長期請負工事会計(4) 

2007年07月15日(日) 9時01分
(つづき)

 
 こうみると、(われわれからみると)意味不明な未成工事支出金(資産) と 請求(負債) というわけわからない勘定がでてきますが、実はこれが相互に控除項目となっています(つまり、貸借対照表は相殺して多い方を純額で計上する)

 未成工事支出金とは、先ほどもいったように売価のうち実際に完成した部分、請求勘定は、売価のうち実際に請求した部分。よって、前者が後者よりも大きい場合は、ほんとはその差額分だけまだ請求してもよいということで資産。逆に前者よりも後者が大きい場合は、工事が請求に追いついていないので急いで工事を進めないといけない状態にあるということで負債を意味するというわけです。

 よって、工事完成時を想像していただくと、工事の完成によってこの両方の勘定が工事価格と一致することがお分かりでしょうか。というのも、工事の完成により、すべての工事原価とすべての工事利益が未成工事支出金勘定に集計され、工事価格と一致し、また普通は工事完成の期にまでにすべての請求が完了することから、請求勘定は累積してこの期には工事価格全額分が計上されます。よって、完成時にはこれらの両勘定はその役割を終え、相殺されます。

 2008年の工事完成時の日米の仕訳を比べてみます。
 
 (日本基準)

 (借)完成工事原価 1,600,000 
              (貸) 未成工事支出金 1,600,000
 (借)完成工事未収入金 1,875,000
              (貸) 完成工事高 1,875,000

 (米国基準) 

  Construction in progress     275,000
  Cost of construction      1,600,000
     Revenue from long-term contract     1,875,000

Billings on construction contract      5,000,000
     Construction in progress     5,000,000

 
  工事完成基準についてはあまりふれませんでしたが、発想は同じようになります。
  よって、想像できるかと思いますが、工事完成基準の場合、日本基準では期中に未成工事支出金が完成工事原価に振替できず、工事の途中で売掛金が発生しないので、受け入れた金銭はすべて未成工事受入金勘定に集計されるので、工事が完成するまでは棚卸資産としての未成工事支出金勘定と負債としての未成工事受入金勘定が両方ふくらんでいくことになります。米国基準では、後者の受入れは請求勘定を経て売掛金勘定に連絡する一方、貸借対照表上のみ未成工事支出金勘定と請求勘定が相殺され、純額のみが表示されます。よって米国基準によった方が総資産が小さくなります。
 
  工事進行基準の場合、日本基準では未成工事支出金勘定がゼロになりますが米国基準では売価で計上され、請求勘定と相殺されます。

  米国基準では、上記のように、請求済金額と完成済金額との比較が重要と考えています。これに対して、日本基準の意味するところは、回収済金額と完成済金額との比較が重要と考えています。結果的に純資産と損益へのインパクトは同じですが、総資産へのインパクトは変わってきます。日本基準は、製造業と長期請負工事との会計処理の一貫性があってわかりやすいですが、米国基準は、請求と実現の差異が無視できないという視点に立っていると思われれ、大きな考え方の違いがあるように思われます。

  この論点は、さらに、赤字工事の場合どうするかという論点に発展します。ここで、米国基準がひとつの悩みを抱えているところです。日本基準でも赤字工事の場合にどうするかが1つの論点になっていますが、米国基準とは前提においてこのような違いがあるため、簡単に米国基準を輸入することはできない状況にあります。次回は赤字工事の会計処理について検討したいと思います。

 

長期請負工事会計(3) 

2007年07月15日(日) 8時35分
 続きです。

 日米会計の差異の根底には、売掛金の計上に関する考え方の差があるような印象です。
 つまり、日本では、長期請負工事の工事進行基準では、工事が完成していないものの部分的には実現したとみなして、あたかも部分的に完成したかのような仕訳がされると思います。つまり、進行割合に対応する部分は売掛金(資産)たりうるという考え方です。

 これには一応の疑問がなくはありません。つまり、長期請負工事の場合は、工期が長期になることから、施主は注文主から資金を段階的に受領することが多いと思われます。一応の工事の進捗度合(または施主の資金需要)に応じて支払のタイミングが決まることと思われますが、必ずしも会計上の工事進行割合とは一致しません。よって、現実に請求した金額と売掛金が一致しない点が問題ではないかということです。
 
 サイクルの小さい商品・製品の販売の場合はあまり問題にならなさそうです。つまり、売上の計上と請求のタイミングが近いからです。よって、売上とともに計上した売掛金と、実際の得意先への請求金額がずれるとしても、そのずれは小さいし、だいたい財務諸表の公表日までには期末までの売上は請求済みになっていることが多いので、財務諸表の売掛金は、売上額ベースでも請求額ベースでもあまり問題にならないわけです。

