかにしてきたのだ、跡取りとして相応しくなれるよう努力しろ」
頭ごなしの一喝。
疑問の形を取っているものの、ルークの返事は一つも待っていない。
彼の中で、「ルークの返事」は既に決まっているのだ。
おそらく、ここで「はい」と言えば満足なのだろう。
だが、「偽者」として肯定する事も否定する事もできず、
何も言えず俯いたルークに、ファブレ公爵の雰囲気がますます怒りに傾く。
それが無性に怖くて、ルークは肩を震わせた。
と、ファブレ公爵の怒気が急速に無くなっていく。
立ち去ったのかと思いながら、僅かに視線を向けてみると、まだそこに公爵はいた。
が、少し様子がおかしい。
あちこちに視線を向け、戸惑うように、まるで不安に駆られた子供のように落ち着きが無い。
こんなファブレ公爵を見るのは初めてで、ルークはつい顔を上げてまじまじと眺めてしまった。
必死に(あのファブレ公爵が!)それこそ本当に必死に何かを探すように、
助けを求めるようにうろたえる「父親」に、ルークは自分から声をかけようかと一瞬悩む。
何かにうろたえていたファブレ公爵は、漸くルークがこちらを見ているのに気が付いたのか、
慌てて居住まいを但し、(それを恥と取ったのか少しばかり顔を赤くしながら)
「な、…泣くな」
消え入りそうなかすれた声で言った。

は?

一瞬何を言われたのか分からず、だが頭の中で噛み砕いて、漸く自分が泣いている事に気が付いた。
泣いているといっても、少しばかり涙がにじんでいるだけだが、
顔を向かい合わせる事すら数えるほどだった今までの関係から言えば、ファブレ公爵の前で泣くのは初めてかもしれなかった。
「本当のルーク」であるアッシュは子供のころから自尊心の高いおよそ子供らしくない子供だったと聞くし、人前で、尊敬する父の前で泣くような性格には見えない。
「誘拐されて帰ってきた」自分であれば最初のうちくらい泣いていたかもしれないが、そのころには予言によって死ぬ事が決まっていた息子の事はガイに一任して目を逸らしてきたはずだし…
…まあ、つまり、予想外かつ初めての出来事にうろたえたと言う事なのだろうが…
「…だ、だからだな。これはお前のことを思っていっているのであって、何も無体を強いようとかそういうことではない!!」
上擦った声も真っ赤にした顔も、それこそ目じりにうっすらとにじんだ涙(!)も、ルークこそ初めて目にするものだ。
こんなに多彩な表現が出来る人だとは思わなかった、などと思いながら少し笑った。
目に見えてほっとした様子の「父親」に、ルークはほんの少し楽になった。


初めてのブログ。 

2005年07月30日(土) 18時07分
初めまして!と、いうことでブログを始めてみたいと思います。
…まだ良く分かってないですけどね。
暫くの間は日記代わりかと思われますが。
そのうちちゃんとサイトを立ち上げる予定。
それではよろしくお願いします。
P R
2006年10月
« 前の月  |  次の月 »
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
カテゴリアーカイブ

ブログランキングranQ
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:sumimati
読者になる
Yapme!一覧
読者になる