君の一部になるには 

July 01 [Sat], 2017, 22:54
森川×三木



注:三木さん家庭持ちです




この国では、俺は「森川」になることは難しい。

でも俺は「森川」になりたい

この歳になって子供じみたわがままだとは分かっている。

ただ「気分だけでも」と思って・・・


「それで?みきしん一人で市役所行って来たの?これだけのために?」
「・・・おう」

机の上には一枚の、「婚姻届」と書かれた紙が置かれていた。
俺が家に帰るともう玄関の鍵は開いており、
また今日も無断で入ってきたのかとあきれつつもリビングに入ると
三木が一人ぼーっと机の上に目線を落としていた。

「みきしん結婚してるじゃん。もうこの紙はいらないんじゃない?」

紙は半分ボールペンで記名されていた。
夫の部分に「三木眞一郎」と書かれ、印鑑まで押してある。
彼にはもうパートナーがいるのだ。
俺だって三木のことは愛しているし、大切な恋人だとは思っているが
彼の家庭を壊そうなどと考えたことはない。
家庭を第一に。それを約束として今まで付き合ってきたのだ。

「こんなマネしてどうするつもりだ。その隣には誰の名前がほしいんだ、その欄に何人もいらないだろ?」

ずっと黙り込んだままの三木に苛立ちを覚え、婚姻届をひったくろうとすると
三木が泣きそうな顔で婚姻届を持った腕を掴む。
だがその手にあまり力は入っておらず、子供が掴んでいるかのようだった。

「俺だって別に本気で提出するわけじゃねぇ。ただ・・・事実がほしいだけなんだ、俺たちの」
「事実?」
「仮に俺に奥さんがいなくても俺がお前の性を受けるのは難しいだろ。俺たちはどうあがいたって表面上の恋人なんだよ。」

まさか三木がここまで籍を入れる、結婚をすることに対して熱心だったことに驚いたが
恐らく全てを経験したからこその本心なのだろう。

「みきしんは俺とのこと、表面上だと思ってるの?」
「そう思いたくないから、俺の隣に書いてって言ってるんだろ」
「書いたって結局表明上の婚姻届でしかないだろ。ただ俺とお前の名前が書かれただけの紙切れだ。」

腕を握っていた三木の手をそっと握りながら、まるで子供をあやすかのように両手を包み
近くにあった椅子にゆっくり座らせる。

「・・・どうしても書きたくないのか」
「そういう問題じゃなくて、そんなもんみきしんの手元にあってみろ。もし家で誰かに見られたらどう言い訳するんだ。男同士の名前が書かれた婚姻届なんて流石に気持ち悪いだろ」
「じゃあもりもりの家に置いとけばいいじゃないか」
「別に俺はそういうのいらないのに、いらない相手の家に置いて帰るのかお前は。」

いらない。という言葉に顔を強張らせ、なぜそんなことをいうのかというびっくりした顔をしたのち
さすがに諦めたかのように三木の名前だけ書かれた婚姻届を自らビリビリに破いてしまった。

「なんだ、もういいのか」
「あぁ、もういい。ガキみたいなことしちまってごめんな」

寂しそうな笑顔を見せ、何も入っていないゴミ箱にバラバラになった紙を投げ捨てる。
そのまま背を向け、うつむいたまま三木が声をかける

「もりもりも結婚すれば、俺の気持ちが分かると思う。お前はもっと俺に優しくてもいいよ」

そういい終えると机の近くに放り出してあった仕事用の鞄を持ち
そそくさとリビングを後にする。

ガチャンと玄関の扉が閉まる音を確認したあと、重たかった空気を吐き出すかのように深くため息をつき
ふと婚姻届が捨てられたゴミ箱に目をやる。

「俺はみきしんにすっごく優しいと思うんだけどなー・・・。」

おもむろにゴミ箱を掴むと
いつも台本や完パケを収納してある部屋の片隅にぱらぱらと紙屑を落とした。

「お前の泣き顔には弱いんだって」

最後にぽつりと呟くと
三木が来る前の状態になった空のゴミ箱を定位置に戻し、
何事もなかったかのように翌日の仕事の準備に追われる夜が過ぎていった。





【END】
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声優同士のBL小説を書いています。

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