 ところが長期請負工事では、実際の請求→回収のプロセスと、工事の原価発生のプロセスの開きが大きいので、売掛債権はもはや請求ベースによるしかないというのが米国の考え方のようです。

 そうると、第1に、売掛金(完成工事未収入金) /売上(完成工事高) の仕訳ができません。

 (なお、この仕訳は、人によっては 借方は前受金(未成工事受入金)というと思いますが、受入金以上の工事収益を認識すれば超過額は売掛金計上という点では一致しますので、結論に影響ありません。)

 これが、未成工事支出金勘定の性格を変容させます。
 ここで、未成工事支出金勘定を、完成割合に対応する工事収益の集計勘定にします。(具体的には先に仕訳したように、工事収益の認識と同時に未成工事支出金勘定を(完成工事原価に振り替えてゼロにするのではなく、逆に)売上総利益相当分だけ増加させます。この勘定は、あたかも今その工事を切り離して売却できたとしたときの売価を示すことになります。

 さて、これで収益と費用を同時に認識して、
 
   完成工事原価  (原価分)     / 完成工事高 (収益分)
   未成工事支出金 (差額:利益分)
 
という処理になりました。では売掛金側はどうなるかというと、今度は請求額基準となるため、貸方に請求という仮勘定をたてます。請求額をもって

   売掛金  / 請負工事請求  となります。

 この考え方では、普通請求→回収というのが長期請負工事の通常のパターンなので、あまり未成工事受入金勘定の出番がありません(あるとしたら、施主の請求に先立ち注文主が資金を入れる場合ですが、そんなことは普通あまりないと思います)

 続きは次回。

長期請負工事会計(2) 

2007年07月14日(土) 13時30分
では前回の事例の会計処理を米国基準でいきます。(記憶が新しいうちに)


  @工事原価の発生

    Construction in progress 1,500,000
           Various accounts 1,500,000
  
  A工事収益の認識
  B工事原価の認識

   Cost of construction   1,500,000
       Construction in progress 500,000
        Revenue from long-term construction 2,000,000

  C請求   

Accounts receivable 1,200,000
         Billings on construction contract 1,200,000


  D回収

  Cash 1,000,000
           Accounts receivable    1,000,000

   
 @の工事原価の発生は日米あまり変わりないです。資産勘定に費用を集計していきます。
 
 ここで大きく違うのが以下の3点です。

 (1)日本の未成工事支出金は(製造業の)仕掛品勘定と(ほぼ)同じ機能を果たし、棚卸資産であるが、米国のCostruction in progress勘定は、工事原価と工事総利益(gross profit)が混在した勘定である。

 (2)日本では(たぶん)完成工事高(収益)と同額の売掛金(完成工事未収入金)を計上するが、米国では請求高を計上する
 
 (3)(回収が請求の後に行われることから)米国では現金の受け入れは単に売掛金の回収になるが、日本の場合は(簡便に行うと)現金の受け入れは暫定的に前受金として処理し、期末に売掛金と相殺してダブりを防ぐ。

 結果的に、純資産、純利益に与えるインパクトは同じです(だから大きな問題はまったくない)。
 しかし、背景にある考え方には大きな違いがあるので、日米で処理する場合には一応気をつけた方がよい(ただ、上記のように純資産、純利益へのインパクトがないので、日本基準から米国基準への組み替えの場合には登場しないので、ややマニアックな論点か)

 (1)〜(3)の違いの詳細についてはまた次回。  




長期請負工事会計(1) 

2007年07月14日(土) 12時58分
 さて、今まで匿名組合会計について書いてきて力尽きたこのブログですが、今米国会計の勉強中でいくつか面白いことに気づいたので、このブログを再開することにしました。ここからの記事は、米国会計を勉強中で日本の会計基準をご存じの方(簿記2級とかおもちの方)にご覧いただき、ご意見いただけるような内容にしたいと思います。

 初回は、長期請負工事会計に関してです。会計処理の考え方自体は、日米大きな違いはないと思います。面倒なので、税務会計は無視します。

 要するところ、長期請負工事は、着手してから1会計期間(1年)に完成しないので、収益をいつ認識するのが妥当な期間損益計算なのか?という疑問から始まったものと思います。よって、
 
 @通常通りの実現要件を満たした時点でしか収益認識をしない
  →工事完成基準 (Completed Contract Method)
 A工事の進行度合いに応じて収益を計上するのが適切と考える
  →工事進行基準 (Percentage-of-contract Method)
で、おおまかな発想は日米共通です。

