はじめに。 

2007年04月22日(日) 14時00分
■歩・由季が管理する『創作新撰組』土沖リレー小説ブログです。

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□本館
骰子-TOSHI-*歩
星堕ちる最果て*由季

1*男・土方歳三の受難 

2007年04月22日(日) 16時30分
会津藩御預 新選組副長 土方歳三。
鬼の副長と名立たる彼だが、実はかなりの苦労人でもあった。


男・土方歳三の受難


「総司ーーーーーっ!!!」

今日も屯所内では土方の怒声が響き渡る。
今日も、ということはほぼ毎日の話なのだ。
初めは彼の怒声に驚いてびくついていた隊士達も
今ではすっかり慣れてしまい、「またか」と声を洩らす程度だ。


幼い頃から悪戯好きだった沖田総司は二十歳を過ぎたというのに
子供の頃のように今も変わらず、困らせることが大好きな男だ。
困らせるといっても土方歳三のみであるが。
意地悪はその人への愛情表現とよく言われるが・・
彼の場合はきっと土方へ対しての愛情表現なのだろう。

一方、土方歳三はというと、惚れた弱みというものか
総司にいくら困らされても怒りはするが許してしまう。
自分至上主義である上に、総司至上主義である彼は、
総司には甘く、尻に敷かれっぱなしの男であった。
言い換えれば、彼はへたれ男である。


今朝はどんな理由での怒声だったのか。
対した事ではない。が、土方にとってはかなりキツイ出来事で。
仕事をこなしている時に総司が部屋に入ってきたと思えば、
土方と背中合わせになるように座り、珍しく大人しくしている。
いつもこうならばいいのに・・とか思いながら土方は仕事を続けた。

しかし暫くして総司の暖かな体温を感じて、眠気が襲ってきた。
仕事疲れもあり、少しうつらうつらしていると
思いっきり背後から髪を引っ張られた。
あろうことか筆を持っていたために
書状は無残にも墨で汚れきってしまっている。
そして思いっきり髪を引っ張られた痛さに土方は蹲った。

「まだ終わらないんですかぁ!!ずーっと待ってるのに!!」

そう言い残してぷんぷん怒って土方の部屋を後にする。
どうやら構ってもらえなかったことに腹を立ててしまったようだ。
なんとも難しい恋人であるが、
そんな恋人を一瞬でも嫌いになれない己にふと苦笑を浮かべたのだった。


--

「ぁあ!?総司、て…めっ…」
しかし、ふと我に返り先ほどまで総司の居た場所を見遣っても、その姿は無かった。
確かに仕事で待たせてはいたが、腹を立ててあんなコトをするのはお門違いではないか。ぐねん、と蛇がうねっている書状を眺めては土方は深く深くそして大きな溜息を吐き出した。
(あの時点で構ってやれねぇって言わなかった俺が悪ぃのか…?)
とことん総司には甘い男である。傍目から見れば総司の方が悪いだろうに、どうも罪を擦り付けないらしい。彼が思っている通りまさに“育て方を間違えている”というか、とことん甘過ぎるのだ。
頭を掻きつつ、やり直しを余儀なくされた汚れた紙。
もう一度、今すぐ書き直すべきか否か。




……


そんなもの、答えは決まっている。
筆を紙の上に放り投げて、文机に手を着くと重たい腰を持ち上げた。
どちらの方向に行ったのかは判らないが、とにかく総司を追いかける。
ただし、物凄く他人の目を気にする男故、まさか走って追いかける訳にもいかない。ゆっくりどっしりと“副長らしい”歩き方を意識しつつとりあえず、隊士詰所へと向かった。春日和の午後、その部屋の縁でくつろいでいる隊士の一人や二人位いるだろう。


