1. 寝癖

February 06 [Sun], 2011, 17:26
寝癖

僕の部屋にはとにかくモノがない。
机、椅子、少し広めのベッド、電気、固定電話、クローゼットには衣装ケースと本が溢れそうになっている本棚。
そして部屋全体を含め、そのどれもが『白』だ。
僕がここに住む事にしたとき、自分が淀んだ人間な気がしていて、持ち物や家具はせめて何色にも染まらない純粋な色…白で埋め尽くそうと思った。
そして、余計なモノは置かない主義。
殺伐とした部屋だけど、僕はこの部屋が気に入っている。
身を沈めていたベッドから半身を起こすとモソモソと隣で動く物体に気がついた。
「…ん…このは…?」
時折、僕の部屋にやってくる不法侵入の不届き者が目を覚ましたようだ。
「オマエは何でいつも気が付くと僕の隣で寝ている?」
「…ェー…んふふふふ…」
誤魔化すように気持ち悪い笑い声を発しながら僕の腰に抱きついてごしごしと顔をこすり付けてくる。
そこに彼がいつも纏っている香りが鼻を突いた。
「…薫、臭い…と、いうか離れろ。」
「くさいとはしつれーな…芸術的な香りだろ?」
薫はちょっと名の知れた画家で、日々油絵の具のニオイをプンプンさせている。
ぐずぐずと僕の腰にしがみつく薫は僕の体を離すつもりはないらしい。
「で、何の用だ?」
「このはに会い・・」
「お帰りはあちらです。」
「酷っ。なぁなぁ、今日休みだろ?たまにはゆっくり一緒にゴロゴロしようよ。」
薫はそう言ってぐいぐいと僕の腕を引っ張る。
「僕にはそんな時間はない。」
「いいじゃん、たまにはゆっくりしたら?ほら、良く言うでしょ。狭い日本、そんなに急いで何処へ行く?って。」
「別に急いでないけど、時間はない。」
「なんでいつも時間ないのさー?今日何かする予定あるワケ?」
「本を読む。」
「その後は?」
「本を読む。」
「読み終わったら?」
「読み返す。」
「ぇー。ってかそれ予定じゃないじゃーん。」
しばらく僕の腕を引っ張りながらブーブーと色々良い続ける…。
同じようなやり取りを暫く続けていてつくづく思うのだが、この男は僕の何を気に入ったのだろうか…。
「つれないのー…」
ちぇっと小さく呟く薫が子供のように見えた。
「じゃあさ、本読んでもいいから俺もここに居て良い?」
「…お好きにどうぞ。」
そう言うと薫は嬉しそうな顔でベッドの上をゴロゴロと転げまわった。

どれくらい時間がたっただろうか。
文字に落としていた視線をベッドへ向けると薫は気持ちよさそうに寝息を立てている。
どれだけ眠れば気が済むのだろう…
眠っていれば大人しいかとそのまま放っておくことにした。

「…このはサーン…」
突然癖毛をボサボサにしたまま薫がむくりとおきあがった。
「お腹すきました。」
外を見やると日が傾きかけていることに気がついた。
そういえば、僕もなんとなく空腹だ。
「…もうこんな時間か…」
「何か食べよー。」
「今日は何もないから外にでも食べに行くか…」
外出と聞いて薫は嬉しそうに頷いた。
「但し…!そのボサボサ寝癖をなんとかしてからな。」
「はーい・・」
「早く動け!」
ダラダラと動く薫の腕を引っ張って洗面所に無理やり押し込んだ。
「これって天然の癖毛だからさー、なかなか直らないんだよー。」
「いつもそんなにボサボサじゃないだろ。」
「それはこのはに会うためにオメカシさんしてるから。」
「じゃあ今もオメカシさんすればいいだろ。」
「…ェー…」
グダグダな薫にイラついて薫から薫がうちにおきっぱなしにしている櫛を取り上げ、薫の髪を梳いた。
「こうすれば直るだろ!」
「おー、このはすごい!」
綺麗に梳かしてちゃんと整えてやると薫は嬉しそうにニコニコ笑った。
「いつも寝癖に苦戦してるんだけど、このはなら一発で直せるんだな。ありがと。」
薫はくしゃくしゃっと僕の頭を撫でてさっさと出かける支度を始めた。
なんだ、動けばちゃんと動けるじゃないか。
玄関に向かおうとした時、肩を捕まれ、待って、と言われた。
「何?」
「このはも寝癖ついてる。」
ふふっと笑うと僕の髪にキスをした。
「馬…鹿…!やめ…」
突然、びっくりして振り払おうとしたら薫が僕の腕を掴んだ。
「今度は俺が直してあげる。こっちこっち!」
薫は洗面台に僕の腕を掴んでいった。

寝癖の直しっこだなんてなんだかちょっと恥ずかしい、昼下がり。
だけど、なんだかくすぐったい気持ちがした。


<寝癖 終わり>
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【登場人物】

*影草 コウ(かげくさ こう) … 高校2年、ツンデレで寂しがりや。チビで華奢だが運動神経は抜群。生い立ちは不幸だったようだが、今は元気に暮らしている。家族構成はOLの姉・弟と三人暮らし。

*深山 純也(みやま じゅんや)…高校2年、美術や音楽など芸術に長けているものの、勉強も運動もイマイチ。お金持ちの核家族の家庭に生まれ、一人っ子の為、甘やかされて育った為、常識にかける部分はあるが、とっても優しい。
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