 しかし、気をつけないといけないのは仕訳が日米で全然違うということです。これはかなりこんがらがります。おそらく(記憶ですが)仕訳は米国会計士試験ではあまり問われないと思いますので、無理して覚える必要はないかもしれませんが。。。

 例題は以下のとおり。2006年に着工した工事が2008年に完成したという場合です。

 工事金額 5、000,000ドル
 
 当事業年度に発生した工事費用  2006  1,500,000ドル
                      2007  1,000,000ドル
                      2008  1,600,000ドル

 工事完成までに見込まれる追加工事費用
                      2006  2,250,000ドル
                      2007  1,500,000ドル
           
 各年の請求額
                      2006  1,200,000ドル
                      2007  2,000,000ドル
                      2008  1,800,000ドル

 各年の回収額            2006  1,000,000ドル
                      2007  1,400,000ドル
                      2008  2,600,000ドル

  この場合の2006年の工事進行基準による会計処理を考えてみます。

  金額がドル単位ですが、気にしないで(円だと思って)日本基準で会計処理をします。

  (最近やってないので、間違いにお気づきでしたらご指摘ください)

 2006年
  @工事原価の発生

    (借) 未成工事支出金 1,500,000 
        (貸) 諸勘定  1,500,000
  
  A工事収益の認識

   進捗度が1,500,000/(1,500,000+2,250,000)=40%なので、
   認識する収益は5,000,000×40%=2,000,000ドル
 
    (借) 完成工事未収入金  2,000,000 
              (貸)完成工事高 2,000,000

  B工事原価の認識

    (借) 完成工事原価   1,500,000 
             (貸) 未成工事支出金 1,500,000

  C請求   仕訳なし

  D回収

   (期中に受け入れた場合)

    (借) 現金預金  1,000,000 
               (貸)未成工事受入金 1,000,000

   (期末に完成工事未収入金と消しこみ)
  
    (借) 未成工事受入金 1,000,000 
              (貸) 完成工事未収入金 1,000,000

  米国会計の処理は次回。

匿名組合会計(17)〜劣後特約がある場合 

2006年04月09日(日) 3時54分

 さて、ここで一度話題を変えて、利益分配金の劣後特約に
ついて検討します。

 これまでは利益分配金は即刻現金によって現実の分配を
なすべきことを前提としておりましたが、場合によっては他の
債務(SPCの管理費や関係者への報酬でしょうか?)を優先
させるため、これらの債務が完済されるまで支払いが留保
されることがあります(劣後特約)。この場合、利益分配請求権の
条件が成就していない点も踏まえ、以下のように取り扱う必要が
あると思われます。

@匿名組合契約が終了するまでは、現実の分配が受けられない
ことになります。その場合、営業者の匿名組合未払金は
固定負債、匿名組合者の匿名組合未収入金は固定資産(投資
その他の資産)に分類されると考えられます(1年内に組合が終了
する場合は流動区分)
A損失により相殺されるかどうかは、やはり特約の有無によって
決定されるべきであると考えます。
Bなお、これは経済的には追加出資に近いと考えられますが、
法的には、追加出資とみなす合意がない限り、追加出資とみなす
必要はないと考えます(特別目的会社を利用した取引に関する
監査上の留意点についてのQ&AのQ9参照)。


 次に、追加出資の取扱いについて検討します。

(例)現実の分配を受けていない利益分配請求権10を
 追加出資として出資金に組み入れることにした


<営業者>
(借方) 匿名組合未払金 10 (貸方) 匿名組合出資金 10

<匿名組合員>
(借方) 匿名組合出資金 10 (貸方) 匿名組合未収入金 10


 なお、利益分配金の全てを追加出資とすることが契約で合意されて
 いたのであれば、事業年度末の利益分配請求権の発生と同時に
会計処理しますし、そうでなければ、個々の組入れの合意の時点に
会計処理を行うことになります。