「おい…」
襖を開けたその先にいたのは、上から永倉新八、原田左之助、藤堂平助の何時もながらの漫才三人組だった。


--

2*男・土方歳三の受難 

2007年04月30日(月) 19時47分
「・・・え?土方さん!?」

副長が来るのは珍しいことで漫才三人組は驚いた顔で土方を見上げる。
三人は将棋をして楽しんでいる最中であった。

「総司来てないか?」

「「「・・・」」」

またか・・と三人は顔を見合わせ笑みが零れる。
困らせる総司と困らされている土方の二人を観察するのは
三人組にとっては笑いの種だったりするのだ。

「来てないっすよ」
「それよりも早く書状仕上げないと日が暮れますよ?」

その言葉に土方は一瞬言動が止まったのだが、
彼の中で優先順位というものがある。
仕事を取るか、総司を探すか、そんな事考えなくてもすぐ分かる。

「いや・・総司を探すのが先決。居ねぇなら邪魔したな」

総司がいないことを確認して土方は部屋から出て行く。
そして、足音が聞こえなくなった頃、藤堂は総司の名を呼んだ。


「・・・総司、もう大丈夫だよ」

名前を呼ばれると、押入れの襖が開く。
下の段に小さく蹲り、光が零れる襖から外を覗き込むように顔を出した。

「土方さん、行きました?」
「あぁ」

総司は自分の目で確認してから暗い押入れから出てきた。

「ふぅ・・土方さん追いかけてくるなんて思わなくて・・」
「総司・・今日は何をしたの?」
「え。えっと・・」


半笑いする総司をよそに三人組の目は興味津々だった。
そして先程あった出来事を三人に話すと噴出すように笑い転げた。


「〜〜っ土方さんって本当に総司には弱いなぁ」
「っていうか鬼の副長が髪引っ張られて蹲る姿を想像しただけで笑いが・・っ」

外に響く程の大笑いに先程と同じ足音に気が付かなかったのか。
再び、彼らの部屋の襖が開かれた。


「言い忘れてた・・今日の巡察だ・・が・・・」

襖を開けた瞬間、
土方の目には総司と目が合い、一瞬緊迫した空気が流れる。
そして、ばっと駆け出して反対側の襖を開け、総司が部屋を出て行く。
総司の余りの素早さに負けず追いかけようと部屋に入ろうとした時、
襖の淵で足を引っ掛けて、土方は胴体からおもいっきり畳に転倒した。


--

--
ズバッッタァアン


何事か、と皆がビックリする程の音が辺りに響く。それが一層大きく聞こえたのは、後に誰も音を発さなかったからだ。


「「「……」」」

「、…」

「「「…………」」」

ぷ、


最初に音を零したのは左之助だったか平助だったか永倉だったか。

「「ぶは、っクっ!!アハハハ!!!!」」

とりわけ思慮深くない前者二人(左之助&平助)は大笑い。
自分がつまずいて扱けた、という失態の所為で土方も怒鳴るに怒鳴れない。起き上がろうと床に手を着いたままの状態で、眉間に皺を寄せている。
5、4、3、…永倉が心の中で小さく数を刻んでいる。
それは怒り爆発までの残り時間。
なんせ土方は短気で損気の鬼の副長なのだから。

と爆発する寸前。

「ところで土方サン、総司を追いかけなくてイイんスか?」
「、あ、ああ……と、そうだ。今夜の巡察は八番隊と…五番隊だったが、…五番隊の組長と隊士が腹痛で倒れちまったから代わりに十番隊が巡察に行くように。ついでに二番隊は今夜は詰めとけ」
非道なお言葉に三人とも言葉を発することはできない。
「「「……、、、!!!!」」」
が、土方の目が恐くて恐くて何も言えない。しかし、『嫌だ』と言いたい気持ちも強かったが土方が最後に五寸釘を刺した。
「文句は受けつけねぇ、切腹だ」
「「「ひっっでぇええ!!!」」」


勿論、宣言通りに文句は受けつけない。


しゃんと起き上がると、土方は三人を振り返ることなくその場を後にした。
少しばかり苛々していたが、腹いせも済んだ所為なのか口元には若干余裕の笑みが刻まれる。





さて、総司は何処ぞへ行ったのか。
三人組を構っていた所為で完璧にその姿を見失ってしまった。

「総司ぃ!!!!」
大きな声でその名を叫んでみるものの、当人から返事は無い。
シーンとまた屯所内が静まり返っている。




―――…



バッターン、パッシャーン、ドターン



再度の煩い音。


「あっちぃ!!!」


「……」
土方の振り返る先に居た人物は、先ほどの土方ほどではないが派手に転んだ小姓市村。
虫の居所の悪い土方の足元に転がる湯飲み。
そして彼の裾元には濃い染みが広がっている。
そう、淹れ立ての熱い茶が土方にぶっ掛かったのだ。


