光の側へ 3

May 12 [Fri], 2017, 14:23


「あっ……、あのっ、でも……」

「でも、じゃねぇよ!! 俺の店なら盗んでもいいって思ってんのか!!?」


その怒鳴り声を不快に思い、声の方を確かめると、そこには果物屋と、まだ小さな男の子がいた。

状況から察するに、男の子が盗みでもしたのだろう。

年は自分と同じくらいだろうか。


店主らしき男は、一方的に子供を怒鳴り付けている。

男の子は完全に怯えてしまっているようだった。


こんなことは、この街では日常茶飯事だ。

日常茶飯事なので、気に止める必要もない。

……のだが。なぜかその男の子のことが妙に気になった。


「……おい、おっさん」

「ああ? なんだてめぇ!」


店主と男の子の横から、割って入る。


「……ほらよ」


リークは突然、店主に向かって先ほどのコインを投げてやった。

店主はそれを受け取り、まじまじと見つめる。


「なに盗んだか知らねぇけど、それで足りんだろ。許してやれよ」

「……けっ」


受け取ったコインをそそくさとズボンのポケットにしまい、「次やったら殺すからな!!」と残し、店に戻る店主。

助けてやった男の子に目を向ける。

すると、太陽に照らされキラキラと煌めく金髪に、炎のような赤い瞳がいやにでも目についた。


(赤目か……。珍しいな)


アルドレイト……というより天界では、青い瞳と赤い瞳を持つものは珍しい。

彼らは青目、赤目と呼ばれ、強い魔力を持つという。

しかし、エルフの国セレディーネでは、赤目は悪魔の化身とされ、殺されるとかなんとか……。


「……あっ、あの、……ありがとう」


そんなことを考えていたら、赤目の男の子からお礼を言われてしまった。

地面につきそうなくらい、深々と頭を下げる男の子。


「別に、礼なんていらねぇよ。次やるときは上手くやれよ」

「ぇ、いや……あの……」


そう言われて、なにやらもごもごと口ごもる男の子。


「……なんだよ」

「……お、オレ……、盗んだんじゃ、なくて……、……お金、置いたのに、気付いてもらえなくて……」

「……あ?」


なんだかハッキリしないの男の子に、少しイラつくリーク。

だがイラつきを抑えて、男の子の話を聞いてみることにした。


「こ、これ買うときに、おじさんだれかとお話してて……。何度も呼んだんだけど、聞こえなかったみたいで……」

「それでお金置いていったら、泥棒扱いされたって訳だ」


悲しそうな表情で頷く男の子。


「……ま、運が悪かったな」


それを聞いて、小馬鹿にしたように言うリーク。

男の子は果物の入った篭を胸に抱え、俯いてしまった。


「じゃ、俺行くわ。じゃあな、不運な赤目くん」

「……! あっ、まって! お礼……!」

「いらねー」


男の子の言葉を一蹴し、その場から立ち去るリーク。



この時の彼との出逢いが、自分の運命を大きく変えてしまうとは、露程も思わないリークであった。




 

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