匿名組合会計(16)〜損失負担の会計処理C 

2006年04月09日(日) 3時48分

 前回の仕訳の分析の続きです。

 ケース3の仕訳のうち次の仕訳ができるかどうかが問題です。

<営業者>
 (借方)匿名組合未払金 10 (貸方)現金預金  10
 

 <匿名組合員>
 (借方)現金預金 10 (貸方)匿名組合未収入金 10

 というのは、商法538条が、出資が毀損している状態では利益
分配はできないといっているからです。しかし、
 @現実の分配は利益分配とは異なること 
 A現実の分配は、既に確定的に発生した債務の履行であり、出資金
 とは別の事項であること
 B同条は、出資金の毀損が生じた後に利益が発生した場合に、利益分配
ではなく出資金の回復を先に行うことを規定しているにすぎないことと解する
ことにより、上記のように現実の分配を止める必要はないと思います。
 ただし、この部分も、ほんとうは契約書上は明らかにしておくにこしたことは
ないと思います。
 もっとも、通常の流動化案件では、契約当事者の意思から、明らかに
現金を早く流すつもりがありますから、上記の仕訳となると思います。
もともと任意規定と解されているのですから、部分排除も十分に可能で
要は当事者間で解釈の不一致が生じないことが大切だと思われます。

匿名組合会計(15)〜損失負担の会計処理B 

2006年04月09日(日) 3時42分
 損失負担の話の続きです。
 このあたりは、特約で自由なので、会計処理は実に様々です。
やりだすとキリがないのですが、いくつか検討してみたいと
思います。

(例)第1事業年度に利益分配金10が発生したが営業者
に現金がないため、契約に基づき現金の分配は第2事業年度末
となる。第2事業年度末には損失5の分配が必要となった。
 一方で、営業者は第2事業年度中に現金10を取得した。
 匿名組合員からの出資を100とする。
 
 第2事業年度末直前の資産・負債(債権・債務関係)

<営業者>
 -資産の部-       
 現金預金 10
 -負債の部-
 匿名組合未払金 10
 -匿名組合出資の部-
 匿名組合出資  100  

 <匿名組合員>
 -資産の部-       
 匿名組合未収入金 10
 匿名組合出資金  100 

(ケース1) 損失を負担しない合意がある場合

 <営業者>
 (借方)匿名組合未払金 10 (貸方)現金預金  10

 <匿名組合員>
 (借方)現金預金 10 (貸方)匿名組合未収入金 10

   〜損失負担がないので、すべて利益分配請求に充てる
 
(ケース2)利益分配請求権との相殺の合意がある場合
  
 <営業者>
 (借方)匿名組合未払金 10 (貸方)現金預金     5
                    匿名組合損失分配 5  

 <匿名組合員>
 (借方)現金預金     5 (貸方)匿名組合未収入金 10
     匿名組合損失分配 5

  〜損失負担の結果利益分配請求権5が減るので、現実の分配は
  5で足りる


(ケース3)出資金勘定の減少により損失を負担する場合
      (これが通常のケースではなかろうか)

 <営業者>
 (借方)匿名組合出資金 5  (貸方)匿名組合損失分配 5
 (借方)匿名組合未払金 10 (貸方)現金預金  10
 

 <匿名組合員>
 (借方)匿名組合損失分配 5 (貸方)匿名組合出資金 5
 (借方)現金預金 10 (貸方)匿名組合未収入金 10


 ここで、それぞれの2番目の仕訳ができるかどうかが問題に
なると思いますが、続きは次回検討します。

匿名組合会計(14)〜損失負担の会計処理A 

2006年04月09日(日) 3時37分
 損失負担の会計処理の検討の続きです。

 例えば、営業者が第1事業年度に利益分配10を
しましたが現金がなく、第2事業年度に事業が失敗
して損失分配120を行って終了した場合です。
 匿名組合員の出資金が100だったとします。

 利益分配請求権が損失によって損なわれないと
すると、出資者は損失120のうち出資金100までは
負担しますが、超過分20は負担する必要がなく、
一方で利益分配請求権10は行使可能となります
(回収不能かどうかは別問題)。

 利益分配請求権との相殺を認めると、120のうち10は
利益分配請求権と相殺され、残り110の損失負担を出資金
100でかぶり、残る10の損失負担は免れますが、利益分配
請求権は残りません。

 何も特約のない場合、利益分配請求権が発生した時点で、
この請求権は匿名組合の外に出た通常の債権と同視される
ので、事業の損失によるリスクにはさらされず、営業者は全
財産をもってこれを分配する可能性があることになります。
よって、最終的に大損失を被っても、過去の利益分配請求権
だけは逃れることはできないと考えることになるのではないで
しょうか。それは、配当が確定した時点で配当請求権については
株主は会社に対して債権者になるという会社の場合と対応して
おり、不自然ではないと思われます。

