季節は巡る。
ゆっくりと、しかし確実に。
風が気づけば冷たくなって
吐く息も白くなった。
町並みは暖かな色に飾られ
軽快な音楽に顔をあげれば
…季節はクリスマス目前。
「もう、一年経っちゃったよ…手塚」
いつかのメリークリスマス。
珍しく君が欲しそうな視線で見てたんだ。
閉店間際に駆け込んだその店は
未だ人がまばらに店内を歩いていて
少しほっとしながら目的のものを探し出す。
「梱包はどうしますか?」
「あ…あの…プレゼントなので」
普通はプレゼント用になど包まないだろうそれを
店員さんは微笑んでうなづき、丁寧にラッピングしてくれた。
傍目にも大きなそれを抱えて電車に揺られる。
突然行くと驚くかな
驚く君の顔を思い浮かべれば口許が緩みそうで
待ち兼ねたように電車を降りる。
見知った町並みを少し急いで歩きながら君にメールを打った。
君の家の前。
今から行くなんてメールに慌てて出てきたのか上着も着ないで
寒そうな姿のまま君が立っていた。
「突然どうしたんだ」
「メリークリスマス、手塚」
少し心配そうな君に微笑みで返して、抱えていたそれを押し付けた。
「これは?」
「プレゼント。この間一緒に出かけたときこれ欲しそうだったから」
そう言えば思い出したのか微かに頬を染め、君は小さくはにかんだ。
「…中に入れ」
「いや、今日はこれ渡したいだけだし」
「そういわずに」
珍しく引き止めるそのそぶりが可愛くて
思わず笑ってしまった。
そんな僕に少しだけむくれて
肩を抱き寄せる君が愛おしい。
手塚の部屋は相変わらず彼らしいもので彩られていて、安心する。
…部屋の隅に積まれたダンボールに視線を向けたくなくて、壁に飾られたルアーを見つめていた。
台所へ向かっていた君がお盆を片手に戻ってくる。
「うちはクリスマスらしいことはしなくてな…ケーキもないんだが」
申し訳なさそうにそう言って、湯呑みにお茶をついでくれた。
暖かい湯気とともに漂うこうばしい茶の香り。
「開けてもいいか」
「もちろん」
大きなそれをゆっくりと紐解いてゆく。
ああ、やっぱりそれはこの部屋によく似合う。
「すまないな、こんな大きなもの」
「よく似合うね…その座椅子」
笑っちゃいけないんだけど、あまりにも似合いすぎる光景に口元が緩んでしまう。
「不二も座ってみろ」
「いいの?」
「当たり前だ」
そっと腰掛けると君の温もりが少しだけ残っていて
柔らかな肌触りと共に僕を支えてくれる。
「これは立てなくなっちゃうね」
手を差出ながら笑っていえば、小さくうなづいて差出した手を握り返してくれる。
引き上げようとするより早く引っ張れば、君の身体は僕の腕の中。
「ふ、不二っ」
「ふふ、捕まえた」
ぎゅっと抱きしめて、柔らかい髪にくちづけた。
君は耳まで赤くして、僕にされるがまま。
「…もう、準備してるんだね」
突然の言葉に意味を汲めず、抱きしめられたままの君が僕の顔を覗きこんだ。
僕の視線の先には積まれたダンボール。
手塚は卒業と同時にドイツへと旅立つ。
夏に聞いていたけれど、やはり現実味は薄くて…こうして目の前につきつけられると苦しくなる。
「僕も行こうかな、ドイツ」
「!?」
「なんてね」
笑って頬にキスをする。
本当を言えば今のは本音。
君のそばにいたい。
だけど
君の負担にはなれない。
「待ってるから」
「…不二」
「君が完全に腕を治して帰ってくるのを」
「ああ…」
いつまでも手を繋いでいられる気がしていた。
なにもかもがきらめいて
がむしゃらに夢を追いかけた。
君がいなくなることを
はじめて怖いと思った。
人を愛するということに
気がついた…いつかのメリークリスマス。
卒業してすぐに、手塚は旅立った。
僕は英二達と高等部へと進学して。
忙しい毎日にメールも手紙も自然と減って。
君も毎日忙しくしているのだろうと思いながら…
あのクリスマスから一年経った。
あの雑貨屋の前で足を止めた僕のそばを
大きな荷物を抱えた中学生が走り去る。
その幸せそうな微笑みはまるで去年の僕のようで
つい、その背中を目で追った。
ばたぁんっ!
不意にその子が盛大に転ぶ。
あ、と思った次の瞬間、
僕は息をするのを忘れかけた。
転んだ子を、やさしく起こして
落とした荷物を渡す。
…そこにいるはずのない、彼の姿。
「…不二?」
幻が、僕を見つけて歩いてくる。
なんで?
「驚かそうと思っていたんだがな…早い便で帰ってこれたんだ」
笑う彼の顔がぼやけてゆく
「…不二、どうした?」
「手塚…ほんもの、だよね」
「当たり前だろ」
ぎゅっと肩を抱き寄せてくれる。
ああ、本当に手塚だ。
これ以上ないクリスマスプレゼントに僕の目はすっかり馬鹿になってしまった。
ボロボロこぼれ落ちる涙も
イルミネーションの光に反射してキラキラと輝き続けていた。
MerryChristmas
…
………………
………なんだこれ(笑)
クリスマスだし、アップしとこうかと(笑)