ある「何も無い」の話。 

May 23 [Sat], 2009, 23:48
あるところに「何も無い」がいた。

「何も無い」は自分が何もないから何もわからなかった。

だから「何も無い」は自分を見つける旅に出た。

「何も無い」はある晴れた日、田んぼで作業をする農家のおっちゃんに尋ねた。

「私はなあに?」

するとおっちゃんはその重そうな腰を起こして答えた。

「おまえさんはおまえさんだべ」と答えでがははと笑った。

つられて「何も無いも」笑った。そうか。私は「おまえさんだべ」なんだ。

晴れた空の下で笑うのは楽しいことだと思った。


ある雨の日「何も無い」は背ばかり高い麒麟を見つけた。それとも首が長いというべきか。

「私はなあに?」と、おっちゃんにしたのと同じ質問を投げかけた。

「「私はなあに?」ですって? 私にはあなたはまだ「生まれたての子供」のように見えるわよ。」

そうか。私は「生まれたての子供」なんだ。

「何も無い」は、だから自分は「何も無い」のだと思った。それとも「何も無い」から生まれたばかりなのだろうか。

「何も無い」は考えても考えてもわらかなかった。

冷たい雨が降り注ぎ、「何も無い」歩き出す。


どんよりと雲が重いある日、「何も無い」は小さな蛙に出会った。

毛虫は道の真ん中で往生していたので「何も無い」は近くの池に放してやった。

そして「私はなあに?」と、おっちゃんと麒麟にした質問をした。

毛虫は即座にこう答えた。

「あなたは私の命の恩人です。」

「命の恩人?」

「ええ。あなたは私にとっては大きな、大きな存在だ!あなたがいなければ私は今頃誰かに踏み潰されて死んでしまっていたでしょう。本当にありがとうございました!」

そう言うと蛙は池を泳いでいった。

「何も無い」は嬉しいような寂しいような、そんな気持ちになった。

蛙に感謝されて嬉しい。しかし蛙は自分のことをとても買い被っている。
たまたま自分はそこにいて、たまたま蛙を助けることができただけなのだ。

私は大きくなんか無い。私は「何も無い」のだから。

雲はどんよりと「何も無い」の頭上を埋め尽くす。



晴れた日も、雨の日も、曇りの日も、「何も無い」は旅を続けた。

旅を続けるだび、その1日1日が「何も無い」に「何か」を与えていった。

それは「喜び」「悲しみ」「寂しさ」「怒り」…。

「何も無い」は成長していった。

しかし、どれだけ月日がたっても「何も無い」は自分のことがわからなかった。

未だ自分のことを「何も無い」と思っている。

何がしたいのか。

何が正しいのか。

どこが他人と違うのか…。

しかし一つだけわかったことがあった。


それは、自分は旅が好きだということ。人と話して喜び悲しみ怒る自分が好きだということ。

そう考えると、自分は実は色々なものをもっているのではないかと少し思えるのだった。

だから「何も無い」はまだ旅を続ける。


自分を見つけるためではなく創り続けるために。
P R
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