---

3*男・土方歳三の受難 

2007年06月10日(日) 20時36分
「てめぇ・・市村ぁ!!」

虫の居所が悪い土方は今までになく不機嫌で、
茶を掛けられたことに機嫌はますます悪くなるばかり。

「すっ、すみません!」

ひたすら謝り続ける市村だったが、
今日ばかりは許してもらえないようだ。
鬼のような形相で睨み続ける土方に市村は半泣き状態だ。

「・・くそっ。今日はもう茶はいらねぇ」

ぶつぶつと不満を言い続ける土方に
市村はもう一度だけ謝り、部屋を後にした。



「総司は見つからねぇし・・厄日か?今日は」

茶を零された部分が赤くなり少しだが腫れている。
軽い火傷だろうが、やはり痛みがないわけではない。

「痛ぇ・・山崎君に診てもらうか・・」




---



「山崎さーん、こんにちはw」

あれから数刻して、
逃げ回っていた総司が山崎の前に姿を現した。

「何処まで行かれたのですか?」
「えへへw清水の方まで逃げてました。」

にこにこと楽しそうに話を続ける総司。
手には何処かの店で購入したであろう菓子。
ひとつずつ眺めるように菓子を見て美味そうに頬張る。

「先程、副長がこちらに来ましたよ」
「土方さん、ここにも来たのですか?諦めないですねぇ・・」

ぽりぽりと菓子を食べながら総司は会話を続ける。
山崎はいつも通りの落ち着いた表情であった。

「いいえ。探しに来たのではなくて、診察に」
「え。どうしてですか?土方さん、今日元気でしたよ?」

きょとん・・として驚く総司が山崎に聞き返した。

「火傷されたそうで」
「え」
「市村にお茶を零されて足に・・」

山崎が気が付いた頃には総司の姿はなかった。
火傷をした、という言葉しか頭に入らず、咄嗟に出て行ったようだ。

「・・・」


心配で堪らなかったのだろう。

どんなに土方を困らせようが、
総司にとっては一番の最愛の人なのだ。




---



---


部屋の前まで夢中で走ったまではよかった。
「…」
しかしながら、土方の怪我は元を正せば総司の所為で。だとすれば“合わせる顔が無い”。
暫く部屋の前で逡巡を繰り返す。
入るべきか否か。
怒られることは確実。




「……」
小さく溜息をついたのは土方。
悪戯小僧の悪戯によって書き直しをしなければいけない書状は、小僧が逃亡している間に完璧に書き直すことができていた。
障子の陰に見える総司と思しき人物。
馬鹿だなぁ
とか
阿呆だなぁとか

あとは、可愛いなぁ…とか。
思うと脹脛の痛みなど忘れてしまう。
馬鹿で阿呆はそんなことで痛みすらも忘れてしまう土方だろうか。


「総司」
影が小さく反応するのがわかる。腕が動いてほんの数秒で障子が開く、かと思ったが持ち上げられた腕は再び下ろされてしまったらしい。
「総司」
何度でも呼ぶ。
再三逃げられた。
「また、鬼ごっこして遊びてぇのか?」
「……土方さん、怒ってる」
「怒ってねぇ」
総司の声音は“拗ねている”に部類されるものだろうか。
土方は、思わず噴出しそうになるのを堪えて答えた。
信じてる信じてないが半々なのが、少ししか開かない障子から伺い知れるが土方は諦めない。
文机に膝をついて身体を傾け、ただただ総司を見つめた。狭い障子の隙間からの総司の目線と土方の目線とがぶつかった。
お互い動かぬまま、どちらかが――総司が降参するまでの我慢比べ。
鬼ごっこの次は我慢比べをし始める青年に
(飽きない奴だ)
などと思って笑いを噛み殺した。
「怪我、大丈夫ですか?」
「あ?ンなもん平気だ。ちょっと茶が零れただけだろ?」
「書状は?」
「とっくの昔に書き直せたぞ」
「…怒ってますか?」
「……さぁな」
「………」
目線が逸らされたが、逃げられるという考えは今の土方には思い浮かばない。
目が逸らされたまま、総司の唇が小さく動く。







ごめんなさい


と。

耳に届くか届かないかの小さな声。
「ああ」

良く出来ました。
先に動いたのは土方。立ち上がって総司の元へと向かう。総司はその場に立ち尽くしたままだが、土方を見つめて次の行動を考えている。
逃げるか
逃げないか。



逃げる前に障子が開かれ、総司の腕は掴まれた。
これで選択肢は一つしかなくなったわけだ。



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4*男・土方歳三の受難 

2007年07月10日(火) 20時20分
腕を掴まれたら、身体は自然に土方の方へ抱きこまれる。
自分の身体とは違う大きな身体に抱き締められていると、
何故だか分からないが、すごく素直になれるような気がした。

暖かさと優しさと愛しさ・・
他にも土方のみにしか感じない感情はたくさんあるはず。

ちゅ。

自分から口付けるなんて滅多にないけれど、
今日は私から接吻したい気分だった。
ゆっくりと唇を離して見上げると、彼は驚いた表情で私を見ていた。

「・・どうした?」
「・・・//」

何をしても許してくれる彼。私にしか見せない表情。
愛しく抱き締めてくれる逞しい腕。

私一人を愛してくれることがとても嬉しい。
これからも私だけを愛してほしいんだ。
だから私の欲しいのは貴方だけ。

総司は土方の袖をぎゅっと掴んだ。

「やけに今日は積極的だな・・」

だって・・大好きな貴方に愛されたいから。

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