企画SS《124-1》の続きです。
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「へいきやて。べつにウチのへやにいくだけやし、もんだいあらへんよ」
「…そ、やろか?」
「うん」
きゅっと手を握られて、おまけに大好きな木乃香に笑顔を向けられては刹那に反論する気力が湧くわけもなく、大人しくついて行くしかなかった。
「ほら、みてみい」
「うわぁ〜」
数えるのも大変そうな立派な雛壇が目の前に広がり刹那は目を輝かせた。
「おおきいな!」
「うん。あしたにはかたづけてまうから、せっちゃんにきょうあえてほんまによかった」
刹那に喜んでもらえたことが嬉しいのか、木乃香も始終笑顔でいた。あの宴で見せていた作った笑顔ではなく、年相応の無邪気な笑顔である。
「これ、このちゃんのなん?」
「うん」
「すごいなぁ」
「せっちゃんのは?」
「ウチ?ウチのはないよ」
さらりと言ってのけた刹那に木乃香は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする。
「しんめいりゅうにはもんかせいがいっぱいおるから、ウチだけのおひなさまはないんよ」
「そうなん…。なぁ、せやったらこれあげる」
「…え」
そうして木乃香が指さしたのは目の前にある雛壇だった。
木乃香の発言に今度は刹那が鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする。
「あ、アカンよ!」
「ほしないん?」
「ほし…い、けどほしない!」
刹那には木乃香がなぜこのようなことを言うのかよく分からなかったけれど、少なくとも雛人形は子供同士のやりとりであげたり貰ったりできるようなものではないことだけは十分すぎるほど理解できていた。
「あげるてゆうてるのに…」
拗ねた様子の木乃香は唇をとがらせて畳を見ている。
一体木乃香に何があったのか、刹那は勇気を出して聞いてみた。
「このちゃん」
「ん?」
「おひなさま、すいとらんの?」
「うん」
「なんで?」
刹那がこの質問をすると途端に部屋は静寂に包まれた。
重たい空気に耐えきれなくて刹那が質問したことを後悔し始めた頃、木乃香は小さな声で呟いた。
「え?」
「やから、…ウチみたいやない?」
「う、うん。このちゃんみたいにかわええよ」
「そうやのうて、…かざられとるだけのそんざいがや」
自分は近衛家にとってお飾りでしかない、そう木乃香は言いたいらしい。しかし、そのようなことを刹那が理解できるわけもなく、先刻から首を傾げるばかりだ。
「…そ、やろか?」
「うん」
きゅっと手を握られて、おまけに大好きな木乃香に笑顔を向けられては刹那に反論する気力が湧くわけもなく、大人しくついて行くしかなかった。
「ほら、みてみい」
「うわぁ〜」
数えるのも大変そうな立派な雛壇が目の前に広がり刹那は目を輝かせた。
「おおきいな!」
「うん。あしたにはかたづけてまうから、せっちゃんにきょうあえてほんまによかった」
刹那に喜んでもらえたことが嬉しいのか、木乃香も始終笑顔でいた。あの宴で見せていた作った笑顔ではなく、年相応の無邪気な笑顔である。
「これ、このちゃんのなん?」
「うん」
「すごいなぁ」
「せっちゃんのは?」
「ウチ?ウチのはないよ」
さらりと言ってのけた刹那に木乃香は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする。
「しんめいりゅうにはもんかせいがいっぱいおるから、ウチだけのおひなさまはないんよ」
「そうなん…。なぁ、せやったらこれあげる」
「…え」
そうして木乃香が指さしたのは目の前にある雛壇だった。
木乃香の発言に今度は刹那が鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする。
「あ、アカンよ!」
「ほしないん?」
「ほし…い、けどほしない!」
刹那には木乃香がなぜこのようなことを言うのかよく分からなかったけれど、少なくとも雛人形は子供同士のやりとりであげたり貰ったりできるようなものではないことだけは十分すぎるほど理解できていた。
「あげるてゆうてるのに…」
拗ねた様子の木乃香は唇をとがらせて畳を見ている。
一体木乃香に何があったのか、刹那は勇気を出して聞いてみた。
「このちゃん」
「ん?」
「おひなさま、すいとらんの?」
「うん」
「なんで?」
刹那がこの質問をすると途端に部屋は静寂に包まれた。
重たい空気に耐えきれなくて刹那が質問したことを後悔し始めた頃、木乃香は小さな声で呟いた。
「え?」
「やから、…ウチみたいやない?」
「う、うん。このちゃんみたいにかわええよ」
「そうやのうて、…かざられとるだけのそんざいがや」
自分は近衛家にとってお飾りでしかない、そう木乃香は言いたいらしい。しかし、そのようなことを刹那が理解できるわけもなく、先刻から首を傾げるばかりだ。
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