2006年10月24日(火) 0時43分
ぎゅっ


「なに、重たいんだけど?」


冷たい女。儚げで、今にも消え去ってしまいそうだったから後ろから抱きしめてみると、さっきの言葉。きゃーとかそういうキャラクターじゃないが、もっとこう危機感というかなんというか。



「このまま襲われるとか、考えない?」


「あなたはしない、そう信じてるもの。少なくとも、私が仕事をしているときは。」



ああ、この女にはやっぱり敵わない。



(仮)鬼ごっこ1 

2006年10月04日(水) 23時50分
(屋上に続く扉を開けるとそこには・・・。)


「こんなところにいて、助教授がサボっててもいいのか?」

思い返してみれば、ここ来てから加藤がこうして屋上でベンチに座り思いふけっている姿なんて、一度もなかった。屋上といえば、シーツがたくさん干されていて、ちらほらと見える看護師たちの足のイメージが定着していた。どう考えても屋上と加藤が結びつかないから、その姿を見つけたとき、ものすごく不思議に感じたんだと思う。

「そういうあなたのほうこそ、手術だったんじゃないの?」
「ああ、よくご存知で。」

あたりまえでしょ、そういって膝に置いていたバインダーの上に大事そうに握り締めていたコーヒーに口をつける加藤。いつも見ているしぐさなのに、なぜか少しドキリとした。


――ああ、そうか。いつもと違うからだ。


「座ったら?」

言われるまで俺は自分が突っ立ったままただこの女を見つめていたことをすっかり忘れていた。
だめだ、今日は何かがおかしい。

「ああ、」

腰を下ろすと、俺たちの間の距離は自然と縮まって。こんなに、近くにいることなんて手術以外でめったにないからまた、ドキリ。自然と漂ってくるシャンプーのいい香りと、消毒液のにおい。今まで付き合ってきた女とはちがう、女。

五メートル先からでもにおってきそうな、香水をプンプンつけた女と付き合うほうが楽なのはわかっているが、どうも自分は今、この女でないと満足できないみたいだ。


チラリ、と隣を見ると加藤の横顔。

それがまた綺麗で、いつのまにか気づかないうちに見入ってしまっていた。

バタン。

バインダーが閉じられ、加藤がこちらをみて初めて俺は自分がずっとこいつを見つめていたことに気がついた。


「なに、さっきから人の顔ずっとみてたけど。」

「いや、加藤って無駄に綺麗だなぁと思って。」


加藤は先ほど閉じたバインダーを持ちあげ、叩こうとしてきた。
さすがにこれで殴られたらいたそうだ、とおれも素直に叩かれるわけもなく、ギリギリのところで受け止めた。

「悪かったわね、無駄に、で。」


加藤そういい残して、屋上を逃げるように出て行った。


「全く、かわいいね、うちの助教授さまは。」


顔を真っ赤にして、逃げて行っちゃって。

でも、俺から逃げられると思うなよ?

鬼ごっこのはじまりだ。
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