 これが営業者にとって不利である場合には、特約が必要だと
思います。ただし、流動化の場合、実はあまり問題は起きない
のかもしれませんが、利益分配請求権との相殺を認めない
上記の例では、10の利益分配請求権が一応残りますが、匿名組合
事業が失敗したときは、SPCが分配可能な金額を超えてSPCに
弁済を強いることは予定されていないので、結局は利益分配請求権は
回収不能になると思われます。ただ、その場合でも会計上の処理を
明確にするために、利益分配請求権は、匿名組合の終了時点の現金を
もって弁済できない場合には、出資金に繰り入れて損失の対象となる
旨の定めを置いておいた方が権利関係が明らかとなるような気がします。


匿名組合会計(13)〜損失負担の会計処理@ 

2006年04月09日(日) 3時30分
 最初に、前回の現実の分配に関して一言。

 匿名組合の会計処理は、前回書いたように、利益
分配請求権と出資金返還請求権は、異なる法律上の
原因に服しますので、別の勘定科目として処理をする
ことを想定しています(出資金は出資金勘定、利益分配
請求権は未収入金/未払金勘定)。出資金勘定は、
その後に発生する損失によって少なくともゼロまでは
減少しますので、利益分配請求を出資金に含めて処理
することは、損失負担の合意を意味しますので、分配金を
追加出資とみなして出資金に組み入れる合意がない限り、
利益分配を出資金勘定に影響させないのが実務だと
考えております。

 続けて、やっと損失負担の論点です。

 商法538条が、

出資カ損失ニ因リテ減シタルトキハ其填補ノ後ニ非サレハ
匿名組合員ハ利益ノ配当ヲ請求スルコトヲ得ス

と規定していることから、特約で排除されない限り、
匿名組合員は損失負担をすることとなっております。

 また、以前、私は事業に損失が生じた場合、過去に受領
した分配金を返還しなければならないのではないかと
思っておりましたが、何も特約のない状態で538条が
適用される場面を考えてみれば、損失が生じればどんどん
出資金が減っていく(その分だけ法律上の出資金返還
請求権が減少していく)ので、ある意味出資金返還請求権との
相殺がなされ、過去の分配金には影響しないとみなければ
ならないということになります。これは、現実の分配が実際に
終了したか否かを問わないと考えるべきではないかと
思います。そうすると、本当は利益分配請求権が
発生しさえすれば、現実の分配が終了していなくても
(つまり、資金が営業者において保有されていなくても)
事業から生じた損失によって営業者は当然に利益分配請求権
と相殺することはできないことになります。

 よって、ここは特約をもって決めておくべき事項だと思われます。
つまり、損失が発生した場合は、利益分配請求権との相殺を
行わないとするか、出資金に先立ち利益分配請求権と相殺を
認めるかどうかです。

 両者の違いは、匿名組合が大損失を被って出資金を超える損失が
生じた場合に考えられます。

 具体例を踏まえて次回検討したいと思います。

匿名組合会計(12)〜現実の分配の会計処理B 

2006年04月09日(日) 3時20分
 どろどろの論点に入ってきました。
 
 一般にはあまり明確に論じられていない論点なのですが、
流動化では、利益・費用にとらわれず、SPCが得た(余剰の)
現金は全て匿名組合員に流したいという要望があると思われ
ます。しかし、法律家の理解としては、資金の流れには
法律上の理由がないといけない(そうでないと不当利得
返還請求権に対抗できない)わけですから、匿名組合員に
対する資金の交付の法律上の根拠を逐一考察する必要が
あります。

 前回に申し上げたように、私は、利益分配請求権は、現金の
分配を請求する権利であると考えますので、利益分配請求権の
金額を超える金額を分配することは難しいと思います。また、
利益が発生するか損失が発生するかは、当該事業年度の決算を
行うまでは分かりません。そして、出資が損失により減少した
場合には、それを填補するまで利益分配ができないという商法
538条の趣旨に鑑みても、将来利益分配が可能かどうかが
分からない時点で利益分配の前払いをすることはできないと
思います(これが利息や家賃との違うところと思われます。)。
このような状況で利益分配請求権の金額を超えて匿名組合員
に資金を流せば、それは出資金の返還と考えるしかないと
考えられます。

 事案によっては、現金分配を全て前渡/前受処理している
会計処理例があります。これは、金銭交付の法律的原因を
特定しない方法なので、本当は正しい方法ではないように
も思うのですが、事業終了時、または匿名組合持分の
譲渡時に必要な精算を行う約定があれば、可能なのかも
しれません。ただし、その場合は、金銭を受け取りすぎたと
認定され、事後的に返還を迫られる場合もあると思われます。
その場合の精算方法も明確にしておかねば法的安定性を
欠きますので、前渡/前受処理はあまり妥当な方法では
ないと思われます(検討が浅すぎるかもしれませんが)。

 
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