過去ログ2

March 27 [Sun], 2016, 16:50
雨音が響いてますね


いつもは空が真っ赤に焼けている時間帯なはずなのに、今日は珍しく暗雲が立ち込め、おまけに大粒の雨まで降り出してきたのです。
これは朝の天気予報の通りですね、科学は進んでいるのですね。なぜ天気予報を見て雨が降ることも知っているのに私の手には傘が握られていないのかって?理由は簡単、教室の傘置きに置いておいたら盗まれましたって落ちです。
高校生くらいになるともう皆傘なんて適当に傘置きからレンタルしていってしまいますよね。
私のコンビニで購入した525円のビニール傘は今頃他の誰かと雨の中浮気してるのでしょう。

はあ、とため息をつき昇降口の下駄箱の前でぺたんと座り込む。それにしてもこの雨はいつ止むのだろうか、ずっと降り続けてたら嫌だなあなんてことを悶々と考え続ける。静かな校舎内に時折響く運動部のかけ声や物音。
いつもはグラウンドを駆け回っている外の部活の人たちは、今日は中でトレーニング等をしているようだ。なんだか青春っぽいなあなんてぼんやり思っていると、背後からきゅっきゅっという上履き特有のあの音がこちらに近づいてきた。首だけを音のする方向傾ける。

「誰かと思ったら伊藤くんか」

そこには偶然同じクラスでサッカー部の伊藤くんが私を見下ろすようにしてたっていた。

「それはこっちの台詞。塚本さんはこんなところで何してるんすか?」

「傘を盗まれて帰れないのでーす」

伊藤くんはへえ、と小声でそういうと無表情のまま上履きを脱ぎスニーカーに履き替えるとどかっと私の隣に腰掛ける。

「雨止むの一緒に待ちますよ」

「お、ありがとう!」

一人よりはぜんぜん楽しいやと思っていたけど、なんだか気まずくて沈黙の時が流れる。よくよく考えると私は伊藤くんと会話と言える会話をまともにしたことがなかったなあとか今更思う。

「……そういえば私たち、同じクラスなのに全然話したことなかったねー」

ここからきっと話が広がるかもと勝手に期待していたのだけれども、伊藤くんは俯いたままで一向に返事はかえってこない。あれ、なんか悪いこと言ったかな?とか思っていたら伊藤くんの唇がぼそぼそと動いた。

「……話しかける勇気がなかったんです」

と返してくるでないですか。

「え!?私ってそんなに話しかけづらい?」

ギャルっぽいって意味なのでしょうか、それとも何か話しかけづらいオーラでも発しているのでしょうか。そんなこと意識したことなかったので少しだけ動揺してしまった。

「そういう意味じゃなくて…あーもう…」

と投げ出すように伊藤くんはぼそりと呟くとわしゃわしゃと頭を掻き始める。じゃあ一体どういう意味なのですか?という疑問を投げかけようとした時。

「あの、塚本さん。……俺の傘大きいんで一緒に入って帰りますか?」

とか歯切れの悪い感じで言ってきたので、満面の笑みでもちろんって返した直後、雨が小降りになり、雲間から悠夕日が覗いてきた。私はきょとんとしたままの伊藤くんと暫くの間見つめあい、ふふっと笑いあう。

過去ログ1

March 27 [Sun], 2016, 0:39
例えば、愛を形にするならば


「2組の浅岡さんの手首、みた?」

「みたみた! よく見るとあれ、腕とかにもついてない?」

「まじまじ!? 気がつかなかった!」

「あれって世に言う……」

最近僕の彼女の噂がこの学年では流行していた。友達からもお前の彼女大丈夫なのか?っていう上っ面だけの心配をされたばっかりだ。心配する気持ちなんてあるはずもなく最初からただの好奇心で聞いてきているというのはわかっていたのであえてそこははぐらかして、僕は逃げるように屋上へ続く階段へと向かっていった。
外の世界へと続く重たい扉をゆっくりと開く。放課後の屋上はお昼時とは違って人気もなくしっとりとした雰囲気を醸し出していた。
まあこんな真夏日に屋上で日光浴なんて阿呆な事する奴はいないんだろう。ふらりと屋上の世界へ足を踏み入れる。待ち人の姿は、角のフェンスの近くにあった。

「遅かったのね、良一」

「ごめん…… 雅」

待ち人、即ち僕の彼女である浅岡雅は屋上の中で唯一影がさしている隅っこに立ち尽くし、グラウンドで走り回っている運動部を冷ややかな目で眺めていた。

「今日も、お願いできる?」

雅はポケットの中からおもむろに出した小さな剃刀を大事に握りしめ僕の方へ差し出した。これはいつも通りの日課であり、僕らの絆をつなぎ止めている唯一の行為ともいえる。黙って剃刀を受け取り、保護カバーを取る。同時に彼女は僕の方へ白くて細い傷だらけの腕を投げだし今か今かとその行為を待ちわびている。
目の前の彼女は何故か柔らかな微笑みをたたえていたが目が笑っていない。というよりも目には精気が宿っていない、というのが正解だろうか。

「はやく」

急かされ、ゆっくりと剃刀を彼女の白い腕にあて、少し強めに力をいれながら滑らせる。白い肌の上には赤い痕が残り、そこから真っ赤な鮮血がたらりととめどなく溢れ出すのを彼女は満足気な表情をしながら眺めていた。

……狂っている、と思うだろう。いいや、確かに狂っている。そんなこと僕だって自覚済みさ。でもこの行為を彼女は一種の愛情表現だと思っており、それは彼女中での唯一つの愛の形らしい。愛なんて形がないものを信じられない彼女はこうして自らの体に傷をつけてもらうことでその愛を実感するんだと思う。最初の方は僕だって戸惑った。でも、それが彼女の意思で彼女が彼女でいられる理由となるのなら、僕はかまわなかった。だって僕だって彼女を、雅のことを愛しているから。

間違った愛を覚えてしまった彼女と、間違った愛情表現を知ってしまった僕。これは異常にみえるけれど、違う見方をすれば正常なのではないのか? だって、愛されたい気持ちも愛したい気持ちも人間には備わっていてそれを形にして残してほしいというのは誰しも思うことではないのか? ただ、僕らはその行為を実行しているだけ、それだけなのではないのだろうか。 今日も僕らは、間違った愛を囁きあい、残しあう。


「愛してるわ良一、この世の誰よりも」



ぐるりと廻って君がいない


なんというかなんていうか。うん、まあ。少しだけ冷静になって考えてみようぜ。うん。いや、冷静になってもこの事実は変わらない。いや、認めたくねーんだけどさあ……

「どうして俺とお前の中身が入れ替わってんだ」

「わ、わかんないわよ!!! こっちの台詞よ馬鹿」

目の前には俺の姿をして女口調で話してる妙な奴がそこにはいた。なんともそいつは女々しく目には薄く涙の膜がはっている。ていうか当の今の俺の体もおかしくて。足とか腕とかほっそいし胸は重たいし、景色は低いし。
さて、冷静になって現状を整理してみようではないか。

…… 俺、佐々木直人と幼なじみの福島真央の中身が入れ替わったと思うのが妥当なのではないのだろうか?

朝目が覚めたらそこはもうすでに俺の部屋ではなかった。でも記憶に覚えがあったものですぐに真央の部屋だとわかり、窓から飛び出しそうな勢いでこの家から出て俺は″俺″の家へと飛び込んでいった。案の定玄関にはもう一人の俺が内股気味にそこに立っていた、という。そして今に至る。

「とりあえず、ここはまずいから俺の部屋にでも行こう」

こそりと俺の姿をした泣きそうな真央に耳打ちをし、俺らは忍び足で部屋の中へと逃げ込む。なんというか、話すとこの声がでるっていうのは違和感だらけ。


俺はベッドの上、真央は勉強机の椅子に腰掛けたまま机に肘をつきまさに絶望というようなポーズをとっていた。疑問はいくつからある。なんでこうなったのか。これからどうしたらいいのか。どのくらいの期間このままなのか。というところだ。なんとなく重たい空気が流れそうになったのを真央が口を挟み阻止した。

「どうしたら戻れるのかな」

「俺が知りたいくらいだ」

はあ、と深いため息を吐き出し自分の体を抱きしめてみる。細いなあこいつ、とかちょっと変態ちっくなことを言ってみるがまあいまこの体は俺の物であるからそこは関係ない。

「こんな漫画みたいな出来事が起こるなんて… どーしたらいいのよ 」

漫画みたいな出来事か。足を組み直しこっちを振り向く真央の顔はまた泣きそうでその泣きそうな顔が俺の顔だというのでなんともまあ混沌。

漫画ではどうやって戻ったんだろう。頭をぶつけあう? 自然に戻った? それとも…
考えてもその答えは見つからない。とりあえず漫画でやってたみたいなことを俺らもやってみるしかあてはない。ベッドから立ち上がり椅子の上で足を組んでいる真央のそばに行き、なんだなんだと動揺しているあいつの脳天に思い切り俺の額をぶつけてやった。

「「痛ってええええええ」」

声をそろえて悶絶。脳が揺れた気がした。脳の細胞が全部死んだ気がした。確認して見るもやっぱり元には戻っていなくって、再びため息ひとつ。どうしたもんかと悩んでいる俺の長い髪の毛を掴んだ真央。おいおい、こんどは俺が頭突きされる番かよ。とか思ったのも束の間。ふっと引き寄せられ、一瞬あいつと俺の唇が重なった。その瞬間、視界がぐらりと一点し先程とは違う景色が見えた。正面にはもう一人の俺はいなくて、そこには真央の余裕ぶった笑みだけがあった。なんというか、まあ結果的には元に戻ったから喜ぶべきなんだけど、はじめての相手が自分自身ってどういうことさ。しかも不意打ち。ははは、と苦笑しつつ俺は再びあいつに引き寄せられる。

とある温かい日の午前中のことだった。



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